2018/05/01

大人の修学旅行2018 in鹿児島(その9)

次に訪れたのは「黒神埋没鳥居」です。

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桜島には、島内のいたるところに多くの退避壕が設置されています。これは、噴火に伴う火山弾や火山礫といった噴出物から身を守るためのシェルターです。今も活発に活動を続けている活火山がある桜島ならではの建造物ですね。

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大正3年(1914年)に起こった大正大噴火により、それまで完全な島だった桜島と大隅半島が陸続きになりましたが、「黒神埋没鳥居」はその際に火山から流れ出した溶岩等により埋もれてしまった鳥居のことです。高さ3メートルもあった腹五社神社(黒神神社)の鳥居が笠木だけ残して埋没し、人の背丈以下になっています。その時の噴火では1ヶ月にわたって計30億トン以上もの溶岩が噴出し、神社のあった黒神村全687戸も同時に埋もれてしまいました。当時の東桜島村長が噴火の脅威を後世に伝えようと掘り起こすのをやめたため、そのままの形で現在に至っています。埋没した黒神神社の鳥居と長野氏宅の門柱は、大正大噴火の猛威を如実に物語るものとして、昭和38年4月に鹿児島県の天然記念物に指定されました。

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隣には、奇跡的に生き残ったアコウの老樹がひっそりとたたずんでいます。ここに来るまでにもアコウの群生というのを観光バスの車窓で眺めました。アコウはクワ科の半常緑高木で、樹高は約10〜20メートル。幹は分岐が多く、枝や幹から多数の気根を垂らし、岩や露頭などに張り付くのが特徴です。前述のように幹に分岐が多いので、材木としての価値はほとんどないものの、多数の気根を垂らして岩や露頭などに張り付くために、桜島では防風樹や防潮樹として利用されています。

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ドライブイン「旅の里」で小休止です。ここには火山展望台が併設されています。ここは桜島の東側、黒神埋没鳥居にほど近いところで、この展望台からは現在活動中の昭和火口が大きく口をあけて、そこから大量の水蒸気を噴出している様子が見てとれます。これぞ桜島!…という大迫力の光景です。なお、この展望台にある埋没鳥居は黒神埋没鳥居のレプリカです。

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桜島は全島が火山噴出物で構成されているため、農業をやるにしても生育に適する農作物は限られています。桜島の特産品として、カブ(蕪)を大きくしたような世界一大きい大根「桜島大根」と、世界一小さなみかん「桜島小みかん」が有名です。

これが桜島大根を育てている畑です。桜島大根は桜島の特産品でギネスブックに認定された世界一大きい大根です(世界最大種)。重さは通常で約6kg前後、大きな物になると約30kg,直径にして約40〜50cmほどにもなります。地元では「しまでこん」とも呼ばれています。このドライブイン「旅の里」では種子から育てた自家製の「しまでこん」で特産品の直径の大きな千枚漬けを作っていて、販売しています。「我が家の家庭菜園でもできるかなぁ〜」と私が言うと、店のご主人が「この種子、持って帰りなさい」と言っていただけたのですが、大きな大根に育てるためには火山灰質の土壌を用いて多くの手間をかける必要があるため、それはお断りして、ご主人が漬けたという直径の大きな千枚漬けをお土産に買って帰りました。

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こちらは同じくドライブイン「旅の里」で栽培されている「桜島小みかん」です。「桜島小みかん」は桜島で生産されているこちらもギネスブックに認定された世界一小さいミカンで、火山灰土壌のため稲作に適さない桜島において重要な商品作物の一つとなっています。樹齢200年以上の大木として栽培されているものもあり、一本の木から数百キログラムの果実が収穫されることもあります。果実は12月上旬に熟し、重さ20〜50グラムの扁平な球状となります。

