2014/07/02

自助・共助・公助

防災においては“自助”“共助”“公助”という三つの言葉がよく使われます。そして、この“自助”“共助”“公助”それぞれがうまく連携することが、災害対応力を高めるうえで極めて大切なことだとも言われています。


『自助』
『自助』とは、「自らの安全は、自らが守る」ということ。これが防災の基本です。
例えば地震発生時。自宅を安全な空間にしておくことは、自分にしかできないことです。巨大地震の大きな揺れの中では、誰もが自分の身を守ることくらいしかできません。揺れがおさまった時、自分の目の前にある火災を、最も早く消すことができるのも自分です。怪我をした家族の出血を、最も早く止血できるのも自分です。
こうした、自分の手で自分、家族、そして自分の財産を助けるための“備え”と“行動”のことをを『自助』と呼びます。


『共助』
「我がまちは、我が手で守る」、これが自分が住んでいる地域を守る最も効果的な方法です。そして、地域を守ることは、自分を守ることでもあります。
地震の揺れがおさまり、自宅が無事であったとしても、隣の家から出た火を放っておけば、自分の家も燃えてしまいます。隣の家の火も消すことが、自分の家を守る、唯一の方法なのです。自分が生き埋めになった時、それに気付き、救出活動を始めてくれるのは誰でしょうか? 大震災のような広域災害では、地域の防災機関(警察や消防など)も、 同時にすべての現場に向かうことはできません。かと言って、自衛隊など被災地の外からの応援の到着にはかなりの時間がかかります。近隣の皆さんが救出してくれるのを待つほかありません。救出活動も消火活動も、早く始めるほど、そして、多くの人が参加するほど、被害を小さく抑えられます。
災害時に円滑に協力するためには、ふだんからの交流が大きな力になります。こうした、近隣のみなさんと協力して、地域を守る、“備え”と“行動”を、『共助』と呼びます。


『公助』
市や区や町といった地方自治体をはじめ、警察・消防・都道府県・国といった行政機関、ライフライン各社を始めとする公共企業、こうした機関の応急対策活動を、『公助』と呼びます。各地方自治体はもちろん、各機関とも、災害の発生からできるだけ早く、すべての能力を応急対策活動にあてられるよう、“備え”を行っておく必要があります。


『自助』『共助』『公助』の連携
自分を中心に考えると、震災の直後、自分を守るのは、『自助』の力です。自分ひとりでは対応できない状況になった時、頼ることができるのは、『共助』です。それは同時に、自分が可能ならば『共助』に参加する意識が前提となります。そして、『公助』とともに、状況を安定させ、復旧・復興へと向かわせます。『公助』が活動を始めても、その援助の手が、円滑に被災者一人一人の許に届くためには、『共助』との連携が不可欠です。こうした連携が、地域、そして自分の被害を最小限に抑え、早期に復旧・復興するために必要なことと私達は考えます。


この防災における『自助』『共助』『公助』の連携のために、何が起きたのか?(起きようとしているのか?)、また、これからどうなるのか?といったことの“情報”を対策にあたる人達だけでなく、被害に遭われた方を含め関係するそれぞれの方が正確に、かつタイムリーに共有することは、極めて重要な役割を果たすと私達は考えます。

3年前の東日本大震災では自然の持つ想像を絶するような圧倒的な破壊力に言葉を失いましたが、自然の脅威は地震や津波だけではありません。地球規模の気候変動によると思われる気象の変化が毎年のように起こり、“異常気象”の“定常化”が起きつつある感じさえしています。もはや“異常気象”という言葉さえ近いうちに“死語”になってしまうのではないかと思われます。加えて、予期せぬ局地的な集中豪雨や竜巻など、自然災害の規模が拡大している傾向にあります。

『災害』とは“災い”が“害”になる…と書きます。“災い”にはいろいろとありますが、私達気象情報会社が向き合わないといけない“災い”は気象や地象、海象といった自然現象がもたらす様々な脅威のことです。しかし、こうした自然の脅威も人々の生命や財産になんら被害をもたらせなければ『災害』とは呼びません。人が誰も住んでいないようなサハラ砂漠のど真ん中でマグニチュード9.0の地震が起きても、それを『災害』とは言いません。

