2015/06/29

世界の異常気象

6月25日に次のような報道が流れていました。

『パキスタン 熱波による死者700人に』
40℃を超える熱波が続いているパキスタン南部では、熱中症などによる死者の数がさらに増えて、およそ700人に上り、市民からは電力不足が原因だとして政府への不満が出始めています。
パキスタン最大の都市、南部のカラチでは、先週末から連日、気温が40℃を超える熱波に見舞われ、熱中症などで体調を崩し、死亡する人が増え続けています。地元州政府の保健当局によりますと、死者の数はさらに増えて、およそ700人に上り、およそ5,000人が入院しているということです。
州政府は、緊急事態だとして各病院に医療態勢の拡充を指示しているほか、パキスタン軍も、カラチ市内各地に仮設の医療施設を設けて対応を急いでいます。イスラム教徒が多数を占めるパキスタンでは断食月「ラマダン」に入っていて、多くの人が日中の飲食を絶っていることに加え、電力不足のため、たびたび停電が起き、空調や水道などが思うように使えないことが事態を悪化させているとみられています。
市民からは、電力不足を放置してきた政府に責任があるとの声が出始めていて、野党各党も近く、政府への抗議活動を行うことを決めました。事態が早期に改善されなければ、今後、政府への批判が高まることも予想されます。
(NHKニュース&スポーツ 06/24 06:46)


いっぽう、パキスタンの隣国のインドでも、先月末に熱波による深刻な事態になっているという報道が流れています。

『インド 熱波による死者2,100人超に』
熱波で多数の死者が出ているインドでは、30日までに熱中症や脱水症状による死者が2,100人を超え、気象当局は1日まで熱波が続くとみて警戒を呼びかけています。
1年で最も暑い時期を迎えているインドでは、この1週間余りほぼ全土で最高気温が40度を上回る熱波に見舞われていて、南部のアンドラプラデシュ州やテランガナ州、それに東部のオディシャ州で、多数の死者が出ています。これらの州政府によりますと30日までの2週間余りで、熱中症や脱水症状による2,100人以上の死亡が確認されたということです。
死亡した人の多くは猛烈な暑さのなか、屋外で働いていた日雇いの労働者などで、貧しい人たちを中心に被害が拡大しています。インド政府によりますと、これまでも暑さによる死者が年間で1,000人以上に上った年はありましたが、ことしは短期間で2,000人を上回る異例の事態となっています。
死者が多数に上っている原因について、環境問題に取り組む地元のNGOなどは、例年に比べ気温が急激に上昇したため、体が適応できず、被害の拡大につながった可能性があると指摘しています。インドの気象当局は、南部や東部を中心に広い範囲で1日まで熱波が続くとみて外出を控えるなど引き続き警戒を呼びかけています。
(NHKニュース&スポーツ 05/31 04:03)


気象庁のHPには世界各地の異常気象や気象災害の概要を定期的にまとめた情報を掲載していて、私も定期的にその情報をチェックしています。

「世界の週ごとの異常気象」 (気象庁HP)

また、下図は弊社の気象情報ビッグデータ可視化ツール『WeatherView2』で気象庁の全球データの可視化を行ったものです。これは地上気温と偏西風の流れを重ね合わせてみたものです。これを見ると、インド西部からパキスタン、アラビア半島にかけての地域が気温40℃以上の紫色になっているのが分かります。しかもアラビア半島の付け根のイラク南部に強い勢力の高気圧があって、この高気圧がアラビア半島の砂漠の熱風を次々と送り込んでいるような感じです。これは酷い! この状態はもうしばらく続きそうなので、気掛かりです。

世界の異常気象1


また、日本列島に関しても、6月25日には以下のような報道が流れていました。

『鹿児島県で非常に激しい雨 土砂災害に警戒を』
前線の影響で九州南部を中心に大気の状態が不安定になり、鹿児島県では断続的に非常に激しい雨が降っています。九州では26日にかけて非常に激しい雨が降るおそれがあり、気象庁は土砂災害などに警戒するよう呼びかけています。
気象庁によりますと、九州南部付近に停滞している前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、鹿児島県には発達した雨雲がかかり、断続的に非常に激しい雨が降っています。午後4時までの1時間には鹿児島県が設置した雨量計で種子島の西之表市で62ミリの非常に激しい雨を観測したほか、気象庁のレーダーによる解析では西之表市付近でおよそ90ミリの猛烈な雨が降ったとみられます。また、午後6時半までの1時間には種子島の中種子町で33.5ミリの激しい雨を観測しました。種子島ではこの24時間に降った雨量が300ミリを超えているところがあります。
鹿児島県では、これまでの雨で土砂災害の危険性が非常に高くなっているとして「土砂災害警戒情報」が発表されている地域があります。
前線は次第に北上する見込みで、九州南部では26日にかけて、九州北部や山口県では26日未明以降、雷を伴って局地的に1時間に70ミリの非常に激しい雨が降るおそれがあります。26日夕方までに降る雨の量はいずれも多いところで、九州北部や山口県で250ミリ、九州南部で180ミリと予想され、その後、27日にかけてさらに雨量が増える見込みです。
また、26日から27日にかけては、西日本や東日本の広い範囲で大気の状態が不安定になり、局地的に激しい雷雨となるおそれがあります。
鹿児島県では今月に入っての雨量が多いところで1,500ミリを超えるなど、各地で平年の6月1か月の雨量の3倍前後に達し、地盤が非常に緩んでいるところがあります。
気象庁は土砂災害や低い土地の浸水、川の増水に警戒するとともに、落雷や突風にも十分注意するよう呼びかけています。
(NHKニュース&スポーツ 06/25 18:46)


