2016/11/11

IBM World of Watson 2016(その1)

日本IBMさんからのお誘いを受けて、10月24日(月)から27日(水)にアメリカ合衆国ネバダ州のラスベガスにあるMandalay Bay Hotelをメイン会場として開催されたIBMの『IBM World of Watson 2016』に、弊社の小川常務取締役と一緒に出席してきました。

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私がここで申し上げるまでもありませんが、IBM(International Business Machines Corporation)は、アメリカ合衆国ニューヨーク州アーモンクに本社を置き、日本をはじめ、世界170カ国以上で事業を展開しているIT企業です。事業内容は民間法人や公的機関を対象とするコンピュータ関連のサービスおよびコンサルティングの提供と、ソフトウェア、ハードウェアの開発・製造・販売・保守、及びそれらに伴うファイナンシング、メインフレームコンピュータからナノテクノロジーに至る分野でサービスを提供しています。ダウ平均株価の銘柄に含まれる30社のうちの1社であり、2016年時点で約38万人の従業員数を擁する世界最大級の規模の企業です。

IBMは研究機関としても有名で、2016年時点では米国特許取得数が23年連続の1位となっています。IBMによる発明は、現金自動預け払い機(ATM)、ハードディスク、フロッピーディスク、磁気ストライプカード、リレーショナルデータベース(RDB)、SQLプログラミング言語、バーコード、DRAMなどがあり、悔しいことではありますが、世界のIT関連の技術の潮流のほとんどはIBMによってもたらされたと言っても過言ではありません。基礎科学の研究にも力を入れ、傘下のワトソン研究所やチューリッヒ研究所からは、現在までに5人のノーベル賞をはじめ、6人のチューリング賞、10人のアメリカ国家技術賞、5人のアメリカ国家科学賞の受賞者を輩出しています。

IBMは既存のコモディティ化した市場を脱出し、高付加価値な収益性の高い市場に着目することで、事業構成を絶えず積極的に組み替えていることでも有名です。例えば1991年にプリンタ事業をLexmarkに分社し、2005年と2014年には中国のレノボへのパーソナルコンピュータ(ThinkPad)およびx86ベースのサーバー事業を売却し、世界中を驚かせました。その一方でPwCコンサルティング(2002年)、SPSS(2009年)などの企業を買収しました。またファブレス化として2014年にIBMのグローバルな商用半導体技術事業を米GLOBALFOUNDRIESに工場、技術者、テクノロジー知的財産だけではなく、現金15億ドルまでも付けて譲渡すると発表しました。

そのIBMが現在、社運を賭けて取り組んでいるのが「コグニティブ・ビジネス(Cognitive Business)」。“ビッグデータ”の時代が到来したと言われるように、大量のデータが容易に手に入るようになった現在、単にディジタルビジネスを実現するだけでは顧客の期待を超えることはできません。既に先進的な企業ではディジタル・インテリジェンスを取り入れた「コグニティブ・ビジネス」を実現しつつあります。データを知識に変え、人間の専門性を高め、驚異的な速さで変化する市場のニーズを先取りする「コグニティブ・ビジネス」は、人とコンピュータとの関わり方を根本から変えようとしているというのが、IBMの主張です。

その核となるのが、Watson(ワトソン)と呼べばれる情報基盤技術。Watson(ワトソン)とは、IBMが開発した質問応答システム・意思決定支援システムのことです。人工知能と紹介されることもありますが、IBMはWatsonのことを、自然言語を含むあらゆる情報から学習し、自然な対話を通じて、私達人間の意思決定を支援するコグニティブ・コンピューティング・システム(Cognitive Computing System)のことであると定義しています。すなわち、最近話題のビッグデータやIoT(モノのインターネット)、データマイニング、データサイエンス、人工知能、認知科学もWatsonの中に包含されるという総合的な考え方であり、システムのことであるということです。

Watsonでは、人間と同じように自然な言葉をそのまま理解し、さまざまな分野の専門知識を学習して自分の知識として蓄えます。これにより、曖昧な質問からでも膨大なデータを基に適切な回答を見つけたり、一見バラバラな情報の中から関連性の深い情報をまとめてくれたりといった、これまでのコンピュータでは難しかった処理が簡単にできるようになります。

ちなみに、Watsonの名称は、IBMの事実上の創立者であるThomas John Watson, Jr.からつけられました。そういうところにも、Watsonに賭けるIBMの意気込みが窺えます。

IBM Watsonの日本語版公式サイト

Watsonに関しては、IBMが開発者向けにクラウド上で公開したことにより、同社が提供する開発ツールを使うと、Watsonを利用するアプリやソフトを容易に開発することができるようになり、特に今年に入ってからWatsonを利用したアプリの開発が全世界で急ピッチで進められています。

このような背景の上で開催された今回の『IBM World of Watson 2016』ですが、全米のみならず、全世界から多くの人が参加して、盛大な盛り上がりでした。主催者発表によると全世界102カ国から約17,000人の方々が今回の『IBM World of Watson 2016』に参加したのだとか。この数字は主催者発表ではありますが、会場の様子を見る限り水増しした数字のようには思えません。

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初日の夕方に日本からの参加者だけのJAPAN レセプションが開催されたのですが、そこへの参加者(すなわち、日本からの参加者)も約300人。かなりの人数の方々がわざわざこのIBMのイベントに参加するために太平洋を渡ってラスベガスに来ていました。

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2日目の午前中、T-Mobile arenaというボクシングの世界タイトルマッチも行われるような巨大なイベント会場で行われた「Welcome to the World of Watson」と「Data and Cloud: The Foundation for Cognitive Business」と題した主にIBMの幹部が行うKeynoteセッションに参加したのですが、収容人員2万人と言われるT-Mobile arenaの座席がほぼ満席でした。1企業が開催した単独コンベンションで、これほど盛大なコンベンションに参加したのは私は初めてのことです。さすがは世界のIBMというところですし、そのIBMが打ち出したWatsonが全世界から注目を集めているということなのでしょう。モノ凄い光景でした!

