2016/10/07

日本チャンピョン石本康隆選手、2度目の防衛成功!!

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私の観戦ブログがアップされるのを今か今かと首を長くしてお待ちいただいた全国の石本康隆ファンの皆様、大変長らくお待たせいたしました。

私が応援している香川県高松市出身、プロボクシング第39代日本スーパーバンタム級チャンピョン、石本康隆選手(帝拳ジム)の2度目の防衛戦が10月1日(土)に東京水道橋の後楽園ホールで行われ、同級8位の古橋岳也選手(川崎新田ジム)を相手に10ラウンド2分27秒TKOで勝利し、2度目のタイトル防衛に成功しました。ばんざぁ~~い! ばんざぁ~~い!

石本康隆選手は今年4月に指名挑戦者の同級1位・藤原陽介選手(ドリームジム)を相手に初防衛戦を戦い、2度のダウンを奪い、ノックアウト(KO)勝利こそならなかったものの、ジャッジ3名がいずれも98対90を付ける大差の判定で判定勝ちを収め、初防衛を果たしました。

チャンピョン石本康隆選手、タイトル初防衛に成功!!

それから約半年。2度目の防衛戦の相手となるのは同級8位の古橋岳也選手(川崎新田ジム)。古橋選手は昨年(2015年)の8月にノンタイトルの8回戦で対戦した相手です。石本康隆選手は2014年5月31日にマカオで行われたIBF(国際ボクシング連盟)スーパーバンタム級世界チャンピョンへの挑戦者決定戦、また同じく2014年12月6日に東京後楽園ホールで行われた小國以載選手とのスーパーバンタム級日本王座決定戦に相次いで破れ、その連敗からの再起を期して戦った相手がこの古橋岳也選手でした。

リッチギー石本選手、次は日本タイトル獲得だぁ~っ!

いっぽうの古橋岳也選手も2015年4月30日、石本康隆選手との日本王座決定戦に勝利して日本チャンピョンの座についた小國以載選手の初防衛戦の相手として、当時の同級1位として対戦。10ラウンドを戦い、0対1の極めて僅差の判定で敗れました。

両者再起を賭けた一戦は両者とも右のボクサーファイターの似たようなボクシングスタイルの選手同士なので、序盤から両者ともに鋭いジャブを応酬しあう緊迫した展開となり、試合はどちらが勝ってもおかしくない大接戦となりました。石本選手が中盤以降試合巧者ぶりを発揮してポイントを稼いだように思えましたが、第7ラウンドにホールディングによるまさかの減点1を受け、試合はそのまま判定に。最終的には3対0の判定で石本選手が勝利したものの、ホント僅差での判定勝ちでした。

その古橋岳也選手との試合に勝ったことで日本ランキング2位に浮上した石本康隆選手は、同年12月21日に行われた日本スーパーバンタム級王座決定戦で当時同級1位だった久我勇作選手(ワタナベジム)と対戦し、その試合に勝って、悲願の日本チャンピョンのベルトを手にしたのでした。

日本スーパーバンタム級チャンピョン、いっしもとぉ~やっすたかぁ~!

いっぽう、古橋岳也選手はその後、渡辺大介選手(ワタナベジム、現在同級6位)とのノンタイトル8回戦にも判定で敗れて連敗。今年6月に鈴木鹿平選手との一戦にTKOで勝利してなんとか再起を果たし、今回のチャンスを掴みました。現在、日本ランキング8位とは言っても、過去に同級1位として日本スーパーバンタム級タイトルマッチを戦った経験もある強い選手です。石本選手としては、一度対戦したことのある相手だけに、その強さを十分に認めた上で、きっちりと決着をつけたい相手だということで、古橋岳也選手を2度目の防衛戦の対戦相手に選んだのではないか…と思われます。試合のパンフレットによると、古橋選手はこの2度目の日本タイトルマッチに臨むためにメキシコで約1ヶ月間の合宿を張り、心身ともにさらなる成長を図ったのだとか。このように、この2度目の防衛戦も少しも気を許せない厳しい一戦となりました。


