2015/06/15

社会人として生きる指針の発見

5月23日、24日と四国の香川県高松市で開催された第35回日本登山医学会学術大会のシンポジウムで講演をさせていただいた後、高速バスで愛媛県松山市に移動しました。翌25日(月)に松山市で弊社ハレックスも参画している『坂の上のクラウドコンソーシアム』の定期打合せがあり、それに顔を出すためですが、同時に、今年大学4年生になった姪っこから、「おいちゃん、今、就活やってるんだけど、就職に関して相談にのって…」との依頼があり、その依頼に応えるためでもありました。

私は2人兄弟で、6歳年下の弟がいたのですが、今から17年前にその弟を急性敗血症という病気で亡くしています。弟には1女1男の2人の子供がいて、弟が亡くなった時、上の女の子(すなわち、私にとって姪)が4歳、下の男の子(同じく甥)は生後3ヶ月でした。その上の女の子からの依頼でした。

弟が亡くなった時、4歳だった姪っこも現在は21歳。国立高知大学農学部林学科の4年生になっています(ちなみに、生後3ヶ月だった甥っこも、現在は高校3年生。大学受験を控えて猛勉強中です)。

可愛がっていた弟の愛娘、愛息子ということで、私は“父親代わり”を自認して、これまで姪と甥に接してきたつもりなのですが、就職を控えた今回の姪っこからの相談の依頼は特別でした。「おいちゃんに相談にのってほしいんだけど…」という姪からの電話を受けた時、メチャメチャ嬉しかったし、まさに“父親代わり”というものが問われるな…と気合いが入っちゃいました。気合いという点では、大変に申し訳ないことに、今回の出張のメインイベントであった日本登山医学会学術大会のシンポジウムでの講演以上のものがありました。

若い人向けの進路相談ということでは、実は3年前の2012年11月21日に、中学・高校時代からの友人のOクンから依頼されて、彼が勤務する埼玉県立K高校で、1年生の生徒さん達を前にして講演をさせていただいたことがあります。その時のことを思い出して、姪っこからの相談を受けるにあたっても、その講演の時に使った資料をプリントアウトして、持ち帰りました。

この資料、姪っこからの相談を受けるにあたって、なかなか有効でした。資料だけでなく、その講演をするにあたって、事前にいろいろと考えたこと、それが全て活きた…という感じです。姪っ子からは「おいちゃんに相談して本当によかった。社会人になるということ、仕事をするということのイメージだけでなく、おいちゃんに対するイメージがガラッと変わった」という嬉しい反応が返ってきました。大いに参考になったようです。そして“父親代わり”という大役を本当の意味で果たせたようです。

翌25日の朝、弟が眠る墓に墓参りに行って、「ちゃんとオマエの代わりをやっといたからな。〇〇〇は大丈夫だ。ホント素直で頑張り屋さんで、可愛いいい娘にそだっているよ」と報告をしておきました。

と言うわけで、その3年前の2012年11月21日に、埼玉県立K高校で行った私の講演のことについて、思い出し出し、書かせていただきます。

K高校は埼玉県北部にある県立の中堅高校。埼玉県内の公立高校では初の総合学科に転換し、総合選択制、単位制の高等学校として、その利点を生かしながら、現在まで多くの先進的な取組みを行っている学校です。

当時、Oクン、いやO先生は1年生の学年主任をなさっていました。そのO先生から同級会の席上で「キャリア教育の一環として、1年生全員の前で社会人になるための心構えのようなものを話してくれないか」との依頼を受け、中学高校の計4年間同じクラスで学び、かつ剣道部仲間でもあった旧友のOクンの力に少しでもなれれば…という気持ちで、「よっしゃ!、いいよ」…てな感じで二つ返事でお引き受けしたのでした。

国立埼玉大学工学部の非常勤講師を足掛け8年ほどやらせていただき、大学4年生の前で喋ることにはまぁ~慣れてはいるつもりではあったのですが、今回の対象は高校1年生。つい最近まで義務教育の中学生だった生徒さん達です。聴いていただく方々の年齢が一気に6年も下がりますから、どうなりますことやら…って感じでしたが、ちょっとした自分自身への“チャレンジ”のようなところもあってお引き受けしました。こんなこと、やりたいと思ってもなかなか出来ることではありませんのでね。

