2017/11/10

石本康隆選手、日本王座への再挑戦権獲得!!

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11月4日(土)、ボクシングの聖地・後楽園ホールにおきまして私が応援する帝拳ジム所属のプロボクサー、石本康隆選手が日本王座奪還への挑戦権を賭けて、角海老宝石ジム所属の中川勇太選手と8回戦(最強挑戦者決定戦)で対戦し、“死闘”とも呼べる過酷すぎるほど過酷な激戦を制し、2対1の僅差の判定で勝利し、日本チャンピョン久我勇作選手(ワタナベジム)への挑戦権を獲得しました!!

石本康隆選手は香川県高松市の出身。日本では最も選手層の厚い階級の1つであるスーパーバンタム級で、2002年のプロデビューから13年、長いキャリアを経て2015年12月21日、後楽園ホールで行われた久我勇作選手(ワタナベジム)との間で行われた日本スーパーバンタム級王座決定戦に10回3対0の判定で勝利し、3度目の王座挑戦にしてついに第39代の日本スーパーバンタム級チャンピョンまで上り詰めました(この間、2013年にはマカオで元WBO世界スーパーバンタム級王者で当時WBO世界スーパーバンタム級1位だったウィルフレド・バスケス・ジュニア選手(プエルトリコ)に2対0の判定勝ちを収め、WBOインターナショナルスーパーバンタム級王座を獲得しています)。

日本スーパーバンタム級チャンピョン、いっしもとぉ~やっすたかぁ~!

その後、日本チャンピョンとして2016年4月2日には藤原陽介選手(ドリームジム)、10月1日には古橋岳也選手(川崎新田ジム)とタイトルマッチで対戦し2回の防衛を果たしています。

チャンピョン石本康隆選手、タイトル初防衛に成功!!

日本チャンピョン石本康隆選手、2度目の防衛成功!!

しかし2017年2月4日に行われた久我勇作選手(ワタナベジム)との間で行われた3度目の王座防衛戦に2回2分49秒、TKO負けを喫し、日本スーパーバンタム級王座の座から陥落してしまいました。

王座陥落(T ^ T):日本スーパーバンタム級タイトルマッチ

石本康隆選手は当時35歳(現在は36歳)。プロボクサーとしてとうにベテランの域までいっているので、このまま現役引退か…と思われたのですが、石本康隆選手は世界挑戦という夢を追い求めて現役続行を選択。7月18日にフィリピンのアルネル・バコナヘ選手との再起戦の挑み、7回2分38秒、見事に10カウントでのKO勝ちを収め、再起を果たしました。

石本康隆選手、再起戦KO勝利!

これで石本康隆選手のプロ戦績は39戦して30勝(9KO)9敗。ランキングも日本スーパーバンタム級2位まで戻ってきました。世界ランキングもWBC世界同級15位、WBOアジアパシフィック同級4位にランキングされています。

対戦するのは日本スーパーバンタム級1位(OPBF同級4位)の中川勇太選手(角海老宝石ジム)。中川選手は現在28歳。このところ11連勝中と勢いに乗って日本ランキング1位にまで駆け上がってきた選手です。これまでの戦績は26戦して21勝(12KO)4敗1分。21勝のうち12勝がKOでの勝利というハードパンチャーです。初の王座挑戦権を獲得するため、試合開始のゴングと同時にガンガン攻め込んでくるだろうな…ということは容易に想像できました。まさに「日本王座最強挑戦者決定戦」の名の通り、大激戦が予想されました。

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この日もお世話係を務めていただいている東京香川県人会のSさんから入場券を受け取り、このビルの5階にある後楽園ホールに向かいました。もちろんエレベーターではなく、ここは階段を使って5階へ。この階段、とにかく落書きが凄いんです! それも毎回毎回訪れるたびに新しい落書きに変わっているので、感心しちゃいます。後楽園ホールの1つの名物のようなものですね。この階段の落書きを見ると、これからプロボクシングの試合を観るぞ!…という気分が高まってきます。