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香川県人会を中心とした石本康隆応援団は後楽園ホール入り口前に開場時刻の17時20分の集合だったのですが、朝からソワソワしていた私は、電車の乗り継ぎもバッチリだったので、17時ちょっと過ぎには集合場所に到着しました。まだ開場前だというのに、後楽園ホールの入り口前には大勢の観客が集まっています。その中にひときわ密集した集団があって、皆さん手に手にスマホやカメラでその集団の真ん中にいる男性を撮影しています。なんだ、なんだぁ〜? おぉっ!!あのお方は!! “浪速のジョー”こと辰吉丈一郎選手ではないですか!!

辰吉丈一郎選手といえば、1990年、プロデビューから4試合目にして、第50代日本バンタム級チャンピョンになり(日本最短タイ)、翌1991年には8試合目にして第18代WBC世界バンタム級チャンピョン(当時日本最短)にまで一気に登り詰めました。辰吉丈一郎選手は、当時まだ21歳。これから何度タイトルを防衛してくれるのだろう…と日本中のボクシングファン全員が期待したのですが、そのタイトル奪取の直後に左眼の網膜裂孔による入院・手術を受け、長期間の休養を余儀なくされ、1年後に行われた初防衛戦に敗れて王座陥落。その後、今度は同じ左目の網膜剥離を患い、手術。引退勧告まで出されたのですが、それを拒否して現役を続行。

1994年には薬師寺保栄選手との日本人選手同士のWBC世界バンタム級タイトルマッチに臨み、ボクシングファンのみならず全国の注目を集めました。この試合、辰吉丈一郎選手は圧倒的優位を予想されたのですが、フルラウンドにわたる死闘の末、12回判定負けを喫しました。試合後のインタビューによると、この試合の敗因は第1ラウンド序盤に放った左ストレートが薬師寺の頭部付近に当たった際、左の拳を骨折。以降なかなか左のパンチが出なくなり、セコンドから左を出すように言われても「骨折れて出んのじゃ、ボケ!」と思う程の状態で試合を続行したためだったのだそうです。その後も引退勧告を拒否し続けながら世界タイトルへの挑戦を続け、1997年、通算5度目の世界挑戦で第24代WBC世界バンタム級王者への返り咲きを果たし、その後、2度の王座防衛に成功しています。

一度、引退を表明したものの、その後撤回。現在でも辰吉丈一郎選手本人は現役に拘り、トレーニングを欠かしていないとwikipediaには載っています。なので、“元選手”ではなく、今も“辰吉丈一郎選手”です。プロでは28戦して20勝(14KO)7敗1分。意外と試合数が少ないことに驚かされますが、それは網膜剥離を患ったことで、日本ボクシングコミッション (JBC) のルールにより日本国内での試合ができない身となったことによるものです。しかし、20勝のうち14勝がKO勝ちと、中量級としては驚異的なパンチ力を持つボクサーで、“浪速のジョー”と呼ばれて、日本中で知らない人はいないと思われるくらいの人気を集めたボクサーでした。言ってみれば、“伝説のボクサー”。その“伝説のボクサー”がすぐ目の前にいることに感動を覚えます。バンタム級という中量級の選手なので、どちらかと言うと男性としては小柄な部類に入る体格の方なのですが、身体全体からオーラを発している感じで、威圧力が半端なくあります。

帝拳ジムのHPの石本康隆選手のプロフィールによると、石本康隆選手がボクシングをはじめたきっかけは、小学生の頃、テレビで辰吉丈一郎選手の試合を見て影響を受けたため…と書かれています。そういうご縁もあり、辰吉丈一郎選手が後輩の石本康隆選手の応援に来てくれたのかな(辰吉丈一郎選手は大阪帝拳ジム所属)…と思ったりもしたのですが、どうもそういうわけではなさそうです。大勢の応援団らしき一団とご一緒で、その応援団らしき一団は「辰吉寿以輝」とか「大阪帝拳」と書かれた派手な何本もの幟を持ち込んでいます。辰吉寿以輝? もしかして、辰吉丈一郎選手のお子さんか? 辰吉丈一郎選手のお子さんの辰吉寿以輝選手の東京でのデビュー戦が石本康隆選手の日本スーパーバンタム級タイトルマッチの前に行われる前座試合の1つとして組まれていて、その応援にご夫婦揃って大阪からお越しのようです。

