2017/09/20
中山道六十九次・街道歩き【第15回: 塩名田→長久保】(その4)
進行方向右手には御牧ヶ原台地・望月の牧が広がっています。
県道はすぐに国道142号線と合流します。ここからはしばらく国道142号線の歩道を歩きます。次の望月宿まで2.5km。頑張ろう!
振り返ると、「五郎兵衛新田」の青々とした美しい田園風景の先に雄大な浅間山の山容が見えます。「五郎兵衛新田」、よくぞこの広い田圃を開拓したものです。
道路の右下にこのあたりの農家と思しき古い民家が建っています。おそらく、かつてはあの民家の庭先あたりを中山道は通っていたと想像されます。この国道142号線を作る時に、アップダウンを繰り返すルートを緩和するために、道路の部分だけ嵩上げしたのではなかろうか…と考えられます。
このあたりに「五郎兵衛用水堀貫」があるそうです。五郎兵衛用水は9箇所に堀貫(隧道:トンネル)を掘り、鹿曲川から引水しました。これらは長野県の史跡に認定されています。
同じく道路の右下にフラワーガーデンがあります。季節の花々が色とりどりに咲いていて綺麗です。道中、こういう風景を眺めるのも、街道歩きの楽しみの1つです。
安藤広重が浮世絵「木曽海道六拾九次」の中の「八幡宿」で描いた絵は、布施川に架かる百沢橋のあたりから見たこの風景を描いたものではないか…と言われています。
百沢橋を渡ったところで、道路の右下に下り、そこから伸びる道を歩きます。この細い道が旧中山道です。国道142号線を作る時に道路を嵩上げしたので分断されたようになっていますが、かつてはおそらく手前から真っ直ぐ延びていた道だと思われます。この道が旧中山道であるという主張を、案内標識がしてくれています。
クルミの木です。まだ緑色をした果実ですが、これが熟すとあのクルミになるのですね。
「中山道六十九次・街道歩き」の参加者メンバーの中にはマンホールマニアの女性がいらっしゃって、各地の特徴のあるマンホールの蓋を見つけては写真に撮って蒐集されています。その女性が立ち止まって写真を撮影されています。そのマンホールの蓋がこれです。望月の周辺にある御牧ヶ原台地・望月の牧は名馬の産地ということで、マンホールの蓋には馬の絵が描かれていました。
布施川に架かる百沢橋を渡ると、右手に再び旧道の入り口があって、ここから旧中山道の雰囲気を感じながら、緩い登り坂を登っていきます。このあたりが百沢と呼ばれている集落です。国道から離れているため今も昔の風情が色濃く残り、落ち着いた家並みが続いています。
このあたりには道端に道祖神がたくさん立っています。道祖神には旅の神、境を守る神、悪魔を祓う神、子供を守る神…と、様々に信仰されていました。
「百沢の双体道祖神」です。珍しい衣冠束帯(いかんそくたい)と十二単(じゅうにひとえ)という宮廷貴族風の衣装をまとった男女が祝言を挙げ、酒を酌み交わす様子を表現した精巧なレリーフの双体道祖神です。地元では「祝言道祖神」とも呼ばれていて、人気があります。このあたりは伊那の高遠石工(たかとおいしく)の手による秀作の道祖神がたくさんあります。
また、道祖神だけでなく、二十三夜塔や庚申塔、馬頭観音など、幾つもの石碑・石像が立っています。
布施温泉入口交差点で国道142号線を渡り、そこから把握長野県道150号百沢臼田線をほんの少し歩きます。
「仲仙道(中山道)牧布施道標」です。この道標は元禄10年(1697年)に建てられた古い道標です。石には“中山道”のことを“仲仙道”と表記して彫られています。 “中山道”、“中仙道”、“仲山道”、“仲仙道”…と同じ“なかせんどう”でもバラバラの漢字表記だったこの街道の名称を“中山道”に統一したのは正徳6年(1716年)のことで、この道標が建つ19年前にあたります。ちなみに、“中山道”という名称が適切であると言い出したのは、江戸時代中期の旗本で、朱子学、歴史学、地理学、言語学、文学と多岐に渡る学問でも博識を誇った新井白石でした。「東山道の内の中筋の道に候故に、古来より中山道と申事に候」、すなわち、「この道は東山道の真ん中を通る道という意味だから、中山道が正しい」と街道としての成立の経緯をもとに主張し、その主張を幕府が採用して、公式には「中山道」に名称を統一したということのようです。昔は“山”を“セン”と読んだのでしょうが、なかなか一般庶民には読みにくかったようで、その後も民間の道中記(旅行案内書)等では“中仙道”と表記したり、“木曽街道”と呼ぶことも多かったようです。
……(その5)に続きます。
県道はすぐに国道142号線と合流します。ここからはしばらく国道142号線の歩道を歩きます。次の望月宿まで2.5km。頑張ろう!