この日組まれていた試合は6試合。一番最後のメインイベントには東洋太平洋(OPBF)ヘビー級、WBOアジアパシフィック同級、日本同級の3冠王者、藤本京太郎選手(角海老宝石ジム)がオーストラリアのランドール・レイモント選手を挑戦者に迎えて臨む東洋太平洋王座2度目の防衛戦、WBOアジアパシフィック王座の初防衛戦というタイトルマッチが組まれていたので、石本康隆選手はセミファイナルの第5試合の登場でした。

この日もアンダーカードの4試合はいずれも早いラウンドでのKOにより決着がつくという異例の試合展開でした。

まず、第1試合のライトフライ級6回戦は細谷大希選手(角海老宝石ジム)がタイのソンポン・ポーパランポンジム選手を2ラウンド38秒、TKOに下して勝利しました。

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第2試合、ライト級8回戦は斉藤一貴選手(角海老宝石ジム)がOPBF東洋太平洋同級11位でフィリピン・スーパーライト級8位のアルビン・ラグンバイ選手を4ラウンド2分47秒、TKOで下して勝利。斉藤選手はこれで4戦全勝で、しかも全てKOでの勝利。将来が期待できます。

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第3試合のスーパーウェルター級8回戦では元OPBFと日本ウェルター級王者で現在日本スーパーウェルター級9位(OPBF同級3位)の渡部あきのり選手(角海老宝石ジム)がフィリピン・ウェルター級チャンピョン(OPBFスーパーウェルター級8位)のデニス・パドゥア選手と対戦、開始まもない1ラウンド1分13秒に渡部選手の強烈なパンチがパドゥア選手のボディーに炸裂して、パドゥア選手がたまらず膝から崩れ落ちるようにダウン。そのまま起き上がる気配もなく、レフェリーストップ。実にあっけなく渡部選手がTKOで勝利しました。渡部選手は35勝(30KO)6敗。現在32歳。もともと実力のある選手だけに、この勝利を機にランキングを上位に上げてくるものと思われます。

ここまで2ラウンド、4ラウンド、1ラウンドと早いラウンドでのKOで勝負がついたので、試合の進行がすこぶる早いです。第1試合の開始が17時45分だったのですが、まだ19時もなっていません。

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ここで15分間の時間調整のための休憩が入り、続いて角海老宝石ジム所属で、第57代日本ライト級チャンピョン(7回防衛、返上)、第45代OPBF東洋太平洋ライト級チャンピョン(1回防衛)だった加藤善孝選手の引退セレモニーが行われました。加藤選手は茨城県日立市の出身で現在32歳。プロとしての戦歴は40戦して30勝(9KO)8敗2分。加藤選手が奥様と幼い娘さんと一緒にリングに上がり、「高卒でボクシングを始めて、遅いスタートだったのですが、ここまでこられたのは会長をはじめ応援してくれた皆さんのおかげです。本当にありがとうございました」とファンに挨拶すると惜別の10ゴングが鳴らされました。カーン、カーン、カーン…と10ゴングが打ち鳴らされる中、加藤選手の足元に幼い娘さんがずっとまとわりついているのが印象的でした。リングの上では猛獣の目をしたファイターでも、ご家庭ではきっと優しいパパさんなんでしょう。引退後はボクシングとはまったく離れた仕事に就くそうです。お疲れ様でした。次の人生でも頑張ってください。

加藤善孝選手の引退セレモニーが終わり、第4試合の試合開始です。第4試合は日本ミドル級最強挑戦者決定戦として行われ、同級1位(OPBF同級4位)の福本祥馬選手(角海老宝石ジム)と同級2位(OPBFスーパーウェルター級1位)の竹迫司登選手(ワールドスポーツジム)が、現日本ミドル級チャンピョンの西田光選手(川崎新田ジム)への挑戦権を賭けて対戦しました。福本選手はここまで12戦して11勝(9KO)1敗。しかもこのところ9連勝。対する竹迫選手はここまで6戦して6勝0敗。全ての試合をKOで勝利しています。ともにこのところ絶好調で強打を誇る選手同士の激突。最強挑戦者決定戦ということで勝利すればともにタイトル初挑戦のチャンスを手にすることができるということで、モチベーションも相当に上がっているので、かなりの熱戦が期待されました。

