2014/07/07

気象予報士活用バンク

6月18日の日本経済新聞朝刊に『気象予報士、活躍の場広がらず 20年で9,000人誕生』と題する記事が掲載されました。

天気予報を民間に広げるために始まった気象予報士試験が今年8月で20周年を迎える。これまでの計41回の試験で合格率5.7%の狭き門を突破し、予報士として登録したのは計9,054人。人気資格として定着したが、天気予報を職業としている割合は1割にも満たないとみられ、活躍の場をどう広げるかが課題となっている。……という内容の記事でした。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1700K_X10C14A6CC1000
(日本経済新聞Web)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1700K_X10C14A6CC1000
(日本経済新聞Web)

弊社ハレックスは平成6年からこの気象予報士試験に向けた通信添削形式の「気象予報士通信講座」と、スクール形式の気象予報士試験直前対策のための学習効果の高い「気象予報士通学講座」を運営しています。気象予報士試験と同じ20年の歴史を持ち、9054人の現在の気象予報士のうち、4人に1人は弊社の気象予報士講座の受講生であるという高い実績も持ちます。このことから、気象予報士を目指す人達の間では“老舗の気象予報士講座”として知られていると伺っています。

http://www.halex.co.jp/service/edu/index-ed.html
(気象予報士の資格を取る「気象予報士通信講座」)
http://www.halex.co.jp/service/school/index-sc.html
(高い学習効果「気象予報士通学講座」)

そうした“老舗の気象予報士講座”を運営する弊社ですので、この日本経済新聞の記事で書かれた内容は事業を通してしっかりと認識できていました。(一番認識しやすいところにいるとも言えます。)

このところ講座の受講者数は少しずつ現象傾向にあり、それが気象予報士試験の受験者数の減少と密接に連携していること(ほぼ相関がとれています)、また、中でも20歳~30歳前半の受講者数の減少が著しいこと、これは気象予報士講座の運営をやっているだけに、はっきりと分かっていました(一昨年の試験では弊社の通信講座で学んでいただいた中学校一年生クンが合格してくれましたが…)。

これは、せっかく自分に“投資”して難関の気象予報士試験に合格したとしても、気象予報士として活躍できる場が現時点では極めて限定され、せっかく所得した資格を活かす場がないことが最大の原因だというふうに弊社は考えていました。また、気象予報士の資格を活かす場がないのでは、せっかく弊社の講座を受講して気象予報士の資格を取得していただいた方々に対して、気象情報会社として申し訳ないという思いもありました。(ここが通信教育専業の会社さんとの決定的な違いです。)

だとしたら、弊社のほうで、少しでも気象予報士の資格を活かせる“場”を作ろう…と考え、7年ほど前に始めたのが『気象予報士活用バンク』です。

http://www.halex.co.jp/service/yohoushi-bank/index-yb.html
(気象予報士サポートサービス「気象予報士活用バンク」)

この『気象予報士活用バンク』は、気象予報士の資格をもっと活かして、気象の現場で活躍したいと思われている方、予報技術やキャスター技術を磨きたいと思われている方、資格を活かした様々な活動に参加したいと思われている方などに対して、それぞれのご希望に合った機会をご提供しようとの思いで始めた当社独自の制度です。

これまでにも自社の社員への採用をはじめ、100人近い気象予報士の方々を同業他社の気象情報会社さんへ派遣する等の成果をあげては来ました。しかしながら、これは前にも書きましたが、気象予報業務が民間に開放された、そして気象予報士制度が開始された21年前から、気象情報業界の市場規模が年間約300億円規模のままずっと変わらない現状の中では、業界が必要とする気象予報士も飽和状態に近くなっていて、供給できる仕事(活躍の場)の数にも頭打ちの感が出てきています。

