2015/08/21

広島大規模土砂災害から1年

局地的な集中豪雨による大規模な土石流が発生し、山すその住宅地で75人もの方が犠牲となった広島市の大規模な土砂災害の発生から、昨日(20日)、早くも1年が経過しました。

1年前の8月20日、広島市の安佐南区周辺では午前2時からの2時間で200ミリを超える集中豪雨に見舞われ、166ヶ所で土石流や崖崩れが発生し、土砂災害としては平成に入ってから最悪の75人が犠牲になりました。広島市によりますと、土砂災害で被災した人は4,357世帯、1万638人に上り、このうち公営住宅やアパートなど元の家を離れて暮らす人は、発生から1年が経過した今年8月19日の時点でも、830世帯、1,794人に上っているということのようです。

この大都市広島を襲った大規模な土砂災害に関しましては、このハレックス社オフィシャルブログ『志事人ブログ』の場でも、1年前に取り上げさせていただいておりますので、改めてそちらのほうもお読みいただければと思います。

『おちゃめ日記』 今度は大都市広島で悲劇が… 
『成介日記』 広島で悲惨な土砂災害発生 

私にとりましては、広島は大学生時代の4年間を過ごした思い出の地でもありますし、この1年前の痛ましい大規模土砂災害は相当に思うところがあります。ましてや、自然の脅威の来襲から人々の生命と財産をお守りすることを最大のミッション(社会的存在意義)としている民間気象情報会社の社長を務めさせていただいているので、なおのことです。この災害で犠牲になられた方々のご供養のためにも、こうした災害を2度と繰り返さないようにするための努力が我々には使命として求められていると思っています。

これは以前にもこの『おちゃめ日記』の場で書かせていただいたことですが、『災害』とは“災い”が“害”になる…と書きます。“災い”にはいろいろとありますが、私達気象情報会社が向き合わないといけない“災い”は気象や地象、海象といった自然現象がもたらす様々な脅威のことです。しかし、こうした自然の脅威も人々の生命や財産になんら被害をもたらせなければ『災害』とは呼びません。人が誰も住んでいないようなサハラ砂漠のど真ん中でマグニチュード9.0の地震が起きても、それを『災害』とは言いません。

『災害』とは、「自然の脅威」と「都市(人が生活をしているところの意味)の脆弱性」が合わさってはじめて『害』、すなわち『災害』となるわけです。そしてその『都市の脆弱性』には地形や土壌、都市開発の状況などが大きく関係してきます。例えば、同じくらいの量の大雨が降っても、地形や土壌、都市開発の状況等、すなわちその地域の特性によって、顕在化してくる“害”が異なってきます。あるところでは河川氾濫による浸水、急傾斜地での土砂災害、またあるところでは地すべり、土石流、深層崩壊等、またあるところでは内水氾濫、低地への浸水など様々です。

今の日本社会はこの「都市の脆弱性」が急激に高まって危機的状況になりつつあると私は捉えています。

大都市部においては、都市化による住宅密集による火災被害の拡大、造成宅地における地震に際しての液状化・崩落等による被災の拡大が随所で見られるようになりました。いっぽう、地方、山間部においては“高齢化”が災害被害の拡大の一因になっているように思えます。第一次産業の担い手の不足により森林等のメンテナンスが行き届かなくなって、本来自然環境に備わっていた“防災力”のようなものが弱まっていることに加え、高齢化が進み住民相互の助け合いにも支障をきたすような状態になってきているということです。

私達民間気象情報会社も、今、日本社会が置かれているそうした社会的課題も視野に入れながら、自然の脅威の来襲を知らせる、すなわち、判断や行動のトリガーとなる情報の提供を、常に心掛けていかねばならないと考えます。

下記は、1年前に起きた広島の大規模土砂災害を引き起こした局地的な集中豪雨の状況を、気象庁の降水ナウキャクト情報をもとに弊社のシステムを使って再現したものです。この再現デモの左側の絵はそれぞれの時間で予測した1時間先までの降雨の状況、右側の絵はその時間のほぼ実況に近い降雨の状況を示しています。

広島豪雨検証デモ 

この再現デモを見ますと、既に午前0時の段階で安佐南区の西側に位置する佐伯区や安佐南区の西部では猛烈な雨が降っているのがお分かりいただけるかと思います。その後、猛烈な雨域は徐々に西に移動し、午前1時の段階では土砂災害の発生した安佐南区緑井付近に1時間以内にその猛烈な雨域が襲ってくることが予測されていました。このため、広島地方気象台は前日の19日21時26分に広島市に大雨洪水警報を出し、その後、20日午前1時15分には広島市などで土砂災害の起きる危険が高まっているとして、土砂災害警戒情報を発表していました。さらに、午前3時半までの1時間に広島市安佐北区付近でおよそ120ミリ、安佐北区上原で114ミリの猛烈な雨が降ったとして、午前3時49分に「記録的短時間大雨情報」を発表し、災害の危険が迫っているとして安全を確保するよう呼びかけていました。それでも、この悲劇は起きました。

そこには何かが不足していると私達は考えました。気象庁さんをはじめ、我々民間気象情報会社もこれまでは雨が何ミリふりそうだ、とか、台風が何時くらいに接近しそうだといった、言ってみれば“災い”に関する情報の提供が主体だったようなところがありました。いっぽうで、お客様が知りたいのはそうした“災い”の情報だけにとどまらず、その“災い”の来襲によりどんな“害”が起きそうなのかという「想定されるリスク」の情報、さらには「危険回避のための代替手段」を推奨するようなコンサルテーション(行動を起こすために背中を押してくれるような情報)ではないかということを、私達もお客様を回るうちに行きつきました。

そこで、考えたのが、『気象防災アナリスト』という新しい職種の創出というものでした。この『気象防災アナリスト』は、平時から都市の脆弱性を可視化し、様々な自然の脅威の来襲に対して想定されるリスクを評価し、有事の際にはその地域の特徴に応じた被害想定のコンサルティングが出来る人財のことです。この『気象防災アナリスト』は、最低限の知識として想定される自然事象に関する正しい知識と経験を有していることが求められることから、気象予報士の活用を大前提としています。その上で、災害救助法などの法律知識や、行政組織の業務に関する知識、その地域の地形や開発の状況から来る危険箇所に関する知識など、幅広い知識が求められます。加えて、気象ビッグデータの解析処理(ICTの活用)による迫り来るリスクの“見逃し防止”の仕組みの整備も重要となります。

災害は災いが害になると書く1
災害は災いが害になると書く2


これまで誰もアプローチしてこなかったことだけに一筋縄ではいかないことではありますが、そういうことに気付いた以上、弊社ハレックスは『気象防災アナリスト』の創出に一歩一歩確実に進んでいきたいと思っています。それが気象を生業(なりわい)としている私達民間気象情報会社の使命であると、私は思っています。

『気象防災アナリスト』構想に関しては、弊社清水顧問がお書きになっている『老兵日記』にいろいろと書かせていただいておりますので、是非そちらをご覧ください。

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執筆者

株式会社ハレックス代表取締役社長 越智正昭

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