私達石本康隆選手応援団はこの試合が始まった時点で青コーナーの花道に続く通路に集まり、応援のための幟の準備に取り掛ったのですが、この試合も呆気ないほど早く勝敗が決まってしまいました。試合開始のゴングが鳴ってすぐと言ってもいい1ラウンド1分30秒、竹迫選手の放った強烈な右フックが福本選手の顔面に炸裂してダウンを奪い、このパンチ1発でレフェリーが試合を止め、TKOで竹迫選手が勝利しました。

これには私達石本康隆選手応援団もビックリです! 背後で試合開始のゴングが鳴ったと思ったら、いきなり場内が大歓声に包まれたわけですから。まだまだ幟の準備が終わっていない段階で前の試合の決着がついてしまったわけです。なので、私はこの試合の様子をいっさい観てはおりません。ミドル級という中量級の試合で、勢いに乗る選手同士の対戦ということでちょっと楽しみにしていたところがあって、本当なら応援幟の準備を終えてから青コーナーのリングサイドに続く花道の入り口で(すなわち、近い距離で)この試合を観戦しようと思っていたのですが…。

勝った竹迫司登選手はこれでプロデビュー以来7戦全勝、しかも全てKOでの勝利で、来年2月の予定されているチャンピョンカーニバルにおきまして、現第60代日本ミドル級王座の西田光選手(川崎新田ジム)に挑戦することになります。ちなみに、このミドル級という階級ですが、さる10月22日、両国国技館におきまして、石本康隆選手の帝拳ジムの同僚である村田諒太選手(ロンドン五輪金メダリスト)がWBA世界ミドル級王者のハッサン・ヌダム・ヌジカム選手と再戦し、7回終了TKO勝ちを収めて前の対戦の雪辱を果たし、日本人として竹原慎二さん以来22年ぶり2人目となるミドル級世界王者となりました。

試合後、勝った竹迫司登選手がリングから降りて控え室に戻る途中の通路で、応援幟を準備している私のすぐ横を通り過ぎました。その際に私が「おめでとう! 次はいよいよタイトルマッチだ。頑張ってタイトルを獲れよ!」と声をかけると、ニコッと笑って会釈を返してくれました。ナイスガイです。きっとプロデビュー以来7戦全勝、しかも全てKOでの勝利というこの今の勢いに乗って、次の試合では日本ミドル級チャンピョンのタイトルを獲ってくれることでしょう。そしてその先には村田諒太選手対竹迫司登選手という史上初の日本人選手同士による世界ミドル級タイトルマッチだって期待できるかもしれません。頑張って欲しいものです。

第3試合に続いて第4試合も1ラウンドの1分台で勝負の決着がつくという異例の進行状況に、ここで再び時間調整のための15分間の休憩時間が取られます。そうでしょう、そうでしょう。まだこちらは応援幟の準備が整っていません。この日組まれていた試合はライト級(61.23kg以下)、スーパーウェルター級(69.85kg以下)、ミドル級(72.57kg以下)と日本人ボクサーとしては体重の重い中量級の試合が多く、おまけにこの日のメインイベントで行われる試合は全17階級のうちの最重量級であるヘビー級(90.71kg、すなわち200 ポンド超)の試合。中量級以上のウェイトの試合はパンチ力が半端なく強いので、会場に来て、マッチプログラムを見た時から、こりゃあ今日はフルラウンド戦う試合は少なく、KOで決着する試合が続出するだろうな…とは思っていましたが、これほど早いラウンドで決着する試合が次から次に続出するとは思ってもいませんでした。第1試合が2ラウンド、第2試合が4ラウンド、第3試合と第4試合は、なんとなんと試合開始まもない1ラウンドの1分台で決着がつきましたものね。ちょっと早すぎです。

