2016/01/18

知ること、そして共感・好感を得ること

国の経済全体の総需要と供給力の差のことを経済の『需給ギャップ(またはGDPギャップ)』と言います。この場合の総需要は実際の国内総生産(GDP)と同じであり、供給力は国内の労働力や製造設備などから推計される数字です。需給ギャップがマイナスという場合、需要よりも供給力が多い状態のことを指し、企業の設備や人員が過剰で、物余りの状態になっていることを示します。

2008年のリーマンショック以降、我国はこの需給ギャップがマイナスの状態が続いていて、これが今の長引くデフレの大きな原因になっていると言われています。(内閣府の発表によると、2015年7~9月期のGDP2次速報値を反映した我が国のGDPギャップは▲1.3%なんだそうです。)

こういう状況の中では今まで当てにしていたお客様から期待していた注文が来なくなり、当社を含めて日本中の非常に多くの企業が頭を痛めているのではないでしょうか。

需要に対して供給側の企業が多過ぎるという今のような市場環境において、企業間競争はさらに激化しています。これは我々気象情報提供の世界においても例外ではありません。

私がこの場で何度も言っているように、気象庁様から購入する情報を再配信したり、単にその情報の解説をするだけのことをやっていたのでは、競合他社との差別化なんぞ出来るわけがありません。そこには他社との差別化となるべきなんら付加価値が加わっていないから。そうした他社と差別化できる付加価値がない場合、当然のこととしてお客様は価格的に安い会社の商品やサービスを選びます。“安い”ということが最大の付加価値となるからです。

ですから既存のサービスにはない新鮮でお客様から見て魅力的と感じられる“付加価値”を持った商品やサービスを開発することは極めて重要なことで、これを継続的にやり続けることが出来る会社のみが市場の中で生き残ることが出来ると言い切ることもできます。

お客様から見て魅力的と感じられる“付加価値”とは、お客様の抱えている課題を解決することにほかなりません。いろいろなものが世の中に溢れ、お金さえ出せば手に入れることが出来るようになった今、課題の解決にこそお客様は大きな価値を見出だすようになってきたのです。解決を英語に訳すと“ソリューション”。ソリューションはまず最初にお客様の課題があって、その上で効果的な解決策をご提供することです。

で、解決する課題が大きければ大きいほど、お客様は価値を感じていただき、その価値に応じて対価をお支払いいただけます。

また、現在のような厳しい市場環境でも勝ち残り、存続していくためには、競合他社からの激烈な攻撃から既存のお客様(取引先)を守り、競合他社に先駆けて新たな取引先を積極的に開拓していかなければなりません。“攻撃は最大の防御なり”という言葉がありますが、ただ守るだけでは成長など望むべくもなく、競合他社からの激烈な攻勢の前に徐々に疲弊し、知らず知らずのうちに綻びも出てきます。いったん綻びが出ると、崩れ去るのは一気です。ですから、こういう厳しい時期こそ、競合他社に先駆けて新たな取引先を積極的に開拓していくことが重要なのです。

お客様に対して自社の商品やサービスをPRし、購入していただくための営業活動それ自体も、厳しい市場環境に合わせて変化していかなければなりませんが、厳しい市場環境だからこそ、売り手側の我々が再度見直すべき基本的な事柄もあるのではないでしょうか。

そのための2つのポイントを以下に示します。

【1】お客様のことを本当に知っているか?
お客様の企業概要(業種・業態等)はもちろんのこと、売上近況、利益の推移、売上・利益の増減の理由等々、それらを把握しなければお客様の課題を掴むことはできません。課題が掴めなければその解決策であるソリューションを提案することなどいっさいできません。

【2】お客様の共感を得て、お客様に好感を持っていただいているか?
お客様への対応、訪問・面会を通して、何かしらの共感を得ることができているかどうか、あるいは好感を持っていただけるかどうかは営業活動のみならず人間関係の構築においても非常に重要なことです。相手からの共感・好感が得られなければ、お客様は自身の抱える課題に関する悩みを話したり、あるいは頼りにされたりすることは望めません。

このような行動ができていないのに、いきなり商品の売り込みや提案を行っても、お客様に快く受け入れてもらうことは先ず不可能というものです。

これは、お客様との関係だけに生じることではなく、社内の上下関係、他部署との関係、また家庭を含めたプライベートの関係でも同じことが言えるのではないか…と思います。

例えば、上司と部下の関係であれば、部下の業績数字等の結果のみでなく、どのような行動をした結果の数字なのか?どのような考えを持った上の行動なのか?どのような支援を望んでいるのか?…等々を、上司が知って・掴んでいるかどうかはマネジメントをする上で非常に重要な事柄です。

また部下と上司の間に共感や好感が存在しなければ、上司がいくら注意やアドバイスをしても、部下は聞く耳を持たず素直に受け入れないためその効果は薄くなります。

先ず、お客様・相手を知ること。

そして知った上で何らかの共感・好感を得ること。

その上で営業活動や提案・交渉をしなければ、聞き入れてもらえる可能性は低いというものです。
市場環境・ニーズが大きく変化したにもかかわらず、お客様や相手のことを知らずに、また共感も好感も得ないままに、自社都合・自分都合で前年実績に基づく売上予算を作成し、そのスケジュールを管理するというマネジメントを続ける限り、市場のニーズとはますます乖離し、経営リスクはさらに増大し、企業間競争にも勝ち残れないのではないでしょうか?

知ること、そして共感・好感を得ることは、あらためて自分自身で見直すべき営業活動の第一歩であると私は思います。

執筆者

株式会社ハレックス前代表取締役社長 越智正昭

株式会社ハレックス
前代表取締役社長

越智正昭

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