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開場時刻が来て、会場(後楽園ホール)内に入りました。後楽園ホールに続く階段は両側の壁も床も落書きだらけなのが有名なのですが、よく見ると、その落書きは新しいものだらけ。どうも定期的に綺麗に消して、また新たな落書きを書かせているようにも思えます。(本当か?)

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後楽園ホールには、中央にリングが設けられるボクシングやプロレスの試合では、リングを囲むように東西南北の観客席が設けられるのですが(人気テレビ番組『笑点』の収録では南側のメインの観客席のみ使用)、この日観戦したのは、北側の観客席でした。この北側の観客席はメインイベントを戦うチャンピョンの応援団に優先的に販売される席のようで、私がこの北側の観客席で観戦するのは初めてのことです。G段(前から7段目)の中頃の席で、座るとちょうど目線の高さがリング上の選手とほぼ同じになります。メチャメチャ見やすい素晴らしい席を用意していただきました。さすがに2度目の防衛戦ともなると違いますね。

この北側の観客席ほぼ全部に加えて、東、南側観客席にも石本康隆応援団が陣取ります。石本康隆選手の応援団としては過去最多の人が集まったと聞いていますから、300人を超えるほどでしょうか。嬉しいことです。目立つことを好まないどちかと言うとおとなしい県民性を持つ香川県人が主体の石本康隆選手応援団ですが、これだけ人数が集まると問題ないでしょう。声を限りに石本康隆選手に声援を送りましょう。東側の壁面を見ると、もう見慣れたデッカい石本康隆選手応援旗が掛けられ、他を圧倒しています。

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この日の試合は帝拳ジムの主催試合なので、リングサイドの席を眺めると、帝拳ジム所属の現役の世界チャンピョンや元世界チャンピョンが何人も応援に来ています。私が分かる範囲で言うと、さる9月16日にエディオンアリーナ大阪において同級1位のアンセルモ・モレノ選手(パナマ)に7ラウンドKO勝ちして、日本歴代第2位に並ぶ11度目の防衛を果たしたWBC世界バンタム級チャンピョンの山中慎介選手(帝拳ジム)、さらにはロンドンオリンピックミドル級金メダリストで、プロ入り後11戦 して11勝 (8KO)無敗。現在、IBF及びWBO世界ミドル級3位、WBC世界同級5位の村田諒太選手。私はボクシング観戦歴が浅いので、残念ながらそれがどなたなのかを存じ上げないのですが、他にも多くの人達がカメラやスマホを向けて写真を撮ったり、握手をして貰っている選手が何人もいます。さすがは名門・帝拳ジムです。もう、この人達の姿が間近でナマで見られるだけでも、観戦に来てよかったと思えてきます。

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この日の試合はCS放送の日テレG+で全国に生中継されるようで、場内の照明がいつもより明るく、試合が始まる前なので、応援に来ている村田選手や山中選手の姿を追ってカメラクルーが忙しく動き回っています。

この日の対戦カードはメインイベントの石本康隆選手の日本スーパーバンタム級タイトルマッチを含めて6試合。バンタム級からウェルター級までの中量級ばかりの6試合です。6回戦が1試合と8回戦が4試合。デビュー間もないキャリアの浅い選手による4回戦の試合は組まれておらず、第1試合から6回戦です。このあたりの階級は選手層も厚く、テクニックあり、パンチ力ありなので、面白い試合ばかりが期待できます。また、帝拳ジムの主催試合なので、どの試合も赤コーナーは帝拳ジムの選手です。