ちなみに、石本康隆選手の階級はスーパーバンタム級(55.33kg以下)で全17階級のうちの軽いほうから6番目の階級です。応援する石本康隆選手の階級であることもありますが、私はこのスーパーバンタム級前後の階級のボクシングが一番好きですね。高校時代にハマった漫画『あしたのジョー』の主人公・矢吹丈の階級もバンタム級(53.524kg以下)でしたし。

15分の休憩時間が終わり、いよいよ本日のセミファイナル、日本スーパーバンタム級王座最強挑戦者決定戦の開始です。応援幟の準備も整い、まずは青コーナーから石本康隆応援団の入場です。この日も私は年の功で白い幟を持って一番リングサイドに近い位置を務めさせていただきました。私がこの位置で白い幟を掲げた試合で、石本康隆選手はこれまで一度も負けたことがありません。私が応援幟を持つようになってから負けたのは今年2月の3度目の防衛戦だけですが、その時は同じ白い幟でもリングサイドから2番目の位置でした。こういうジンクスは担ぐほうです、私。この日は応援団長がいつも以上に気合が入っていて、そういう団長に引っ張られて幟を持つ私達だけでなく場内の石本康隆応援団一同からも大きな声援の声が出ています。いい感じです。

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「選手入場です。まずは青コーナーから石本康隆選手の入場です!」というリングアナウンサーの声に続いて、いつもの石本康隆選手の入場曲Hi-STANDARDの「BRAND NEW SUNSET」が場内に鳴り響き、程なく石本康隆選手が入場してきました。赤コーナー(主として主催者側)から入場してくる時は時間をかけて少し焦らしながら入場してくるのですが、この日はアウェーの青コーナー。おまけに対戦相手は年下とは言え、現時点でのランキングでは上位となる1位の選手なので、ここはさほど時間をかけずに入場してきます。こういうところ、石本康隆選手らしい礼儀の正しさです。

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この日も野獣のような目をしての入場だったのですが、いつもとちょっと違ったのは入場してくる際、高々と右の拳を上げて場内に響き渡る大声援に応えたこと。私の前を通り過ぎる際も、軽く右の拳でグータッチをしてくれました。いつもは野獣のような目で真っ直ぐに前のリングだけを見つめて入場してくるのですが、この日はなにか心境の変化でもあったのでしょうか。私の「頑張れよ!」という声援にも答えるように軽く頷いてくれたように感じました。よぉ~し、気合いは入っています。

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続いて赤コーナーから日本スーパーバンタム級1位、中川勇太選手の入場です。ここで応援団は幟を急いで片付け、応援席に戻ります。幟を片付けている背後でカーーン!と乾いたゴングの音が鳴り響きます。いよいよ試合開始です。

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ボクシング素人の私から見ても、石本康隆選手の課題は試合への入り方。慎重に試合に入るというのもいいのですが、2月に行われた3度目の防衛戦では久我勇作選手にその試合への入り方を突かれて試合開始直後からパンチのラッシュをかけられ、僅か2ラウンドでのTKO負けを喫して王座を奪われてしまいました。おそらくこの日の相手の中川勇太選手もそこを突いてくるのは明々白々でした。この日の朝、いつも律儀な石本康隆選手本人から私に
「越智さん、いつもの様にのぼりお願いします! 前の試合が始まったら青コーナー(いつもと逆)の裏に集合です。必勝☆」
というメールが入ってきたので、その返事に
「了解です。頑張れよ!!絶対勝利だ!! でも、試合の入り方だけ気をつけてね。相手は若いから、間違いなく開始からラッシュかけてくるから。素人のお節介だったかな」
と返したくらいです。

