2015/01/28

上尾市防災講演会『いのちを守る気象情報』

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1月24日(土)、埼玉県上尾市の上尾市コミュニティセンターにおいて『平成26年度 上尾市防災講演会』が開催され、弊社社員で気象予報士の斉田季実治クンが、自身が出している本の題名と同じ『いのちを守る気象情報』と題して講演をさせていただきました。

上尾市HP

斉田クンは、現在、NHK総合テレビの「首都圏ニュース845」(平日20時45分~21時00分)や「NEWS WEB」(平日23時30分~24時00分)に出演させていただいています。

私は上尾市の隣のさいたま市(中央区)に住んでいますので、気づかれないようにカジュアルな格好をして、一般の市民の皆さんに混じって聴きにいってきました(^b^)

今回の『上尾市防災講演会』、斉田クンの講演だけの“単独講演会”なので、果たして聴きに来ていただける方はどのくらい集まるのかな?…と心配しながらJR上尾駅から会場まで歩いていったのですが(せっかくお声を掛けていただいたのに、さっぱり人が集まらなかったら、主催者である上尾市総務部防災担当様に申し訳ないですからね)、会場である上尾市コミュニティセンターに着くなりその心配はまったくの杞憂に終わっちゃいました。「今日はいったい何のイベントがあるんだ!?」…と思えるくらい、次々と人が集まり、ロビーの受付のところで列ができています。列の最後尾になっている入り口のドアのところには、斉田クンの顔写真入りの今回の講演会のチラシが、ポスター代わりに貼り出されていました。

少しロビーで時間を潰し、開演直前にホールの中に入ると、350人収容の会場の座席は満席。立ち見が出ている状態でした。後日、上尾市の防災担当の方にお聞きした話によると、この会場で立ち見が出たのは初めてのことらしいです。中には千葉市からいらした参加者もいらっしゃったそうです。スゲェ~~じゃん!(@_@) 私は本来聴いていただきたい上尾市民の方に少しでも座席を提供したいのと、聴いていただいている方の反応や表情を見たいので、講演者である斉田クンに向かって右の一番奥の隅に立って、聴いていました。

それとなく受付の方にお尋ねすると、今回の防災講演会には上尾市の防災士会の皆さんをはじめ、市内各地区の自治会の防災関係者の方々にお声をかけているので、そうした方々が1/3で、残りは市が毎月発行している市民報の案内を見て参加していただいた方々。「さすがはNHKのお天気キャスターの斉田さんです、いっぱい来場していただけました」…ということのようでした。ありがたいことです。そう言えば、中年のご婦人の姿が多いような…(笑)。いずれにせよ、“防災”に関心を持っていただけるのは大変によろしいことです(^^)d

講演会は、まず上尾市の島村穰市長の開会のご挨拶で始まりました。住民の生命と財産を守ることが自治体の最大の責務であることから、市としても防災に力を入れていきたい…ということを強調されました。島村市長のご挨拶に続いて、斉田クンの登場。

斉田クンの講演は、昨年2月14日に関東地方を襲った大雪の事例にはじまって、昨年8月に起きた広島市の土砂災害や台風災害の事例に、9月に起きた木曽御嶽山の噴火の事例など、最近の気象災害の事例を挙げて、そこで得られた教訓を紹介するところからスタートしました。事例の解説だけでなく、反省を含め気象キャスターとしてその時、それら災害事象とどう向き合ったかという話を交え、極めて説得力のある素晴らしい内容でした。そこで、斉田クンが示した1つの大きな教訓が「地域特性を知ること」(^^)d

その地域特性ということで言えば、埼玉県の上尾市のあたりで心配されるのは、大雨の際の荒川流域の“氾濫”と、“竜巻”です。斉田クンの講演でもこの点を強調して説明してくれました。河川の“氾濫”に関しては、上尾市のハザードマップを例にして、避難の際の留意点に関して、具体的に説明しました。

そして“竜巻”。“竜巻”に関しては一昨年2013年9月2日に上尾市に隣接する埼玉県のさいたま市や越谷市で大きな被害が出たのですが、この“竜巻”の事例をあげて、説明をしてくれました。実はこの2013年9月2日というのは私にとって忘れられない日なのです。初孫が生まれた日なんです。そしてその“竜巻”に間近で遭遇したのでした。