『災害』とは、「自然の脅威」と「都市(人が生活をしているところの意味)の脆弱性」が合わさってはじめて『害』、すなわち『災害』となるわけです。

今の日本社会はこの「都市の脆弱性」が急激に高まって危機的状況になりつつあると私は捉えています。

大都市部においては、都市化による住宅密集による火災被害の拡大、造成宅地における地震に際しての液状化・崩落等による被災の拡大が随所で見られるようになりました。いっぽう、地方、山間部においては“高齢化”が災害被害の拡大の一因になっているように思えます。第一次産業の担い手の不足により森林等のメンテナンスが行き届かなくなって、本来自然環境に備わっていた“防災力”のようなものが弱まっていることに加え、高齢化が進み住民相互の助け合いにも支障をきたすような状態になってきているということです。

私達民間気象情報会社も、今、日本社会が置かれているそうした社会的課題も視野に入れながら、自然の脅威の来襲を知らせる、すなわち、判断や行動のトリガーとなる情報の提供を、常に心掛けていかねばならないと考えます。

私は『防災』の本質とは、『自然の脅威に対する都市の脆弱性を補うこと』だと思っています。

この考えのもと、当社は2年前より総務省消防庁消防大学校の消防研究センター様の防災に関する研究に参画させていただいています。

また、国の機関である気象庁様と一緒になって「様々な自然の脅威の来襲から、人々の生命と財産を守るための情報を提供すること」が我々民間気象情報会社の最大のミッション(存在意義)だと私は考えておりますので、“自然災害のエキスパート”として気象(現象)と防災(対応)の活きた知識を有した人財を育てることに現在力を入れています(この分野の人財が、この国には決定的に欠けているというのが私の認識です)。

この思いを実現するため、今年5月より元陸上自衛隊の陸将補(防大12期)で、荒川区の危機管理専門監を務められた清水明徳様を弊社顧問としてお招きし、ご指導を賜ることにしました。

清水元陸将補は様々な災害対応を最前線部隊で幾つも経験なさったまさに“災害現場指揮のエキスパート”で、実戦(実践?)の経験に裏打ちされたノウハウは素晴らしいものがあります。加えて、市ヶ谷にある陸上自衛隊幹部学校の戦術教官や戦略教官、横須賀の第一教育団長も務められた経験もお持ちなので、人財育成にも強い思いをお持ちの方です。防災に関する社内の打ち合わせは是非とも陸上自衛隊風にやっていただきたい…と私も清水さんにお願いしているくらいで、社内に新風、それも鮮烈な新風を吹き込んでいただいています。

こうした清水さんの素晴らしい経験やお考えを弊社だけのものにしておくのは社会のためにならないと思い、私から清水さんにお願いして(口説き落して・笑)、弊社オフィシャルブログ第3弾を執筆していただくことにしました。現在、ブログのタイトル等、詳細を詰めているところで、近日中に開始します。そちらも是非ご期待ください。


【追記】
昨年6月17日に衆院本会議にて全会一致で可決成立された「改正災害対策基本法」では、東日本大震災等の実際の大規模災害の事例を踏まえ、特に以下の点がこれまでの災害対策基本法から改正されました。

・「減災」や「自助、共助、公助」の考えが、一層、強調されている

・災害の定義の例示に、崖崩れ・土石流・地滑りが加えられた

・大雨等の災害においては単に避難所に避難するだけでなく、「屋内での待避等の安全確保措置」が明記された

・地方公共団体は的確な避難指示等のため、国(地方気象台等)に助言を求めることができ、市町村長から助言を求められた国(地方気象台等)又は都道府県に応答義務が課された

・「災害応急対策又は災害復旧に必要な物資若しくは資材又は役務の供給又は提供を業とする者」に対して、災害時でも事業活動を継続できるように努めることが明記された(つまり、民間企業に対する事業継続BCPの要求)


弊社はこの「改正災害対策基本法」をベースに民間気象情報会社として世の中のお役に立つにはどうしていけばいいのか…を考え続けていきたいと思っています。

執筆者

株式会社ハレックス前代表取締役社長 越智正昭

株式会社ハレックス
前代表取締役社長

越智正昭

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