2016/08/10

大人のお泊まり遠足2016 in 京都祇園祭 (その3)

『辰巳屋』さんで抹茶懐石料理をいただいて、幸せな気分になった後は、宇治川河畔の「あじろぎの道」を歩き、平等院へ足を伸ばしました。前述のように、宇治の平等院は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に「古都京都の文化財」として登録されている17の建造物の1つです。その17の建造物とは以下のとおりです。

京都の世界遺産

1. 賀茂別雷神社(上賀茂神社)(京都市北区)
2. 賀茂御祖神社(下鴨神社)(京都市左京区)
3. 教王護国寺(東寺)(京都市南区)
4. 清水寺(京都市東山区)
5. 延暦寺(滋賀県大津市坂本本町・京都市左京区)
6. 醍醐寺(京都市伏見区)
7. 仁和寺(京都市右京区)
8. 平等院(宇治市)
9. 宇治上神社(宇治市)
10.高山寺(京都市右京区)
11.西芳寺(苔寺)(京都市西京区)
12.天龍寺(京都市右京区)
13.鹿苑寺(金閣寺)(京都市北区)
14.慈照寺(銀閣寺)(京都市左京区)
15.龍安寺(京都市右京区)
16.本願寺(西本願寺)(京都市下京区)
17.二条城(京都市中京区) 

このうち、上賀茂神社や下鴨神社、東寺、清水寺、仁和寺、金閣寺、銀閣寺、龍安寺、本願寺、二条城などといった京都市内中心部やその周辺部にある神社仏閣は学校の修学旅行や個人的な京都旅行でたいてい訪れたことがあるのですが、京都市内から少し外れた宇治市にある平等院まで行こうとするには少し勇気(?)が必要で、なかなか訪れる機会がありません。それは私だけに限ったことではなく、訊くと京都在住のオネエ以外は、皆、平等院は初めて訪れるところなのだそうです。まさに「行けそうでなかなか行けないところ」、『大人の修学旅行』のコンセプトにピッタリ合致した観光地選択です。ちなみに、翌17日も午前中、京都市伏見区にある醍醐寺を訪れるのですが、ここも京都市の中心部からは外れたところにあるので、京都在住のオネエ以外は皆初めて訪れるところでした。なので、観光地選定に関しては非常によく考え抜かれていて、幹事二人の企画力に脱帽しちゃいました。

宇治の平等院、中でも本堂である鳳凰堂は10円硬貨の裏側に刻印で描かれていることでお馴染みの藤原氏ゆかりの寺院です。山号を朝日山と称し、宗派は17世紀以来天台宗と浄土宗を兼ね、現在は特定の宗派に属さない単立の仏教寺院となっています。京都の南郊に位置する宇治の地は、紫式部が書いた『源氏物語』の「宇治十帖」の主な舞台になっていて、平安時代初期から貴族の別荘が数多く営まれていました。現在の平等院の地も、9世紀末頃、光源氏のモデルともいわれる左大臣で嵯峨源氏の源融(みなもと の とおる)が営んだ別荘だったものなのですが、それが宇多天皇所有のものとなり、さらに、宇多天皇の孫である源重信を経て、長徳4年(998年)、摂政・藤原道長の別荘「宇治殿」となったものです。藤原道長は万寿4年(1027年)に没したのですが、その子である関白・藤原頼通は永承7年(1052年)にこの宇治殿を寺院に改装しました。これが寺院としての平等院の始まりです。その翌年の天喜元年(1053年)に阿弥陀如来を安置する阿弥陀堂が建立されたのですが、その建物が現在、「鳳凰堂」と呼ばれている建物です。「鳳凰堂」は経典に書かれている西方極楽浄土の宮殿をイメージしたとされ、10円硬貨の裏側の刻印でお馴染みに優美で軽快な印象の建物になっています。

