2015/03/11

あれから4年

死者1万5,884人、行方不明者2,633人を出した東日本大震災から今日(11日)で丸4年を迎えました。いまだに被害の爪痕が残る被災地をはじめ、全国各地で、地震が発生した午後2時46分、一斉に黙祷が捧げられることと思います。

弊社ハレックスの五反田本社でも、この時間、私の「黙祷!」の号令で社員全員で1分間の黙祷を捧げさせていただこうと思っております。

弊社ハレックスにとりましてもあの日は決して忘れることが出来ない1日となりました。民放テレビ局50局以上に加え、東北電力様等に緊急地震速報や津波の情報を提供している当社はあの地震発生直後に緊急体制を敷き、私もそれから2週間、会社に連続して泊まり込みました。強い余震が続いていて、計画停電もあって、なにが起こってもおかしくないような状況でしたし、こういう時こそサービスはなにがあっても停止できませんでしたから。

2週間が経って、東京では少し落ち着きを取り戻してきたので、やっと埼玉の自宅に帰宅することができました。風呂に入って伸ばしっぱなしにしていた無精髭を剃り、自分の布団に入って一晩ぐっすり眠り、その翌日に私が向かった先は仙台でした。仙台には当時5名の社員をテレビ局にお天気キャスターとして派遣していましたから、支援物資を担いで、なんとか通れるようになった東北自動車道を使って走り出した復興支援バスに乗りこみ、彼等の顔を見に行ったのでした。そこで目にしたのは……。

その後も復興支援のお手伝いをしながら、気仙沼や石巻、女川、陸前高田、山田町といった市町の自治体の防災担当の皆さんと交流を持ってきました。私もその後も何度か被災地の現場に入りました。

圧倒的破壊力を有する自然の脅威の来襲から、人々の生命と財産をお守りするための情報を提供することを本来のミッションとしている我々気象に関わる者にとって、あの日感じたやりきれない虚しさや無力感は、いまだに忘れることができません。

そして、あの日感じたやりきれない虚しさや無力感、また、震災から2週間、会社に泊まり込んだ時、寝袋の中から会社の天井を見上げながら考えたこと…それらが、その後の弊社ハレックスの様々な取り組みの強い原動力になったようなところがあります。

私達は、あの日、犠牲になった方々の無念な思いは決して忘れてはいけない。あの日のことを教訓として、次に同じようなことが起こった時、1人でも多くの尊い命をお守りするにはどうすればいいか…、これを考え、仕組みとして実現すること、これが、今、自分達がやるべき本当の仕事だ!…との思いで、この4年間、社員全員が一丸となって全霊を傾けて突き進んできました。

その結果として、これまでの気象情報提供の仕組みや考え方のままではまるで不十分だということに気付き、自分達自身の手でこれまでにない独自の新たな仕組みをいろいろと作り出してきました。

まず気象の分野では、気象庁から配信される気象ビッグデータを解析して、地形の変化、気象の変化が激しい日本の国土にあった標高補正付き、30分ごと更新の独自の1kmメッシュ気象予報システム『HalexDream!』を実用化しました。そして、この『HalexDream!』をベースとして、様々な応用サービスの仕組みを実現しています。

HalexDream!

さらに、降雨レーダーの画像解析値を用いて任意の地点の災害発生リスク(土砂災害発生リスク等)の自動監視までをも可能とした新たな仕組みの実用化にも成功して、『防災さきもりRailways』として既に鉄道会社様でお使いいただいています。

防災さきもりRailways

導入事例

地震の分野でも発災後の初動体勢の早期の確立こそが重要であるとの思いから、気象庁が各地に配備した地震計で観測した震度を発表する前に(発生から約3分後)、緊急地震速報の情報を活用して各地の推定震度を地図上の画像情報として表示する『推定震度マップ』も実用化しました。

推定震度マップ

さらに東日本大震災の被災地向けには、津波により壊滅的な被害を受けた鉄道敷地をバスで走るBRT(Bus Rapid Transit)という新たな仕組みで仮の復旧を果たしたJR気仙沼線と大船渡線の利用者向けに、緊急地震速報や津波警報等の警報・注意報をスマホと駅(バス停)設置さらには走行中のバス車内のディスプレイで知らせる仕組みの実用化も果たしました。この仕組みではバスの車内で次の停留所を知らせるディスプレイに、『HalexDream!』の情報を用いて各駅(バス停)ごとの最新の天気予報を流すという画期的なサービスも実現しています。

気仙沼元気プロジェクト

どれも世に出した当初はあまりに先進的すぎる取り組みであったためか営業的には苦労もしましたが、おかげさまで、それらに関して一昨年あたりから急に世間の注目も集まりだし、新聞や雑誌等のマスコミに何度も取り上げていただけるようになりました。お客様にも気象庁の情報や他の気象情報会社の情報との違いをご理解いただけるようになり、ありがたいことに、このところ導入していただける新たなお客様も次々と増えてきています。

これは、あの東日本大震災をきっかけとして芽生えた私達ハレックス社の社員一同の強い“思い”が皆様にご評価いただけた結果だと思い、たいへん嬉しく思っております。

ですが、私達は全然満足はしていません。まだまだやりたいこと、やるべきことはいっぱいいっぱい残っていると思っています。今日3月11日は、その思いを新たにする1日にしたいと思っています。

気になる被災地の復興のほうは、今月1日に、首都圏と宮城県とを太平洋沿岸経由のルートで結ぶ常磐自動車道が、震災や福島第一原発の事故の影響で復旧工事が遅れていた福島県富岡町の常磐富岡インターチェンジと浪江町の浪江インターチェンジの間のおよそ14kmの区間の復旧工事が終わり、約4年ぶりに全線で開通したという明るい話題が報道されていました。この常磐自動車道の全線開通により人の動きや物流が活発になることが予想され、地元では復旧・復興の加速が期待されているようですが、復旧・復興にはまだまだこれから先は長い…といった感じです。被災地の方々にはこれからも頑張っていただきたいと思っておりますし、私達で応援できることがあれば、できる限り応援して差し上げたいと思っております。

頑張りましょう! 私達も頑張ります!o(^o^)o


【追記】
添付の写真は昨年の11月にお亡くなりになった俳優の高倉健さんが日経新聞のWeb版に書かれていたエッセイの中で紹介してくださった写真です。そのエッセイを読んで涙が出るくらいに感動したので、私は社長室の壁の目立つところに貼って、なにか苦しいことがあるとこの写真を見つめるようにしています。

高倉健さんのエッセイによると、イタリアにお住まいの作家の塩野七生さんが、現地の週刊誌に載っていたと高倉さんに紹介した写真なんだそうです。撮影場所は気仙沼の被災地のようで、瓦礫の中を歩く少年のうつむき加減のキリリと結ばれた口元が、「負けない、絶対に負けない…」と語りかけてくるようです。

20150310

執筆者

株式会社ハレックス前代表取締役社長 越智正昭

株式会社ハレックス
前代表取締役社長

越智正昭

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