O先生から聞いた話によると、ここ10年、埼玉県の高校教育界では、栃木、茨城、群馬といった隣接する北関東の地域と比べて進学実績の低さが問題になっているのだそうです。(埼玉県民としては「こりゃあいかん!」です、はい。)

学校組織や、教員の資質(特に教科指導法)を問題と捉え、いろいろなところで改善が試みられているのだそうですが、根本的なところで、埼玉県の地理的な位置からくるのであろう県民性(中途半端に都会で、中途半端に田舎。従って埼玉県民は総じて“なんとかなるわ”の“のんびりムード”が多い…など)があって、なかなか明確な成果として表れてきていないのだそうです。

そういう背景があって、K高校は、中堅校として埼玉県から「新学力グレードアップ事業推進校」として指定されたのだそうです(2011年~13年)。その目的は、センター試験の受ける生徒を増やし、実績を出すこと。しかし、K高校は残念ながら10校の指定校のうち、同校は10番目の成績なんだそうです。数学の入試問題を解くなんて、一部の生徒だけ。多くの生徒は早々とあきらめて睡眠に入り、定期テストの成績が良い生徒も、実力テストの結果は散々なんだとか。

解決策の一つは、授業から入試問題につながる道筋を示唆すること。ですが、これも、ただ単にこうだろ…と教えただけでは、その時に暗記するだけで終わってしまい、まったく応用が利かない。さりげなく誘導し、自分で気付かせることが必要なのですが、なかなかこれも先生方が期待しているほどうまく進んでいないのだとか。数学の教師であるO先生が今取り組んでいるのは、冬休みの課題「2次関数の復習問題」作りだそうで、これがわかればセンター入試の過去問題が解けるように、内容・難易度・問題配列を工夫しているそうです。

そんな生ぬるい環境にいて、周りに流されやすい感じの生徒さん達ですが、同時に、将来を夢見る純粋さも持ち合わせている生徒さん達です。目覚めて気付きさえすれば伸びる筈だ…とO先生。彼等の真摯な潜在意識を目覚めさせるきっかけが欲しいということで外部の社会人を呼んでの講演会を開催することにしたのだそうです。先生方が日ごろから口を酸っぱくして言い続けていることであっても、全く外部の方から提示されるとそれが気付きに繋がる場合が多いのだそうです。

で、その年の9月から始まった『スペシャリストに聞く』という企画で、社会人の方9人(保護者7人、卒業生2人)に話をして貰ったそうです。そして、そのトリ(最後)が私の講演なんだとか。こりゃあ責任重大です。

O先生から私に与えられた講演のテーマが、ブログの題名にある『社会人として生きる指針の発見』。なんとも“重い”テーマをいただいたものです(笑)

O先生からは「このテーマに沿って、越智の思っていることを何でもいいからズバッと喋ってくれ! 生徒達の目がバッチリ覚めるように!」と依頼されましたが、未来ある若者達を前にして、そんな乱暴なこともできません。慣れないテーマだけにさすがに何を喋ろうか、依頼を受けてから週末のたびに考えさせていただきました。自分自身のこれまでを振り返ったり、「社会人とは…」という本質的なことを考えさせられたり、K高校の教育方針を私なりに分析してみたり…、それはそれで私にとっても大変に有意義な時間でした。

で、それをPowerPointスライドにまとめ、O先生に提出。O先生のご意見ご要望も取り入れながら、最終版を作成し、11月の講演に臨みました。


社会人としての生きる指針の発見(配布資料)

私の講演の主な内容は以下の通りです。

①社会人とは
……社会人は、ある程度責任ある仕事(職)を持ち、家庭の生活を支え、現実的な思考をしている姿が求められる。

②仕事選びの基本
……時には「賃金を得ること」を念頭において社会的責任が伴うことに注意し、時には「賃金を得ること」を二の次に考えて「賃金なしでもやってみたい仕事は何か」という視点で考えることが、より自分に合った仕事を見つけるうえで重要なこと。