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世界一小さいと言っても、ドッコイ甘さは一級品。袋はやや堅いのですが強い甘味があるのが特徴です。鹿児島県の大隈半島に住む妻方の親戚が毎年暮れになると送ってくれるのですが、柑橘どころの愛媛県出身の私もビックリの甘さです。3月なので旬の時期はとっくに過ぎているのですが、まだ少し残っていました。店のご主人に「この人達、桜島小みかんを食べたことがないと言うので、ほんのちょっと採って食べてもいいですか?」と聞くと、「どうぞどうぞ」と言っていただいたので、少し採ってキョウコさんやノリコさんに試食していただきました。「皮の表面が灰色に汚れたように見える桜島小みかんだけど、それは火山灰が付着しているだけ。皮を剥いたら全然平気」と言って手渡すと、あまりの甘さにちょっと驚いたような表情をされていました。

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ドライブイン「旅の里」でお土産を買って定期観光バスは先に進みます。ここが大正3年(1914年)に発生した大正大噴火により大隅半島と陸続きになったところです。

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その大正大噴火は次のようなものだったと伝えられています。

大正3年(1914年)1月12日午前10時5分、桜島西側中腹から黒い噴煙が上がり、その約5分後、大音響と共に大噴火が始まりました。約10分後には桜島南東側中腹からも噴火が始まり、間もなく噴煙は上空3,000 m以上に達し、岩石が高さ約1,000 mまで吹き上げられるのが見えました。午後になると噴煙は上空10,000 m以上に達し桜島全体が黒雲に覆われました。大音響や空振を伴い断続的に爆発が繰り返され、午後6時30分には噴火に伴うマグニチュード7.1の強い地震(桜島地震)が発生し、対岸の鹿児島市内でも石垣や家屋が倒壊するなどの被害がありました。

翌1月13日午前1時頃、爆発はピークに達しました。噴出した高温の火山弾によって島内各所で火災が発生し、大量の軽石が島内及び海上に降下し、大量の火山灰が風下の大隅半島などに降り積もりました。午後5時40分に噴火口から火焔が上っている様子が観察され、午後8時14分には火口から火柱が立ち火砕流が発生し、桜島西北部にあった小池、赤生原、武の各集落がこの火砕流によって全焼しました。午後8時30分に火口から溶岩が流出していることが確認され、桜島南東側の火口からも溶岩が流出し始めました。

1月15日、赤水と横山の集落一帯が、桜島西側を流下した溶岩に覆われました。この溶岩流は1月16日には海岸に達し、1月18日には当時海上にあった烏島が溶岩に包囲されました。一方、桜島南東側の火口から流下した溶岩も海岸に達し、噴火前には72メートルもの深さがあった瀬戸海峡も埋め立てられていき、ついに1月29日、桜島が大隅半島と陸続きになりました。この時、瀬戸海峡付近の海水温は49℃にまで達したと伝えられています。溶岩の進行は2月上旬に一旦停止したのですが、2月中旬には今度は桜島東側の鍋山付近に新たな火口が形成され、溶岩が流出し始めました。翌大正4年(1915年)3月、有村付近に達した溶岩の末端部において、2次溶岩の流出がありました。この活発な噴火活動は大正5年(1916年)にほぼ終息しました。あとにはこの噴火によって形成された直径400 メートルものほぼ円形の大正火口が残されました。

次に定期観光バスが立ち寄ったところは「有村溶岩展望所」です。有村溶岩展望所は桜島の南側、南岳の麓にある有村地区の大正3年(1914年)に発生した大正大噴火の大正溶岩原に作られた展望所です。一面に広がる溶岩原と、その上に根を張るクロマツが、非日常の景色を作り出しています。

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ここから見る御岳(南岳)は、薩摩半島の鹿児島市から眺める横長の桜島とは違った円錐型をしています。北岳と南岳という2つの山が並ぶ複合火山である桜島は、見る場所によって全くその姿が変わります。注目は、山の右(東)側の8合目あたりです。現在活動中の昭和火口がこのすぐ裏手にあるため、ゴーっという音(鳴動)や、噴火に伴う爆発音が聞こえることも珍しくないそうです。

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NHK大河ドラマ『西郷どん』のオープニングに使われている映像や番宣ポスターはどうもこの場所で撮影されたもののようです。