ちなみに、プロボクシングには、A級・B級・C級の3種類のライセンスがあります。アマチュアでそれなりの実績を積んできた選手であればいきなりB級ライセンスが取得できますが、そうでない選手はC級ライセンスからのスタートです。プロテストとは、このC級ライセンスを取得するための試験を受験することです。一番グレードが低いC級ライセンスですが、このライセンスでは4回戦(4ラウンド)までの試合にしか出場できません。通常、C級ライセンスで4勝すると1つ上のB級ライセンスに上がれます。B級ライセンスは6ラウンドまでの試合ができるクラスです。そのB級ライセンスで2勝すると最上級のA級ライセンスに上がれます。A級ライセンスを取得してやっと8ラウンド以上の試合に出ることが可能となります。日本タイトルマッチは10ラウンド、東洋太平洋タイトルマッチや世界タイトルマッチは12ラウンドで行われるので、もちろんA級ライセンスの取得者でないと出場はできません。この日組まれた6試合は前座試合と言えども6回戦と8回戦ばかり。ということは、これまでそれなりの戦歴を持つA級及びB級ライセンスを取得した選手が対戦する試合ばかりということなので、面白い試合ばかりが期待できます。

前座の試合の第1試合はバンタム級の6回戦。大嶋剣心選手(帝拳ジム)と入口裕貴選手(エスペランサスポーツボクシング)が対戦しました。序盤からポイントを奪い合うような面白い試合展開でしたが、手数で勝った青コーナー・入口選手が3対0の判定で勝利しました。3対0の判定ではありましたが、ポイントの差は僅差でした。負けたとはいえ、大嶋剣心選手は21歳。アマチュア経験が豊富なようで、基本がしっかりできたいい構えでの戦いぶりです。おそらく試合の序盤で右の拳でも痛めたのではないでしょうか。左のジャブは出るものの、肝心の右のパンチが少なく、手数の差が判定に現れたようです。万全な状態だと、きっとノックアウトで勝てたのではないかと思います。若いので頑張ってほしいと思います。

第2試合はウェルター級の8回戦。玉山将也選手(帝拳ジム)と金本祥平選手(グリーンツダジム)の対戦でした。この日組まれた6試合の中では最も体重の重い階級だけに、ノックアウト(KO)シーンが期待されます。この試合、第1ラウンドで玉山選手が右アッパーを好打し、期待通りにいきなりダウンを奪う幸先良いスタートを切ります。その後もスピードで上回る玉山選手が試合を優勢に進め、第5ラウンドにも2度目のダウンを奪い、最後まで危なげなくペースを掴み、終了のゴングを聞きました。判定の結果は3対0、ポイント的にも大差をつけての玉山選手の判定勝ちでした。これで玉山将也選手は8勝(4KO)1敗。22歳と若い選手なので、今後に期待を抱かせてくれます。

最初は空席が見えた観客席もこの第2試合が始まる頃には大きな南側観客席の最上階までギッシリ満席。2階席で立ち見も出ているくらいで、華やかさも加わり、メインイベントに向けて日本タイトルマッチに相応しい雰囲気が徐々にできあがってきつつあります。

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第3試合は石本康隆選手と同じスーパーバンタム級の6回戦。前座の第3試合の6回戦なのですが、ここで場内が大いに盛り上がります。赤コーナーから登場してきたのが、あの“浪速のジョー”こと辰吉丈一郎選手の次男・辰吉寿以輝選手(大阪帝拳ジム)。辰吉寿以輝選手にとっては東京初登場の試合です。“浪速のジョー”のDNAを継ぐ選手として、大いに期待されているのでしょう、メチャメチャの人気です。20本近い大量の幟、それも大阪らしいコテコテの幟(縁日の焼きそば屋さんの屋台かと思うほどのコテコテぶりです)がリングサイドに続く花道の両サイドを飾ります。その大量の幟の中、大声援に迎えられて辰吉寿以輝選手がリングに上がります。こりゃあ戦歴の浅い若い選手にとっては相当のプレッシャーだろうな…と、気の毒に思えるくらいです。東側のリングサイドで、お父さんの辰吉丈一郎選手が奥様と並んで息子さんの戦いぶりを見守っています。リング上をジッと見つめる辰吉丈一郎選手の目が怖そうです。これの相当のプレッシャーでしょう。辰吉寿以輝選手(大阪帝拳ジム)と対戦するのはモンキー修平選手(大星ジム)。ここまで14戦して5勝(2KO)8敗1分と負けが先行している選手ですが、ここで人気のある辰吉寿以輝選手を倒して一気に注目を集めたいのでしょう、リングに上がった時から気持ちが前面に出ているのが見て取れます。

