2016/06/27

えっ!、イギリスのEU離脱はお天気で決まった?!

イギリスの雨

 6月23日に行われたEU(ヨーロッパ連合)からの離脱の是非を問うイギリスの国民投票は、事前の予想を覆す衝撃的な結果になりました。結果は、「離脱」票が17,410,742票で51.9%、「残留」票が16,141,241票で48.1%、と「離脱」票が127万票、3.8%という僅かな差ではありますが過半数を獲得し、離脱派が勝利しました(投票率は72.2%)。「離脱」の票が過半数を占めたことで、イギリスは今後EUからの離脱に向けて手続きを進めるものとみられ、金融市場の混乱が懸念されるほか、EUの将来にも大きな影響を与えるのではないか‥‥とみられています。

 金融市場の混乱に関しては、実際、開票結果が出た翌日の24日、ヨーロッパの主な株式市場では、イギリスの国民投票で離脱派が勝利したことでヨーロッパ経済の先行きへの懸念が強まって、取引開始直後から全面安の展開となり、イタリアのミラノ市場とスペインのマドリード市場で、株価指数が12%以上も下落するなど、各地で株価が急落しました。米国のニューヨーク株式市場でも、ヨーロッパ経済の先行きへの懸念や、金融市場を通じてアメリカの景気にも悪影響が及ぶのではないか‥‥という見方などから、幅広い銘柄に売り注文が集まりました。ダウ平均株価は前日より610ドル32セント安い1万7,400ドル75セントで取り引きを終え、下げ幅としてはアメリカ国債が格下げされた2011年8月以来の大きさとなりました。

 報道によりますと、この株価の大暴落に関して市場関係者は「市場で、事前に残留が優勢だという見方が広がっていた分、離脱派勝利の衝撃は大きく、売りが売りを呼ぶ展開となった。イギリスのEU離脱が世界経済にどのような影響を与えるのか、見通しがつきにくいことから、当面神経質な値動きが続きそうだ」と分析しているようです。

 日本の東京外国為替市場も、イギリスの国民投票の開票結果を巡って乱高下する展開となり、円の為替相場は、一時、2013年11月以来2年7ヶ月ぶりの水準となる1ドル=99円台まで急騰したほか、ユーロに対しても、2012年12月以来3年6ヶ月ぶりの水準となる1ユーロ=109円台まで値上がりしました。海外で何か大きな問題が起きると、リスクオフのために日本の通貨である『円』が買われる傾向にあります。それは海外投資家から『円』が世界で最も安全な通貨の1つだと認識されているからなのですが、これは必ずしも本来『円』が持っている価値が高いからというわけではなく、あくまでもリスクヘッジとして(他の国の通貨との比較において)円が高騰しているということです。すなわち、今回の円高はグローバル経済における“とばっちり”のようなものです。

 この“とばっちり”のおかげで、日経平均株価も急落しました。24日の日経平均株価は前日比1,286.33円(7.92%)安の1万4,952.02円と、年初来安値を更新し、2014年10月21日以来およそ1年8ヶ月ぶりの安値水準に沈みました。下げ幅はITバブル崩壊時の2000年4月17日以来、約16年2ヶ月ぶりの大きさを記録しました。ちなみに、この日の株価の変動は、円の為替相場が7〜8%上昇したことによるもので、株価をドルに換算し直すとさほどの大きな変動は見られていません。このように、この日の円高株安の原因は極めてわかりやすいものなのですが、“とばっちり”として簡単に片付けられないほど深刻な影響を、この先、日本経済に与えそうです。

 さらに、今回のイギリスの国民投票によるEU離脱の決定は世界の金融市場に大きな影響を与えただけでなく、もしかすると世界の枠組みにも大きな影響を与えることになりそうです。

 まず、イギリスのキャメロン首相は声明を発表し、自らが支持した残留派が敗れたことを受けて「新しい指導者が必要だ」と述べ、辞意を表明しました。また、イギリス国内ではEU残留派が多数派を占めるスコットランドの独立問題が再燃しそうな雰囲気です。もし、スコットランドの独立問題が再燃するようなことになると、それ以前から遥かに根深く燻り続けている北アイルランドの独立問題にも火がつきかねません。そうなると、イギリスにとっては国家分裂ということにもなりかねず、歴史ある大英帝国の終焉ということになります。

 さらに、今回のイギリスの国民投票によるEU離脱の決定を受け、今後予定されているスペインやドイツ、フランスの選挙においても、EU離脱派が勢いを増す可能性が高くなりました。国民投票の結果が離脱と決まったからと言ってもイギリスがすぐさまEUを脱退するわけではなく、これから離脱に向けた交渉が始まるというだけで、離脱交渉は、貿易や外交関係などについて原則として2年間を期限に協議することになるので、実際にイギリスがEUから離脱するのは最低でも2年、場合によっては7、8年かかると言われているのですが、このスペインやドイツ、フランスの選挙の結果によれば、もしかすると、その間にEU自体が崩壊してしまう危険性さえも出てきました。まさに今回のイギリスの国民投票は、EUにとって“終わりの始まり”になりそうな雰囲気もしています。

 このように、イギリスやヨーロッパだけでなく世界中に大激震を与えた今回のイギリスの国民投票の結果ですが、この結果は「当日の天気」により左右されたのではないか‥‥という分析も出されているようです。首都ロンドンを含むイギリス南東部は前日の22日の夜から豪雨に見舞われ、投票日当日の23日も断続的な大雨で浸水の被害が発生したり、交通網が大きく乱れたりしました。一部の投票所では雨のために投票所が急遽別の場所に移されたといったケースもあったそうです。この荒天が有権者の出足を鈍らせた可能性も指摘されています。

 特に、残留派が多いとみられていたイギリス南部やスコットランドは雨が強く、直前の投票前日に残留派がやや優勢という予測が報道各紙を賑わせただけに、若年層の多かった残留派の人達の中には「こんな大雨の中、わざわざ私が投票に行かなくても大勢に影響はないだろう‥‥」というちょっとした油断があったのかもしれません。一方、前日までの予測で劣勢が伝えられていた離脱派の中には危機感が芽生えてしまい、「こんな悪天候であっても、なんとしても投票に行く」という強い意志を持つ人が多く出たことが、この最終結果につながったのではないか‥‥との分析です。実際、残留派が優勢とみられていた地区では、投票率が伸び悩みました。北部スコットランドの主要都市グラスゴーでは残留票が過半数を占めたのですが、投票率は56%台と他の地域に比べて低く、また同じく残留派が優勢とされたイングランド中部のマンチェスターでも投票率は60%を下回りました。

 直前の世論調査では「残留」と「離脱」が拮抗している状況が続いていただけに、こうした天気による有権者の微妙な心理が、僅かな差になって現れてきたというわけです。もしそうであるならば、イギリスの国民にとっても、ヨーロッパの枠組みにおいても、さらには世界の金融市場においても重大な決断が迫られると言われた国民投票の結果が当日の天気によって決まったということになります。

 私は常々、世の中の最底辺のインフラは“地形”と“気象”‥‥と言っていますが、ここまでの影響をもたらすものだとは、正直思っていませんでした。自然の力は偉大である‥‥と言わざるをえません。

 日本でも7月10日に参議院議員選挙があります。こちらも、もしかしたら当日の天気が選挙結果に微妙な影響を与えることになるかもしれません。