2018/03/23

邪馬台国は四国にあった…が確信に!(その18)

三木家資料館です。ここは三木家の離れを改造したもので、ここには麁服を織るための道具や貴重な古文書などが展示されています。枝垂桜(しだれざくら)の木が何本も植えられています。春の桜のシーズンになると、さぞや綺麗な光景になるだろうと推察されます。

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阿波忌部氏の起源についての説明が書かれています。

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『延喜式』では阿波忌部(あわいんべ)が天皇即位の大嘗祭に際して、神服(かむみそ)としての麻で織った麁服(あらたえ)を調進することと定められています。その忌部の末裔が三木家とされており、平成2年(1990年)に行われた今上天皇陛下の大嘗祭では、徳島県で栽培された麻は、吉野川の忌部神社で織られ、今回の旅行の初日に訪れた徳島市の忌部神社の宮司が斎主となり神事が行われました。その麁服に供せられる麻を植えるにあたっては、麻畑に鳥居や竹矢来(たけやらい)が造営され、三木家当主が種をまく播種式(はしゅしき)、抜麻式(ばつましき)などが厳かに行われます。初紡式(はつぼうしき)では収穫した麻を糸にし、麁服織初式が行われ、選出された未婚の織女(おりめ)によって布に織られ、そうしてできた麁服は、唐櫃(からひつ)に入れて皇居へ送られたのだそうです。その時の様子がパネルで飾られています。

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これは「麻舟」と呼ばれる道具です。収穫され天日でよく乾燥させた麻の茎は表皮を取り除くため、この麻舟に水を入れて水浸しにし、1日に使用する分量だけを“ねど入れ”します。“ねど入れ”とは麻を発酵させ、皮が剥がれやすくするための工程です。発酵させるためには、下の写真に示す「麻蒸し桶」に入れ、“菰(こも)”を掛けて熱が逃げないようにして蒸します。ここでも微生物を利用した「発酵」という高度な技術が用いられているのですね。それも古代から。

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“ねど入れ”して2日目頃、粘り気を生じてきた麻を取り出し、茎の太いものは2,3本、普通のものは4,5本揃えて、根元のほうの約10cmくらいのところを折り、皮の表と裏とをよく揃えて一気に剥ぎ取ります。これが1枚になります。その後よく水に晒して脱色し、木槌で叩いて細かい繊維を取り出していくわけです。

ここには昭和3年(1928年)に行われた昭和天皇の大嘗祭と、平成2年(1990年)に行われた今上天皇陛下の大嘗祭において実際に使われた麻舟と麻蒸し桶が展示されています。

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これは麁服(あらたえ)を織る織女(おりめ)が着る衣装、千早(ちはや)に緋袴装束です。もちろん麻で織られた布で作られています。ちょっと触らせていただいたのですが、とてもキメが細かく、輝くように光沢があり、柔らかなので驚きました。まるで絹、いや絹よりももっと光沢があるので、細いナイロン繊維で織られた上等な布のようでした。もうビックリです。麁服(あらたえ)で織られる布は、当然のこととしてもっと上質のものと思われますので、いったいどんなものなのか興味が湧きます。

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これが麻の繊維を紡いだ糸です。綿よりも細くて柔らかくてフワフワしています。麻というと茶色でゴワゴワした硬い繊維のイメージがあるのですが、それって前述の亜麻(あま)や苧麻(からむし)、黄麻(ジュート)、マニラ麻、サイザル麻などで、植物学的に日本の麻とは全く違うものなのですね。日本本来の麻とはこんなに凄いものなのですね。

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ところで、麁服(あらたえ)を織るのは選出された未婚の織女(おりめ)と決められているそうなのですが、今度の大嘗祭のために地元の中学校や高校で部活ででも育成するのでしょうか? 前回大嘗祭が行われたのは平成2年(1990年)のことで、まだ30年も経っていないので、前回の麁服(あらたえ)の織女を経験した指導者になる女性はまだ残っていると思われますが、前回って大変だったでしょうね。昭和天皇の時代は64年間も続いたわけですから。ちなみに、麁服(あらたえ)を織るのは(その4)でも触れた吉野川市山川町(旧・麻植郡山川町)にある山崎忌部神社。その山崎忌部神社にて5人の織女(おりめ)が千早に緋袴装束で、精麻から糸を作り、麁服を織りあげます。