孫娘が生まれたのはさいたま市中央区にある病院でした。生まれたという息子からの一報を受けて、初めて逢うために私が自宅から歩いて病院に向かったのが13時40分頃。午後からの面会時間の開始(14時~)にちょうど間に合うように自宅を出たわけです。さほど離れていませんでしたので、歩いて病院に向かったわけです。

その日は埼玉県に雷注意報と竜巻注意報が朝から出てはいましたが、その時点でのさいたま市中央区周辺はまだ晴れていました。遠くに北西の方角の空に積乱雲と思われる黒い雲があって、微かにゴロゴロという雷鳴が時折聞こえていました。そんな空を見ながら「注意報、当たったな。あのあたり(川越市の方角)は雷がバンバン落ちているかもしれないな」と思ったのを覚えています。その後、すぐに大変な思いをすることになろうとは、まだ思ってもいませんでした。

歩いているうちに、急に空が暗くなって、顔にあたる風がヒンヤリとしてきました。9月2日だというのに寒いくらいでした。(気圧の急激な低下から)耳がツンとしてきて、ポツポツと雨が降りだしました。雨はすぐに(ほとんど間をおかずに)激しい雨に変わり、しかも急に風が出てきて横殴りの雨に変わりました。実は私はその時、傘を持っていませんでした。自宅を出た時、北西の方角に黒い雲があることは分かっていたのですが、まだその時点では晴れていて、もし降りだしたとしてもそれは私が病院に着いた後だろう…と勝手に考えていました。それよりも早く孫娘に逢いたいという気持ちのほうが大きかったのです。加えて、私はちょうどその時、脚に怪我をしていて、なるべく手ぶらで行きたかったので傘を持っていきたくなかったのです(まぁ、傘を持っていたとしても、あの風ではかえって危険で、使い物にはならなかったでしょうが…)。

風雨が急に強くなってきた時、私は病院からおよそ100mのところまで来ていました。通常ならそこから走って病院に駆け込むのですが、前述のように脚に怪我をしていたので走れず、雨粒が顔に当たるので見えなくなった眼鏡をはずして、ホウホウの体(てい)でなんとか病院に辿り着きました。病院の正面玄関のロビーに入った時に後ろを振り返ると、前の道路はとんでもない状況になっていました。自転車やバイクはなぎ倒され、商店の看板やら自販機横に置かれていた空き缶回収用のポリバケツが道路上を飛んでいくかのごとく速い速度で滑っていきました。私が空の異変に気づいてから2分と経っていません(黒い雲がこちらに向かって近づいていた筈なのですが、家屋の陰に隠れて、私は直前まで気づきませんでした)。

病院の方が気の毒がってバスタオルを貸していただいたので、それで全身から滴り落ちる雨を拭いてはみたものの、私は情けないほどにグショグショに濡れた状態で孫娘との初対面を果たしちゃいました。なので、よく覚えているのです。その猛烈な雨と風は5分ほどで通りすぎ、また空には9月の暑い太陽が戻ってきました。私のすぐあとに自転車で病院にやってきた妻は一滴の雨にも当たらず、「パパ、どうしたの、その格好?」。息子の嫁の両親も直後にクルマでやって来たのですが、クルマは少しも濡れていませんでした。ちなみに、私の自宅から500mも離れていないさいたま市桜区の神田地区では、強風で家屋が倒壊する被害が出たほか、あの積乱雲が進んだ先の越谷市で竜巻による甚大な被害が出ました。さいたま市で被害を受けたところと越谷市を直線で結ぶと、病院のあたりは数百mも離れていなかったと思われます。ゾッ!としました。

余談が長くなっちゃいましたが、その時の様子は、まさに斉田クンが講演で説明したとおりでした。斉田クンがこの日の講演の中で述べたように、雷や竜巻の発生・接近が予想される場合は、迂闊に外に出ては危険だということを、身をもって体験しました。まぁ~、雷も竜巻もその場に停滞することは極めて稀なことで、たいていの場合、ほんのちょっと待てば過ぎ去っていくわけですから。