案の定、中川選手は試合開始直後から仕掛けてきました。リーチのある中川選手がジャブで差し勝ち、さらに右アッパーを巧みに使い、頭を下げて猛然とラッシュ(連打)をかけてきます。1ラウンドの途中に偶然のバッティング(頭突き)にでもあったのか、石本康隆選手は打たれた右目が見えにくくなったようで診察をリングドクターから受けます。さらに鼻血のアクシデントも重なり攻め込まれる場面が目立ちます。序盤は明らかに石本康隆選手の劣勢です。

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第2ラウンドも中川勇太選手はジャブ、ワンツーで石本康隆選手を押し込み、試合は早くもいささかワンサイドの様相を呈します。しかし、杞憂された最初の2ラウンドをなんとか凌ぎきり、そこから石本康隆選手も徐々にいつものペースを取り戻してきました。でも序盤は赤コーナー中川勇太選手が圧倒的に優勢か……。この劣勢をいかにして挽回していくのか…、不安が頭をよぎります。

この日の試合は角海老宝石ジムの主催で、帝拳ジム所属の石本康隆選手はアウェー。アウェーにもかかわらず会場に詰めかけた石本康隆応援団から懸命の声援が送られます。石本康隆応援団はどちらかというと年配の方や女性が多く、石本康隆選手のキャラもあってかいささか上品でおとなしめの人が多いような印象なのですが、この日の試合はひと味もふた味も違っていました。石本康隆選手劣勢の状況で、声を限りの懸命な声援が場内のいたるところから期せずして沸き起こります。この応援団の一体感、素晴らしいの一言です。

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その懸命な応援に後押しされたのか、試合も後半に入った5ラウンドあたりから石本康隆選手が反撃に出はじめます。攻め疲れたのかガードが徐々に甘くなった中川選手に対して左のボディーと右のストレートを打ち込んで試合を少しずつ巻き返していきます。前へ前へと積極的に出てプレスをかけ、右ストレート、ワンツーで攻勢をかけ、中川選手にロープを背負わせるシーンも何度か出てきました。徐々にポイントを奪い返していきます。

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どのラウンドも序盤は中川選手が優勢なのですが、後半になると石本康隆選手が盛り返す…、そんな展開が各ラウンドで続きます。

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第7ラウンドに中川選手が猛然と反撃に出てきたのですが、その反撃を耐え、最終第8ラウンドに入りました。ここまでほぼ互角か。手数で中川勇太選手、有効打の数では石本康隆選手って感じでしょうか。

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最終の第8ラウンドは石本康隆選手が手数でも圧倒します。ここで負けたら引退。ならば、残る力を最後まで絞り切って終えよう…という気迫さえ感じられる連打を中川選手に浴びせます。まさに“死闘”という言葉がピッタリなほどの激戦です。その迫力に負けたのか中川選手の身体が一瞬ぐらつくシーンもありましたが、ダウンを奪うまでは至らず、無情にも残り時間が少なくなっていきます。

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最後まで白熱した展開のまま試合は進み、カーーン!…とゴングの乾いた音が鳴って、ここで試合終了。試合終了のゴングが鳴った瞬間、それまで野獣のような鋭い目付きで対戦していた石本康隆選手と中川勇太選手の両者の顔がほころび、お互いの健闘を讃えあうように抱き合う姿が印象的でした。それって死闘を戦った者同士でしか味わえない感覚なのでしょうね、きっと。素晴らしい光景でした。

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8ラウンドを戦ってもKOでの決着がつかず、勝敗は判定にもつれ込みました。どちらが勝っても僅差の判定になるだろうということは、ボクシング素人の私にも分かりました。リングアナウンサーが3人のジャッジによる判定結果を読み上げます。「ジャッジ◯◯、77対76、赤コーナー中川選手」う〜〜ん、そう来るか……。「ジャッジ◯◯と◯◯、77対76、青コーナー石本選手。以上2対1の判定で、勝者 青コーナー……」そこまで聞こえた段階で、リングアナウンサーの声は場内割れんばかりの大声援に掻き消されます。ここのところ11連勝中で勢いのある中川勇太選手が圧倒的に有利という戦前の下馬評を覆し、ベテラン石本康隆選手の勝利です!! それも序盤の劣勢を覆しての逆転勝利!! これは見事というしかない勝利です!! プロ15年目の36歳のベテランが若い選手を相手に意地とド根性を見せつけた勝利だと言っても過言でもありません!!

