2014/06/02

千島の霧が見せる風の向き

5月26日15時の可視画像を見ると、千島列島に沿って霧または低い雲が発生していることがわかる。これからの時期にはよく見られる海霧であり、特に珍しい現象ではない。

14052615sajp
しかし、この画像を詳しく見ると面白い特徴が見られる。

衛星画像には緯度・経度線と地形図が示されているので、雲に覆われて地形が見えなくても、どの地域にどのような雲がかかっているかを知ることが出来る。ここでは参考に地図も添えてみた。

この地形も頼りに画像を見ると、北海道に近い国後島と択捉島の太平洋側岸は明灰色の雲が覆っているが、オホーツク海側の沿岸では雲がなく黒くなっており海面が見えている。さらに色丹島の北西側の部分にもわずかに雲の無い所が見られる。一方、北部のシムシル島より北東の島々では太平洋側が黒く海面が見えており、オホーツク海側では沿岸まで明灰色の雲が覆っていることが判る。

14052615sajp
このように島の一方にだけ雲があり、一方は雲がなく海面が見えているのは、この雲が背の低い霧または層雲であるためで、雲が風によって流され、島にぶつかったが雲が山を越えるほど高くないため、反対側に雲が広がっていないのである。国後島と択捉島の間を抜けて太平洋側からオホーツク海側に細く雲が連なっていることがこれを証明している。

この状況から、国後島、択捉島付近では太平洋側からオホーツク海側に向かう風が吹き、反対に北千島方面ではオホーツク海側から太平洋側に向かう風が吹いていると判断できる。これを確認するため、地上天気図を示す。千島中部に高気圧の中心があって千島南部から北海道方面では南からの風が吹き、高気圧の北側ではオホーツク海から千島の東海上に向かう西寄りの風が吹いていることを示している。

ところで、5月も末であるにも関わらず、この日15時、根室・釧路地方の沿岸部の気温は5℃以下のところがあった。この地方の沖合は冷たい海面が広がっており(海面水温図参照)、この海域で発生した霧や雲が流れこんだことによる低温である。しかし、この冷たい空気は根釧平野に広がっているが阿寒岳を超えた網走側には入らず、山を下った空気は昇温し15℃を超えた所もあった。
本州が梅雨の時期、北海道はさわやかな気候と思われるかもしれないが、太平洋側の地域は海霧によって、冬並の低温が続くことがあるので、寒さ対策を忘れないこと。
2014052615気温と水温