2015/05/27

沖縄・奄美地方での変則的な梅雨入り

まだ5月というのに暑い日が続き、雨が欲しいと思うこのごろである。そこで、雨に関連した話題を取り上げる。

沖縄奄美地方での変則的な梅雨入り_1
今年の梅雨入りは平年よりかなり遅くなり、5月18日に奄美地方が梅雨入りし、1日遅れて沖縄地方が19日に梅雨に入った。梅雨入り前後の衛星画像で見た前線の動きを示す。
これらの地方の梅雨入りの平年は沖縄地方が5月9日で、奄美地方は一歩遅れて5月11日である。今年はこれが逆転した変則的な梅雨入りであったが、過去にも2006年など何回かあった。これをもってこれから梅雨入りとなるその他の地方でも変則的な梅雨を迎える、とまでは言えないが気になるところである。

一般的な梅雨入りは、5月前半に沖縄方面で前線の活動が活発化し、その後、次第に前線の活動域が北上する。と言っても順調に北上するのではなく、前線上を低気圧が通過するごとに南北へ変動を繰り返しながらの北上である。
5月末から6月初めに九州南部が梅雨入りとなり、さらに6月中旬にかけて、東北地方までが梅雨に入り、梅雨本番を迎える。

既に5月も末であり、これから日本付近を低気圧が通過するたびに、梅雨前線が南北への変動を繰り返して、何回目かの低気圧の通過時には九州方面から梅雨入りが発表されるであろう。

ここでは沖縄・奄美地方の梅雨入り前後の状況についてみることにする。梅雨の現象は季節の変わり目として捉えるものなので、日々の変動で見るのではなく数日から1週間程度で現れる天気変化を捉えて、それを基に梅雨の入り・明けを決めている。このため、気象庁の発表する梅雨入りに関する情報で「〇〇地方は5月19日ごろ梅雨入りしたと見られます。」と断定的な表現となっていない。
今回は、沖縄・奄美地方において1週間分を平均した気象状況に特徴的な変化があったか見る。用いた資料は気象庁HPの過去の地域平均気象データ検索から取得したものを編集した。
対象としたのは沖縄地方、奄美地方と九州南部地方で、それぞれの地方管内にある各気象官署の観測値を平均したものである。

沖縄奄美地方での変則的な梅雨入り_2


梅雨入りした沖縄・奄美地方では、梅雨入り前は日照時間が多く、ほとんど雨の無い状況から一転して日照時間が減り、降水量は平年を大きく上回った。反対に九州南部地方は雨続きが一転して、日照時間が増え、降水量も平年の半分以下になっている。図に示した日付は7日間の中日を指している。20日とあるのは17日~23日の期間を表している。沖縄地方の日照時間を見ると梅雨入り日の4日前(12日~19日の7日間合計)の日照時間が最多となっており、翌日から減少に転じている。この期間の晴天が一変して20日から曇雨天となったための変化と見ることができる。奄美地方も同様な傾向を示しているが、沖縄地方ほどのはっきりとした変化ではなく、雲の多い日も含んでいたと見られる。降水量を見ると、沖縄・奄美地方と九州南部地方では、梅雨入り日を境に正反対のパターンを示している。九州南部地方は平年の2~3倍近い雨が降っていたが、奄美地方の梅雨入り後は平年を下回っている。一方の沖縄・奄美地方は梅雨入り前は雨が少ない傾向が続いていたが、梅雨入り後は平年の倍近い雨が降っている。
これは、今回の梅雨入りは、九州付近から南下した前線が停滞して梅雨入りとなったので、梅雨入り前は沖縄・奄美地方は太平洋高気圧圏内に入って晴天高温が続き、九州は前線の影響を受けて曇雨天が続いていたことを示している。

沖縄奄美地方での変則的な梅雨入り_3


梅雨入り前後の日々の天気図を並べてみると、梅雨入り前の15日に東シナ海方面が九州南部に前線がかかってから、17日に一時奄美地方北部まで南下したが、18日まではほぼ九州南部に留まっていた。この間、沖縄地方は南海上の太平洋高気圧の張り出し圏内に入っていた。ところが、19日には前線が南下し奄美地方にかかり、20日には沖縄地方まで南下して、その後は沖縄地方に停滞を続けている。

この日々の天気図で前線の位置を追えば前線位置の変化を読み取ることができるが、これを沖縄地方が梅雨入りした20日の天気図上にまとめてみることにした。15日からの日々の前線位置を重ねた図を下に示す。図中に点線で示したのは梅雨入り前の前線の位置で、青太線は前日の奄美地方が梅雨入りした時の前線の位置を示した。梅雨入り後の日々の前線位置は実線で示した。25日まで示したが、現状では梅雨前線が北上の気配は見られない。

沖縄奄美地方での変則的な梅雨入り_4


天気図で見てお分かりのように、今年の梅雨入りが変則的だったのは、この地方の梅雨入りが、前線が北上したのではなく、九州南部に停滞していた前線が南下したタイミングであったためである。すなわち、梅雨入り前に南の高気圧が強まり、沖縄・奄美地方方面を覆っていた状況から戻り梅雨となった形での梅雨入りであった。太平洋高気圧の勢力が強かったことを裏付けるように、5月12日には台風第6号が南西諸島沿いを北東に進み、20日は台風第7号が父島付近を通過しており、これが早い時期での台風接近とも関係しているようだ。

このところの高温続きの日々と沖縄・奄美地方の梅雨入りの状況を見ると、今年の季節変化は変調気味であると見ている方も多いのではないか。
気象庁は5月25日に既に梅雨入りしている沖縄・奄美地方に対して、「5月30日頃からの1週間は、気温が平年よりかなり高くなる確率が30%以上と見込まれます。」として「異常天候早期警戒情報」を発表した。梅雨はどこに行くのだろう。前線が北上して九州方面が梅雨の状況を示すのではないかと、23日発表の九州北部と南部の1か月予報(5月23日~6月22日)を見ると、「期間前半は天気は数日の周期で変わるでしょう。期間の後半は、平年に比べ曇りや雨の日が少ないでしょう。」とあり、梅雨の季節が近いことを示す表現となっていない。その他の方も同様な傾向を予想している。また、25日に発表した3か月予報によると「向こう3か月の降水量は、前線や低気圧の影響を受けやすく、全国的に平年並か多いでしょう。」とあり、月別の予想では、「6月は、東日本太平洋側と西日本では、前線や低気圧の影響を受けにくく、平年に比べ曇りや雨の日が少ないでしょう。沖縄・奄美では、前線や低気圧の影響を受けやすく、平年に比べ曇りや雨の日が多いでしょう。」とあり、「7月は東・西日本では、前線や低気圧の影響を受けやすく、平年に比べ曇りや雨の日が多いでしょう。沖縄・奄美では、平年と同様に晴れの日が多いでしょう。」とある。
これは、東・西日本の梅雨入りが遅いと言っているように見える。今後の季節予報には注視して頂きたい。