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勝利を告げられた瞬間、さすがに石本康隆選手も涙で顔が崩れたのでしょう。勝利者インタビューではアナウンサーから「男泣きしましたね」と声をかけられ、「泣いてません!」と、先日、帝拳ジムの同僚である村田諒太選手がWBA世界ミドル級王座を獲得した時と同じセリフで返し、場内の笑いを誘いました。そういうところ、石本康隆選手らしいですね。その後、「中川選手は強いと想定していましたが、本当に強かった」と試合を振り返りました。これは本心でしょう。それくらいの死闘、大激戦でした。私は石本康隆選手の試合をこれまで10戦ほど観てきましたが、これほどの激戦を観たのは初めてです。そして感動しました。私こそ、目から涙が溢れていましたから。私も「泣きましたね」と問い掛けられたら、もちろん「泣いてません!」と返しますが…(笑)

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これで石本康隆選手は31勝(9KO)9敗。今年2月に行われた3度目の防衛戦でタイトルを奪われた久我勇作選手にリベンジして日本チャンピョンのタイトルを奪還する挑戦権を自らの拳で手にしました。2015年12月21日に行われた日本スーパーバンタム級王座決定戦に10回3対0の判定で勝利し、今年2月4日に行われた3度目の王座防衛戦で2回2分49秒、TKO負けを喫して日本スーパーバンタム級王座の座から陥落させられた久我勇作選手とは、これまで1勝1敗。3度目の闘いを迎える久我勇作選手との1戦については「この内容では勝てない。またゼロからやり直して必ず勝ちます。勝つしかない。ベルトは必ず取り戻します」と王座奪還を力強く誓いました。石本康隆選手がインタビューに答えてそう言った時、背後の大型スクリーンには次に対戦する第40代日本スーパーバンタム級チャンピョンの久我勇作選手の顔が大写しになりました。久我勇作選手は、次の対戦相手が決まるこの試合をリングサイドの席からつぶさに観戦していたようです。石本康隆選手の気迫溢れる勝利を目にして、チャンピョン久我勇作選手は何を思ったでしょうか……。

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この上の写真で注目すべきは右下に写っているレフェリーのなんとも温かさ溢れる笑顔です。もしかすると、石本康隆選手の勝利を一番嬉しく思っている方たちの中に、このレフェリーも含まれているのかもしれません。なんと言っても、このレフェリーは石本康隆選手のこの試合を最初から最後まで誰よりも間近で見ていた人であり、試合中に何があったのか、そして何が起きていたのかを一番知っている人ですからね。このレフェリーの満面の笑顔が実に多くのことを物語ってくれているように思うのは私だけでしょうか。適切で公正なレフェリングをありがとうございました。

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とにかく、バンザァ〜〜イ!!勝ったぁ〜〜!!…です \( ˆoˆ )/\( ˆoˆ )/

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セミファイナルが終了し、いよいよこの日のメインイベントです。前述のように、この日のメインイベントはOPBF東洋太平洋ヘビー級、並びにWBOアジア太平洋ヘビー級のタイトルマッチでした。

ボクシングは、体重によるハンディキャップをなくし、公正に試合を行うため、最軽量のミニマム級から最重量のヘビー級まで全17階級に分けられているのですが、この日行われたこれまでの5試合は
ライトフライ級(48.98kg以下)は軽いほうから2番目、
ライト級(61.23kg以下)はちょうど真ん中の重いほうからも軽いほうからも9番目、
スーパーウェルター級(69.85kg以下)は重いほうから6番目、
ミドル級(72.57kg以下)は重いほうから5番目、
スーパーバンタム級(55.33kg以下)は軽いほうから6番目
の階級でした。ですが、この日メインイベントで行われるのは全17階級のうちの最重量級であるヘビー級(90.71kg、すなわち200 ポンド超)の試合でした。