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その気持ちが現れたのか、試合はいきなり第1ラウンドから動きます。第1ラウンドにモンキー修平選手の右フックが炸裂して辰吉寿以輝選手がたまらずダウン。ですが、辰吉寿以輝選手はすぐに立ち上がり、試合が再開されると倒し返すために猛然と攻めていきます。リングを見つめるお父さんの辰吉丈一郎選手の目がさらに怖そうになっています。おそらく、辰吉寿以輝選手は相当のプレッシャーの中での戦いだったので序盤は我を忘れていたのが、このダウン一発ですっかり目が覚めたのでしょう。迎えた第3ラウンド終盤に辰吉寿以輝選手が左右の連打でダウンを奪い返すと徐々に流れは辰吉寿以輝選手のほうに傾き、第5ラウンド1分29秒にも右ストレートでモンキー修平選手から2度目のダウンを奪い、ダメージを考慮したレフェリーが即座に(ノーカウントで)試合をストップ。辰吉寿以輝選手のテクニカル・ノックアウト(KO)勝ちです。ダウンの応酬の試合を制した辰吉寿以輝選手はこれでデビューから6戦全勝(4KO)、大阪からやってきたであろう辰吉寿以輝選手の大応援団から場内割れんばかりの歓声が上がりました。さすがに“浪速のジョー”のDNAを受け継ぐ選手。まだ20歳だし、将来が期待できそうです。リングサイドの辰吉丈一郎選手ご夫妻のほうを見ると、奥様(寿以輝選手のお母様)が胸に手を置いて、大きく深呼吸。ホッとしている様子が見て取れました。そりゃあそうでしょう。父親の辰吉丈一郎選手のほうは極めて不機嫌そうな様子の顔でリング上をジッと見つめています。試合後のインタビューで辰吉寿以輝選手は「今まで一番強い相手でした。ダウンもとられましたので。(親父からは)ボロクソに言われるでしょう」と答えていましたが、果たしてどうなったでしょうか…。

続く第4試合はフェザー級の8回戦。これまた石本康隆選手と同じ日本スーパーバンタム級13位の中澤奨選手(大阪帝拳ジム)とOPBF東洋太平洋スーパーバンタム級12位でこの試合が日本でのデビュー戦となるランディ・クリス・レオン選手(フィリピン)との対戦でした。この中澤選手も大阪帝拳ジム所属の選手。大阪帝拳ジムの名物なのかもしれませんが、この中澤選手も20本近い大量の幟がリングサイドに続く花道の両サイドを飾ります。ただ、中澤選手の応援幟は白地に名前を書いただけのシンプルなものでした。この試合、フィリピンの選手特有のスタイルでガードをガッチリと固める小柄なレオン選手に対して、中澤選手は左ジャブから上下の打ち分けを見せてそのガードを崩そうと攻めるのですが、時折スピードとキレのあるパンチを返すレオン選手になかなか決定打を与えることが出来ません。その後も手数で中澤選手が勝るのですが有効打を与えるまでには至らず、第8ラウンドを終了。3対0で中澤選手の判定勝ちとなりました。これで中澤選手は9勝(4KO)1敗、石本康隆選手に次ぐスーパーバンタム級のホープとなりそうな選手です。

