2016/04/27
環太平洋火山帯
日本では『平成28年熊本地震』の報道の影に隠れてあまり注目されておりませんが、『平成28年熊本地震』の本震と思われるマグニチュード7.3の大きな地震が起きた翌日の日本時間17日(日)午前8時59分頃、日本からは太平洋を隔てて反対側、約1万5,500kmも離れた南米・エクアドルの太平洋沿岸を震源とするマグニチュード7.8の大きな地震があり、極めて 大きな被害が出ているようです。それに関して次のような報道が流れています。
『エクアドル大地震 死者570人に』
エクアドルの太平洋沿岸で16日午後(日本時間の17日朝)に起きたマグニチュード7.8の大地震では、エクアドル政府のまとめで、これまでに570人が死亡し、7,015人が怪我をしました。さらに、今も155人の行方が分かっておらず、発生からまる4日が経過した被災地では、大勢の救助隊ががれきの下に取り残された人たちの捜索活動を続けています。救助隊員の1人は「まだ、がれきの下に取り残されている人がいる可能性があるので捜索を続けている。生存者が見つかると信じている」と話していました。
エクアドルの太平洋沿岸では、日本時間の20日夕方にもマグニチュード6.2の地震が発生するなど余震が相次いでいて、そのたびに救助活動は中断を余儀なくされるなど難航しています。
また、治安維持のため、1万4,000人の部隊が展開していますが、地震によって交通網が寸断され孤立している地域では、食料や医薬品などが不足しており、被災者の間で不満の声も高まっています。
(NHKニュース&スポーツ 4月21日 11時16分)
『平成28年熊本地震』による死者の数は49人、災害関連死の可能性のある方の数は13人になったという報道もあります。エクアドルの地震と合せると、実に800人近い人がなくなったり今も行方不明だったりするわけで、本当に痛ましいことです。犠牲になられた方に心からお悔やみを申し上げると同時に、被災者の皆様に謹んでお見舞い申し上げます。合掌………………………。
日本もエクアドルもいずれも、火山活動や地震活動が活発な『環太平洋火山帯』の中にあり、世界で発生する地震の約90%はこの『環太平洋火山帯』で発生していると言われています。
この『環太平洋火山帯』とは、その名の通り広い太平洋の周囲をぐるっと取り巻くように並ぶ火山帯のことで、火山列島や火山群の総称とも言えるものです。別名を『環太平洋造山帯』とも言い、ヨーロッパからユーラシア大陸に続く『アルプス・ヒマラヤ造山帯』とともに世界の2大造山帯とも言われています。『環太平洋火山帯』には日本列島や台湾、インドネシア、フィリピン、パプアニューギニア等の島々をはじめ、ニュージーランド諸島、アリューシャン列島などの火山列島、またアンデス山脈、ロッキー山脈などの火山活動により形成された高い山脈が含まれます。
地球の表面は大陸プレートと呼ばれる幾つかの大きな岩盤で覆われているのですが、その中でも一番大きな大陸プレートが太平洋プレートです。『環太平洋火山帯』はその太平洋プレートを中心とする海洋系の大陸プレートが、その周囲をぐるっと取り囲む北米プレートやユーラシアプレートのような大陸系の大陸プレートや他の海洋系の大陸プレートの下に沈み込んでいます。この大陸プレートの沈み込みが起きる接合面には火山群や火山列島が形成されます。このため、地球が誕生して以来、ずっと火山活動や地震活動が活発で、超巨大地震や超巨大火山の噴火のほとんどはこの環太平洋火山帯で発生しています。
で、今回の熊本とエクアドルの2つの地震ですが、いずれも地震の規模が大きく、多大な被害をもたらしたという共通点に加え、ほぼ同日という短い間隔で発生したということで、一部マスコミやネット上ではこの2つの地震に関連性があるのではないか‥‥と注目されているようです。ほぼ同日に起きたことなので、そう思ってしまうのも仕方のないことだと思いますが、震源となった断層の崩壊が起きた大陸プレートが異なること、また、地震の発生メカニズムが異なること、さらには発生時間に微妙なズレがあることから、ほぼ同日に発生という時間だけを根拠にこの2つの地震の間の因果関係を論じることは無理がある…と思っています。
特に震源となった断層の崩壊が起きた大陸プレートですが、熊本地震ではユーラシアプレート内部の断層が、エクアドルの地震では南米プレート内部の断層が崩壊して大きな地震を引き起こしました。しかも、先ほどは「環太平洋火山帯は太平洋プレートを中心とする海洋系の大陸プレートが、その周囲をぐるっと取り囲む北米プレートやユーラシアプレートのような大陸系の大陸プレートや他の海洋系の大陸プレートの下に沈み込んでいるところ」と書きましたが、断層の崩壊を起こしたユーラシアプレートも南米プレートも震源付近では直接太平洋プレートと接しているわけではありません。日本近海のユーラシアプレートはフィリピン海プレートと、エクアドル近海の南米プレートはナスカプレートという海洋系プレートと境界面で接していて、そのフィリピン海プレートとナスカプレートがどちらも巨大な太平洋プレートと接しているという位置関係になっています。
