2015/09/11
鬼怒川大決壊
一昨日(9日)から日本海にある台風18号から変わった温帯低気圧と、日本の東の海上を北上する台風17号の影響で、関東地方や東北地方南部を中心に湿った空気が流れ込み、発達した雨雲がかかり続け、各所で記録的な大雨となり、各地で河川の氾濫や浸水などの大きな被害が出ています。
昨日(10日)は鬼怒川の堤防が幅140メートルに渡って決壊し、想像を絶するような大きな被害が出ました。私は帰宅後、テレビ各局のニュース番組をハシゴして、現地の映像を見たのですが、そこには4年半前の2011年3月11日の東日本大震災の時の津波と同じような光景が映っていて、本当に息を飲むような被害の凄まじさでした。
決壊したあたりに私は行ったことがないので知らないのですが、鬼怒川のもう少し上流あたりは何度かクルマで通ったことがあり、私の記憶にあります。川幅は100メートルをゆうに超え、両岸には高い堤防が築かれ、その川の真ん中あたりを清涼な鬼怒川の水が穏やかに流れていました。今回の洪水ではあの広い川幅を超えて水が溢れたということで、流域には途方もないほどの量の雨が降ったのだということが分かります。
テレビのニュースでは、家やクルマ、中には人が濁流に流されていく緊迫感溢れるシーンが繰り返し流されていました。テレビの画面だけでもあれだけ伝わってくるのですから、実際はもっと凄いことになっているのだろうな…ということは容易に伝わってきました。あれから1日経って被害の全体像が徐々に明らかになってきていて、行方不明者の数が25人に増えています。被害の全体像や不明者の行方は掴めぬまま、避難所では多くの被災者が不安な時間を過ごされていますが、これ以上被害が大きくならないことを祈るばかりです。
今回の鬼怒川の決壊をもたらした“線状降水帯”と呼ばれる発達した帯状の雨雲は、その後、少し北東に位置を変え、昨日(10日)の午後からは東北地方南部にかかっています。宮城県では降り始めからの雨量が、多いところで450ミリに達し、平年の9月1ヶ月間の雨量の2倍を超える記録的な大雨となっているところがあり、今日(11日)に入って各地で河川の氾濫や浸水などの大きな被害が出ています。
気象庁は、午前8時過ぎに茨城県の大雨の特別警報を解除しましたが、引き続き、今度は宮城県に大雨の特別警報を出して最大級の警戒を呼びかけています。東北地方は、宮城県のほか、福島県でも降り始めからの雨量が400ミリを超えるなど、各地で大雨となっています。これまでに降った雨で、宮城県、福島県、山形県、それに岩手県では、土砂災害の危険性が非常に高くなり、「土砂災害警戒情報」が発表されている地域があります。また、宮城県、福島県、それに秋田県では河川の氾濫の危険性が非常に高くなっているところがあります。せめてご自身やご家族の生命だけは落とさないよう、くれぐれもご注意ください。
また、被害に遭われた方々には、心からお見舞いを申し上げます。
今回の鬼怒川決壊による大洪水は、南北に伸びる鬼怒川に沿うように同じ南北に“線状降水帯”と呼ばれる発達した帯状の雨雲がかかり、上流から下流にかけて流域のかなり広い範囲で長時間、雨が降り続いたことで川の水位が大幅に上がったことが一番の原因のようです。そのうえで、堤防を越えた水が構造的に弱い堤防の裏側を削ったことで決壊に繋がってしまったと考えられると、あるテレビ局の番組の中で土木工学が専門の先生がおっしゃっていました。
このような報道を目にするたびに、私は気象に関わるものとして、無力感を感じてしまいます。なにかできたのではないか…と。自然には圧倒的な破壊力を持つ脅威の側面があり、ひとたびそれが襲ってくると人はほとんど無力の状態になります。なので、事前にいかにして最悪の事態を回避するか…という対応をとるしかありません。その事前の災害回避行動をとる上で重要となるのが“情報”です。迫り来る脅威とそれにより襲ってくるであろうリスクの種類と程度、発生するであろうと推定される場所と時間等がわかり、補強や避難指示などの具体的行動に結び付くような予報の情報の重要性が、こうした自然災害が起きるたびに再認識されます。
