2014/06/23

防災さきもりRailways

日本列島の南の海上に延びる活発な前線と低気圧の影響で、20日(金)からこの週末にかけて、西日本から東北にかけての広い範囲で大気の状態が不安定になり、特に九州の南部では断続的に激しい雨が降りました。

各所で断続的に1時間に50ミリを超えるほどの激しい雨が降り、鹿児島県の多いところでは降り始めからの雨量が既に300ミリを超えたところも出ています。

鹿児島市の最近30年間の1年間の平均降水量は2265.7ミリ、6月の月間降水量の平均は452.3ミリですから、300ミリ超えと言うと、6月1ヶ月分に近い雨が、そして、年間に降る雨の量の15%近い雨が降り始めからの僅か3日間で降ったということです。

このようなこれまでに集中的に激しく降った雨により土中の水分量が高まり、地盤が緩み、土砂災害の危険性が非常に高くなっている地域が幾つもあります。また、既に土砂災害が発生したところも何ヵ所もあるようです。

全国的なニュースになったところで言えば、21日午前11時すぎ、鹿児島県指宿市のJR指宿枕崎線で、2両編成の観光列車「指宿のたまて箱」の1両目が、およそ10メートルにわたって線路を覆っていた土砂や木に乗り上げて脱線しました。各種報道によりますと、当時列車には乗員と乗客合わせて47人が乗っていて、このうち乗客13人、乗員2人が負傷したとのことです。

この列車は午前10時57分に指宿駅を出発して、鹿児島中央駅に向かっていたということですが、JR九州の記者会見によると、午前7時20分に指宿市内の駅で1時間に30ミリの雨を観測し、雨量が速度規制の基準に達したため、今回の脱線現場を含む前之浜駅と指宿駅の間で一時、時速25キロの徐行運転を行っていましたが、その後、注意が必要な箇所の巡回が終わった午前10時10分にこの速度規制を解除し、事故当時は通常の運転を行っていたということです。また、規制を解除する前に注意が必要な箇所の巡回はしたものの、今回の事故が起きた場所は、巡回の対象になっていなかったということのようです。

気象庁の観測によると、事故があった鹿児島県の薩摩半島では20日夜から雨が降り始め、21日朝からは断続的に激しい雨が降っていました。現場に近い指宿市では、午前8時前までの1時間に49.5ミリの激しい雨を観測し、午前11時までの12時間の雨量が100ミリ近くに達していました。

今回の事故を受けて国土交通省は、全国の鉄道会社などに対し、基準を大幅に超える大雨が降った場合は、状況に応じた適切な運転規制を行って安全確保を図るよう指示しました。さらに、路線の状況を踏まえて、必要に応じて運転規制の基準を見直すことや、会社で設置した雨量計の観測値に加え、気象庁などの情報を活用して、雨の状況の把握や監視体制の充実を図ることを求めています。

今回のJR九州様の事故と同じような事故が2年前の2012年9月24日に、首都圏を走る京浜急行電鉄様で発生しました。京浜急行電鉄の京成高砂駅発三浦海岸駅行き8両編成の特急電車が、横須賀市の追浜駅~京急田浦駅間で発生した土砂崩れにより線路内に堆積した土砂に乗り上げて、1両目から3両目までが脱線。列車には乗客約700名、乗務員2名が乗車しており、このうち乗客55名及び運転士が負傷しました。

この事故は発生から3日目の9月27日午前7時過ぎにおよそ55時間ぶりに復旧したのですが、まさにその復旧の直後の午前10時過ぎに京浜急行電鉄様から突然「運転規制および巡回強化を実施するための判断に活用するため、気象庁の『降水ナウキャスト』などの降雨レーダーを用いた情報を活用した新たな気象情報システムを新たに導入したいのだが…」というお電話を頂戴しました。京浜急行電鉄様は弊社の株主様ではあるのですが、それまでお取り引きがいっさいなかったので、これには驚きました。

話をお聞きすると、弊社が地方自治体の防災向けにそれまで独自に(秘かに)研究開発を進めていた仕組みがあらかた使えそうだったことから、ご要望を早期にしかも確実に実現することが可能であると判断したのと、京浜急行電鉄様という大事な大事な株主様の1社からのご依頼でもありましたので、二つ返事でお引き受けしました。