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この日のKeynoteセッションではアメリカのジャーナストでコラムニストで、新聞等の印刷報道、文学、作曲に与えられる米国で最も権威ある賞であるピューリッツァー賞を3度も受賞したことで世界的にも広く知られているThomas L. Friedman氏が「Watsonが拓く未来」について講演されたのですが、聴いていて鳥肌が立ってくるような実に素晴らしい講演でした。約2万人近い聴衆(それも、聴いているほとんどがIT技術者)の心を鷲掴みにするような説得力の話ぶり。聴いていて夢と希望が湧いてきました。

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講演の中で、Friedman氏は、現代は3つの加速の中にある。1つはムーアの法則。
(注) ムーアの法則(Moore’s law)とは、インテル創業者の一人であるGordon E. Moore氏が、1965年に自らの論文上で唱えた「半導体の集積率は18か月で2倍になる」という半導体業界の経験則のことです。このムーアの法則は、技術的な原理のことではありますが、ハイテクマーケティングの前提として、必ず押さえておくべき半導体性能の原則で、IT業界ではムーアの法則を理解していないと致命的な戦略ミスを犯す可能性があると言われています。

そして、もう1つがグローバル化、さらにもう1つが地球温暖化(気候変動)の3つです。この3つの加速の中で、我々を取り巻く世界、特にITを取り巻く世界はかつてないくらいに劇的な変動を起こしつつあります。

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特に2007年が世界中で大きな転機となりました。この年にiPhoneが発売され、FacebookやTwitterが始まり、ビッグデータ活用における主要技術として、現在、活用が進んでいるHadoop(ハドゥープ)もこの年に最初の実用版が世の中に出ました。コンピュータネットワークをベースとしたコンピュータ資源の利用形態であるクラウド・コンピューティングもこの2007年頃から世の中の注目を集めるようになってきました。それまでASPとかSaaSなど呼ばれていたこのコンピュータの利用形態も2006年にGoogleのCEOであったEric Emerson Schmidt氏が、米国カリフォルニア州サンノゼ市 (San Jose, CA) で開催された「検索エンジン戦略会議(Search Engine Strategies Conference) 」の中で「クラウド・コンピューティング」と表現。さらには翌2007年にIBMがその時点で実用可能なクラウド・コンピューティングとしてBlue Cloudの計画を発表したことで、一気にクラウド・コンピューティングが一般的な技術言葉となり、利用が広がっていきました。

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その2007年から10年近くが経過し、その2007年に姿を現した技術や仕組みが確実に世界を変えつつあります。それも加速をつけて…。ですから、これまで考えてもいなかったようなこと、これまでの価値観を根底から覆えすようなことが、ほんの近い将来に身近なものとなって私達の目の前に間違いなく現れることでしょう。

これは私・越智もIT屋の端くれなので、日頃から漠然とではありますが感じていたことなので、大いに納得することでしたし、このように明確な言葉として表してくれたおかげで、より明確に意識することになりました。

また、現在話題のAI(Artificial Intelligence:人工知能)も、今後はIAへと昇華していくだろう…とのFriedman氏の見方にも、私は大いに賛同し、心を揺さぶられました。IAとは、Intelligence AssistantやIntelligence Architecture、Intelligence Analyticsの略のことです。私・越智もビッグデータ関連の講演の依頼を受けた時は「アナリティクスで生まれ変わる気象情報ビジネス」という題名で講演をさせていただいておりますし、その講演の中では、「ITのことを“Information Technology”の略だと考える時代は過ぎ、これからは“Intelligence Technology”の略だと考えないといけない時代になっている」ということを常に力説させてきていただきました。なので、Friedman氏のこの見解には大いに賛同しますし、大いに勇気と希望をいただきました。この講演が聴けただけでも、遠くラスベガスにまでやって来た甲斐があったと思ったほどです。

思い起こしてみると、私が現在弊社ハレックスが取り組んでいる気象ビッグデータを活用した気象情報サービスの開発を漠然と思い立ったのが2008年のこと。残りのビジネスキャリアを賭けてこれに取り組もうと決心して前の会社を卒業させていただいたのが翌2009年のこと。で、専任社長になって『メタモルフォーゼ』を合言葉にこれまでの7年間で取り組んできたのが、付加価値サービスへの事業内容の抜本的な変革。その結果、あくまでも試行錯誤の結果として辿り着いたものが、ビッグデータ、クラウド・コンピューティング、インテリジェンス、アナリティクス、API(Application Programming Interface)提供、そしてソリューションの6つのキーワード。現在、弊社ハレックスが取り組んでいる気象ビッグデータを活用した気象情報サービスではこの6つのキーワードを事業の大きな柱としています。おそらく、私の中でも2007年に起きたこのITの世界での新しい大きな潮流が少なからず影響を受けたのではないか…とFriedman氏の講演をお聴きして解釈できました。そして、私の選択は決して間違ってはいなかったんだ…と、大いに勇気をいただけました。ちなみに、IBMが現在、社運を賭けて取り組んでいる「コグニティブ・ビジネス(Cognitive Business)」の中でも、この6つのキーワードが事業の中核をなすものだ…として語られています。


……(その2)に続きます。

執筆者

株式会社ハレックス代表取締役社長 越智正昭

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