もちろん気象庁や国土交通省をはじめとした国や地方自治体においてこれまで様々な取り組みがなされてきました。でも、そうした中でも毎年のようにこうした自然災害が繰り返されるということは、それだけでは不十分であるということを意味しているように私は思っています。この分野で私達民間企業もお役に立てるところが間違いなくあると思います。官民連携で力を一つにして立ち向かっていかないと、自然が持つ圧倒的な破壊力に立ち向かってはいけません。
今回の災害の報道を見ながら、私は改めてそのように思っています。
【追記1】
“線状降水帯”と言えば、昨年の8月22日に広島市を襲い、大規模な土砂災害を引き起こした短期的局地的な集中豪雨もそうでした(当時は“バックビルディング現象”などと呼ばれていたように記憶していますが…)。今回は鬼怒川の流域で発生しましたが、あれがもうちょっと西側で発生していたら、私が住むさいたま市を直撃していました。さいたま市を流れる大きな河川と言えば、荒川。荒川の堤防が今回の鬼怒川のように決壊でもしたら、埼玉県南部ばかりでなく、東京都北部や東部を含む首都圏の人口密集地が容易に推定ができないくらいの大きな被害を受けるところでした。その意味で、私はゾッとしています。
この“線状降水帯”ですが、発生メカニズムを考えると、日本中どこで発生してもおかしくはないものです。皆さんも決して他人事とは思わず、自分のところで発生したらどのように行動をするべきか…と日頃から考えておいていただければ、と思います。
【追記2】
茨城県の鬼怒川流域は野菜を中心に「首都圏の食料基地」とも言える一大農業生産地域です。今回の洪水でも多くの田畑が水に浸かり、栽培していた作物がダメになったばかりでなく、当分の間使用できなくなりました。水だけでなく泥も流入していることでしょうから、その復旧には相当の時間がかかり、この先長期間に渡り首都圏の生鮮野菜の供給に大きな支障が出るのではないか…と危惧しています。これはボディーブローのようにジワジワと首都圏の市民生活に影響を及ぼしてくるのではないかと恐れています。そういう意味でも、とんでもなく大変な自然災害が発生したと思っています。
昨日(10日)は鬼怒川の堤防が幅140メートルに渡って決壊し、想像を絶するような大きな被害が出ました。私は帰宅後、テレビ各局のニュース番組をハシゴして、現地の映像を見たのですが、そこには4年半前の2011年3月11日の東日本大震災の時の津波と同じような光景が映っていて、本当に息を飲むような被害の凄まじさでした。
決壊したあたりに私は行ったことがないので知らないのですが、鬼怒川のもう少し上流あたりは何度かクルマで通ったことがあり、私の記憶にあります。川幅は100メートルをゆうに超え、両岸には高い堤防が築かれ、その川の真ん中あたりを清涼な鬼怒川の水が穏やかに流れていました。今回の洪水ではあの広い川幅を超えて水が溢れたということで、流域には途方もないほどの量の雨が降ったのだということが分かります。
テレビのニュースでは、家やクルマ、中には人が濁流に流されていく緊迫感溢れるシーンが繰り返し流されていました。テレビの画面だけでもあれだけ伝わってくるのですから、実際はもっと凄いことになっているのだろうな…ということは容易に伝わってきました。あれから1日経って被害の全体像が徐々に明らかになってきていて、行方不明者の数が25人に増えています。被害の全体像や不明者の行方は掴めぬまま、避難所では多くの被災者が不安な時間を過ごされていますが、これ以上被害が大きくならないことを祈るばかりです。
今回の鬼怒川の決壊をもたらした“線状降水帯”と呼ばれる発達した帯状の雨雲は、その後、少し北東に位置を変え、昨日(10日)の午後からは東北地方南部にかかっています。宮城県では降り始めからの雨量が、多いところで450ミリに達し、平年の9月1ヶ月間の雨量の2倍を超える記録的な大雨となっているところがあり、今日(11日)に入って各地で河川の氾濫や浸水などの大きな被害が出ています。
