2016/01/04
謹賀新年2016
新年、明けましておめでとうございます。
旧年中は格別のご高配を賜り、有難く、厚く御礼申し上げます。
新しい年のスタートにあたり、今年2016年が豊かで活気溢れる1年になることを願い、皆様のご繁栄とご健勝を心よりお祈り申し上げます。
この正月3が日、日本列島は全国的に穏やかに晴れて、気温もこの時期としては温かく、今年1年もこのように平穏な1年でありますように…と願った方も多かったのではないでしょうか。仕事初めの今日1月4日も関東地方は雲ひとつないくらいの快晴で、最高気温は4月上旬並みに上がるとの予報です。世の中の景気も今日の気温のようにグングン上昇してほしい…と願うのは私ばかりではないと思います。
今シーズンの日本列島の冬は暖冬だとの中長期予報が出ています。この暖冬は太平洋の赤道中央から南米のペルー沿岸にかけての広い範囲で海面の水温が平年よりも高くなるエルニーニョ現象が起きている影響です。しかも、今シーズンのエルニーニョ現象については、NASA(アメリカ航空宇宙局)とNOAA(アメリカ海洋大気庁)の2つの機関が、20世紀最強といわれた1997年に発生したエルニーニョ現象にも匹敵する「観測史上最強クラスのエルニーニョ現象」だとの予測を発表しています。このエルニーニョ現象はおおよそ4~5年に一度の割合で発生し、発生すると数ヶ月から1年ほどの期間にわたり続きます。海面の水温は高いところでは5℃ほども上昇します。また、エルニーニョ現象は「南方振動」と呼ばれる海面気圧の変動と密接に関連することが知られています。このため、エルニーニョ現象が発生すると、世界各地の気候も連動して変化します。季節と地域によって異なりますが、平年より気温が高くなったり、逆に低くなったり、雨量が増えたり、減ったりします。日本列島の場合は低温・多雨になりやすいとされるが、過去の観測では暖冬にも寒冬にも、冷夏にも猛暑にも転じており、変化は必ずしも一様ではありません。
日本列島の暖冬はこの「観測史上最強クラスのエルニーニョ現象」の影響が大きく表れたことによるものと考えられていますが、穏やかで過ごしやすい正月だった…と喜んでばかりもいられません。既に知らず知らずのうちに私達の生活に深刻な被害を及ぼし始めてきています。まず、このところ話題になっているのは、降雪量の減少によってスキー場のゲレンデの整備が遅れていることです。オープンまでに雪が間に合わないのはスキー場の経営にとって深刻な問題です。レジャー産業の不振は特に地方の経済にとって大きな打撃となる可能性があります。さらに、農業や漁業への被害も徐々に表れてくることが予想されています。暖冬で降雪量が少ないと、春先に雪解け水を利用する農業に深刻な打撃を与えることになります。また、この時期、野菜の生育が進みすぎて、野菜の価格の暴落が起きる危険性もあります。海水温の変化は海流の流れとも関係するため、季節ごとの漁獲量にも影響を及ぼして、漁業にも深刻な影響を与えることにもなります。
世界に目を転じてみると、この「観測史上最強クラスのエルニーニョ現象」の影響と思われる様々な異常気象が各地で発生しています。南米のパラグアイ、アルゼンチン、ウルグアイでは、クリスマスイブの12月24日、集中豪雨により大規模な洪水や土砂崩れが発生し、多くの犠牲者が出ているほか、15万人以上の方々が避難を余儀なくされていると聞きます。カナダ南東部〜米国南部にかけては日平均気温が平年より10℃以上高い日が続き、テキサス州のダラスでは、12月26日に28℃というこの時期としては記録的な最高気温を観測しました。また、強い寒気と暖気が激しくぶつかり合う状態となり、暴風雨や竜巻が次々と米国中部や南西部を襲い、年末の12月29日にはミシシッピ川の流域などで大規模な洪水が起き、多くの犠牲者を出すなどの被害が出ています。一方、南半球のオーストラリアでは日最高気温が40℃を超えるほどの高温と極度の乾燥により大規模な山火事があちこちで発生し、メルボルン郊外の100軒以上が全焼、さらに数百軒に延焼する恐れが出ているという報道も流れていました。アジアの南部や南東部では、主食となる穀物栽培に不可欠となるモンスーンの雨量が少なく、特にアフリカ東部は深刻な干ばつに見舞われ、エチオピアをはじめとする国々の数百万人に食料援助が必要な状況となっているという報道も流れています。
気象庁や海洋研究開発機構(JAMSTEC)の発表によると、この「観測史上最強クラスのエルニーニョ現象」は今年の春以降衰退し、その後、今年2016年夏から2017年の冬にかけては、エルニーニョ現象とは逆に太平洋の赤道中央から南米のペルー沿岸にかけて、海面の水温が平年よりも低くなるラニーニャ現象が起こるのではないか…との予測も出ています。実際、これまで史上最強といわれた1997年に発生したエルニーニョ現象は、翌1998年の春に急激に衰退し、そしてその後にラニーニャ現象が発生したという観測記録があります。エルニーニョ現象もラニーニャ現象もある一定の周期に従ってほぼ交互に発生する傾向にあります。この1997年の例になぞらえれば、エルニーニョ現象が起こった次の年にラニーニャ現象が起こる可能性は非常に高いということのようです。このラニーニャ現象でも周辺海域だけでなく世界各地の気候変動を伴います。日本列島でもラニーニャ現象の発生に伴い、平年よりも気温が異常に上がったり、あるいは下がったり、雨量が異常に増えたり減ったりといった影響が出ることが予想されています。
あわせて、このところ地球規模で起こっている気候変動が世界的にも様々なところで様々な形で深刻な問題になって顕在化してきています。昨年末の12月13日には、フランスの首都パリの郊外で開催されていた地球温暖化対策を話し合う国連の気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)が、発展途上国を含むすべての国が協調して温室効果ガスの削減に取り組む新たな地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」を採択し閉幕しました。
加えて、日本列島では地震火山活動も心配です。一昨年の木曽御嶽山、昨年の口永良部島と大規模な火山噴火が続き、駿河湾内にある駿河トラフから四国沖にある南海トラフにかけてのプレート境界面では、巨大地震がいつ起こってもおかしくない状態が今も続いています。
このように、今年も圧倒的な破壊力を持つ自然の脅威の来襲に関しては、いつどこで何が起こってもおかしくないぐらいの状況にあるという認識で私達はいます。そうした中、近年、気象情報の活用の重要性が再認識されてきており、それを受けて、我々民間気象事業者に対する世の中の人々の期待も大きく様変わりし、しかもこれまでになく大きくなってきているように私達は日々の業務を通して実感しています。
当社ハレックスの使命は、自然の脅威の来襲から人々の生命と財産をお守りする情報をご提供すること、加えて、自然の恵みを最大限に活かすための情報をご提供することです。本年はお客様をはじめとしたステークホルダーの皆様とともに未来を創る“共創”をキーワードに、社員一同、これからの時代に合った気象情報会社になるべく、独自に開発した最新のビッグデータ処理技術をベースに、“脅威の側面”と“恵みの側面”の両面から自然と真っ正面に向き合い、ソリューション提供企業への事業構造の転換に努力と工夫を重ねて参る所存でおります。
本年もなにとぞよろしくお願い申し上げます。
執筆者
株式会社ハレックス
前代表取締役社長
越智正昭
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