2016/01/27

人に伝えるということ

伝わっているはず、と自分では思っていても、実際には伝わっていないことのほうがはるかに多いものです。全体の半分くらい伝わればいいほうで、100%わかってもらうのは至難の業といっていいでしょう。これはやはり、伝えたいことを整理するのが大変だからだと思うのです。
……『超整理術』(佐藤可士和著)より

私は、ここ数年、様々なところからお招きを受けて講演会での講演をはじめ研修やセミナーの講師等を務めさせていただくことが多く、人前で1時間とか2時間とか話をさせていただく機会が多いのですが、その都度、私自身の勉強になっているな…と思っています。聴いていただいた方は私の話を通して私のような者が経験してきたことを共有することで知識や知恵を得て、少しは勉強になっているのではないか…と勝手に思っていますが、それ以上にスピーカーとしての私のほうが得ることって大きいな…と思っていますね。

正直なところ、私は人前で話をするのが大好きです。なぜなら人に伝えるというアウトプットを通して自分の事がよく分かるからです。

人に話をすることは鏡に自分を映すことだと思っています。それを噛み砕くと次の3つに集約されると思います。


① 頭の中を鏡に映すことができる
人は日々色んなことを考え、判断し、行動していますが、そのほとんどは無意識の状態の中で行われていて、自分の頭の中で経た思考の過程や根拠を言語化、図式化、汎用化しろと言われてもなかなか難しいものです。ですが、そういうものって言葉や文字で人に伝えることによって初めてクリアになってくるものなのです。「おぉ、私はこんなことを考えていたのか!!」…と、自分で自分にビックリするようなこともしばしば起こります。


② 自分の特徴を映し出すことができる
人から自分がどのように見られているのかは、自分自身ではなかなか分からないものです。また、人とのコミュニケーションにおいては、自分の伝えたいことをちゃんと相手に伝えることが出来ているかということも重要です。そこにはコミュニケーションツールとしての喋り方、話し方があります。自分の声の高さや速さ、間の取り方、口癖など、ふだんなかなか自分では気がつかない自分の話し方の特徴を知っておくことは重要です。自分の話し方の特徴を知った上で、改めるところは意識して改め、いいところはさらに磨く努力をしないと、いつまで経っても伝える力、コミュニケーション力を高めることはできません。

最近はやっておりませんが、私は若い頃、自分が人前で喋っているところをレコーダー(当時はカセットテープ)に録音し、後でこっそり聞き返したりしました。聞いた感想は「なんて下手くそなんだろう。早口で、独りよがりの喋り方で…」って正直落ち込みました。で、それからは自分の喋りはこんな特徴があるのだ…ということを常に意識するようにし、聴いていただく方にとって聴きやすい喋り方をしようしようと努めてきました。まだまだ未熟ではありますが、最近では私の講義や講演は非常に分かりやすいとか、話が上手い…と言っていただけるようになりました。(でも、今でも、自分の喋りを後で聞くと、反省することばかりで、もっと上手になりたいと思っています。)


③ 今後の課題が映し出される
講演が終わった後、感想のアンケートを書いていただくことが多いのですが、その結果を読むと得るものが大きいですね。

・自分の伝えたいことがちゃんと伝わっていたか?
・自分の伝え方で直したら良いところはあるか?
・他にどんな話が求められていたのか?

ということを知ることができるからです。

・自分の伝えたいことがちゃんと伝わっていたか?
コミュニケーションは「ちゃんと人に伝わって」ナンボ。自分が伝えて自己満足で終わっていたのではまったく意味がありません。ですから、私の伝えたメッセージ通りの感想が書かれていると「ちゃんと伝わって良かったな」と思い安心しますし、逆に伝わっていなかったなら「次にやる時にはどうすれば伝わるのかな?」と考えるきっかけになります。

・自分の伝え方で直したら良いところはあるか?
私は「伝える人」としてはまだまだ発展途上の未熟者だと自分で認識しています。自分が気が気がつかないうちに人を傷つけることを言っていることもあると認識しています。言いにくいとは思いますが、「あの言葉はちょっと気になりました」とか言っていただけるととすごくすごくありがたいものです。「確かにあの言葉は聴く人によっては不快になるかも…」と反省することができますからね。

・他にどんな話が求められていたのか?
「もっと○○な話を聞きたかったです」とか、「あのテーマについてもっと深掘ってほしかったです」といった聴いていただいた方からのニーズを知ることができると、自分では「これはあまり面白くないな…」と勝手に思っていた内容が、実は他の人にとってはすごく興味のある内容だったりすることが分かります。また、「もっとこんな経験、ネタを集めれば、聴いていただいた方をもっと満足させることができる」ってことが分かったりもします。そして今後自分が直すべきこと、頑張るべきことが明確に分かるので、自分自身の成長に繋がります。


生まれながらにして高いコミュニケーション能力を持つ人っていません。だって、人間は生まれた時はオギャーと泣くことしか出来ず、成長に伴って徐々に言葉というものを覚えていくわけですから。ですから、コミュニケーション能力は後天的なもので、訓練と努力の仕方によって幾らでも高めることが出来る…と私は考えています。

しかも人間とは社会性を持った生き物です。すなわち人間は常に大勢の他者との関わりの中で生きていく生き物なので、独り善がりの供給者思考では決して自らのコミュニケーション能力を高めることなどできません。常に相手(聴き手)のことを強く意識して、聴き手がどう受け取っているのかを確かめることをしないと、決して向上することはありません。これは営業における『顧客志向』と繋がる部分があります。

テレビやラジオ向けの解説業務を担当している気象予報士の皆さんはもちろんのこと、予測を担当している皆さんも、営業を担当している皆さんも、システムを担当している皆さんも、仕事をする上で自分の思っていること、特に“伝えたい”と思っていることを他の人に伝える「コミュニケーション能力」を高めることは、業務をスムーズに遂行する上で極めて重要なことです。ぜひ、いろいろな機会でそれを高める工夫をしていってください。

その時に重要となるのは、常に相手の気持ちになって考えるということです。

執筆者

株式会社ハレックス代表取締役社長 越智正昭

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越智正昭

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