2015/09/28

津波の発生メカニズム

日本時間の17日午前7時54分頃、南米のチリの沖合を震源とするマグニチュード8.3の巨大地震が発生しました。この地震により津波が発生し、ハワイにある太平洋津波警報センターによると、震源に近いチリ沿岸のコキンボで4.80メートルの津波を観測したほか、震源から約1万キロ以上離れたハワイでも、約15時間後の日本時間17日午後11時過ぎに津波が到達し、ハワイ島のヒロで93センチ、マウイ島のカフルイで66センチの津波を観測しました。

日本にも一夜明けた翌18日の朝から津波が到達し、岩手県久慈港では午前9時38分に高さ80センチの津波を観測しました。また、北海道えりも町では午前10時8分に50センチ、茨城県大洗港で午前10時59分に40センチの津波を観測しました。さらに、北海道の広尾町十勝港、青森県八戸港、岩手県大船渡港、岩手県釜石港、宮城県の石巻市鮎川、仙台港、福島県相馬港、伊豆諸島八丈島の八重根、小笠原諸島の父島、それに和歌山県串本町でそれぞれ高さ30センチの津波を観測しました。このほか、北海道から九州にかけての太平洋沿岸の広い範囲と、沖縄・奄美の各地で高さ20センチから微弱な津波を観測しています。

気象庁は18日午前3時に、北海道から九州にかけての太平洋沿岸と、沖縄・奄美、伊豆諸島と小笠原諸島、青森県日本海沿岸、大分県の豊後水道沿岸と瀬戸内海沿岸、愛媛県宇和海沿岸、それに鹿児島県西部に津波注意報を発表しましたが、18日午後4時40分にすべて解除されました。

チリで発生した巨大地震による津波と言うと、1960年(昭和35年) 5月24日早朝に来襲したチリ津波を思い出します。1960年のチリ津波では東北地方や沖縄地方で4メートル以上の津波が来襲し、北海道から沖縄までの太平洋沿岸の広い一帯で、各地に大きな被害を与えました。日本近海を震源とする地震を原因とする「近地津波」に比べ、日本列島から遠く離れた巨大地震を原因とする「遠地津波」は体感する地震がなく、その時は完全な不意打ちのような状態で日本列島を襲ったわけです。

その後、気象庁は国際的な情報交流をはじめ津波予報の精度向上や迅速化に取り組み、今回も津波の第1波が到達する約4時間前の午前3時に津波注意報を発表したわけです。到達する津波の高さは最大1メートルという想定が出されたので大いに心配したのですが、実際に到達が観測された津波は最大で80センチだったようですので、よかったよかったと思っています。

それにしても、茨城県や栃木県、宮城県などを襲った記録的豪雨、東京湾を震源とした地震、阿蘇山の噴火に続いては津波ですか…。ホントいろいろな自然の脅威がこのところ続けざまに来襲しています。

この津波ですが、いったいどのくらいの速度で伝わってくるか、ご存知ですか?

今回の津波で北海道えりも町で第1波と思われる津波が到達したのが午前7時34分。高さ40センチの津波でした。その後、宮城県の釜石港で午前7時59分に高さ30センチ、小笠原諸島の父島で午前8時38分に高さ30センチ、岩手県久慈港では午前8時38分に高さ70センチの津波の第1波と思われる津波を観測しました。

南米のチリの沖合を震源とするマグニチュード8.3の巨大地震が発生したのが、日本時間の17日午前7時54分頃のことですから、約24時間で太平洋を横断して津波がやって来たということになります。これは考えてみると凄いことです。南米のチリと日本列島の間は約18,000kmも離れています。その超長距離を24時間で到達したとすると、津波が伝搬する速度は単純計算で時速750kmということになります。これはジェット旅客機に匹敵するくらいの速さです。これって凄いことだと思いませんか?

こうした遠地で発生した巨大地震による津波の場合、よく「海上を航行している船舶は津波に襲われることはないのか?」って質問を受けるのですが、まったく問題はありません。洋上の海面ではほとんど津波が船の下を通過したことが分かりません。反対に、津波が来ることが分かった場合には、船は沖合いの洋上に避難させるくらいなんです。

池に石を投げ込んだ時のことを思い出してほしいのですが、石が投げ込んまれたところには大きな波が立つものの、その波が波紋を描きながら広がるにつれ、徐々に波は減衰され、波高は小さくなっていきます。しかも、そういう波の伝搬速度は極めて遅く、時速750kmには遥かに及びません。

では、津波を起こす地震波はいったい海のどこを伝わっていくのでしょうか。それは海の水深の深いところではないかと推測されています。

地震波を含め振動は振動する物体が何もなければ伝搬することはありません。音も振動の伝搬で伝わります。耳で音が聞こえるということは、空気が音の波、音波で振動しているためです。その空気中を伝搬してきた音波が耳の鼓膜を振動させ、ヒトはそれを音として認識するのです。ですが、この音波という振動、真空中では伝わりません。物質には気体と液体、固体という状態があり、その状態によって、振動が伝わる特性は異なってきます。気体や液体では基本的に縦波(伝搬方向と振動方向が同一の波)のみが伝わり、固体では縦波と横波(伝搬方向と振動方向が直角の波)や捻り波や表面波なども伝搬します。

また、伝搬する物質の状態によって伝搬速度は著しく異なります。例えば、音波では、気体(空気)中の音の伝搬速度は約340m/s、液体(真水)では約1,530m/s、固体(鉄)では約5,000m/sと大きく異なります。また、気体中では振動は減衰しやすく、固体ではさほど減衰することなく効率よく遠くまで伝搬されます。

海の水深の深いところは高い水圧がかかり、液体でありながらあたかも固体であるかのようにギチギチに固まったような状態になります。地震波はこの水深の深いギチギチに固まったような状態のところを伝搬してくるのです。ですからジェット旅客機に匹敵するくらいの速さで地震波は伝搬されてくるわけです。

そして、この地震波は陸地が近付いてくると伝搬方向が徐々に上方を向き、海面を持ち上げるように働きます。しかも陸地に近づくにつれて(水深が浅くなるにつれて)、水圧が下がるため液体の粘性から地震波の伝搬する速度が下がり、後から来る波が前の津波に追いつき、波高がさらに高くなります。これが遠地で発生した地震による津波の発生メカニズムです。

しかも、太平洋を渡ってくる地震波はハワイなど途中の沿岸で反射・散乱を繰り返しながら伝搬されてきますので、伝搬速度も含め波は複雑に変化します。最初の第1波が到達した後も、後続波が次々と日本列島に来襲してきます。必ずしも第1波が一番大きいというわけではないのです。

なので、津波の第1波の到達予想時間は予想されても、現時点ではその高さなどについてはなかなか正確な想定が難しいのが実状と言えます。

気象庁HPでは、2007年(平成19年)8月16日にペルーで発生した地震 による津波のアニメーションを見ることができます。日本から遠く離れたペルーから太平洋を横断し、20時間以上もの時間をかけて日本へ到達している様子がわかります。ハワイなど途中の沿岸で反射・散乱を繰り返しながら、波が複雑に変化しています。最初の波が到達した後も、後続波がつぎつぎと日本に来襲する様子も見えます。是非、ご覧ください。

気象庁HP「津波発生と伝播のしくみ」

防災は自然の事象を正しく理解するところから始まる…と、私は思います。

執筆者

株式会社ハレックス代表取締役社長 越智正昭

株式会社ハレックス
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越智正昭

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