2015/03/20

猫が、ドラッカーを学んだら(その2)

5年前に『もしドラ』が一種の社会現象になるくらい大ヒットした時、前の会社の元部下から突然電話があって、「越智さんは『もしドラ』読みましたか? あれだけのベストセラーなので私も買って読んでみたのですが、越智さんがいつもクチにしているような言葉がいっぱい出てきて、懐かしく思って電話してみました」と言われちゃいました。「読んでないよ」と答えると、「是非、読んでみてください。まぁ~、越智さんには参考になるところはないと思いますが…」とのことでした。

実際、その時点で私はまだ『もしドラ』を読んでいませんでした。もちろん物凄いベストセラーになっていることは知っていましたが、自分で買ってまで読もうとは思っていませんでした。しかし、その後、数日して帰宅したところ、リビングのテープルの上に『もしドラ』がチョコンと載っていました。その時も今回の『PRESIDENT NEXT』と同様、娘が買ってきて読んでいたわけです。娘に訊くと、「まもなく読み終えるから」ということでしたので、これ幸い…と娘の読後に借りて読んだわけです。

正直言うと、私は『もしドラ』だけでなく、ドラッカー先生が書かれた元祖『マネジメント』もそれまで読んでいませんでした。

私がドラッカー先生の『マネジメント』を読んだのは、恥ずかしながら高校野球の女子マネージャーより後のこと、すなわち『もしドラ』を読んだ以降のことです(^^; それ以前も、私はピーター・F・ドラッカー先生という著名な経営学者/社会学者がいらっしゃったということは知っていました。その著書を通して多くの企業経営者に多大なる影響を与えた人物であるということも。しかし、『マネジメント』をはじめとしてドラッカー先生の著書をそれまで1冊も読んだことはありませんでした。

私は基本的に理論理屈で企業経営なんてできるわけがない…という考え方を持っている人ですし、経営学者や経営コンサルタントなんてジャンルの人々の言うことをほとんど信じていませんでしたから。まぁ、ほとんどの経営学者や経営コンサルタントの方々は会社の中の仕組みの改善に力点を置いて説明をなさいますが、私は、「会社の中にはコストしかなく、会社の収益の大部分は会社の外にある」…という(営業らしいと言えば営業らしい)考え方を持っていますので、経営に関する根本的な捉え方の部分で噛み合わない部分が多いのです。

ですが、それまでも周囲の先輩や知人からは「越智の考え方や発する言葉はドラッカー先生が『マネジメント』に書いてあることとほとんど同じだ」とか「越智はドラッカー先生の『マネジメント』を実践しようとしている」というようなことをよく聞いていました。私はそんな超高名な先生ほど頭がいいなんて決して思っておりませんでしたので、それまでは「いやいやいや…」なんて言ました。私はただ前の会社で幾多経験させていただいたプロジェクトマネジメントの経験や、弊社ハレックスでの10年以上にわたる企業経営の経験を通して、言ってみれば“実践”で自ら学んだことを自らの言葉でクチにしていただけのことなのですが、どうもそれがドラッカー先生が著書『マネジメント』で書かれていることと似ているそうなんです。

確かに、『もしドラ』を読んでみると、小説の中に出てくるピーター・ドラッカー先生の言葉は私の考え方と極めて共通するものが多く、大いに刺激を受けました。刺激を受けたと言うよりも、共鳴したというほうが正しいでしょうか。また、私の考え方、やり方に自信を深めたと言ったほうがいいのかもしれません。少なくとも間違ってないんだな…ということだけは分かりました。

『もしドラ』を読んだ後で興味が湧き、ピーター・ドラッカー先生の著書『マネジメント』の訳本を読んでみたのですが、確かに私が常々クチにしている言葉が多く書かれていました。

『マネジメント』の中に書かれているピーター・ドラッカー先生の言葉の中から私が共鳴したものを幾つかピックアップして、ご紹介します。


【組織の定義付け】
● あらゆる組織において(中略)努力を実現するためには「我々の事業は何か。何であるべきか」を定義することが不可欠である。

● 「顧客は誰か」という問いこそ、個々の企業の使命を定義するうえで、最も重要な問いである。

……これは、私が言うところの「経営とは、変転する市場や顧客のニーズを見定めて、事業の定義を書き換えること(すなわち、会社を作り変えること)である」に繋がります。私は経営者として、今もこのことばかりを考えています。また、ここ5年ほど私が唱えている弊社の事業運営上の方針、そしてそのスローガンは『メタモルフォーゼ(生物学における変態・変身の意味)』というものですが、この『メタモルフォーゼ』も、この考え方の上に立脚しています。