実はこの試合の途中から、私はメインイベントの石本康隆選手の応援幟の準備のために赤コーナーの花道の裏の通路に移動したので、試合はしっかりとは観ていません。時折、花道の外からチラッチラッとリング上の試合の様子を覗くだけでした。前述のように、大阪帝拳ジム所属の選手の応援団は20本近い幟を用意しているので、花道裏の狭い通路は組み立てられた幟とそれを持つ人、撤収作業をする人で大混雑。準備を終えたのはギリギリでした。ですが、そこは応援幟係の役得ってのもあります。前述のようにこの試合は帝拳ジム主催の試合なので、帝拳ジム所属のボクサー、それも現役の世界チャンピョン、元世界チャンピョンが何人もリングサイドに観戦に来ています。狭い通路なのでそうした有名ボクサーが何人もすぐ目の前を通り過ぎていきます。中でもWBC世界バンタム級チャンピョンの山中慎介選手(帝拳ジム)。メチャメチャ格好よかったです。記念写真に応じていただけました。光栄です。

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その他にも、私が確認できただけでも9月10日に米国カリフォルニア州イングルウッドで臨んだ7度目の防衛戦で敗戦し、王座から陥落したばかりの前WBC世界スーパーフライ級チャンピョンのカルロス・クアドラス選手(メキシコ・帝拳ジム所属)、3月4日に初防衛戦に失敗し、そのまま引退した前WBC世界ライトフライ級チャンピョンの木村悠選手、さらには前述の村田諒太選手。さらには“浪速のジョー”辰吉丈一郎選手が肩が触れ合いそうな距離で私のすぐ目の前を通り過ぎていきました。さすがにお二人とも全身からオーラを発散しています。こういう方々を間近で観られて、光栄です。特に村田諒太選手、笑顔が爽やかで、惚れ惚れするほど素敵でした。今の勢いのまま、1日も早く、世界チャンピョンに登りつめて欲しいと願っています。

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この日の第5試合はセミファイナル、127ポンド契約(フェザー級相当)8回戦は日本フェザー級1位で、元WBA世界スーパーバンタム級チャンピョンの下田昭文選手(帝拳ジム)とフィリピン・フェザー級7位のガドウィン・トゥビゴン選手(フィリピン)との対戦でした。下の写真は下田選手が赤コーナーの花道に続く通路を出ていくところです。

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下田選手は元日本スーパーバンタム級チャンピョン(3回防衛)、元OPBF東洋太平洋スーパーバンタム級チャンピョン(1回防衛、返上)、元WBA世界スーパーバンタム級チャンピョン(初防衛失敗)という堂々たる実績を過去に残す選手で、2011年に失ったタイトルを取り戻すべくフェザー級に1クラス階級を上げて再挑戦しているところです。試合は、開始早々から下田選手がじわじわとプレスを掛けながらトゥビゴン選手の焦りを誘い、迎えた第2ラウンド1分58秒、下田選手の右フックがトゥビゴン選手の側頭部にクリーンヒットするとトゥビゴン選手はその場に崩れ落ち、10カウントでの下田選手のノックアウト勝ちとなりました。私は次の試合に向けての準備のため第1ラウンドしか観ていませんでしたが、短い時間ではありましたが、こりゃあ早いラウンドで決着がつきそうだと直感で判断ができました。「準備を急ごう!」と応援幟持ちの仲間達に声を掛けた直後の10カウント。さすがに焦っちゃいました。なので、下田選手のノックアウト勝ちのシーンは、私は実際は観ていません。下田選手はこれで31勝(14KO)4敗2分。現在、日本フェザー級1位なので、次の試合では日本タイトルへの挑戦が濃厚です。是非、タイトル奪取に成功して欲しいと願っています。

