2014/06/23

平成11年(1999年)6月29日 博多駅前水没

福岡市では7時から10時の3時間に126㎜、9時までの1時間に77㎜の非常に激しい雨となった。この激しい雨で博多駅周辺のビルや地下街を初めとして、博多区を中心に3000棟の家屋や事務所が浸水する被害が発生した。

この浸水の時間経過を見ると、非常に激しく降る雨で、排水能力を超えて瞬く間に冠水が始まったが10時を過ぎて雨が弱まると共に水位は少し引き始めたに見えた。しかし、このころ御笠川は増水し、10時30分頃には氾濫が始まり、この濁流が浸水被害を拡大させた。 博多駅近くの地下街に流れ込んだ濁流により地下室に閉じ込められた1名が死亡した。地下街への浸水により地下鉄は線路の冠水で一部運休となった。また、地下に電気施設を備えたビルなどで停電が相次いだ。市民生活にも大きな影響がでた。
19990629 博多駅前水没
大都市で発生した短時間に降る猛烈な雨の恐ろしさを見せつけた事例である。ただ、こうした事例は福岡市に限ったことでなく、全国各地の大都市では、その浸水規模の違いがあるものの既に経験していることである。

この時の気象の様子を見ることにする。
平成11年6月29日朝、九州北部に達した低気圧から南西に延びる寒冷前線に対応した活発な雨雲が九州北部を通過し、各所で猛烈な雨となった。衛星画像では九州の北部の低気圧中心の南東側に活発な積乱雲があり、ここから南西方向に寒冷前線に沿うように活発な積乱雲が並んでいるのが見られた。

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レーダーでこの朝の6時~13時までの降雨域の詳細な変化を見る。図には前1時間で激しい雨となった場所を吹き出しで示した。ライン状の降雨帯の中心にある赤いラインの部分で猛烈な雨が降っており、この降雨帯はゆっくりと東に進んでいる。この降水域の動きから激しい雨はせいぜい2時間以内であった。

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福岡市とその東の篠栗町の1時間雨量の変化を示すが、最も激しく降った時間は2時間以内であった。この2地点は12kmほどしか離れていないが、総雨量は50㎜近く違っている。こうした激しい雨の時は、狭い範囲でも極端に降水量が違うのも一つの特徴である。

この事例で福岡の総雨量を見れば、普段の大雨と大きな違いがないが、福岡を含む九州北部では、23日から梅雨前線によって雨が降り続いており、降り始めからの雨量は各所で300㎜を超えて、土中の水分量は飽和に近い状況にあった。追い打ちをかけるように降った短時間の激しい雨は地面に吸収されることなく、流出したことも河川洪水や土砂災害の増大につながったようだ。また、御笠川のはん濫のもう一つの要因として、この時間帯が大潮の満潮時と重なり、河口の水位が上がっていたことも挙げられる。

なお、多くの都市では、路面は舗装されており、降った雨はほとんど地中に浸透することがないので、時間50㎜を超えるような雨では排水能力を超え、道路は冠水し浸水害が発生する。地下街への浸水は様々な形で被害の拡大につながるので、対策は万全にしてほしい。