【マーケティング】
● 真のマーケティングは顧客からスタートする。すなわち、現実、欲求、価値からスタートする。「我々は何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいか」を問う。「我々の製品やサービスにできることはこれである」ではなく、「顧客が価値ありとし、必要とし、求めている満足がこれである」と言う。

……これも、私が常にクチにしている「常にお客様の視点に立て」と同意語だと認識しています。


【イノベーション】
● 企業の第二の機能は、イノベーション、すなわち新しい満足を生み出すことである(第一の機能は上記の【マーケティング】)。経済的な財とサービスを供給するだけでなく、よりよく、より経済的な財とサービスを供給しなければならない。企業そのものはより大きくなる必要はないが、常によりよくならなければならない。

● イノベーションとは科学や技術そのものではなく価値である。組織になかではなく、組織の外にもたらす変化である。

……これも『メタモルフォーゼ』で私が唱えていることそのものです。


【成果と働きがい】
● 仕事には「働きがい」が必要である。マネジメントは、生産的な仕事を通じて、働く人たちに成果を上げさせなければならない。働きがいを与えるには、仕事そのものに責任を持たせなければならない。そのためには、①生産的な仕事、②フィードバック情報、③継続学習が不可欠である。

● 仕事を生産的なものとするためには、四つのものが必要である。すなわち、
①分析である。……仕事に必要な作業と手順と道具を知らなければならない。
②総合である。……作業を集め、プロセスとして編成しなければならない。
③管理である。……仕事のプロセスの中に、方向づけ、質と量、基準と例外についての管理手段を組み込まなければならない。
④道具である。

……これもまさに私が『メタモルフォーゼ』の中で述べている「会社は自己実現のフィールドでなくてはならない」という方向性と同じです。私は会社はそこに集う社員が「働きがい」を感じられる場であるべきだと思っています。そして、そうなった時、我々の活躍のフィールドはもっともっと広がるものと信じています。

さらに、私が常に意識して、社員にもクチを酸っぱくして唱えている【立ち位置と姿勢】に関しても述べられています。


【立ち位置と姿勢】
● 古代の偉大な科学者アルキメデスは「立つ場所を与えてくれれば世界を持ち上げてみせる」と言った。アルキメデスの言う「立つ場所」が、集中すべき分野である。集中することによって、初めて世界を持ち上げることができる。従って、集中の目標は、基本中の基本とも言うべき重大な意思決定である。

● 真摯さを絶対視してはじめて、まともな組織と言える。(中略)無知や無能、態度の悪さや頼りなさには寛大たりうる。だが、真摯さの欠如は許さない。彼らはそのような者をマネジャーに選ぶことを許さない。

……もう思わずニンマリです。“真摯さ”、マネジャーに求められる最大の資質って、まさにこれですね。


繰り返しになりますが、私はピーター・F・ドラッカー先生の著書をこれまで一冊も読んだことはありませんでした。あくまでも前の会社でのプロジェクトマネジメントの経験と、当社ハレックスの経営に10年間以上携わってきた実践経験の中で、自分自身で感じ、気付いたことに基づいて会社の経営の舵取りを行っています。そんな私の基本的な考え方と同じことを有名なピーター・F・ドラッカー先生も唱えていらっしゃることを知って、大いに勇気付けられました。少なくとも経営の方向性としては間違ってはいない…と。

皆さんもぜひこの『もしドラ』、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」や雑誌『PRESIDENT NEXT』の「猫が、ドラッカーを学んだら。」を読まれてはいかがでしょうか。どちらも読みやすいので、ホント2時間もかからない時間で一気に読めちゃいます。

「今日ほどドラッカーが使える時代はない!」…、私もそう思います。お薦めです。

執筆者

株式会社ハレックス代表取締役社長 越智正昭

株式会社ハレックス
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越智正昭

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