2017/05/18

『農業データ連携基盤』を産官学が連携して構築

20170518001

5月15日(月)、東京三田の慶應義塾大学三田キャンパスにおきまして、慶應義塾大学を代表に産官学が連携して構築する情報連携プラットフォーム「農業データ連携基盤(データプラットフォーム)」の構築コンソーシアム発足に関する報道発表があり、弊社ハレックスも同コンソーシアムの参画企業として名前を連ねさせていただいていることから、私も出席してきました。

この「農業データ連携基盤」は、農業ICTベンダーや農業機械メーカー、農業研究機関、農業者および農業者団体などの農業分野に関係する多様など各企業・各機関がそれぞれ保有するシステムを連携させ、また農業に関わる様々なデータを共有・活用できる情報連携プラットフォームを構築しようというものです。

去る3月24日、内閣官房 日本経済再生本部が開催した第6回未来投資会議の会合「ローカルアベノミクスの深化(スポーツ、農業ICT)」の場におきまして、安倍晋三首相は次のような発言をなさいました。

「(前略)もう一つは、農業です。ここにある野菜は、見た目は普通ですがデータを活用して品質を高め、そして出荷できる割合を大幅に高めたそうです。先ほど、同じ農園で取れたこの人参(にんじん)のジュースをいただきましたが、酸味もちょうどよく、かつ甘く、大変飲みやすい人参ジュースでしたので、人参嫌いの方も飲めると思います。今後は、ベテランの経験と勘のみに頼るのではなく、生育状況や気象など様々なデータを活用することで、おいしく安全な作物を収穫でき、儲かる農業にしていきます。このため官民で気象や地図などのデータを出し合い、誰でも簡単に使える情報連携プラットフォームを本年中に立ち上げます。必要なデータの公開を徹底することとし、IT本部の下で、その在り方を具体化していきます。」(詳しくは以下をご覧ください)

安倍晋三首相の発言動画 (首相官邸HP)

日本経済再生本部・未来投資会議 (首相官邸HP)

今回の「農業データ連携基盤」構築コンソーシアムの発足は、この第6回未来投資会議での安倍晋三首相のご発言も受けてのものです。

「農業データ連携基盤」は、安倍晋三首相のご発言にもありますように、今年中に立ち上げることを目指しています。詳しくは以下のプレスリリース資料をご覧ください。

プレスリリース 「農業データ連携基盤構築への参画について」(PDF)

ちなみに、プレスリリース資料の本文中にある“エビデンスベースのデータ活用型の農業”とは、一口で言うと、“定量的に管理する農業”ということです。農業も作物を生産する“製造業”ですから、生産性の向上や品質の確保、リスクの回避、戦略の立案に向けて数値化されたデータに基づく定量的な管理の導入は当然の方向性と言えます。農業は自然環境を相手にする産業であり、生産する製品も個々に個性を有する生命体であることから、定量的な管理と言ってもこれまではなかなか難しいところがあったのは間違いのないことなのですが、昨今のIT、特にIoTやビッグデータ、AI技術の急速な進展により、それが徐々に実現可能な時代になってきました。

この変化は“アナログ農業”から“ディジタル農業”への大きな時代の変化とも捉えることが可能なのではないか…と私は思っています。私は20歳代後半の若い頃、日本電信電話公社(現在のNTT)の技術局という部署におきまして日本全国の加入者線及び中継伝送路のディジタル化(各種ディジタル伝送装置の開発等)を担当させていただいたのですが、農業というマーケットに関心を持つようになって以来、その時に実感した興奮と非常によく似た興奮を、今、感じているところです。