また、一般の方々からすると、気象予報士と言えばテレビに登場するお天気キャスターのことを思い浮かべる方がほとんどだと思われますが、お天気キャスターで活躍できる人の数って極々僅かな極めて狭き門なのです。最近は特に地方の民放ローカル局では経費節減のため、天気予報で気象予報士の解説を求めない局が増えてきたので、その狭き門はますます狭き門になってきています。しかも、テレビの天気予報でお天気の解説をするだけなら(あらかじめ用意された原稿を読むだけなら)、実は気象予報士という資格は必要としないのです。こうなると、テレビ局としては気象に関する知識や分析力とはまったく別の才能のほうに力点を置いてお天気キャスターを選ぶようになるので、気象予報士としてはますます活躍の場がなくなりつつある現状にあります。

気象情報業界がこんな現状にあることから、記事の中でも書かれている「気象予報士の資格を保有している方々のうち、天気予報を職業としている割合は1割にも満たない」…は実感としてよく分かります。私の感覚的なもので言わせていただくと、気象予報士としての収入だけで生活できている人の数は9,054人の1割どころか、せいぜい500人。5%程度のものではないか…とさえ思っています。また、そのうちで、テレビのお天気キャスターとして活躍できている人の数って、そのたま1割の50人程度に過ぎないのではないか…と私は捉えています。

このように、厳しい言い方をすると、気象予報士は日本で一番難関の国家資格でありながら、その資格を活躍できる場があまりにも狭い国家資格であると言えます。

この気象予報士の活躍の場が広がっていない重大な責任の一端は、我々民間気象情報会社にある!…と私は思っています。市場規模がここ20年間、まったく拡大していない(すなわち、市場というものが形成されて以来、まったく成長していない)なんて、他の業界からこの業界にやって来た私にしてみると信じがたいことで、この悲しい現状は、これまで業界が市場規模拡大のための努力を怠ってきたツケがここに来て出てきただけのことではないか…と私は捉えています。もちろん、その業界の中に弊社もいますので、弊社にも責任の一端はあり、猛省をしないといけないと私は思っています。

(私の家から自宅最寄り駅までの通勤路沿いにあるあるお宅の壁面に、「悔い改めよ」という聖書の言葉がデッカク書かれた看板が貼られているのですが、毎朝駅までの道でそれを見ながら、「そうだよな…」と思っています。)

そのことに気付いて5年前に前の会社を卒業させていただいて、ハレックス社の代表取締役社長に専任させていただくようになってから、取り組んだのが弊社ハレックスの事業の定義を根底から書き換えることでした。目指した目標は、ズバリ『気象予報士の活躍の場を広げること』。

ビッグデータ解析処理技術を活用したコア技術(『HalexDream!』にて実用化)を開発してきたのもその目標に向かっての取り組みの第一歩でしたし、単なる情報の提供会社からお客様の課題を解決するためのお手伝いをするソリューションカンパニーへの脱却を目指して事業のスタイルを徐々に変えてきたのもその一環です。(4月に会社のHPを全面的にリニューアルしたのも、その一環です。)

そしてついに今年度から、この『HalexDream!』等のコア技術と『気象予報士活用バンク』をベースとして、気象予報士の活躍の場を広げることに本格的に着手し始めました。「我に秘策あり!」…ってやつです(^^)d

ただ、現時点ではまだこの秘策について、内容を申し上げるわけにはいきません。5年前から朧気ながら思い描いていたシナリオの輪郭が、自社の事業の改革を通して、より明確に描けてきた段階に過ぎず、まだまだ企業秘密です(笑)

この秘策は一民間企業の力だけで実現できるものではなく、既に監督官庁である気象庁様をはじめ、幾つかの官庁や企業様に秘かに(?)ご相談を持ちかけ始めています。

ただ、その秘策の実現に向けては、気象予報士の皆さんご自身にも認識していただきたいことがあります。気象予報士制度が始まって今年で20年になりますが、この20年間で気象予報士を取り巻く環境がガラッと大きく変わったことを認識していただく必要があります。