③学生と社会人との違いあれこれ
……時間軸の違い。評価される尺度の違い。問題解決型と課題発見&解決型の違い等々

④プロになるための条件
……すべての仕事は「すべきこと」「できること」「したいこと」の微妙なバランスの上に成り立っている。

⑤お仕事のABC
……A:当たり前のことを、B:ぼんやりしないで、C:ちゃんとやれ!。これって受験勉強でも言えることです。

⑥日々反省、日々勉強
……失敗の中からこそ学ぶべきものは多い。“後悔”は過去を変えようとする虚しい努力。“反省”は未来を変えようとする前向きな努力。

⑦社会人として成功するには
……いろいろあるが、最後は“人間力”の勝負。

⑧人間力とは
……社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力。

⑨大学で学ぶということ
……一気に見えてくる“世界”が広がる。“教えてもらう勉強”から“自ら学ぶ勉強”への大事な移行期間。

⑩高校や大学で是非やってほしいこと
……文化祭や大学祭の実行委員。人間力を鍛える準備。私は高校時代に修学旅行委員をやったことが、今に繋がる一番の勉強だったと思っている。

[推薦図書]『もしドラ』……もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら

こんな感じで、特に“責任”という言葉を随所に使う内容でやらせていただきました。

さすがに高校1年生には少し難しい内容かな…と思えましたので、事前に「生徒がどこまでついて来れるか不安だ」…とO先生に質問のメールを入れたところ、O先生からは

『ついてこられなくても良いと思います。もう15年近く前になりますが、IT関係の有名人(名前は忘れてしまいました)が、“私は、膨大な情報を短時間の講演の中で供給する。受講者は集中してそれを受け取らなければならない”と発言した新聞記事を目にしました。内容は良く覚えていませんが、私にはそのように引っかかりました。それまで、分かりやすい授業を目指していましたが、時には、プレッシャーを掛けて大量なデータを処理する訓練も、同時に必要であると気付き、現在の授業に生かしています。これは、釈迦に説法でしたね』

というメールを貰い、よっしっ!、ならばそういう気持ちでやってやろう!…と腹が据わりました。特に高校1年生だと意識せず、いつもの感じでやってやろうと。

会場はK高校の体育館。授業の合間のわずか10分の休憩時間内に、総勢約300名の1年生の全生徒がゾロゾロと入ってきます。校長先生の開会の挨拶のあと、O先生から講師(私)の紹介があって、壇上に上がった時は、さすがに一瞬「おぉっ!」ってビビリました(苦笑)。

講演はそれまでも何度か頼まれて経験済みですし、前の会社の新入社員向け講話などで600名ほどを前にして90分間喋るということは何度も経験済みのことなのですが、それって全て社会人の方々が対象の講演。大学の講義ももっていましたが、それも大学生。300名を超える詰襟(男子)、ブレザー(女子)の“制服姿”の生徒さん達を前にすると、慣れていなので、さすがに少しビビりましたね。揃いの“制服”姿ってのは妙に威圧感(?)のようなものがあって、壇上に上って居並ぶ制服姿の生徒さん達を見回すと、慣れていないので一瞬怯みます(笑)。でもそこは大人。彼等に気付かれないように笑顔で誤魔化し…、講演開始。

咄嗟にアドリブで「こんにちはぁ~!」と切り出し、会場の返答の声がちょっと小さかったので、「声がちいさいなぁ~、もう一度、こんにちはぁ~!」 今度は少し大きい声。「うん、挨拶は大切です。社会人の基本です。いつも明るく笑顔で!(^^)d」

続いて、O先生と私が中学3年生から高校3年間という4年間、同じクラスだったという話から、高校時代の友人は一生モノだという話も、また自慢の同級生ということでその年の夏にTBS系列で放映されたドラマ『サマーレスキュー~天空の診療所~』で時任三郎さんが演じた倉木先生のモデルになった同級生のことも(笑) 高校時代のエピソードも少し。少し怪訝な顔をしている生徒さん達もいましたが、概ねこれで掴みは十分でした。

