2015/03/06

最後のブルートレイン「北斗星」(その1)

総務省北海道総合通信局様主催の北海道ICTサロンで「ビッグデータ&オープンデータの活用」に関して講演するため、2月23日(月)、24日(火)で札幌に出張してきました。

本音で言えば、今回の札幌への出張では、往復のどちらかで今月定期運行を終了する“最後のブルートレイン”、夜行寝台特急「北斗星」を利用したかったのですが、仕事での出張なのでさすがにそうもいきません。冬の札幌出張は雪のため飛行機でさえも欠航あるいは遅延する恐れが十分にあり、前泊しないといけないくらいですから。特に今回は講演会の講師が私1人だけなので、絶対に私が遅れるわけにはいきませんでしたから(^^;

残念ながら「北斗星」に乗ることはかなわなかったものの、結果として、今回の札幌出張では最後のブルートレイン「北斗星」をそれなりに堪能することができ、しっかりと“鉄分”の補給をすることができました。

まず、初日(23日)。羽田空港から空路北海道入りした私は新千歳空港からJR北海道の「快速エアポート」で札幌入りしたのですが、その「快速エアポート」が札幌駅に到着したのが定刻より数分遅れて17時00分ちょっと過ぎ。窓の外を見ると、隣の3番線のホームには青い車体の客車列車が出発を待って長い編成を横たえるように停まっていました。あっ、あの列車は!(@_@) そうです、上野行きの夜行寝台特急「北斗星」です。札幌駅まで出迎えに来てくれていたNTTデータ北海道の社員の方に「10分だけ待ってて」と連絡を入れ、急いでそのホームに移動しました。ここで「北斗星」に逢えるとは…。予期していなかっただけに嬉しかったですね。

あと20日で定期運行が終了するということで、さすがにホームには多くの鉄道マニアがやってきていて、残り少なくなったブルートレインの勇姿をカメラに収めています。ちょうど夕方の帰宅ラッシュが始まる時間帯で、通勤通学の途中でたまたま札幌駅に来ていた駅利用者達も集まってきてスマホやケータイで写真に収めています。

まずは先頭の機関車のほうに歩いていったのですが、12両の客車の先頭に2両のディーゼル機関車が付く計14両の長大な編成の「北斗星」は4番線ホームを目一杯使って停まっていて、発車までの残り時間が徐々になくなっていきます。

青い「北斗星」専用カラーに塗装された凸型のディーゼル機関車DD51型の重連(2両連結)はまさに“機関車”と言った感じで、いかつい全身からはみなぎる力強さが感じられ、迫力があります。その機関車の先頭には優美な「北斗星」の列車名を示す丸いヘッドマークが誇らしげに掲げられています。超カッコイイ! やはり「北斗星」はこのDD51型の重連に牽引された姿が一番似合います。

先頭の機関車の勇姿を見た後は客車のほうをしばし見学。青いブルートレイン塗装の12両編成(電源車を含め)の24系客車に「北斗星」専用です。看板列車らしく、なかなか豪華な編成です。「北斗星」には最高級のA寝台1人用個室ロイヤル、2人用個室ツインデラックス、B寝台2人用個室デュエット、B寝台1人用個室ソロといった個室のほか、昔ながらのカーテンで仕切られただけの開放2段式B寝台の車両があります。そして、なんと言っても食堂車。最近は新幹線などでも食堂車が連結されていないので、久し振りに食堂車を見ました。なかなか豪華です。こういうところで食事を摂ると、さぞかし美味しく感じられることでしょう。しかし、寄る年波には勝てない…と言うか、塗装を何度も重ね塗りしているところがあり、さすがに車体は老朽化が目立ちます。

発車間際なので、車内には既に多くの乗客が乗り込んでいます。皆さん、人気の列車に乗れたということで嬉しそうな顔をしておられます。羨ましい!

さすがに12両の長い編成なので全ての車両を(外からですが…)見ることはできず、ちょうど編成の真ん中あたりで17時12分発の定刻の発車時間がやって来てしまいました。

発車を知らせる駅の案内放送が流れ、客車のデッキの片開きのドアがプシューと閉まり、先頭の機関車からピョー!という警笛の音が聞こえ、「上野行きの夜行列車」は静かに静かに始発の札幌駅4番線ホームを離れていきました。客車の編成なのでモーター音もエンジン音もなく、静かに静かに加速していきます。聞こえてくるのは車輪がレールの継ぎ目の部分の上を通る時に発するカタンカタンという音ぐらいです(ただし、エンジンで発電機を回し各車両に電力を供給する電源車を除く)。素晴らしい!(^^)d やはり夜汽車の発車はこうでなくてはいけません(^-^)v

この列車がまもなくなくなってしまうのは、なんとしても惜しい感じがしてきます。


写真1

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写真3

写真4
写真5




翌24日、総務省北海道総合通信局様での講演は午後1時からだったので、午前中はフリーにしていただき、午前10時に再度札幌駅を訪れました。前日(23日)は「上野行きの夜行列車」を見送ったのですが、こうなったら「上野発の夜行列車」が終着駅である札幌駅に到着するところを見届けたいという衝動に駆られたからです。

駅の時刻表で確認すると、上野発の下りの寝台特急「北斗星」の札幌駅到着は午前11時15分。講演会の会場は札幌駅からさほど離れていないので、「北斗星」の札幌駅到着を見届けてからでも十分に間に合います。2月とは思えぬくらい暖かかった前日(23日)とは一変、この日(24日)は外はチラチラと小雪が舞っています。さすがにちょっと寒いのですが、やはり北の終着駅は、この時期、こうでなくてはいけません(^^)d