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またライオン岩と呼ばれる変わった形の溶岩もあります。

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また、全長約1kmの遊歩道からは、桜島の御岳(南岳)だけでなく、東南方向には錦江湾も一望することができ、天気がよければ開聞岳まで望むことができます。今日はその天気のいい日で、開聞岳が霞んではいますがしっかり見えます。あのあたりが錦江湾(鹿児島湾)の入り口で、阿多カルデラがあるあたりなのですね。

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有村溶岩展望所をあとにして、定期観光バスで桜島の西岸を桜島港に向かいます。

バスガイドさんからこの桜島は「放浪記」や「浮雲」で知られる小説家の林芙美子さんの出身地だということをお聞きしました。林芙美子さんと言えば広島県の尾道市ってイメージが強いのですが、生まれはこの鹿児島県の桜島だったんですね。桜島の有村にある古里公園に「林芙美子文学碑」が建っているのだそうです。

私達の世代にとって桜島といえば、歌手の長渕剛さんが2004年8月21日に開催した伝説の「長渕剛 ALL NIGHT LIVE IN 桜島 04.8.21」ですね。このALL NIGHT LIVEには全国から約7万5千人の観衆を集め、大成功を収めたことで伝説のライブと呼ばれています。ALL NIGHT LIVEの会場であった桜島からの音は海を越えた鹿児島市でも聞き取れたといわれています。ALL NIGHT LIVEの会場だった桜島西側にある赤水展望広場には、その長渕剛さんのALL NIGHT LIVEを記念した「叫びの肖像」という像が建っています。ちなみに長渕剛さんは私と同じ昭和31年(1956年)生まれです(私は早生まれなので、学年的には私が1つ上ですが…)。

国民宿舎レインボー桜島と桜島港で私達以外の乗客を降ろし、貸切状態となった鹿児島市交通局の定期観光バスは私達を乗せたまま桜島港から桜島フェリーに乗り込みます。これも滅多にできない経験なので、参加してくれた仲間達からは意外と好評でした。ちなみに、バスに乗ったままフェリーに乗り込むのですが、乗った後はバスから降りて、船室で過ごさないといけません。

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私達を乗せたフェリーが桜島港を出港し、徐々に桜島が遠ざかっていきます。楽しかった『大人の修学旅行2018in鹿児島』の2日間もそろそろ終わりの時が近づいてきました。

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錦江湾(鹿児島湾)では時々イルカに遭遇することがあるということを書きましたが、この日遭遇したのはイルカではなく………、海上自衛隊の潜水艦でした。鹿児島に海上自衛隊の基地などないのに、何故潜水艦がこの錦江湾にいるのだろう?…と疑問に思って調べてみると、錦江湾には海上自衛隊鹿児島試験所というところがあるのだそうです。錦江湾の外海の影響がなく水深が深いという地形を利用し、魚雷の発射試験や艦艇の音響測定を行っている海上自衛隊で唯一の試験所なのだそうです。姶良カルデラの意外な利用価値ですね。

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桜島フェリーターミナルに到着しました。鹿児島市交通局の定期観光バスさんには通常の観光バスのルートとは異なるパース通り、ナポリ通りという鹿児島市の姉妹都市の名称の付いた通りを通っていただいて、通常よりも少し早い12時30分にはJR鹿児島中央駅に着いていただきました (くわえて、通常の1本前のフェリーに乗船してくれたようです)。13時45分発の九州新幹線で帰る人がいるので、昼食を摂る時間を考慮すると、ほんのちょっとでもいいから早く鹿児島中央駅前に着いていただけませんか…と事前にお願いをしておいたので、配慮していただいたようです。こういう“お役所”とは思えない臨機応変さに感謝感謝です。私は鹿児島市交通局さんのファンになっちゃいました。