①降水レーダーの観測値を基に、1時間先までの降雨域の移り変わりと降水強度(雨の降り方)を予測する降水ナウキャスト情報の活用

②気象庁が降雨レーダーの観測データを基に、雨量計を設置していない箇所でも1kmメッシュで雨量を推定して提供される“解析雨量”の活用

③土壌内に含まれる水分量の推定(予測を含む)から、土砂災害の発生リスクを数値として提供する“土壌雨量指数”の活用

④上記①~③の機能を用いたコンピュータによる自動監視機能の実現

など、京浜急行電鉄様から提示された機能要件は、ちょうど弊社が地方自治体の防災向けに開発していた仕組みで実現しようとしていた機能とほとんど同じでした。

この時は、京浜急行電鉄を毎日ご利用なさる何万人、何十万人という乗客の皆様方に1日も早く安心と安全をご提供しなければならない…という京浜急行電鉄様の物凄く熱い熱意が我々のほうにもヒシヒシと伝わってきましたので、弊社も京浜急行電鉄様と一緒になって頑張らせていただきました。不眠不休という表現はちょっと大袈裟ですが、まぁ~それに限りなく近い感じで独自のサーバーの立ち上げなどの準備を進め、その結果、9月27日にお話をいただいてから僅か6日、また、事故発生から僅か9日で核となる機能のテスト運用を開始することができました。

地方自治体の防災向けに開発していた仕組みは核(コア)となる部分が既にあらかた完成して試験運用を行っている最中でしたので、既に実際に動いている仕組みをベースに開発したのと、クラウドコンピューティング技術を使っているからこその芸当ではありました。

このようにして、まず、核となる部分の運用を出来るだけ早期に開始し、次にそれをベースに、鉄道事業者様(京浜急行電鉄様)の実際の運用方法や特有のニーズをお聞きして、仕組みとしてまとめ直すことにしました。それにより完成したのが、弊社の鉄道事業者向け気象・防災情報提供サービス『防災さきもりRailways』です。

導入事例
サービス紹介:防災さきもりRailways
  
このサービスの導入、そして運用開始により、京浜急行電鉄様では運転規制や巡回強化を実施するための判断材料として降水予測情報や土砂災害危険度予測情報の活用が可能となった…やに伺っています。

と言うことで、今回の大雨による土砂災害でJR九州様の観光列車が脱線し、怪我人が多数出たという報道を目にした時、事前に弊社の『防災さきもりRailways』を導入していただいていたら、なんとか救えたのではないか…と思ってしまいました。

弊社の広報活動や営業活動の力不足を反省しています。

日本列島の約7割は山岳地帯で構成されており、平野の部分は国土全体の僅か1割に過ぎません。従って、トンネルや高架を多用する近年作られた新幹線や高速道路はともかく、50年も100年も前に作られたものがほとんどである日本の鉄道の在来線や一般の道路は山を縫うようにした経路で都市と都市とを結んでいるものがほとんどです。このため、土砂災害の危険性は極めて高いと言えます。さらに、最近の降雨の特徴として、“ゲリラ豪雨”と一般に呼ばれている突然その場で積乱雲が発生して、激しく雨が降りだしたり、激しい雨の雨域がある一定の場所にしばらく止まっていたり…ということが挙げられ、その土砂災害の危険性をさらに高めている…という傾向にあります。

このような状況においては、国土交通省様が全国の鉄道事業者様に出された指示文書に書かれておりますように、「会社で設置した雨量計の観測値に加え、気象庁などの情報を活用して、雨の状況の把握や監視体制の充実を図ること」といった新たな仕組みの導入が重要になります。既に導入実績があるだけに、弊社の『防災さきもりRailways』、注目していただけそうです。

九州南部では平年より2日遅く、昨年より6日遅い6月2日に梅雨入りが発表され、6月6日までに東北北部までが梅雨入りしたと気象庁から発表があったのですが、その梅雨入り当初は梅雨前線の位置は日本列島の遥か南の海上にあって、その活動も活発なものではなく、厳密な言い方をすれば“梅雨入り”とは言い難い状況ではあったのですが(正しくは“雨季”に入ったとでも言えばいいか…)、ここに来て、梅雨前線の活動が活発になってきて、本格的な梅雨前線と呼べるようなものが形成され、暴れまわられる状況になってきました。

梅雨前線が南下したため、今(23日)現在、九州南部ではいったん雨が弱まっているようですが、上空に寒気が流れ込んでいる影響で、相変わらず全国的に大気の不安定な状態が続いています。さらに今週半ば以降は再び、梅雨前線が北上して西日本や東日本でまとまった雨が降る可能性もあるようです。

大雨による土砂災害が極めて発生しやすい梅雨の本番はこれからです。皆さん、最新の気象情報に常に注意を払うようにしてください。

執筆者

株式会社ハレックス代表取締役社長 越智正昭

株式会社ハレックス
代表取締役社長

越智正昭

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