斉田クンの講演を聴いていただいている方々のほうを見ると、ウンウンと頷いていらっしゃる方や、熱心にメモを録っていただいている方の姿が大勢いらっしゃいました。それだけ実践的でお役に立てているようだということが、そうした光景から読み取れました。嬉しかったです。

斉田クンも最後に警鐘を鳴らしていましたが、“防災”に関しては、『自分だけは死なないと思っていませんか?』…、これに尽きると私も思っています(^^)d

上尾市の防災担当の方から最初に防災講演会への講師派遣の要請のお話があったのは私宛てで、お話をいただいてすぐに私は快諾したのですが、その時に脳裡に浮かんだのが斉田クンのことでした。

斉田クンはNHK出版から『いのちを守る気象情報』という本を出版しているのですが、その本を出版したいと私に言ってきた時の斉田クンの言葉が忘れられません。その言葉はほとんどそのまま彼の著書『いのちを守る気象情報』の巻頭の『はじめに』のところに、それに気付いたエピソードのようなこと形で、次のように書かれています。


斉田本

(前略)……民間の気象会社に再就職したのは、30歳を目前に控えた春です。災害が起きたあとに取材をする「報道記者」ではなく、災害を未然に防ぐ「気象の専門家」として生きていこうと決心しました。災害のときにはNHKの視聴率が跳ね上がります。そのNHKの気象キャスターになることを目標に行動し、念願は叶いました。しかし、それから1年も経たないうちに東日本大震災が起きてしまい、自分の無力さを改めて痛感させられました。気象キャスターとしてできることは、ほんのわずかです。それでも自分に何ができるのかを問い続けました。その答えの一つが、この本を書くことでした。
「情報」だけでは命を守ることはできません。数分のニュースや気象情報の中に詰まっている「命を守る情報」を活かすためには、見る側にもある程度の「知識」が必要であり、自分だけは死なないという「意識」から変えていく必要があります。
(中略)
この本を手にとっていただいた皆さんと皆さんの大切な人の「命を守る」ために、少しでも役立つことを願っています。


これが斉田クンがこの本を出版したいと思い立った動機でした。まさにこれですね、重要なことって。情報は伝えたいことがちゃんと伝わってこその情報です。ちゃんと伝わらないことの原因を他責にせずに、自らのことと捉え、自ら何が出来るかを考えて、実際に行動に移す…、なかなか出来そうで出来ないことです。立派だと思います。

これは私が常々社内でクチにしていることですが、気象情報なんて、情報そのものにはほとんど価値などなくて、情報を受けた人が、その情報に基づいて避難をしたり、リスク回避のための対策を講じたり、救援活動を起こしたり…と、なんかの判断や行動を起こして初めて“価値”が生まれるという性格のものです。しかも、気象情報は自然の脅威の来襲(自然災害)から人々の生命や財産をお守りするための大事な情報です。すなわち人の命に直接関わるような大事な大事な情報です。他の情報以上に、この情報により情報の受けた人がどのように行動に移せるかを常に意識して提供しなければならず、それが、情報提供者である我々民間気象情報会社の責務とも言えます。

斉田クンは自らの日々の仕事を通してそれに気付いてくれて、この本を執筆してくれたのでしょう。

斉田クンは東日本大震災の時に自分の無力さを改めて痛感したことがきっかけとなったと書いていますが、実は私もあの東日本大震災の時に斉田クンとまったく同じ思いをしました。東日本大震災発生直後から2週間、私は寝袋を持ち込んで会社でずっと寝泊まりをしました(いつ、何が起きてもおかしくない状況でしたからね)。1人で寝袋にくるまって社長室の天井を見つめながら、斉田クンと同じように大いなる無力感を感じていました。