ボクシングのヘビー級はマイク・タイソンやモハメド・アリ、ジョー・ルイスらが活躍した階級で、ヘビー級のチャンピョンは文字通り「世界最強の男」を意味します。このため、世界で一番人気のあるエンタテイメントの1つといっても過言ではなく、ファイトマネーも桁違い。人気のある試合やタイトルマッチは主にアメリカ合衆国ネバダ州のラスベガスで行われ、世界中から大勢の格闘技ファンが訪れます。映画『ロッキー』でシルヴェスター・スタローンさんが演じた主人公ロッキー・バルボアもこのヘビー級の選手でした。ロッキーが後に大親友となるアポロ・クリードと戦ったヘビー級の世界タイトルマッチは最高でした。

世界最強の男を決めるということで有史以来長い歴史を持つこの階級なのですが、日本人はおろかアジア人が未だに世界王者となったことがない階級です。過去も現在も、日本人の平均的な体格は欧米人と比べて劣っており、近年は平均身長こそ伸びてきたものの、日本国内ではボクシングがそれほど大きな人気を集めていない事情も手伝って、ヘビー級に近い体格を持つ若者は大相撲やプロレス、柔道など他の格闘技やスポーツに流れる傾向があり、このためヘビー級選手の慢性的な不足に悩まされています。

そういう中で、藤本京太郎選手は現在、第21代OPBF東洋太平洋ヘビー級王者、WBOアジア太平洋ヘビー級王者、第2代日本ヘビー級王者と3つのタイトルを持つ選手です。まさにアジア太平洋地区最強のボクサーです。元々はキックボクサーで、第2代K-1ヘビー級王者にもついたことのある選手でした。プロボクサーへの転向は2011年。25歳の時でした。プロボクシング転向後は18戦して17勝(9KO)1敗。2013年7月25日に日本ヘビー級王座につき、2017年1月14日にはOPBF東洋太平洋ヘビー級2位のウイリー・ナッシオ選手(オーストラリア)とOPBF東洋太平洋ヘビー級王座決定戦を行い、12回3対0の判定勝ちを収め王座を獲得。5月8日には自身の持つOPBF東洋太平洋ヘビー級王座と空位であったWBOアジア太平洋ヘビー級王座を懸けヘルマン・パーセル選手(オーストラリア)と対戦し、9回1分22秒TKO勝ちを収めてOPBF王座の初防衛に成功、あわせてWBOアジア太平洋王座の獲得にも成功しました。現在、WBAヘビー級14位、WBC同級16位、WBO同級13位という世界ランカーで、この試合の内容次第では日本人初となるヘビー級の世界タイトルへの挑戦も視野に入るほどの試合でした。

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赤コーナーからリングに登場した藤本京太郎選手は髪を赤く染めた奇抜な出で立ち。概してこういう選手は見掛けによらず気は優しくて力持ちってタイプのいい人が多かったりするものです。対する青コーナーから登場した挑戦者のランドール・レイモント選手(オーストラリア)はOPBF東洋太平洋同級4位。現在22歳。この試合がプロとして12試合目という若い選手ですが(これまで11戦して8勝(3KO)3敗)、プロボクサーになる前に総合格闘技で活躍した経歴を持っています。

私は石本康隆選手と知り合って以来、これまで10回ほど彼が出場する試合を中心に後楽園ホールにおいてナマで観戦してきたのですが、最重量級であるヘビー級の試合をナマで観戦するのは初めてのことです。初めて観るヘビー級のボクシングの試合はこれまで私が観てきたボクシングの試合とは全く異質のものでした。ガードを固めて向かい合い、足を使った華麗なフットワークで自分の間合いを測り、自分の間合いに入ってはパンチを数々打ち込み、そういう中でより多くの有効打を奪い合うボクシングというよりも、自分の間合いに入ったら一発必中の破壊力抜群のパンチをガードの上からも力一杯叩き込むというボクシング。華麗さは欠けるものの、迫力は満点です。その前の試合で応援する石本康隆選手が勝ったということで、この試合はヘビー級のボクシングというものの凄さを堪能させていただきました。

