2015/10/14

北のカナリアたちに逢いに最北限の島へ(その8)

旅行3日目(9月7日)、朝、目覚めると、雲一つない見事な快晴で、キャンプ場からは利尻山の山頂が、ハッキリクッキリ見えました。あれあれ…(笑)。この日は鴛泊フェリーターミナルから船に乗って礼文島に渡ります。ついに映画『北のカナリアたち』の舞台にもなった最北の島・礼文島に足を踏み入れます。

キャンプ場の朝

利尻島の鴛泊港と礼文島の香深(かふか)港の間は、この時期(5月21日~9月30日)、ハートランドフェリーが1日2便(往復)のフェリーを運航しています(冬期の11月1日~翌年の3月31日までは1日1往復に減便されます)。利尻島鴛泊港9時25分発と13時05分発。礼文島香深港13時20分発と16時05分発の2便ずつです。なので、利尻島から礼文島に日帰りで行こうとすると、鴛泊港9時25分発の便に乗って礼文島に渡り、香深港16時05分発の便に乗って利尻島に戻って来なくてはいけません。鴛泊港と香深港の間の距離は約19km、所要時間は40分なので、礼文島の滞在時間は6時間。実質的に行動ができるのは5時間ちょっとといった感じです。

この限られた僅かな時間の中で、私と妻の2人はレンタカーを借りて、礼文島最北端にあるスコトン岬や澄海岬、そして映画『北のカナリアたち』のロケの舞台となった岬の小学校(分校)を訪ねたいと思っています。いっぽう、ハレックス山の会の連中5名は、標高490メートルの礼文岳登頂を目指します。もちろん、礼文岳の登山口である内路(ないろ)までは、私がレンタカーでピストン輸送するつもりです。

礼文島に向かうハートランドフェリーは鴛泊フェリーターミナルを9時25分に出るので、この日の朝は比較的ゆっくりすることができました。7時に目覚め、身支度を整えてから8時にキャンプ場をレンタカーで出発。キャンプ場から鴛泊フェリーターミナルまでは近いので、2往復のピストン輸送をしても、さほど時間はかかりません。鴛泊フェリーターミナル前の佐藤食堂というところで朝食。美味しそうだったので、私は朝から海鮮ラーメンを頼んじゃいました。この海鮮ラーメンもなかなかの絶品です。特に、麺の上に具の1つとして乗っかっていたギンナンダケという海藻には驚きました。出てきた時と、少し時間が経った時とでは、食感がまるで違い、二度美味しいって感じなんです。とにかくこの北の島の食べ物は、何を食べても美味しくいただけます。おやっ、朝から豪勢にウニの載った海鮮丼を食べている人もいらっしゃいます(笑)

海鮮ラーメン

海鮮丼


出港の時間が近づいてきたので、チケット(乗船券)を買ってフェリーに乗り込みました。乗り込んだのはハートランドフェリーが運航するフェリー「ボレアース宗谷」。フェリーターミナルで入手した時刻表によると、この船の全長は95.7m、総トン数は3,578トンという比較的大型のフェリーボートです。旅客定員は夏期632名、夏期以外500名で、車輌搭載能力は8トントラック21台、乗用車55台。航海速力は19.7ノットです。ハートランドフェリーではこの「ボレアース宗谷」の同型船である「フィルイース宗谷」と「サイプリア宗谷」と合わせて3隻体制で稚内港をベースとして利尻島・礼文島航路を運航しています(このほかに奥尻島航路に総トン数2,248トンの「アヴローラおくしり」を投入しているようです)。

フェリー1

時刻表を読み解くと、この日の「ボレアース宗谷」は、

 ①朝の7時15分に稚内港を出港して8時55分に鴛泊港(利尻島)に到着
   ↓
 ②次いで9時25分に鴛泊港を出港して香深港(礼文島)に10時05分に到着
   ↓
 ③10時25分に香深港に出港して11時05分に沓形港(利尻島)に到着
 (5月21日~9月30日までの夏期シーズンのみ、礼文島の香深港と利尻島の沓形港の間の航路が開設されています)
   ↓
 ④11時25分に沓形港を出港して12時05分に香深港に到着
   ↓
 ⑤12時30分に香深港を出港して14時25分に稚内港に到着
   ↓
 ⑥15時30分に稚内港を出港して17時25分に香深港に到着
   ↓
 ⑦17時50分に香深港を出港して19時45分に稚内港に到着

…という7航海をこの日1日で行われているようです。(時刻表を眺めながらこういう想像をするのは、鉄道マニアならではです(^^)v )

この時刻表を見て驚くのは、折り返しに要する時間の短さです。この運航スケジュールを守ろうとすると、最短20分間の折り返し時間の中で、最大600名の乗客の下船・乗船、さらには最大50台以上の自動車の搬出と搬入を行わなければならないわけです。よっぽど訓練を積んだスタッフ達が手際よくこれらの作業を行わないと、この運航スケジュールを守ることができません。そんなことに関心しながら船の中を眺めていました。