私が当社の代表取締役社長に就任して今年で12年になりますが、実は就任後しばらくして、この業界に大いなる“違和感”のようなものを感じました。この業界のやっていることって、なにかが違う…と。自然の脅威の来襲から人々の生命や財産をお守りするための大事な大事な情報を提供することが民間気象情報会社の本来の役割の筈なのですが(私も社長就任前はそう思っていました)、実態はと言うと、単なるお天気情報の提供・解説会社に過ぎず、人の命と真っ正面から向き合っていないのではないか…とね。それで弊社ハレックスはこれまでの民間気象情報会社の取り組みとは一線を画すような取り組みを始めたわけなんです。なので、私の思いとも重なっているので、こういう趣旨で本を出版したいという話を聴いて私はすぐに快諾しました。

今回の講演の依頼に関しても、本の出版を直訴してきた時の斉田クンの思いと重なる部分が大きかったので、すぐに斉田クンに講演することを持ち掛け、彼もすぐに快諾してくれました。嬉しかったですね。平日は帯で(レギュラーで)番組に出演しているので忙しい筈なのですが、そういう中、なんとか時間を作って、スライド投影資料の作成等の準備を整えてくれました。話のほうはテレビで活躍してくれている気象キャスターですので、それほど心配はしていなかったのですが、講演の内容も(私に限らず、聴いていただく多くの方の)期待に違わず、実に素晴らしいものでした。テレビの時と同じ穏やかな中にも説得力溢れる口調で、時には笑いをとりにいったりして…(^-^)v

講演が終わった後は、いわゆる“出待ち”をされていたファンの方々(すべてオバサマ方)との写真撮影会となり、私は“通りがかりの親切なオジサン”として、お預かりしたスマホやデジカメのシャッター何度も切らせていただきました。想像していた以上の人気で、驚いちゃいました。そうしているいちに、斉田クンではなくて私のほうが照れてしまいましたが…(笑)(*^^*)

斉田クンは翌日の25日(日)も今度はNHKさんからの依頼で、NHK文化センター横浜教室で講演をさせていただいたと伺っています。同じく弊社からテレビに出演させていただいている気象予報士で言うと、フジテレピの朝の情報番組『情報プレゼンター とくダネ!』に出演させていただいている天達武史クン(アマタツ)も、他の番組への出演や雑誌の取材等で露出を増やしてくれています。私もこの1年間で20回以上も講演する機会を与えていただき、弊社のこれまでの取り組みや目指している方向について、お話をさせていただきました。斉田クンが上尾市の防災講演会で講演させていただいた前日の1月23日(金)にも、NTTデータ主催で開催された『NTT DATA Innovation Conference2015』におきまして、『気象ビッグデータの活用で農業を元気に! ~「坂の上のクラウドコンソーシアム」の取り組み~』と題して講演をさせていただきました。

その他にも、弊社営業の山本ゆめ社員のもとにも各所からパネルディスカッションのパネラーとしての登壇や、講演の依頼が寄せられるようになってきていて、新聞や雑誌といったメディアに取り上げていただく機会が増えてきたことともあわせて、弊社ハレックスが目指しているものが市場から徐々に認知されつつあるのを実感しています。

今年も気象情報のより一層の活用の場の拡大と、気象予報士の活躍の場の拡大を目指して、手を緩めることなく、バンバン露出していきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします(^^)d


【追記1】
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そうそう、上尾市の『防災講演会』の会場となった上尾市コミュニティセンターのロビーには、『防災講演会』にあわせて、20年前の1995年1月17日に起きた阪神・淡路大震災の時の写真が何枚も飾られていました。

私もちょうど阪神・淡路大震災に関連した話題をこの『おちゃめ日記』の場に連載している途中でしたので、それらの写真を眺めながら、改めて当時の“現場”を思い出し、自分に与えられた使命のようなものを改めて見つめ直していました。


【追記2】

斉田季実治クンの著書『いのちを守る気象情報』はNHK出版から好評発売中です。
斉田クンのこれまでの経験からくる“思い”がギッシリと詰まった、素晴らしい一冊だと私も思っています。
斉田クンも書いていますが、この本を手にとっていただいた皆さんと皆さんの大切な人の「命を守る」ために、少しでも役立つことを願っています。皆さん、是非、お読みください。

執筆者

株式会社ハレックス前代表取締役社長 越智正昭

株式会社ハレックス
前代表取締役社長

越智正昭

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