また、エクアドルの太平洋沿岸部を震源とするマグニチュード7.8の大きな地震はナスカプレートと南米プレートの境界に面する衝上断層がズレた結果引き起こされた「メガスラスト(逆断層型)地震」とみられています。地震は、一般的には地下で断層がズレ動いて発生するものです。地震を起こした断層が地下でどのようになっているか(断層が どちらの方向に伸びているか、傾きはどうか)とその断層がどのように動いたかを示すものを”発震機構”と呼びます。地震は、断層の動き方によって、大きく3つ(横ズレを二つに分ければ4つ)のタイプに分けられます。
正断層 : 断層面を境にして、上盤(上側の岩盤)が下盤(下側の岩盤)に対して、ズリ下がる。
逆断層 : 断層面を境にして、上盤が下盤に対して、のし上がる。
横ずれ断層 : 断層面を境にして、水平方向にずれる。
「右横ズレ断層」=断層に向かって相手側のブロックが右に動いた場合
「左横ズレ断層」=断層に向かって相手側のブロックが左に動いた場合
詳しくは以下をご覧ください。
(「発震機構解とは何か」 気象庁HPより)
(「発震機構解と断層面」 気象庁HPより)
前述のように、エクアドルの地震は断層面を境にナスカプレートの上に南米プレートがのし上がるようにズレたことにより発生した「メガスラスト(逆断層型)地震」だという見解が海外の専門家から出されています。歴史的にも、エクアドル周辺ではこの逆断層型による地震が繰り返されてきました。1960年には、同じくナスカプレートと南米プレートがぶつかる境界面で観測史上最大のマグニチュード9.5を記録したチリ沖地震が発生していますが、このチリ沖地震も「メガスラスト(逆断層型)地震」だと分析されています。そうした経緯から今回の地震も同じく「メガスラスト(逆断層型)地震」だという見解が専門家から出されたわけですが、熊本の地震はこれとは別のタイプの「横ずれ断層型」の地震です。これは被災地のテレビ報道の映像を観ても、すぐにお分かりいただけると思います。
ほぼ同日に起きたということに関しても、『環太平洋火山帯』とは太平洋を取り囲む全域ということで、あまりに面積が広いエリアのことなので、そこには実に多くの活火山があり、小規模な地震と火山噴火ならばほぼ毎日のように起きていることなので、それを特別視する必要はないのではないか…と思います。単純に、たまたま大きい規模の地震が日本列島の熊本と南米のエクアドルの2ヶ所でほぼ同日のうちに起きた……と捉えるのが正しいように思います。
ただ、近い将来どうなるかは全く予想もつきませんが、『環太平洋火山帯』は地球誕生以来、その全域において、活発に活動してきていることは確かなことなので、常にグローバルの視点から注意深く見守っていかないといけないことは確かなことのようです。
『エクアドル大地震 死者570人に』
エクアドルの太平洋沿岸で16日午後(日本時間の17日朝)に起きたマグニチュード7.8の大地震では、エクアドル政府のまとめで、これまでに570人が死亡し、7,015人が怪我をしました。さらに、今も155人の行方が分かっておらず、発生からまる4日が経過した被災地では、大勢の救助隊ががれきの下に取り残された人たちの捜索活動を続けています。救助隊員の1人は「まだ、がれきの下に取り残されている人がいる可能性があるので捜索を続けている。生存者が見つかると信じている」と話していました。
エクアドルの太平洋沿岸では、日本時間の20日夕方にもマグニチュード6.2の地震が発生するなど余震が相次いでいて、そのたびに救助活動は中断を余儀なくされるなど難航しています。
また、治安維持のため、1万4,000人の部隊が展開していますが、地震によって交通網が寸断され孤立している地域では、食料や医薬品などが不足しており、被災者の間で不満の声も高まっています。
(NHKニュース&スポーツ 4月21日 11時16分)
『平成28年熊本地震』による死者の数は49人、災害関連死の可能性のある方の数は13人になったという報道もあります。エクアドルの地震と合せると、実に800人近い人がなくなったり今も行方不明だったりするわけで、本当に痛ましいことです。犠牲になられた方に心からお悔やみを申し上げると同時に、被災者の皆様に謹んでお見舞い申し上げます。合掌………………………。
日本もエクアドルもいずれも、火山活動や地震活動が活発な『環太平洋火山帯』の中にあり、世界で発生する地震の約90%はこの『環太平洋火山帯』で発生していると言われています。
この『環太平洋火山帯』とは、その名の通り広い太平洋の周囲をぐるっと取り巻くように並ぶ火山帯のことで、火山列島や火山群の総称とも言えるものです。別名を『環太平洋造山帯』とも言い、ヨーロッパからユーラシア大陸に続く『アルプス・ヒマラヤ造山帯』とともに世界の2大造山帯とも言われています。『環太平洋火山帯』には日本列島や台湾、インドネシア、フィリピン、パプアニューギニア等の島々をはじめ、ニュージーランド諸島、アリューシャン列島などの火山列島、またアンデス山脈、ロッキー山脈などの火山活動により形成された高い山脈が含まれます。