特に大きく変わったのはICT(情報処理・情報通信技術)です。“気象情報”という言葉は“気象”と“情報”の組み合わせによる言葉です。地球全体の気候変動の影響で“気象”もこの20年間で変化してはいますが、まだまだ「言われてみれば…」といった感じの程度ですが、いっぽうの“情報”のほうは劇的とも言える進化を遂げています。

今から20年前を思い起こしていただくと、当時は今のようにスマートフォンなど影も形もありませんでした。スマートフォンの前の形の携帯電話が広く普及して始めてきたのは2000年代に入ってから、ごく最近のことです。インターネットだって同じです。パソコン(PC)が一般家庭にも普及し、通信回線のディジタル化、さらにはプロードバンド化(高速化)が進んで、インターネットが急速に普及し始めたのは1990年代も後半に入ってきた頃からのことです。

気象業務法が改正されて気象予報業務が民間に開放され、気象予報士制度が始まった1993年当時、人々に情報を広く伝達する有効な手段としてはテレビやラジオ、新聞といったマスメディアと呼ばれる情報媒体しかありませんでした。気象庁から気象予報士や民間気象情報会社に提供される気象データも今のように通信環境が整備されてなかったことから、ファックス等による画像情報が主体でした。そのような環境下で法律が改正され、気象予報士制度が始まったということを、気象予報士さん達も十分に認識しておかないていただかないといけません。

あれから20年という時が経過し、ICTの急速な発展、情報伝達のためのメディアの多様化により、民間気象情報会社や気象予報士に求められる仕事の形は根底から大きく変わってきたと言っても過言ではないと私は思っています。

民間気象情報会社や気象予報士の仕事のあり方をこうしたICTの変化やメディアの多様化という情報通信環境の進展に合わせて対応させ変化させていくことは、NTTデータグループ、NTTグループの唯一の気象情報会社である弊社ハレックスが果たすべき大きな責務であるとさえ私は思っています。

ただ、気象予報業務を民間に開放したこと、気象予報士制度を導入したことの本質的な部分(目的等)、ミッション(社会的役割)は20年前といっさい変わってはいないと私は思っています。むしろ、ICTの発展や情報通信メディアの多様化が進んだことで、むしろ本来の目的がより実現しやすくなってきた…と私は捉えています。すなわち、民間気象情報事業として本来あるべき姿が、やっと実現しやすい時代になってきたということです。

民間気象情報会社、そして気象予報士の果たすべきミッションについては、気象業務法の冒頭の第1条に明確に書かれています。

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気象業務法(1952年6月2日法律第165号)
(目的)
第一条 この法律は、気象業務に関する基本的制度を定めることによつて、気象業務の健全な発達を図り、もつて災害の予防、交通の安全の確保、産業の興隆等公共の福祉の増進に寄与するとともに、気象業務に関する国際的協力を行うことを目的とする。
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民間気象情報会社、そして気象予報士のミッションはこれです。この気象予報業務の民間開放の目的を忘れては絶対にいけません。その上で、自らの事業を通してこの目的を遂行するため、「やるべきこと」、「やらねばならないこと」、「やってはいけないこと」をしっかりと自覚し、社会に貢献するために、自らの“技量”を高める努力を常に怠らないようにしないといけません。

弊社ハレックスはこのような思いで、気象予報士の活躍の場を広げることに努めていきたいと思っています。その内容については、もうちょっとだけお待ちください(^-^)v


【追記】
平成25年度に、気象庁が気象予報士の現況の把握と今後の気象予報士の活動の拡大等に向けた検討の基礎資料とするために、気象予報士の皆様にアンケート調査を行った結果が気象庁HPに公表されています。

http://www.jma.go.jp/jma/kishou/minkan/yohoushi.html#6
(気象庁HPより気象予報士向けページ)

これによると、気象予報士の活躍の場を広げることについては全国の気象予報士の皆さんも熱望されているようなので、弊社が進めている計画をドンドン前倒しの勢いで進めていきたいと思います。

執筆者

株式会社ハレックス前代表取締役社長 越智正昭

株式会社ハレックス
前代表取締役社長

越智正昭

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