2014/08/12

憧れの五能線(その12)…しっかり五能線

この「青池」編成に使用されているハイブリッドシステム車両HB-E300系は、ディーゼルエンジンとリチウムイオン蓄電池を組み合わせ、駆動力に電気モーターを使用しています。発車時には蓄電池に充電された電力を使用し、加速時にはディーゼルエンジンが動作して発電機を動かし、蓄電池の電力と合わせてモーターを回転させます。減速時はモーターを発電機として利用し、ブレーキエネルギーを電気に変換して蓄電池に充電するという“優れもの”です。他の『リゾートしらかみ』編成(他のディーゼルカー)と比較して、燃料消費率や排気中の窒素酸化物(NOx)、駅停車時及び発車時の騒音が低減されています。実際に乗ってみると、確かに静かで快適です。

鰺ヶ沢を出ると列車はしばらくブナをはじめとした広葉樹の林の中を進みます。さすがに世界遺産・白神山地の入り口の地です。さっそく先頭の展望室にこもって“鉄”を楽しみました。しばらく走ると進行方向右手に日本海が見えてきました。ここからが五能線の醍醐味とも言える日本海沿い、海岸線ギリギリを走る区間です。五能線の見どころは多々あるのですが、先ほども書いたように、風景がいいメインのビューポイントは私が今回乗車した鰺ヶ沢~深浦間。ここは進行方向右手(鰺ヶ沢→深浦方向)の車窓にずっと日本海の風景が広がります。

約20分ほど走り、次の停車駅、千畳敷駅に10時19分に到着しました。この列車の千畳敷駅の発車は10時34分。すなわち、15分停車するわけです。この15分の停車時間を利用して、千畳敷という駅名の由来にもなった駅前の海へと続く平坦で広々とした岩場、奇岩が織り成す絶景が美しい「千畳敷」のミニ散歩を楽しむことができます。これもリゾート列車ならではです。ここは太宰治の小説『津軽』にも登場する地で、海岸沿いには海と岩場を背景にして建つ、太宰治の文学碑もあります。津軽はやっぱり太宰治です。

千畳敷1
千畳敷2
千畳敷3
千畳敷4
千畳敷5
千畳敷6
千畳敷7
千畳敷8


散歩に降りた乗客が乗り遅れないように発車の3分前に警笛がなります。1人の乗り遅れもなく、千畳敷駅を10時34分に発車。次の停車駅、深浦に向かいます。

『リゾートしらかみ』は絶景ポイントに来ると速度を落として運転するのですが、この千畳敷~深浦間にもあって、深浦の1駅手前の広戸駅~深浦駅間。ここの奇岩は見応え十分です。車内にカメラのシャッター音が響きます。

車窓1
車窓2
車窓3
車窓4
車窓5



10時58分、深浦駅に到着。私達のツアーは残念ながらここ深浦で五能線『リゾートしらかみ2号』を下車です。深浦駅では先に着いた下りの『リゾートしらかみ1号』「ブナ」編成が待っていました。五能線は単線なので、スレ違い線のある深浦駅は交換駅になっているのです。「青池」と「ブナ」、2つの『リゾートしらかみ』が顔を合わせました。ホームのはずれでは“撮り鉄”とおぼしき若者の一団が三脚付きの一眼レフカメラを構えています。

深浦1
深浦2
深浦3



ここ深浦は、かつては北前船の風待ち湊として栄えたところで、港近くにある「風待ち舘」には1/3の縮尺サイズの北前船や、交易品などが展示されています。また、この深浦一帯は日本海に沈む夕陽の絶景が眺められるスポットが数々あることで知られています。私達が乗った『リゾートしらかみ』は昼間の運行だったので、残念ながらその夕陽を見ることは出来ませんでしたが、いつか是非観に来たいものだと思っちゃいました。

ちなみに、鰺ヶ沢と同様、ここ深浦も大相撲の力士を何人も輩出している土地です。現役では安美錦関が深浦の出身です。先日まで行われていた名古屋場所では東の小結でした(最高位:関脇)。さいたま市中央区の我が家のご近所にある入間川部屋所属力士だった将司関も確か深浦の出身でした。「青森県西津軽郡〇〇町出身」、大相撲のテレビ中継を観ていると、よく耳にする地名です。

今回の旅行では長いプロローグの後の僅か1時間程度の乗車時間でしたが、それなりに五能線を楽しめました。鉄道マニアとしては堪能とまではいきませんでしたが、期待通り、いや期待以上でした。五能線は四季折々、様々な表情を見せてくれますし、特に車窓から眺める日本海に沈む夕陽などは絶景中の絶景と超が付くほど有名なので、また今度別の機会にでもゆっくりと訪れてみたいと思います。

特に冬。今回の五能線は、7月の夏の日本海の穏やかな風景でしたが、これが冬だとまるで感じが違ってくるのでしょうね。冬の日本海と言えば灰色の海。それも黒に近い濃い灰色。そこに雪の積もった白い浜があり、灰色の海と波、波打ち際だけは塗れた砂の色で真っ黒。波が寄せて返すたびその黒い部分が変化して…って感じでモノトーンの不思議な光景になると聞いています。頭の中で想像しただけで、乗りに来たいという衝動に駆られます。

深浦→東能代駅の区間も日本海の景色や白神山地の景色が堪能できるのですが、今回それは観光バスの車窓で楽しむことにしました。五能線と国道101号線はほぼ並行して走っているので、車窓から見える景色の雰囲気だけは観光バスからでも楽しめます。次は冬のシーズンに白と黒のモノトーンの風景の中の五能線に乗りに来たいと思いました。

執筆者

株式会社ハレックス前代表取締役社長 越智正昭

株式会社ハレックス
前代表取締役社長

越智正昭

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