地球の表面は大陸プレートと呼ばれる幾つかの大きな岩盤で覆われているのですが、その中でも一番大きな大陸プレートが太平洋プレートです。『環太平洋火山帯』はその太平洋プレートを中心とする海洋系の大陸プレートが、その周囲をぐるっと取り囲む北米プレートやユーラシアプレートのような大陸系の大陸プレートや他の海洋系の大陸プレートの下に沈み込んでいます。この大陸プレートの沈み込みが起きる接合面には火山群や火山列島が形成されます。このため、地球が誕生して以来、ずっと火山活動や地震活動が活発で、超巨大地震や超巨大火山の噴火のほとんどはこの環太平洋火山帯で発生しています。
で、今回の熊本とエクアドルの2つの地震ですが、いずれも地震の規模が大きく、多大な被害をもたらしたという共通点に加え、ほぼ同日という短い間隔で発生したということで、一部マスコミやネット上ではこの2つの地震に関連性があるのではないか‥‥と注目されているようです。ほぼ同日に起きたことなので、そう思ってしまうのも仕方のないことだと思いますが、震源となった断層の崩壊が起きた大陸プレートが異なること、また、地震の発生メカニズムが異なること、さらには発生時間に微妙なズレがあることから、ほぼ同日に発生という時間だけを根拠にこの2つの地震の間の因果関係を論じることは無理がある…と思っています。
特に震源となった断層の崩壊が起きた大陸プレートですが、熊本地震ではユーラシアプレート内部の断層が、エクアドルの地震では南米プレート内部の断層が崩壊して大きな地震を引き起こしました。しかも、先ほどは「環太平洋火山帯は太平洋プレートを中心とする海洋系の大陸プレートが、その周囲をぐるっと取り囲む北米プレートやユーラシアプレートのような大陸系の大陸プレートや他の海洋系の大陸プレートの下に沈み込んでいるところ」と書きましたが、断層の崩壊を起こしたユーラシアプレートも南米プレートも震源付近では直接太平洋プレートと接しているわけではありません。日本近海のユーラシアプレートはフィリピン海プレートと、エクアドル近海の南米プレートはナスカプレートという海洋系プレートと境界面で接していて、そのフィリピン海プレートとナスカプレートがどちらも巨大な太平洋プレートと接しているという位置関係になっています。
また、エクアドルの太平洋沿岸部を震源とするマグニチュード7.8の大きな地震はナスカプレートと南米プレートの境界に面する衝上断層がズレた結果引き起こされた「メガスラスト(逆断層型)地震」とみられています。地震は、一般的には地下で断層がズレ動いて発生するものです。地震を起こした断層が地下でどのようになっているか(断層が どちらの方向に伸びているか、傾きはどうか)とその断層がどのように動いたかを示すものを”発震機構”と呼びます。地震は、断層の動き方によって、大きく3つ(横ズレを二つに分ければ4つ)のタイプに分けられます。
正断層 : 断層面を境にして、上盤(上側の岩盤)が下盤(下側の岩盤)に対して、ズリ下がる。
逆断層 : 断層面を境にして、上盤が下盤に対して、のし上がる。
横ずれ断層 : 断層面を境にして、水平方向にずれる。
「右横ズレ断層」=断層に向かって相手側のブロックが右に動いた場合
「左横ズレ断層」=断層に向かって相手側のブロックが左に動いた場合
詳しくは以下をご覧ください。
(「発震機構解とは何か」 気象庁HPより)
(「発震機構解と断層面」 気象庁HPより)
前述のように、エクアドルの地震は断層面を境にナスカプレートの上に南米プレートがのし上がるようにズレたことにより発生した「メガスラスト(逆断層型)地震」だという見解が海外の専門家から出されています。歴史的にも、エクアドル周辺ではこの逆断層型による地震が繰り返されてきました。1960年には、同じくナスカプレートと南米プレートがぶつかる境界面で観測史上最大のマグニチュード9.5を記録したチリ沖地震が発生していますが、このチリ沖地震も「メガスラスト(逆断層型)地震」だと分析されています。そうした経緯から今回の地震も同じく「メガスラスト(逆断層型)地震」だという見解が専門家から出されたわけですが、熊本の地震はこれとは別のタイプの「横ずれ断層型」の地震です。これは被災地のテレビ報道の映像を観ても、すぐにお分かりいただけると思います。
ほぼ同日に起きたということに関しても、『環太平洋火山帯』とは太平洋を取り囲む全域ということで、あまりに面積が広いエリアのことなので、そこには実に多くの活火山があり、小規模な地震と火山噴火ならばほぼ毎日のように起きていることなので、それを特別視する必要はないのではないか…と思います。単純に、たまたま大きい規模の地震が日本列島の熊本と南米のエクアドルの2ヶ所でほぼ同日のうちに起きた……と捉えるのが正しいように思います。
ただ、近い将来どうなるかは全く予想もつきませんが、『環太平洋火山帯』は地球誕生以来、その全域において、活発に活動してきていることは確かなことなので、常にグローバルの視点から注意深く見守っていかないといけないことは確かなことのようです。
執筆者
株式会社ハレックス
前代表取締役社長
越智正昭
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