おやぁ~、乗船口付近にとても興味を引く旅行代理店が主催する旅行ツアーのポスターが貼られていました。「稚内から一番近いヨーロッパ サハリン定期航路5時間30分の船旅」ですか…。確かに樺太(サハリン)はロシアですし(北緯50度以南の南樺太もロシアが実効支配しているので、領土問題は残っていますが、ここではロシアに組み入れているのでしょう)、ロシアは一般的にヨーロッパに属する国になっているので、このポスターの「稚内から一番近いヨーロッパ」というキャッチコピーも、まんざら間違いではありません。なるほどなぁ~、ここは北方における国境の島なんだ…ということを、改めて思っちゃいました。

フェリー2

我々一行を乗せた礼文島・香深港行きの「ボレアース宗谷」は、定刻9時25分に鴛泊港フェリーターミナルの岸壁(バース)を静かに離れ、出港しました。出港してまもなく、ボォ~!っという大きな汽笛を鳴らします。「いってきまぁ~す!」と利尻島に言ってるような感じです。その後、狭い鴛泊港の港内でクルリと180度船体の向きを変える回頭を行い、外洋(日本海:正しくは礼文水道)に出ていきます。

フェリー3

この日の利尻島近海も爽やかに晴れ、風もほとんどなくて海も穏やかだったので、私達一行は客室1階Bデッキの後部にある甲板ベンチ席に腰を下ろしました。こんな気持ちいい航海が楽しめる時に、客室の中に閉じ籠っているのはもったいないですからね。

後部甲部ベンチ席からは徐々に遠ざかっていく利尻島の姿がしっかり見えます。もちろん雄大な利尻山(利尻富士)の姿も。前述のようにこの日の利尻地方は爽やかに晴れて、空には雲もほとんどありません。昨日は山頂あたりにだけずっと濃く白い雲がかかっていたのですが、この日はそれもなく、山頂までの全貌がハッキリと見えます。山の会の連中の中には、「昨日ではなく、今日登りたかった」と残念そうにクチにする者もいます。気持ちは十分に分かりますが、仕方ないですね。そもそも山って(自然って)、なかなか人間の思い通りにはならないものです(^^)d

フェリー6

それにしても、このハートランドフェリーの「ボレアース宗谷」という船、進んだ後の海面に残る白い航跡がほとんど横に広がりません。瀬戸内海で見慣れているフェリーなどではもっと航跡が横に広がっている印象があるのですが、それとはちょっと航跡の形が異なるんです。

鴛泊港に停泊している時に「ボレアース宗谷」の船首部分を横から見たのですが、さすがに日本海と言う外洋を航海する船です、船首喫水線下に「バルバス・バウ」と呼ばれる大きな球状の突起物が取り付けられていました。「バルバス・バウ」とは、船の造波抵抗を打ち消すために、喫水線下の船首に設けた球状の突起物のことで、プラモデルで戦艦大和を作ったことのある方なら、すぐにお分かりいただけると思います。

船が進む時、船首で水面を掻き分けて進むことになるので、当然そこに波が生じます。この波は引き波と呼ばれ、引き波を生み出すためのエネルギー損失は船が推進する時の抵抗と見做すことができます。この抵抗のことを造波抵抗と呼び、この造波抵抗を小さくすることは、航行速度を高め、燃費を改善するための重要な要素となります。この造波抵抗を小さくために考案されたのが「バルバス・バウ」で、今では軍艦をはじめ、外洋を航海する大型の旅客船で多く使われています。瀬戸内海を航行するような比較的船体の小さいフェリーでは「バルバス・バウ」を取り付けた船はほとんどなく、その小型フェリーの航跡を見慣れている私にとっては、「ボレアース宗谷」の作りだす航跡は新鮮に思えました。後部甲板から船が進んだ後に残る航跡を眺めながら、そんなことを思っていました。

この日の日本海はとても穏やかで、快適な船旅です。この日は穏やかな日本海も冬期の日本海北部は厳寒で暴風雪が吹き荒れ、海は大荒れの状態が続きます。そういう状態の中でも、ハートランドフェリーの利尻・礼文航路は両島の島民の生命線とも言える極めて重要な交通インフラなので、多少の時化(しけ)では欠航しないのだそうです。朝食を摂った鴛泊フェリーターミナル前の佐藤食堂のおかみさんの言葉によると、波の高さが4メートルくらいなら欠航はしないのだとか。そういう海が大荒れの時でも、フェリーは大きく船体を傾けながら、鴛泊港に入ってくる…とおっしゃっていました。凄い!

進行方向後方に利尻島、前方に礼文島を見ながらフェリーは幅19kmの礼文水道を礼文島に向けて進んでいきます。徐々に利尻島の姿が小さく、礼文島の姿が大きくなってきいます。隣同士の島なのですが、横から見た島の形はまるで違います。利尻島が利尻山を中心にした高い島なのに比べ、礼文島はさほど標高は高くない、平べったい感じの島です。

フェリー4

フェリー6


鴛泊港を出港して40分、ハートランドフェリーの「ボレアース宗谷」は定刻通りの10時05分、香深港のフェリーバース(岸壁)にピタリと一発で、それもほとんど揺れを感じることもなく、静かに静かに、あたかもレールの上に載っているかのように接岸しました。鴛泊港で見た狭い港内での180度の回頭といい、この接岸といい、ハートランドフェリーの船長をはじめとした航海スタッフの錬度の高さは「お見事!」という賛辞を送るしかありません。このくらいの技量がないと、冬期の大荒れの日本海航路の運航なんてできないということですね。

ようこそ礼文島

執筆者

株式会社ハレックス代表取締役社長 越智正昭

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