2015/05/08

早くも台風の接近ですか?

日本のはるか南海上を見ると、台風と台風の卵の熱帯低気圧がある。台風シーズンはまだ先であるが、熱帯の海が少しにぎやかである。西側の台風第6号は強い勢力となってフィリピンの東海海上を西北西に進んでおり、フィリピンのルソン島に上陸の可能性も出ている。5日予報によると、その後は次第に進路を北から北東に変え、沖縄の南海上に向かう見込みである。
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台風がルソン島に上陸してから北に向きを変えるか、フィリピンの東海上で北に向きを変えるかで、その後の台風勢力に大きな違いが生ずる。ルソン島東部には山地があり、過去にはこの地形の影響を受けてかなり衰弱した例が多いためで、気象庁が8日9時を初期値とした強度予想を見ると10日9時には予想中心気圧940㍱で非常に強い台風と見ているが、11日9時には予想中心気圧975㍱と弱めているのもルソン島の影響に配慮したものと思われるので、沖縄の南海上に向かう頃の台風勢力についてはもう少し様子を見る必要がある。

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東側の熱帯低気圧は間もなく台風になる予想がされており、雲域がまとまり始めている。これから次第に勢力を強める見込みで、発達しながら台風第6号の後を追うように西北西に進む公算が大きい。こちらについても日本の南海上での転向も考えられるので、注視したい。

ところで、台風が日本列島の九州、四国、本州、北海道及び南西諸島や小笠原諸島などの島嶼部から300km以内を通過した場合に「台風の接近」と定義している。5月初めのこの時期の台風は熱帯の海域を西進するものが多いが、中にはフィリピンの東海上で転向して、日本の南海上を東北東進するものもある。今回の台風6号の進路予想を見ると日本の南海上を東北東進する可能性を示唆している。南西諸島の島々から300km以内を東北東に進むかはまだわからないが、仮に台風の勢力を維持して300km以内に入れば、かなり早い時期の台風の接近となる。

4、5月に日本付近に接近した台風は平年で見ると1年に0.8個となっている。統計資料で4月に日本付近に接近した台風を見ると、1951年以降の64年間で11個あり、5月には33個あった。4月と5月の接近台風数を10年毎でまとめてみると図のように、近年は次第に増加しているように見える。すなわち、台風の発生時期が早まっているともいえ、台風に対する警戒を必要とする期間が長くなっていると考えた方がよい。2011年以降が少ないのは4年分の資料のためで、今後この柱は高くなる可能性が高い。

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ここで、4月に接近した台風11個について詳細を見ると、小笠原諸島近海に接近したものが7個あり、南西諸島に接近したものが4個あった。そして、南西諸島に接近した台風の内2個が東シナ海に進んでいる。この2つの台風の最盛期は共に北緯12度から15度付近で非常に強い勢力まで発達していたが、八重山諸島付近を通過時には中心気圧が995㍱前後まで弱まっていた。弱まったといってもこの時期に東シナ海に台風が進むことは極めて珍しいことである。
東シナ海に進んだ2つの台風は共に北東に進んで九州南部に向かっており、1956年台風第3号は鹿児島県大隅半島に上陸しているが、すぐに熱帯低気圧に衰え6時間後には消滅している。この台風が1951年以降、最も早い上陸台風(1956年4月25日)となっている。もう一つは2003年台風第2号で、鹿児島県の西海上まで北上し、熱帯低気圧に衰え、9時間後には消滅している。このような変化をしたのは、この時期の東シナ海から九州の南海上は台風にとっては冷たい海であったためである。
今年の南西諸島の近海と東シナ海から九州の南海上の海面水温は平年と大きな差はなく、台風にとっては冷たい海であり、東シナ海に進むような経路を取れば勢力が弱まるであろう。

今回取り上げた東シナ海に進んだ2つの台風の経路図と今回の台風第6号の進路予報を重ねてみた。8日9時初期値の予想である。1956年台風第3号はフィレピンのルソン島に上陸してから転向しているが、2003年台風第2号はバシー海峡付近で転向しており、その後は共に八重山諸島を通過して東シナ海に進んでいる。現在、台風第6号は1956年台風第3号に近い経路を進んでおり、勢力はやや弱いものの、予報は同程度まで発達させている。この進路予想では過去の2つの台風の経路に沿うようにしている。台風はまだ、フィリピンの東海上にあり、今後の進路にルソン島がある。沖縄の南海上は北緯23度付近まで海面水温は27℃以上であるが、その北側は冷たく、東シナ海は平年より低めである。これから接近するまでの台風の進路によっては、台風勢力に大きな違いが生ずるので、より新しい台風情報を活用するようお願いしたい。

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参考までに、1956年台風第3号と2003年台風第2号が八重山諸島付近を通過した際の島の観測値を見ると、台風の勢力は最盛期と比較しても衰弱は顕著で、風も雨もさほど激しい値は記録されていなかった。

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最後に、今年は台風の発生数は既に6個であり、明日にも7号が発生する可能性が高い。5月上旬で7個の台風の発生は異常と言えるが、年間を通じて台風の発生数が多くなるとは限らない。4月までに4個以上の台風が発生した年を見ると、多かった年もあれば、昨年のように少なかった年もあった。また、台風の発生数が多いから日本に影響を与える台風数が多くなるといった関連性も見られない。しかし、これから台風シーズンを迎えるので警戒を要する状況であることに変わりはない。

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