私がここで申し上げることでもないのですが、高齢化の進行による次世代の担い手不足や、ベテラン農家の「経験と勘」という言葉に代表される技術継承の問題は、日本の農業が直面する非常に大きな課題です。これらの課題はなにも今に始まったことではなく、これまでずっと何年も、いや何十年も認識され続けてきた課題であるにもかかわらず、いっこうに改善する兆しもなく、残念ながら今に至っているように思えます。このため、この課題を解決するためにはこれまでの延長線上にあるような小手先の取り組みではなく、もっと根本的な産業構造の仕組みの整備の部分から取り組んでいかないといけない…と私は思っています。その根本的な産業構造の仕組みの整備がプレスリリースに書かれている“エビデンスベースのデータ活用型の農業”であり、私が言うところの“ディジタル農業”への脱皮であるという認識です。今回の『農業データ連携基盤』の構築はそのための第一歩だ…というふうに私は大いに期待しており、お声をかけていただきましたので、弊社ハレックスといたしましても喜んで構築コンソーシアムに参画をさせていただいた次第です。

上記プレスリリース資料の【農業データ連携基盤(データプラットフォーム)の基本的な機能】の項に「1kmメッシュ気象予報」という文字が出ていますが、弊社ハレックスはこのコンソーシアムの中でこの詳細な気象情報の提供を担当させていただきます。弊社ハレックスは気象庁から提供される膨大な気象ビッグデータ(オープンデータ)を独自に開発したオンラインリアルタイム・ビッグデータ処理によりAPI(Application Programming Interface)やクラウド連携により提供するオリジナル気象情報サービス『HalexDream!』を現在事業の大きな柱とさせていただいているのですが、この「農業データ連携基盤(データプラットフォーム)」構築コンソーシアムでは、この『HalexDream!』をベースに、より農業の生産現場に特化し、様々な業務システムにそのまま組み込んでご活用いただけるような気象情報の提供に取り組ませていただきたいと考えています。

20170518002

この日の報道発表では今回の「農業データ連携基盤」構築コンソーシアムに参画する各企業・各機関の代表者が次々に壇上に上がり、「農業データ連携基盤」に対する思いを一言ずつ述べさせていただく時間を設けていただいたので、私も弊社ハレックスを代表して一言述べさせていただきました。そこで私が申し上げたのは、

① 世の中の最底辺のインフラは地形と気象。すなわち自然環境のデータがそもそもの基盤です。そのことを一番わかっているのが、情報インフラ、通信インフラを長年構築・運用してきたNTTグループ。その面で農業データ連携基盤を下から支える貢献をさせていただく所存です。 (ちなみに、このコンソーシアムには弊社に加えて“地形”の部分の情報を扱うNTT空間情報株式会社さんも参画なさっています)。

② 自然には“圧倒的破壊力を持つ脅威の側面”と“代え難い恵みの側面”がある。その“恵みの側面”をしっかりと目に見える“形”にする産業が農業。その意味で、農業は気象に携わる者にとっては“1丁目1番地”のようなもの。常にそういう意識を持って、農業データ連携基盤の構築に臨みたいと考えています。……

この2点は弊社ハレックスが農業という産業に向き合う時の基本としている考え方、哲学ですが、今回、「農業データ連携基盤」構築コンソーシアムの参画企業の1社に加えていただいたこともそうですが、今日の報道発表の会場にお集まりの皆様の表情からも、そのことが徐々に世の中に浸透していっているのを感じました。そのご期待にお応えせねばなりません。

弊社ハレックスが目指すは、「気象ビッグデータの活用で農業を元気に!」……です d(^_^o)

ちなみに、『農業データ連携基盤』構築コンソーシアムへの参画機関(順不同)は、現在のところ弊社ハレックスに加え、井関農機、NEC、NECソリューションイノベータ、NTT、NTT空間情報、NTTドコモ、慶應義塾大学SFC研究所、クボタ、全国農業協同組合連合会(JA全農)、ソフトバンク・テクノロジー、日本総合研究所、日本農業法人協会、日本マイクロソフト、ネクストスケープ、農研機構、農匠ナビ、パナソニック、日立ソリューションズ、ビジョンテック、富士通、ヤンマー、ライフビジネスウェザー。関係省庁は内閣府、農林水産省、内閣官房、総務省となっています。