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そしていよいよこの日のメインイベント、日本スーパーバンタム級タイトルマッチ、石本康隆選手の登場です。セミファイナルが第2ラウンドで決着がついたので、試合開始前に10分間の休憩が間に入り、応援幟の準備には少し余裕ができたのですが、胸のドキドキ感が高まり、ジッとしていられないような焦燥感が襲ってきます。10分間の休憩タイムが過ぎ、トイレに立っていた観客の皆さんも席に戻って来られたので、私達応援団の出番です。通路を出る前に円陣を組み、この日もわざわざ九州の福岡から石本康隆選手の応援のために駆け付けてくれた応援団長の「石本康隆選手の勝利を信じて、力一杯応援するぞ!」のリードに全員大きな声で「オォーーーッ!!」と応じて、花道をリングサイドのほうに進みます。この日は係員さんからこれ以上前へ出ないように…と注意されるまでリングの近くまで進もうと決めていたので、ドンドン前へ進みます。とは言え、石本康隆選手の応援幟は全部で8本。それが左右4本ずつに分かれるので、離れたところから見ると、かなりリングサイドに近いところに固まってしまったのではないかと思われます。「まっ、いいっか」。私は花道左側の前から2番目の幟を担当させていただきました。私が応援幟を持つようになってから、石本康隆選手は全勝を続けています。この日もこの連勝記録を続けてくれるでしょうか。

華やかな入場曲とともに青コーナーから対戦相手の古橋岳也選手(川崎新田ジム)が入場して来て、いよいよ石本康隆選手の入場です。入場曲はいつものように石本選手がこよなく愛するHi-STANDARD の「brand new sunset」。青、緑、赤、白…と照らされるライトの色が変わる中、少し時間をかけて焦らしながらの入場です。私の目の前を獣のような鋭い眼をした石本選手が通り過ぎていきます。「イシモト、頑張れよ!」と大きな声で声を掛けたのですが、それも聴こえているのだかどうか。既に試合に向けて相当に集中しているようです。肌艶もよく、体調も上々のようです。期待できます。

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石本選手がリングに上り、「赤コーナー、第39代日本スーパーバンタム級チャンピョン、いっしもとぉ~~、やっすたかぁ~~~~!」というリングアナウンサーによる選手紹介の声を背中で聴きながら、私達応援幟隊は花道に繋がる通路へと撤収です。カァーン!と乾いた音で試合開始のゴングが鳴り響きました。さぁ〜、いよいよ二度目のタイトル防衛に向けた10ラウンドが始まりました。

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私は第1ラウンドを赤コーナー裏の通路のところで応援の幟を片付けながら眺めていました。昨年8月以来、約14ヶ月振りの再戦は第1ラウンドから石本康隆選手が左のジャブを有効に使い、ポイントを挙げ、ペースを掴んでいきます。この試合も序盤の入り方が鍵だと思っていましたが、上々の立ち上がりのようです。しかし、第2ラウンド、古橋選手のパンチが石本選手の顔面にクリーンヒットし、石本選手の鼻から鼻血が流れてきます。このところ石本選手は毎試合序盤で流血をしているのですが、この試合も同じ展開です。流血するとかえって闘志に火が点くのが、このところの石本康隆選手で、鼻血は流すものの、流れは変わらず、コツコツと顔面への有効打を重ねていきます。日本タイトルマッチの場合、中間の第5ラウンド終了時に途中の採点結果が発表されるのですが、それによると3対0(3人のジャッジのうち、50対45が1人、49対46が2人)。予想(期待)通り、石本康隆選手が大きくリードしての折り返しです。

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後半に入ってからも古橋選手が強い気持ちを前面に出して粘りを見せるものの、石本康隆選手が放つパンチが的確に古橋選手をとらえ、有効打を重ね、さらにポイント差を広げていきます。両選手ともオーソドックスな右のボクサータイプの選手なのですが、どうも石本康隆選手の間合いと言うか距離感で試合が進められているようで、両選手の手数にさほどの差はないものの、有効打の数は圧倒的に石本康隆選手のほうが多い感じがします。加えて、石本康隆選手は巧みにクリンチや背後のロープをも使うベテランらしい試合巧者ぶりも見せ、ポイントの差を容易には縮めさせません(途中、クリンチのやり過ぎでレフェリーからの注意も受けましたが、これが石本康隆選手のボクシングです)。