タイトルのかかる国際試合の恒例で、最初は日本とオーストラリア両国の国歌斉唱から始まります。

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国歌斉唱が終わり、試合開始のゴングがなりました。試合は両選手の身長の違い(すなわち、リーチの違い)から両者やりにくそうです。

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しかし、藤本選手は初回から足を使いながら、ボディー攻撃などで徐々にペースを掴んでいきます。5ラウンドに入り藤本選手の右ストレートがレイモント選手の顔面に炸裂。レイモント選手は鼻血を流します。藤本選手はさらに右ストレートでぐらつかせ、そこへ再び右ストレートをアゴに見舞います。レイモント選手はゆっくりとリングに沈み、ダウン。レフェリーが10カウントを数え、5ラウンド2分50秒、藤本選手がKO勝ちを収めました。

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これで藤本京太郎選手は、OPBF東洋太平洋ヘビー級王座は2度目、WBOアジア太平洋ヘビー級王座は初の防衛を果たしました。藤本選手はこれで18勝(10KO)1敗。日本人初の世界タイトル挑戦も見えてきました。頑張って欲しいものです。

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この日の全ての試合が終わった後、恒例の石本康隆選手の祝勝会に出たのですが、この日は石本康隆選手はその祝勝会の場に顔を見せませんでした。律儀な石本康隆選手は勝っても負けても試合終了後の精魂使い果たした疲れた身体にも関わらず、祝勝会の場には必ず顔を出してくれるのですが、この日は顔を出してくれませんでした。本人から幹事の齋藤さんに入ってきた情報によると、試合終了後、病院に直行したのだそうです。そう言えば、試合終了後、後楽園ホールの出口前に応援団の皆さんを見送りに出てきていた石本康隆選手の顔は、これまでのどの試合にも増してボコボコに腫れ上がっていました。1ラウンドに相手選手とのバッティング(頭突き)で顔面を強打し、ドクターの診察を受けていたようなので、試合後に病院に直行したというのは、おそらくその時に受けた怪我のことなのでしょうか。心配です。

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祝勝会には石本康隆選手本人の代わりに石本康隆選手のご両親が顔を出してくれました。写真はその石本康隆選手のお母様とのショットです。このご両親も凄いと思います。いくら自分の息子が選んだ道とは言え、自分の息子がリングの上で死闘を演じる、それを静かにリングサイドから見守るなんて、とても私にはできそうもありません。

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いずれにせよ、石本康隆選手は最強挑戦者決定戦に勝利し、現・日本スーパーバンタム級チャンピョン久我勇作選手への挑戦権を自力で手にしました。次はいよいよ日本タイトルマッチです。久我勇作選手とはこれまで日本王座決定戦と3回目の防衛戦の2回戦い、1勝1敗。次の試合こそ勝利し、決着をつけるとともに、日本チャンピョンの座を奪い返して欲しいものです。私は夢を追い掛ける石本康隆選手を最後まで応援し続けます!!ヽ(´▽`)/



【追記】
試合後の石本康隆選手のオフィシャルブログ『まぁーライオン日記〜最終章〜』には次のような言葉が書き込まれていました。

「なんとか挑戦者決定戦に勝つことが出来ました。ちょっとハプニングもあって、試合中、正直気持ちが揺れました。揺れている気持ちをセコンドと応援団の熱い声援が揺るぎない気持ちに変えてくれました。諦めなくて良かったとほんとに思います。 皆さん、応援ほんとにありがとうございました!!!」

石本康隆オフィシャルブログ『まぁーライオン日記〜最終章〜』

執筆者

株式会社ハレックス前代表取締役社長 越智正昭

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前代表取締役社長

越智正昭

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