振り返ると、「五郎兵衛新田」の青々とした美しい田園風景の先に雄大な浅間山の山容が見えます。「五郎兵衛新田」、よくぞこの広い田圃を開拓したものです。
道路の右下にこのあたりの農家と思しき古い民家が建っています。おそらく、かつてはあの民家の庭先あたりを中山道は通っていたと想像されます。この国道142号線を作る時に、アップダウンを繰り返すルートを緩和するために、道路の部分だけ嵩上げしたのではなかろうか…と考えられます。
このあたりに「五郎兵衛用水堀貫」があるそうです。五郎兵衛用水は9箇所に堀貫(隧道:トンネル)を掘り、鹿曲川から引水しました。これらは長野県の史跡に認定されています。
同じく道路の右下にフラワーガーデンがあります。季節の花々が色とりどりに咲いていて綺麗です。道中、こういう風景を眺めるのも、街道歩きの楽しみの1つです。
安藤広重が浮世絵「木曽海道六拾九次」の中の「八幡宿」で描いた絵は、布施川に架かる百沢橋のあたりから見たこの風景を描いたものではないか…と言われています。
百沢橋を渡ったところで、道路の右下に下り、そこから伸びる道を歩きます。この細い道が旧中山道です。国道142号線を作る時に道路を嵩上げしたので分断されたようになっていますが、かつてはおそらく手前から真っ直ぐ延びていた道だと思われます。この道が旧中山道であるという主張を、案内標識がしてくれています。
クルミの木です。まだ緑色をした果実ですが、これが熟すとあのクルミになるのですね。
「中山道六十九次・街道歩き」の参加者メンバーの中にはマンホールマニアの女性がいらっしゃって、各地の特徴のあるマンホールの蓋を見つけては写真に撮って蒐集されています。その女性が立ち止まって写真を撮影されています。そのマンホールの蓋がこれです。望月の周辺にある御牧ヶ原台地・望月の牧は名馬の産地ということで、マンホールの蓋には馬の絵が描かれていました。
布施川に架かる百沢橋を渡ると、右手に再び旧道の入り口があって、ここから旧中山道の雰囲気を感じながら、緩い登り坂を登っていきます。このあたりが百沢と呼ばれている集落です。国道から離れているため今も昔の風情が色濃く残り、落ち着いた家並みが続いています。
このあたりには道端に道祖神がたくさん立っています。道祖神には旅の神、境を守る神、悪魔を祓う神、子供を守る神…と、様々に信仰されていました。
「百沢の双体道祖神」です。珍しい衣冠束帯(いかんそくたい)と十二単(じゅうにひとえ)という宮廷貴族風の衣装をまとった男女が祝言を挙げ、酒を酌み交わす様子を表現した精巧なレリーフの双体道祖神です。地元では「祝言道祖神」とも呼ばれていて、人気があります。このあたりは伊那の高遠石工(たかとおいしく)の手による秀作の道祖神がたくさんあります。
また、道祖神だけでなく、二十三夜塔や庚申塔、馬頭観音など、幾つもの石碑・石像が立っています。
布施温泉入口交差点で国道142号線を渡り、そこから把握長野県道150号百沢臼田線をほんの少し歩きます。
「仲仙道(中山道)牧布施道標」です。この道標は元禄10年(1697年)に建てられた古い道標です。石には“中山道”のことを“仲仙道”と表記して彫られています。 “中山道”、“中仙道”、“仲山道”、“仲仙道”…と同じ“なかせんどう”でもバラバラの漢字表記だったこの街道の名称を“中山道”に統一したのは正徳6年(1716年)のことで、この道標が建つ19年前にあたります。ちなみに、“中山道”という名称が適切であると言い出したのは、江戸時代中期の旗本で、朱子学、歴史学、地理学、言語学、文学と多岐に渡る学問でも博識を誇った新井白石でした。「東山道の内の中筋の道に候故に、古来より中山道と申事に候」、すなわち、「この道は東山道の真ん中を通る道という意味だから、中山道が正しい」と街道としての成立の経緯をもとに主張し、その主張を幕府が採用して、公式には「中山道」に名称を統一したということのようです。昔は“山”を“セン”と読んだのでしょうが、なかなか一般庶民には読みにくかったようで、その後も民間の道中記(旅行案内書)等では“中仙道”と表記したり、“木曽街道”と呼ぶことも多かったようです。
……(その5)に続きます。
執筆者
株式会社ハレックス
前代表取締役社長
越智正昭
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