講演の基本は前述の通りなのですが、聴いていただく方々の顔を見ながらアドリブで脱線するのが私の講演(講義)スタイル。もともと原稿なんてありません。事前の練習もいっさいなし。一応、事前に用意したPowerPointスライドに基づいて話はしますが、この時もフルアドリブでした。実際の経験に基づいていろいろと語らせていただきました。

私がエンジニアになろうと目指したのは、中学校1年生の時、ある雑誌の付録で付いていた鉱石ラジオを組み立てたところ、奇跡的にイヤホンの向こうから微かに音が聴こえてきたから。たしか、耳慣れない外国の言葉で、流れてきた音楽がロシアの楽曲だったので、モスクワ放送を受信したのかもしれません。電源など一切付いていないのに、この鉱石ラジオが鳴るなんて…と驚き、これは面白い!…と思ったわけです。その後、お小遣いを貯めて、トランジスタラジオなどを組み立てたりもしましたね。そして、将来は大学に進んで電子工学をもっと詳しく学び、電子工学のエンジニアになろうと思い立ちました。なので、大学は迷わず工学部電子工学科に進みました。あの時、組み立てた鉱石ラジオから音が鳴らなかったら、もしかしたら、今とはまったく別の人生を送っていたかもしれません……なぁ~んてことも喋りました。

私の講演を聴いていただいて、少しでも今後の参考にしていただけたら幸いなのですが、O先生によると、最近の高校生は、どんなに素晴らしい講演会を聞いてもその感動をどのように現実の自分に適用させていくのかが苦手なのだとか。これは、受動的な勉強しかしてこなかった生徒が多いからだとO先生は分析しています。中学時代、ほとんどの生徒が塾に通って(あるいは通わされて)いたので、基本的に“受け身”の子が多いからだとか。

これは最近の若い会社員も同じで、偏差値の高い大学を出てきても、いちいちいろいろと細かくやり方を具体的に指示しないと動けない“受け身”の社員が以前より急激に増えてきているように私も感じています。

そういうことを事前に聞いていたので、講演では最後に「高校や大学で是非やってほしいこと」という項目を話したり、各項目でも私自身や我が家の2人の子供達の実体験の話(子供達の話は、私のアドバイスの話)などをアドリブで交えて話させていただきました。

壇上から会場を見ると、真っ直ぐの真剣な目で聴いて熱心にメモをとってくれている生徒さん達がいて、嬉しく思っちゃいましたね。こういう目をした高校1年生がいてくれてる限り、この国は安泰だろう…と思いました。ずっとこの目を失わないでいて欲しいと願う限りです。

この講演会はホント楽しかったです。こういう機会を頂戴した同級生のO先生に感謝感謝です。こんな機会、自分でやりたいと思っても、なかなかやれるものではありませんからね。講演終了後は、いただいた謝礼金をもとに、O先生と2人で駅前の居酒屋で反省会をやっちゃいました(^^)d

この時の私の素直な気持ちは、「あ~ぁ、終わっちゃった……」でした。しばらくは何を話そうか…とか、こう喋ったらどんな反応を示してくれるだろうか…とか、いろいろイメージして楽しんでいたところがあったので、終わってしまったことで、ちょっと寂しい気がしました。終了後、こんな気持ちになれたことはなかなかないことなので、この講演のことは今でもよく覚えています。

O先生からは期待以上だったというご評価をいただきました。

後日、聴いていただいた生徒さん達からの質問事項がメールで届き、それに1つ1つ回答を返したのですが、それも楽しかったですね。あの世代の人達は、今こんなことを不安に思っているんだ…なんてことが判って(^_^)

この日私が話した内容、少しは生徒さん達の参考になったみたいです。今すぐには分からなくても、将来、社会人になった時に「確か高校時代に聴いた話で、こんなこと言ってた人がいたな…」と思い出していただければ幸いだな…と思っています。

執筆者

株式会社ハレックス代表取締役社長 越智正昭

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