「あじろぎの道」を平等院に向かって歩きながら、幹事のイッカクがそういう平等院の歴史を説明してくれたのですが、それを聞いていたヨシキが一言、「藤原の道長の息子が頼通(よりみち)で、その頼通の息子の名前、知ってるか?」 「ん? はて、誰だ?」 「知らんのか。それは迷い道(まよいみち)だ!」
一瞬、迂闊に納得しかけたのですが、しばらく間をおいて、「なんじゃそりゃ!?」。関西の某私立大学で物理学の教授をやっているヨシキは昔からこういうシャレのセンスが抜群で、時折、こうして我々をケムに巻くようなシャレを言ってきます。これには、一同大笑い。昼に抹茶懐石料理をいただいた際に、日本酒もいただいちゃったので、ほろ酔い気分で、皆さん饒舌になっています。ちなみに、藤原頼通は関白を50年の長きにわたって務め、父の摂政道長と共に藤原氏の全盛時代を築きました。頼通は6男1女の子供に恵まれ、まずは長男・通房を、通房が急死した後は6男の師実を摂関家の後継者に立てたのですが、晩年は頼通と疎遠な後三条天皇が即位したこともあり、摂関家は徐々に衰退へと向かい、やがて院政と武士の台頭の時代へと移ることになります。

20160810-1

そんな軽口をワイワイ叩きながら10分ほど歩くと平等院に到着しました。入口を入ってすぐ、お馴染みの「鳳凰堂」の姿が目に入ってきました。前述のように、「鳳凰堂」は経典に書かれている西方極楽浄土の宮殿をイメージしたとされる建物で、中堂、左右の翼廊、後ろ側の尾廊の4棟の建物から成り、他に例を見ないような優美な構造をした建物です。堂内には平安時代を代表する仏師である定朝の作である現存する唯一の仏像、本尊阿弥陀如来坐像をはじめ、雲中供養菩薩像52体、9通りの来迎を描いた壁扉画など、平安時代・浄土教美術の頂点とも言える宝物が集約されています。鳳凰堂(中堂・両翼廊・尾廊)の建物だけでなく、本尊の阿弥陀如来坐像、52体の雲中供養菩薩像はもちろん国宝です。「鳳凰堂」は建物も素晴らしいのですが、その周辺の庭園も実に素晴らしいものがあります。浄土式の借景庭園として史跡名勝に指定され、現在、鳳凰堂周辺の洲浜や平橋、反橋などが整備されています。緑色をした阿字池の湖面に映る平等院の姿も味わい深いものがあります。

20160810-2

20160810-3

20160810-4 20160810-5

中堂の棟上には、「鳳凰堂」という呼称の由来にもなった金色に輝く一対の鳳凰像が置かれています。この日の午前中は雲が多く、いつ雨が降りだしてもおかしくないようななんとも微妙な空模様だったのですが、午後に入って一気に晴れ間が広がり、時折夏の太陽も顔を覗かせるようになりました。強い太陽の陽射しに照らされて、鳳凰像も美しく金色に光り輝いています。素晴らしい! これも“晴れ男”のレジェンドの神通力というものでしょうか…。それにしても、鳳凰像は素晴らしい! ほぅお〜〜〜ぅ!‥‥‥‥なぁ〜んちゃってね(笑)

世界遺産 平等院 公式サイト

今回は時間の関係で鳳凰堂の内部の見学は出来ませんでしたが(1時間半待ちということでした)、その代わりに、梵鐘や、鳳凰像1対、52体の雲中供養菩薩像のうちの半分の26体をはじめ平等院に伝わる様々な宝物類を保存、展示する「平等院ミュージアム鳳翔館」という博物館が併設されているので、そちらを訪れました。特に雲中供養菩薩像は素晴らしかったですね。雲中供養菩薩像は鳳凰堂中堂内部の長押(なげし)上の小壁(こかべ)に懸け並べられている52体の菩薩像の群像ことです。この群像も本尊阿弥陀如来坐像と同じく平安時代を代表する仏師である定朝の工房で鳳凰堂が完成した天喜元年(1053年)に制作されたものであるとされています。各像はいずれも頭光(輪光)を負い、飛雲上に乗っていろいろな楽器を演奏したり、舞を舞ったり、あるいはいろいろな持物を持ったり、合掌したり…と様々に変化に富んだ姿勢を取っています。5体は比丘形(僧形)をしていて、残りの47体は菩薩形なのだそうです。眺めていて、飽きません。どの菩薩像も慈悲にあふれた優しいお顔をなさっています。