三木家に残る古文書も幾つか展示されています。これは貞和2年(1346年)にいただいた名主職裁許状です。

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これは正慶元年(1332年)にいただいた神祇官勅使下文。「三木右近允氏村は昔の代から大嘗会に御殿人として奉仕するのであるから麻植忌部の長者として濫妨しないように」と代官と勅使の連署をもって下したものだそうです。

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これは同じく正慶元年(1332年)にいただいた太政官符案。光厳天皇の大嘗会に関するものです。光厳天皇は後醍醐天皇が北条氏討伐に踏み切って都を去ったことにより擁立されました。

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これは文応元年(1260年)にいただいた斎部氏長者下文。亀山天皇の大嘗会の後に今日の斎部氏長者から発せられたものです。ここに展示されている古文書の中では最も古いものです。

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ちなみに、鎌倉時代から綸旨は墨書き書状の再生紙を、無い場合は墨を入れて漉いた薄墨色の紙を使用し、容易に改竄や複製ができない様にしていたそうです。こんな昔から優れたセキュリティ技術が日本には(阿波には)あったのですね。

三木家資料館の裏の紅葉(モミジ)が見事に色づいています。

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下の写真の左側は徳島県名産の酢橘(スダチ)です。スダチは徳島県原産の果物で、カボスや柚子(ユズ)と同じ香酸柑橘類で、食酢として使っていたことにちなんで、「酢の橘」から酢橘(すたちばな)と名付けられました。徳島では鍋料理やサンマなどの焼き魚、魚介類の刺身、あるいは焼き松茸などを食べる直前に、料理に果汁をかけるために添えられます。また、徳島県では果実だけでなく、ジュースやお酒などに加工されても売られています。右側は桑の木です。麻と並んでこのあたりでは絹の生産も盛んに行われていました。蚕が食べるために植えられていた桑の木ですが、かなり大きな木に成長しています。『魏志倭人伝』によると、邪馬台国では「稲や苧麻(からむし)を植え、桑で蚕を飼い、紡いで細い麻糸、綿、絹織物を作っている」と書かれています。まさにここのことを書いているように思えます。

エッ!邪馬台国は四国にあった?(その6)

国道492号線から分岐して三木家住宅まで延びてきていたあのつづら折りの急カーブの続く急勾配の坂道「三ッ木農免農道」は、三木家住宅を過ぎたあたりから急に道幅が狭くなります。ここまでは乗用車でなんとか来れたのですが、ここから先はクルマでは無理です。この「三ッ木農免農道」は間違いなく三木家のため、もっと正確に言うと、天皇家に調進する麻のためだけに作られた道路のようです。ちなみに、下の3枚目の写真が国道492号線から分岐して三木家住宅まで延びてきた道路です。三木家住宅の前から急に道幅が狭くなります。この先もずっと続いているようですが、いったいどこまで続いているのでしょう。気になります。それにしても、これから来年(2019年)に予定されている次の天皇即位の大嘗祭の準備のため、宮内庁の職員の方々も含め、多くの方が、あのつづら折りの急カーブの続く急勾配の坂道を登ってくるのでしょうね。

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もう一度三木信夫さんにご挨拶をして三木家住宅を後にしました。三ツ木農免農道を国道492号線に下る途中、2台の軽トラックとすれ違いました。2台とも向こうが登りであるにもかかわらず、退避場所で待っていてくれました。2台とも2人ずつが乗車していて、これから三木信夫さんのところに向かう人達のようです。お客様というのはこの方々のことだったのかもしれません。おそらく地元木屋平村の人と大嘗祭に向けての麻の栽培等に関する打ち合わせがあるのかもしれません。

考えてみると、三木信夫さんはこれから2年間は次の大嘗祭のためにお忙しく、おそらくここは立ち入り禁止になるでしょうから、今回お会いできたのは本当にラッキーでした。車中の5人は皆一様に興奮が隠せない様子でした。

それにしても、古代から今の時代に至るまで天皇陛下が即位するために、なんで四国の徳島の山奥に住む阿波忌部氏が作った麻の麁服(あらたえ)が必要なのか…(奈良時代に制定された延喜式に明確に書かれています)、それだけでも徳島と大和朝廷との間の密接な繋がりがわかります。2019年11月23日に行われる大嘗祭で、このことに気づく人が世の中でいっぱい出てくると思います。そして邪馬台国四国説も大いに注目を集めることになると思います。今度の大嘗祭はとにかく注目です。



……(その19)に続きます。

執筆者

株式会社ハレックス前代表取締役社長 越智正昭

株式会社ハレックス
前代表取締役社長

越智正昭

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