2014/08/04

憧れの五能線(その6)…大間崎・薬研温泉

恐山を出て、次に向かった先は下北半島の北の端の岬、大間崎(北緯41度33分、東経140度55分)です。この大間崎はさすがに本州最北端に突き出た岬、目の前前方から右手方向には津軽海峡、反対の左手方向には陸奥(むつ)湾が広がっています。晴れていると、北の方角、17km先に北海道の函館の景色が見えるのですが、この日は“やませ”が吹いていて霧がかかり、残念ながら北海道は見えませんでした。

大間崎2
大間崎3
大間崎4


大間崎のあたりには灯台と土産物屋さんが数店開いているくらいで、他には何にもありません。周囲の雰囲気は、まさに“さいはて”、ドが付くくらいの演歌の世界です。石川さゆりさんの名曲「津軽海峡、冬景色」、吉幾三さんの「雪国」、八代亜紀さんの「舟唄」…、幾らでも頭の中で浮かんできては何度もリフレインを繰り返します。恋に破れた人はこんな寂しいところまで流れていくものなのでしょうか。なにもそこまで思い詰めなくてもいいのに…って、私はお節介にもそう思います。

下北半島・大間と言えばマグロの一本釣りと、そのマグロの餌にもなるイカの漁が有名ですが、今の時期は海水の水温が高くマグロもイカも漁獲量がサッパリだそうで、今はウニが旬の時期だそうです。そのウニとイカ焼きを大間崎近くの漁師さんがやっているという直販の売店で食しました(マグロの一本釣りが本職だいう精悍な顔つきの若い漁師さんです)。

さすがに獲れたてのウニはホォ~~ント美味しかったです。とにかく甘い! これほど美味しいウニは、これまで食したことがありません。大満足でした。昨年のNHKの朝ドラ『あまちゃん』では岩手県久慈市の三陸海岸で「北限の海女さん」と、そこで獲れたウニが美味しいと有名になりましたが、久慈よりもうちょっと北に位置する下北半島大間崎のウニもメチャメチャ美味しいです。やはり、海鮮は文字通り“鮮度”が命なので、産地まで行って獲れたてを食するのに限りますね(^^)d

先ほど、下北・大間と言えば日本海と太平洋を東西に繋ぐ津軽海峡で鍛え上げられたでっかいマグロの一本釣りが有名だと書きました。3トンほどの小さな漁船に漁師1人が乗り込んで、流れの速い津軽海峡に繰り出し、時には500kg近い超巨大マグロも釣り上げることもあるようで、その日本最大のマグロの原寸大の模型が岬の先端に飾られていました。しかし、残念ながら、今は津軽海峡、特に太平洋の海水の温度が平年よりも高めで、マグロがこのあたりを回遊していないとかで、漁は行われていないとのこと。また、そのマグロの餌となるイカも海水の温度の関係で形が小さいとのことです。

大間崎1

大間崎を後にして、次はいよいよこの日の宿泊地は薬研温泉です。先ほど恐山が火山であるということを書きましたが、それゆえ、このあたりには幾つもの温泉が湧き出していて、その1つがこの薬研温泉です。名前からして湯治には大いに効果がありそうな温泉です。渓谷の中にひっそりと佇む温泉で、名前の由来は、その渓谷の形が昔、漢方薬を細かく砕く薬研という道具に似ているから。

薬研温泉1
薬研温泉2


先ほど下北・大間と言えばマグロ…と書きましたが、そのマグロをはじめとした下北(津軽海峡)の海の幸満載の夕食を楽しみました。ちなみに、大間で獲れたマグロは、基本的にそのほとんどすべてが釣り上げられた翌日には東京の築地の魚市場に運ばれて、そこでセリにかけられるそうで、地元では食べられないようです。なので、ここで食べたマグロはもしかしたら…。
その後は温泉。香りのよい総ヒバ造りの浴場と、目の前の渓谷を眺めながらの露天風呂を楽ませていただきました。源泉の温度が57℃。素晴らしい温泉でした。やはり、日本人にとって、旅に温泉はかかせません(^o^)v


【追記1】
この薬研温泉の南麓、下北半島の陸奥湾を臨む大湊には今も海上自衛隊の基地がありますが、昔から海軍の基地が設けられ、日本の本土防衛のための重要な拠点の1つになっています。この大湊に最初に海軍の基地が設けられたのは明治38年(1905年)。まさに日露戦争の真っ只中で、日本海海戦が行われた年です。ウラジオストクを母港とする極東ロシア海軍による北からの脅威に備えるため、この大湊の地の利に目をつけた日本海軍によって設置されたものです。

昔から日本海軍の艦内食は洋食が主体でしたが、海軍のコックさん達は、手軽に大量に作れて、かつ栄養価が高く、日本人の口に合うようにアレンジした料理を独自に次々と開発しました。横須賀の“海軍カレー”が有名ですが、特に現在の日本の子供達に人気の食事(洋食とも和食とも区別のつきにくいもの)の数々には、実は大日本帝国海軍のコックさん達が艦内食として開発したものが多数あります(手軽に大量に作れるということから、レストランで提供する料理として一気に日本中に広まったということも言えると思います)。

で、ここ下北半島の大湊基地で誕生した海軍さんの料理が“コロッケ”。ポテトを植物油ではなくラード(動物脂)で揚げた独特の食感がたまりません。元々のコロッケはこんな感じだったのでしょう。美味しいです(^^)d

この「海軍さんのコロッケ」を名乗るには毎年、保存会の認定を受ける必要があるようで、宿泊したホテルのレストランの壁には毎年の認定証がズラァ~っと飾られていました。


【追記2】
本文中に、下北半島はどこまで行っても手付かずの原野が続くと書きましたが、この日もバスの車窓からですが、野生の動物とも多く遭遇しました。野生のニホンザルの母子(子供を背中に乗せた母猿)が突然道路を横断したり、国道の道路脇にズングリムックリとしたニホンカモシカの親子連れが出てきたり…ビックリです(@_@) ちなみに、下北半島のニホンザルは“北限の ニホンザル”と呼ばれています。

また、宿泊した薬研温泉のホテルの部屋からはハヤブサとおぼしき猛禽類の鳥が確認できました。東北新幹線の「はやぶさ」もカッコイイですが、本物のハヤブサはもっとカッコイイです(^-^)v

はやぶさ?

またホテルの部屋には、デッカイ消臭用の炭と消臭剤が置かれ、次のようなお断りの文章を書いた紙が貼り出されていました。

薬研温泉3

「本日は当ホテルを御利用いただきまして、誠に有難うございます。
さて、下北地区ではカメムシが発生しており、お部屋の中にも入ってきておる次第でございます。
駆除には努めておりますが、数が多くお客様にはご迷惑をお掛けしており、誠に申し訳なく、深くお詫びを申し上げる次第でございます。
支配人」

窓も絶対に開けてはダメという標示。フロントで聞くと、最近はこのあたりで農薬の使用が減って、毎年カメムシが大量発生しているのだとか。なんと言ってもカメムシの臭いはメチャメチャ強烈ですからねぇ~(*_*) 1匹でも部屋に 入って来られたら、大変なことになります。子供の頃に不用意にもカメムシを触ってしまって、大変な思いをしたことが何度かあるだけに、ここは用心用心(^^;