もっとゆっくりと観て回りたかったのですが、時間も押してきたので、京都市内に戻り、この日宿泊する旅館に向かうことにしました。ここ宇治には平等院に加えてもう1つ、世界文化遺産に「古都京都の文化財」として登録されている17の建造物の1つである「宇治上神社」があるのですが、これはまた別の機会に訪れることにしました。京阪電鉄の宇治駅へ向かう通りにはお土産物屋が並んでいましたが、さすがに宇治、香ばしいお茶の香りが通り一帯に漂っていました。京都から宇治まで来るJR奈良線の電車が大混雑していたので宇治も平等院も観光客でいっぱいかな…と思っていたのですが、実際はさほどでもなく、なかなか落ち着いた雰囲気の中で宇治を楽しむことができました。来てよかったと思える素晴らしいところでした。世界文化遺産の「宇治上神社」の見学を残してあるので、またいつか訪れてみたいと思っています。

20160810-6

京都への戻りには京阪宇治駅から京阪電車を利用しました。京阪宇治駅の駅前ロータリーには京都京阪バス(旧・京阪宇治交通)の路線バスが停車していたのですが、車体の色が宇治茶を連想させる渋めの濃い緑色です。そう言えば京都市内でよく見掛ける京都市交通局の路線バスも淡い緑色の車体に渋めの濃い緑のラインが入ります。京阪電車の車両も車体の上半分が渋めの濃い緑色です。このあたりは宇治茶色一色ですね。

日本全国の都市が画一化されていく中において、私は、市内を走り回る路線バスや電車の塗色がその都市の景観を構成する重要な要素となっているという説を持っています。その説からすると、京都市交通局や京都京阪バス、京阪電車の渋い抹茶色は古都京都の落ち着いた雰囲気の中でも目立ちすぎず、かと言ってそれなりの存在感を主張していて、京都という町にピッタリの塗色ではなかろうかと思います。特に、京都市交通局のバスの塗色は、私の中では日本中の路線バスの塗色の中でもトップクラスに入っていると思っています。

京都市内にはこの抹茶色をした京都市交通局と京都京阪バスのほかに、京阪バス、京都バスという2社の路線バスが走っていますが、この2社の塗色も渋くて、古都京都の雰囲気にマッチしていて、素敵です。京阪バスは伝統の赤白ストライプの塗色をボンネットバスの時代からずっと守り続けているのですが、これは京都の秋を見事に彩る紅葉をイメージしているのでしょうか。また、クリーム色の車体にコゲ茶色の横ストライプの入った京都バスの塗色は“渋さ”という点で言うと一番です。バス単体で見るとこの京都バスの塗色はとても地味ぃ〜な印象を受けるのですが、寺院など古い木造建築が多い街並みの中に入ると、すっかりそうした歴史ある景色の中に溶け込んで、メチャメチャいい感じになるのです。このように、京都は電車や路線バスといったふだん市民が日常的に使う公共交通機関の塗色からして、お洒落です。

20160810-7 20160810-8

20160810-9

京阪電鉄宇治線の電車で中書島駅へ。その中書島駅で京阪本線の電車に乗り換え、清水五条駅に向かいます。この京阪電鉄、すべての面においてなんとなく渋さが漂う雰囲気が人気なのか、実はこの京阪電車のファンって意外と多いんです。それも“通”とか“隠れファン”と呼ばれるちょっと控え目だけれど根強い大人のファンが…。渋さの漂う電車が好きという点では私もその一人で、関東地方在住だと京阪電鉄の電車に乗る機会になかなか恵まれないので、短い乗車時間ではありましたが、ちょっと嬉しい“鉄ちゃんタイム”を味わわせていただきました。

そうそう、電車の車内の中吊り広告に関東地方の京浜急行電鉄(京急)さんと、中部地方の名古屋電鉄(名鉄)さん、そして関西地方の京阪電鉄(京阪)さんの3社でコラボしている企画のポスターが掛けられていました。京急と名鉄と京阪ですか……、う~~~ん、なるほどぉ~~。コラボする意味がなぁ~んとなく分かるような気がします。3社とも鉄道マニア的には“渋め”で“通好み”という点で、同じような香りがしますからね。もちろん、この3社とも私は大好きで、3社とも鉄道車両と路線バスのNゲージ模型を持っています!


……(その4)に続きます。