2016/01/20

悪口という肥し

会社をはじめ、世の中の組織という組織には必ず“目標”というものがあります。そしてその目標達成に向かうには実に様々な道があります。その幾多ある道の中から進むべき方向を一つに決めるのはリーダーの役目です。ですが、どんな道を選んでも、都合の良い人と悪い人が出てきます。同じ組織の中にだって、都合の良い社員(部下)と都合の悪い社員(部下)の両方が必ず出てきます。

都合の悪い社員は不愉快になり、陰で上司の悪口を言いたくなるのは当然のことです。私に向かって直接不満や異議を唱えてくれるのならそれをきっかけに対話もできていいのですが、悪口というものはたいてい私のいないところでこっそりと語られるものです(それが悪口というものですが…)。

私もこれまでそういうことを何度も経験してきました。最初はなぜ裏でそんなことを言うのだろうと嫌でしたし、この人ならついてきてくれるだろうと信頼している部下が陰で私の悪口(それも大批判)を言っている事実を知って、寝込みそうになるくらい落ち込んだこともありました。ですが、そうした経験を何度も重ねることにより「彼らにとってメリットが少ないと感じるからなんだろうな…。気持ちが少しは分かるな…」などと、思いやる余裕のようなものが出てきた感じがしています。

(皆さんよく御存知のように、私は常にかなり過激な発想と過激な発言を口に出したりするものですから、陰で批判や悪口を言われる対象になりやすく、若い頃からそうでしたので、このあたりの経験は他人に自慢できるくらい多いのではないか…と思っています。)

最近では酒の場などで「あのアホがまったく我々のことを考えていない」といった悪口を言われいると分かっても、以前ほどは腹も立ったり落ち込んだりもしなくなり、どこか「ガス抜きができたと思うから、これでイーブンになったのかな」…などと多少ホッとするくらいの“大人の余裕”が私なりにもできてきているような気がします。で、社員の悪口はリーダーを成熟させてくれるものだ…くらいに思っています。

そもそも、陰で悪口を言うのはほかでもなく、彼らの恐怖心からなのです。こちらの勝利が見えてくると敵に残る“最後の抵抗”は悪口くらいのものなのです。それも勝算のまったくない“最後の抵抗”。彼らに勝算があれば堂々と正面から議論を吹っ掛けてくるでしょうし、「ここがおかしい」とか「こうしたほうがいいのではないか」といった建設的な意見はむしろ大歓迎です。いっぽう、陰で囁かれる悪口というものは、“勝算のない最後の抵抗”というもので、そういうものって、申し訳ないけど無視しておけばいい…と言うのが私の考え方です。

内部からの悪口、外部からの悪口、当たっている悪口、事実無根の悪口、誤解による悪口、悪意の悪口…。悪口にはいろいろあります。悪口は愉快なものではありませんが、それを避けるのは「リーダーとしての逃亡」と一緒なのではないか…と私は考えています。

リーダーシップの本質は「将来に対する明確なビジョンを持つことである」と、よく経営の本を読むと書かれています。ですが、私はそれに違和感を覚え、それとは少し違う考えを持っています。リーダーシップなんてそんな耳障りのいい綺麗事ではなく、

「実行の際に抵抗勢力と向き合う“意志”と“覚悟”」

なのではないのか…と、私は最近明確に思うようになりました。

悪口は抵抗勢力にとって最も安価な抵抗手段です。これに左右されては何も始まりません。鈍感になるのでもなく、耐えるのでもなく、それを風景のように受け入れ、情報収集や自己反省に利用するのです。この「悪口を肥やしにする」ことができれば、人間は豊かで強くなりリーダーシップも自然に身に付くことができるのではないか…と私は思っています。


【追記】
私はこれまでの経験から「経営とは変転する市場とお客様の要求を見定めて、会社を作り変えることなのだ」と思っています。すなわち、“経営の本質”とは「事業の定義を書き換えるということ」だと理解しています。

そこで、私が打ち出したのが弊社ハレックスの事業方針と言うかビジョンが『メタモルフォーゼ』、すなわ“変態”“変身”です。

閉塞感漂う日本市場の中で当社が生き残っていくためには、これまでやってきたことの延長ではダメで、よりお客様ニーズ、市場のニーズに合った形に自分達のビジネスを変えることが求められます。それが私が唱える『メタモルフォーゼ』で、私は当社のリーダーとして、その『メタモルフォーゼ』の実行の際には社内外の抵抗勢力と向き合う強い“意志”と“覚悟”で臨んでいるつもりです。

執筆者

株式会社ハレックス前代表取締役社長 越智正昭

株式会社ハレックス
前代表取締役社長

越智正昭

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