梅雨前線が停滞して、鹿児島県では今月に入っての雨量が多いところで1,500ミリを超えるなど、各地で平年の6月1か月の2倍から3倍の雨量となっているようです。下図はこの日の弊社の「気象レーダー・降水ナウキャスト解析システム」の画面のキャプチャー画像です。14時の気象レーダー画像では種子島を1時間換算で50ミリを超えるほどの非常に激しい雨が襲っている様子が見て取れます。また、その日の夜に種子島中部の累積雨量を調べたところ、24時間の累積雨量が300ミリを超え、400ミリ近くになっています。土砂災害や低い土地の浸水、川の増水が気掛かりです。大きな被害を出さなければいいのですが…。

(ちなみに、弊社の「気象レーダー・降水ナウキャスト解析システム」では、気象庁の気象レーダー・降水ナウキャスト情報を活用して、任意の地点の雨の降り方の状態を見ることができ、さらに、その機能を利用して、降水によるリスクの“自動監視”までをも実現しています。)

世界の異常気象2
世界の異常気象3

世界の異常気象4




日本の九州や山口県地方が大雨に見舞われている一方で、MERS(中東呼吸器症候群)の陰に隠れて何故かまったくと言っていいほど日本ではマスコミ報道がなされておりませんが、隣国の韓国や北朝鮮では、反対に、今年に入って雨量が極端に少なく、農作物に大きな被害が出るなど、深刻な事態になっているようです。

『韓国で干ばつ深刻 一部地域では観測史上最低の降水量』(朝鮮日報日本語版 2015/06/16 11:42)

『北朝鮮で100年に1度の大干ばつ』(レコードチャイナ2015/06/20 14:26)

パキスタンの熱波のところでご紹介した『WeatherView2』の全球データの可視画像をご覧になるとお分かりいただけるように、現在、偏西風は日本列島上空を通過するようなコースに流れていて、この関係で梅雨前線が九州南部に停滞したままになっています。日本海には高気圧がほとんど停滞したまま居座っていて、乾いた空気を朝鮮半島に送り込んでいます。これじゃあ……。それにしても、MERSに干ばつ、朝鮮半島は大変な事態ですね。特に干ばつは農業に深刻な被害をもたらすだけに、これからボディーブローのように、徐々にダメージがきいてきます。

実際、別の日の朝鮮日報の報道によると、干ばつと高温が続き、韓国では農作物の供給量が大幅に減少。それに伴い白菜や大根など野菜の値段が急騰してきているのだそうです。6月初めには白菜の平均価格が前年同月比176.3%増にまで達しているそうです。

韓国人の食卓になくてはならない韓国人のソウルフードとも言える“キムチ”の主たる材料である白菜の価格が前年同月比176.3%増というのは凄いことですね。前年同月比“176.3%”ではなくて“176.3%増”、すなわち、約2.8倍ってことですから、異常な高騰。庶民の台所を直撃!…という感じですね。“キムチ”が一躍高級料理の仲間入りをしたような感じで、庶民のクチに入りにくくなっているのではないでしょうか(^_^;)。白菜の栽培には水分が豊富に必要ですし、そもそも高温に弱い作物なので、今後夏が本格化していく中で、さらに深刻な状況になっていくのではないでしょうか。キムチがない韓国料理は、韓国料理とは言えませんからねぇ~。

韓国気象庁によると、今年は韓国で気象観測が始まった1973年以降で降水量が最も少ない状況とのことのようです。私が上記の記事を読んでから既に半月近い時間が経過していますが、その間、朝鮮半島である程度まとまった雨が降ったようには把握しておりませんので、被害はさらに深刻な状況になっているのではないか…と思われます。

また、首都ソウルの主な水源である昭陽江ダムの水位は、1973年の竣工以来、最低にまで落ちこんでおり、既に緊急給水、給水制限が行われている地域もあるようです。2018年の冬季五輪開催予定地の平昌では9日、なんと“雨乞い”の儀式まで行われたのだそうです(2018年の冬季五輪の準備にも深刻な影響が出るのではないかと思われます)。

さらに、別の日の朝鮮日報の報道によると、大学教授による朝鮮半島が大干ばつの時期に入ったという分析まで出ています。釜慶大学環境大気学科のビョン・フェリョン教授の調査によると、朝鮮半島の干ばつには5つの周期があり。そのうち、今年は1番大きな周期(124年)と2番目に大きな周期(38年)がぶつかる年なんだとか。124年前の1882年に始まった大干ばつは1910年に収束するまで30年近くも続いたのだそうです。(ちなみに、1910年と言うと、500年以上続いた李氏朝鮮が滅亡して、朝鮮半島が日本に併合された(日韓併合の)年です。)

いろいろな意味で、お隣の朝鮮半島の情勢が大いに気になるところです。

このように、大気の流れは地球規模で起きているので、日本列島の上空や近海といった狭い範囲だけを見て気象の予測はできません。気象の世界も「グローバル・ワイド」なんです(^^)d