2014/07/14

台風第8号の眼

非常に強い台風第8号の最盛期(7日16時)の衛星画像では非常にはっきりした眼が見えた。この時の台風は中心気圧930㍱、中心付近の最大風速50m/s、最大瞬間風速70m/sの勢力となっていた。この時の台風の様子を気象衛星ひまわり7号の画像で見る。TVの天気予報で解説に使われるのは主に赤外画像(地球表面の温度分布)だが、ここでは可視画像(太陽光の反射強度)と並べてみる。

台風は大きな円形の雲域として見られるが、中心を示唆する部分と周囲から台風中心に向かって巻き込むスパイラルバンドと呼ばれる積乱雲列が見られる。可視画像で沖縄の南に白く見える塊状の部分が活発な積乱雲である。このスパイラルバンドの下では雨、雷、突風等の激しい現象が起こる。
台風が接近すると雨風は連続的に強まってくるのではなく、こうしたスパイラルバンドがかかると急激に雨風が強まり、これが抜けるとやや弱まりを示す。中心が近づくに従ってこの繰り返しの間隔が狭まり、次第に激しさを増すことになる。

2枚の画像を比較すると、赤外画像の方が雲域の大きさが大きく見える。これは、台風の上端部分から周囲に向かって吹き出す上層雲の広がりを捉えているためで、可視画像ではこの上層雲が中心から遠ざかるにしたがって次第に薄くなり見えなくなるため、雲域の大きさが小さくなる。

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台風の眼の部分を詳しく見ることにする。
台風の眼の部分は海面か背の低い積雲のため、表面の温度が高く赤外画像では黒く見える。衛星が捉えたこの部分の表面温度は20℃前後と推定される。一方、眼の周りを取り巻く白い部分が眼の壁雲と呼ばれる部分で、発達した積乱雲群の雲頂に当たり-60℃以下となっている。猛烈に発達した台風では-70℃程度になることがあり、雲の高さは16km程度に達する。

可視画像で見ると、眼は赤外画像のようにはっきりしていない。そこで可視画像の眼の付近の拡大図で見ることにする。眼の中は雲一つない訳ではなく、海面と下層の小さな雲が散在している状況である。このため、眼の中は、平坦でなく濃淡が見られることが多い。

可視画像は太陽光の反射の強さで白黒の濃淡で表示されるものである。このため、積乱雲のように厚い雲は白く、上層雲のように薄い雲ははっきり見えなくなる。また、太陽の光が当たっているところは白く、光が遮られると暗くなる。発達した台風の眼の壁雲は15,6kmの高さになるため、太陽が真上から照らしている時と斜めから照らしている時では眼の形が変わって見える。この画像は16時の画像であり、太陽光は図に示す方向から射している。この結果、眼の壁雲に日が射している東側部分で白く輝き、西側部分は影となって灰色となる。

衛星は台風をはるか上空から見ているので台風の雲の頂上部分を捉えている。拡大した画像で見ても滑らかな形状をしていることが判る。さらに雲が時計回りに外に広がっているように見えると思うが、上層の雲が周囲に向かって吹き出している様子を見せている。

台風第8号が沖縄南海上から、東シナ海を北上した時の様子を赤外画像の動画で示す。 沖縄の南海上を北北西に進んでいる最盛期の画像では非常にはっきりした眼が見える。しかし、これが東シナ海を北上するに従って眼の形状に変化が起こり、丸みが消え、最後には眼の部分に雲が覆うようになっている。また、宮古島に近づくにつれて、眼の壁雲の西側部分が一時暗くなるなどの変化も見られる。これらは、台風が最盛期を過ぎ衰弱が始まっていることを示している。東シナ海の海面水温は、南西諸島沿いは28℃以上の高温であったが、東シナ海中部では25℃程度と低くなっていることも影響しているかもしれない。

8号の眼動画

この動画で見てほしいことがもう一つある。それは、中心の動きがスムーズな放物線を描くのではなく、右に左に揺れながら動いている点である。これは台風の蛇行運動と呼ばれるものあり、数時間から半日程度の周期を持ち、比較的眼の大きい台風ほど顕著に見られる現象である。
台風の進路を見る時、このようなことがあるので、2,3時間程度の台風の動きから進行方向が変わったと思わないで、もう少し長い目で見る必要がある。気象庁が発表する台風情報で台風の進行方向は前6時間の動きを基本として発表しているのはこうしたことも配慮したものである。