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予定よりも少し早く鹿児島中央駅前に到着できたので、昼食はゆっくりと頂くことができました。この日は鹿児島マラソンがあり、店の人が出場するのか、マラソン参加者への炊き出しをやっているのか鹿児島中央駅前はシャッターを下ろしている店も多く、また予約が取りづらかったりして、予約したお店は鹿児島中央駅から徒歩で7〜8分ほどの薩摩旬彩ダイニング悠庵というお店。前日の国民宿舎レインボー桜島での夕食と同じく黒牛、黒豚、黒鶏、カンパチなど地元薩摩食材を使った郷土料理です。鹿児島の味覚はこれに尽きますから。トドメだぁ〜って感じでこのお店でこのコースを予約しちゃいました。皆さん、喜んでいただけたようで良かったです。

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昼食後、『大人の修学旅行』のツアー旗を次回の幹事に手渡して、幹事の引き継ぎを行い解散としました。

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九州新幹線で関西方面と地元香川県に帰る人達を鹿児島中央駅でお見送り。次いで、延泊組のショーちゃん、モトム君、マサヤの3人に私とユウテン君という鹿児島空港から首都圏に戻る2人が見送りを受けて、それぞれ家路につきました。表情からも皆さんにご満足していただけたように窺え、幹事としてホッと安心しました。よかったよかった。

今回は私の妻も含め、鹿児島市交通局、国民宿舎レインボー桜島といった鹿児島関係者の皆さんがいろいろと相談に乗ってくれたので幹事として助かりました。Special thanksです。

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鹿児島空港です。霧島連山の新燃岳の噴煙は2日前よりも激しく吹き上げているように見えます。ちなみに、霧島連山の新燃岳はこの2日後の3月6日(火)の午後2時半頃、爆発的噴火が発生しました。爆発的噴火は2011年の1月から3月にかけて相次ぎ発生して以来、7年ぶりのことです。気象庁によると、爆発的噴火はその後も続き、噴煙は火口から最高で約2,300メートルの高さまで上昇したのだそうです。大きな噴石の飛散はなく、宮崎県や県警によると、けが人や家屋損壊などの被害情報は入っていないそうです。この噴煙はその前兆ってことなのでしょうね。

鹿児島空港を離陸直後、飛行機の左手眼下に霧島連山の山容が見えます。丸い噴火口が見えるのは高千穂峰で、噴煙を上げている新燃岳はその少し先にあります。高千穂峰は標高は1,574メートル。典型的な成層火山で、霧島連峰の第二峰です (第一峰は韓国岳:1,700メートル)。西部に活火山である御鉢(おはち)、東部に二ツ石の寄生火山を従えた美しい山容をしていて、山体は霧島錦江湾国立公園に指定されています。写真で見える噴火口はその活火山の御鉢で、直径東西約550 メートル、深さ約200メートルの火口があり、最近では大正2年(1913年)に噴火を起こしました。

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次回は島根県の松江市と出雲大社での開催です。3月のこの時期だと、もしかすると山陰の出雲は雪で埋もれているかもしれないね…ということで、開催時期は今年の12月ということに早倒しになっちゃいました。9ヶ月後には仲間達と再会できます。しかも驚いたことに既に参加表明者が今回の鹿児島を上回る15名を超えちゃっています。皆さん、還暦を過ぎて数年が経ち、会社勤めに一区切りを打ったり、子育てや親の介護に一区切りを打ったり…で、動きやすくなってきているのかもしれません。加えて、気のおけない昔の仲間達との交流にも気持ちが向くようになっているのかもしれません。39名のクラスだったので、この調子だと夢の過半数20名越えも不可能ではないと思えてきました。やっぱ、こういうものは毎年定期的な開催というものを続けないといけませんね。

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キョウコさんとノリコさんがお揃いで買った「くろぶた にゃんこ」の写真がLINEで送られてきました。今回の『大人の修学旅行2018in鹿児島』をご満足いただけた証しのように私は受け取らせていただきました。

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――――――――〔完結〕――――――――

執筆者

株式会社ハレックス前代表取締役社長 越智正昭

株式会社ハレックス
前代表取締役社長

越智正昭

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