時折、古橋選手の顔に追い詰められた焦りの表情が浮かびます。完全に攻めあぐねているような様子です。第5ラウンド終了時点で発表された途中の判定結果からポイント差で大差がついていることが古橋選手も分かっているので、こうなると一発逆転を狙って強引なパンチを繰り出してくる筈です。一瞬の油断からそういうパンチを不用意に喰らってしまったら危険なので、それだけが心配になります。古橋選手のこの試合に賭ける気持ちの強さが十分に伝わってきますので、気が気でならない時間がずっと続き、第7ラウンド、第8ラウンド…とラウンドを重ねていきます。

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このまま判定に持ち込まれるのかな…と思った最終第10ラウンドも開始2分を過ぎたあたりで、猛然と石本選手がラッシュを仕掛けます。試合後の石本選手のインタビューによると、この最終第10ラウンドが始まる前に、セコンドについたトレーナーから「勝負しろ!」と激を飛ばされて気持ちが入ったのだそうです。左フックから左右の連打を古橋選手の顔面に畳みかけたところでダメージを考慮したレフェリーが両選手の間に割って入り、2分27秒、レフェリーストップのテクニカル・ノックアウト(KO)で石本康隆選手が勝利。2度目のチャンピョンベルト防衛に成功しました。以下の写真は勝った瞬間の石本康隆選手の後ろ姿です(写っていませんが、画面の右にうなだれた古橋選手がいます)。石本選手は右手で小さくガッツポーツをとっているようです。

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ノックアウトでの2度目の防衛、素晴らしいの一言です。TKOで敗れたとはいえ、古橋選手も14ヶ月前とは一回り強くなった感じがして、試合としても実に見応えがありました。私がこれまで観戦してきた石本康隆選手の試合の中では最高の試合だったのではないでしょうか。とにかく強く印象に残る試合でした。


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試合後のインタビューで石本康隆選手は「勝ててほっとしています、またボクシングを続けていけると思うとホントに嬉しいです。今回は左ジャブを徹底して先に出し、先手を取って行くということを試合前は考えていましたが、そこはまずまず出来たかなと思っています。100点とはいかないですが、仕留められて良かった。これからも目の前の試合に勝っていくだけです」と答えていました。10月10日に35歳の誕生日を迎える石本選手にとっては、負ければ引退…と言う「常に崖っぷちにいる気持ち」なのでしょう。「勝ててほっとしています、またボクシングを続けていけると思うとホントに嬉しいです」は心からの言葉だと思います。よかったよかった。応援幟を持つようになってからの私の連勝記録も、また1つ伸びました。

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これで石本康隆選手は29勝(8KO)8敗。現在第6位のWBO世界ランキングもこの試合の勝利でもう少し上がると思います。ついに、念願の世界チャンピョンのベルトへの挑戦も手に届くところにまで来たのではないかと思います。そういう機会がすぐに訪れるかどうかは分かりませんが、次の試合も是非頑張ってほしいと願っています。

試合後に開催された石本康隆選手の祝勝会、もちろん律儀な石本康隆選手は顔を出してくれました。第2ラウンドに鼻血を出したくらいで、この日の試合では顔面にそれなりの数のパンチを受けたことから、さすがにさぞや顔面が腫れ上がっているのではないのかな…と心配したのですが、チャンピョン石本康隆選手はつい1時間ほど前までチャンピョンベルトを賭けた激闘を戦っていたとは思えないくらいにスッキリした顔で、そして柔和な目の笑顔で私達の目の前に現れてくれました。祝勝会中、ずっと拳を冷やしていたのは、試合で少し拳を痛めたのかもしれません。それだけ激しい打ち合いでした。今は少しでも身体を休めて、次の試合に備えて欲しいと願っています。

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私は石本康隆選手をずっと応援し続け、一緒に世界タイトルを目指したい…と、本気で思っています o(^▽^)o

頑張れ、石本康隆選手!!

執筆者

株式会社ハレックス前代表取締役社長 越智正昭

株式会社ハレックス
前代表取締役社長

越智正昭

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