気象庁は、午前8時過ぎに茨城県の大雨の特別警報を解除しましたが、引き続き、今度は宮城県に大雨の特別警報を出して最大級の警戒を呼びかけています。東北地方は、宮城県のほか、福島県でも降り始めからの雨量が400ミリを超えるなど、各地で大雨となっています。これまでに降った雨で、宮城県、福島県、山形県、それに岩手県では、土砂災害の危険性が非常に高くなり、「土砂災害警戒情報」が発表されている地域があります。また、宮城県、福島県、それに秋田県では河川の氾濫の危険性が非常に高くなっているところがあります。せめてご自身やご家族の生命だけは落とさないよう、くれぐれもご注意ください。
また、被害に遭われた方々には、心からお見舞いを申し上げます。
今回の鬼怒川決壊による大洪水は、南北に伸びる鬼怒川に沿うように同じ南北に“線状降水帯”と呼ばれる発達した帯状の雨雲がかかり、上流から下流にかけて流域のかなり広い範囲で長時間、雨が降り続いたことで川の水位が大幅に上がったことが一番の原因のようです。そのうえで、堤防を越えた水が構造的に弱い堤防の裏側を削ったことで決壊に繋がってしまったと考えられると、あるテレビ局の番組の中で土木工学が専門の先生がおっしゃっていました。
このような報道を目にするたびに、私は気象に関わるものとして、無力感を感じてしまいます。なにかできたのではないか…と。自然には圧倒的な破壊力を持つ脅威の側面があり、ひとたびそれが襲ってくると人はほとんど無力の状態になります。なので、事前にいかにして最悪の事態を回避するか…という対応をとるしかありません。その事前の災害回避行動をとる上で重要となるのが“情報”です。迫り来る脅威とそれにより襲ってくるであろうリスクの種類と程度、発生するであろうと推定される場所と時間等がわかり、補強や避難指示などの具体的行動に結び付くような予報の情報の重要性が、こうした自然災害が起きるたびに再認識されます。
もちろん気象庁や国土交通省をはじめとした国や地方自治体においてこれまで様々な取り組みがなされてきました。でも、そうした中でも毎年のようにこうした自然災害が繰り返されるということは、それだけでは不十分であるということを意味しているように私は思っています。この分野で私達民間企業もお役に立てるところが間違いなくあると思います。官民連携で力を一つにして立ち向かっていかないと、自然が持つ圧倒的な破壊力に立ち向かってはいけません。
今回の災害の報道を見ながら、私は改めてそのように思っています。
【追記1】
“線状降水帯”と言えば、昨年の8月22日に広島市を襲い、大規模な土砂災害を引き起こした短期的局地的な集中豪雨もそうでした(当時は“バックビルディング現象”などと呼ばれていたように記憶していますが…)。今回は鬼怒川の流域で発生しましたが、あれがもうちょっと西側で発生していたら、私が住むさいたま市を直撃していました。さいたま市を流れる大きな河川と言えば、荒川。荒川の堤防が今回の鬼怒川のように決壊でもしたら、埼玉県南部ばかりでなく、東京都北部や東部を含む首都圏の人口密集地が容易に推定ができないくらいの大きな被害を受けるところでした。その意味で、私はゾッとしています。
この“線状降水帯”ですが、発生メカニズムを考えると、日本中どこで発生してもおかしくはないものです。皆さんも決して他人事とは思わず、自分のところで発生したらどのように行動をするべきか…と日頃から考えておいていただければ、と思います。
【追記2】
茨城県の鬼怒川流域は野菜を中心に「首都圏の食料基地」とも言える一大農業生産地域です。今回の洪水でも多くの田畑が水に浸かり、栽培していた作物がダメになったばかりでなく、当分の間使用できなくなりました。水だけでなく泥も流入していることでしょうから、その復旧には相当の時間がかかり、この先長期間に渡り首都圏の生鮮野菜の供給に大きな支障が出るのではないか…と危惧しています。これはボディーブローのようにジワジワと首都圏の市民生活に影響を及ぼしてくるのではないかと恐れています。そういう意味でも、とんでもなく大変な自然災害が発生したと思っています。
執筆者
株式会社ハレックス
前代表取締役社長
越智正昭
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