既に朝の通勤通学ラッシュの時間帯は過ぎているのですが、さすがに北の大都会の中心駅、列車が次から次に発着していきます。新千歳空港行きや小樽行きといった札幌市近郊路線の列車が多いのですが、そういう中を広い北海道各地と札幌を結ぶ特急列車が発着します。私がホームで眺めていた約1時間の間にも室蘭からのL特急「すずらん3号」、旭川からのL特急「スーパーカムイ14号」、釧路からの特急「スーパーおおぞら2号」が到着し、旭川行きのL特急「スーパーカムイ11号」、帯広行きの特急「スーパーとかち3号」、函館行きの特急「スーパー北斗8号」が出発していきました。

ちなみに、札幌と北海道各地を結ぶ特急列車はこれらの列車の他にも、札幌~稚内間の「スーパー宗谷」と「サロベツ」、札幌~網走間の「オホーツク」があります。昔はもっといろいろな特急列車や急行列車があったのですが、路線の廃線もあったり、急行列車の廃止・統合もあったりして、かなり整理されてきた感じです。それでも、駅の案内表示で始発列車の行き先や到着列車の始発駅表示を見ていると、旅情が掻き立てられるような地名が次から次に並んでいます(^-^)v

私は今から30年ほど前、前の会社で運輸省(現国土交通省)の航空路レーダー情報処理システムのハードウェア担当をやっていました。課長代理であった私は全国で4つ(札幌、所沢、福岡、那覇)ある運輸省航空交通管制部のうち、札幌と那覇の航空交通管制部のハードウェア工事の現場代理人をやらせていただいていたので、実は札幌にも2~3週間単位で長期出張に訪れていました(所沢と福岡は課長が現場代理人を務めていて、手分けしてほぼ同時進行で工事をやっていました。北と南で気温差があり、体調管理が大変でした)。その時にも暇を見つけては気分転換のため今回と同じように札幌駅には列車の発着を見に何度も訪れていたのですが、その当時とは全然趣が変わり、随分と近代的に変わりました。

昔は函館や旭川、帯広なんて、随分と遠くに感じ、特急列車もキハ80系や、北海道用に設計されたキハ183系といった懐かしい国鉄色を纏ったディーゼル特急列車が主体で、キハ56系を使ったディーゼル急行列車もあって、札幌駅には北海道の各地に向かうそれらの列車がすべてのホームを埋めつくすように並んでいて、それはそれは壮観でした(キハ183系は現在も使われています)。

あれから30年。札幌駅も大きく変わりました。地上駅だったのが近代的な高架駅に生まれ変わり(1990年)、発着する列車の車両も随分と近代的なものに変わりました。国鉄も民営化されてJRとなり、あわせて合理化も進み、また、北海道内の高速道路網の拡充や、空路の開設等により、道内交通手段として鉄道の果たすべき役割も少し小さくなってきているとも思えるものの、札幌駅は今も北の大都会の中心駅として賑わっています。賑わいというと30年前のほうが賑わっていたと思いますが、30年前は道内各地に向かう大きな荷物を持った中長距離の旅客が主体だったように記憶しているのですが、今は札幌市近郊の通勤通学客の姿がほとんどといった感じで、賑わいの種類が大きく変わってきたな…という印象と言えばよろしいのでしょうか。

でも、札幌駅は鉄道マニアにとってなかなか魅力的な駅です。なんと言っても、JR北海道の車両にはなかなか魅力的な車両が揃っていますからね(^^)d

まず、特急に用いられる車両では、785系特急電車とその改良型の789系特急電車(特急「スーパー白鳥」、L特急「スーパーカムイ」&「すずらん」に使用)。非電化区間の多いJR北海道の主力はディーゼルエンジン搭載の特急車両で、キハ261系(特急「スーパー宗谷」&「スーパーとかち」に使用)、キハ281系(特急「スーパー北斗」に使用)、キハ283系(特急「スーパーおおぞら」に使用)といったもカーブの多い区間を高速で走行できるように振り子式の車体傾斜構造を持つ車両がほとんどとなっています。近郊型や通勤型をはじめとした一般型でも、札幌駅を発着する車両は711系、721系、731系、733系、735系といった新しい型の車両ばかりで、30年前とはガラリと一新されています。しかも、JR北海道の車両は同じJRでも本州や九州、四国を走る車両とは異なる個性的な車両ばかりなので、鉄道マニア的にも魅力満載です。

JR北海道の鉄道車両は、冬季の厳しい自然環境に対応するため、国鉄(日本国有鉄道)時代から独自の改造が施されていたり、厳冬期においても性能の余裕が確保された設計による専用形式の導入が行われていて、マニアの間でも「北海道型」と呼ばれる1つのジャンルが確立されているほどです。特に、国鉄末期から民営化後は、より独自性、地域性を打ち出した車両設計が行われ、個性的な車両の登場が続いています。

それらに共通する一番の特徴は、前照灯の多灯化。吹雪による視界不良対策として、全ての先頭車両の前面窓上部分に前照灯の装備が義務付けられていて、それが一番の特徴となっています。さらに、シールや気圧のコントロールによる含水率の低い、いわゆる軽い雪の侵入防止対策、各所に設けられたヒーターや耐雪ブレーキなどの凍結防止対策、また、増解結を容易に行う為の先頭車両貫通構造、それに伴う車体前面の強化と着雪を防ぐ形状を両立させた前頭部のデザインなど、非常に多くの特徴が挙げられます。均一な規格型車両によるOEM化が進む首都圏等の昨今の鉄道車両の中にあっては異色の存在として、鉄道マニアの間でも注目を集めています。

私が見ている時間帯にも、これらJR北海道が誇る個性的な車両の列車が次から次に発着していきました。


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執筆者

株式会社ハレックス前代表取締役社長 越智正昭

株式会社ハレックス
前代表取締役社長

越智正昭

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