2015/06/10

双方向コミュニケーションの時代

固定電話から携帯電話、さらには電話からメールへと、人と人を繋ぐ通信技術は目覚ましい進歩を遂げてきました。とりわけ大きな変化をもたらしたのは、いわゆる“ユビキタス・コンピューティング”です。人と人との間にコンピュータが介在し、“いつでも、どこでも”繋がることが可能になりました。

音声の電話から文字のメールへの進化は、場所や時間を克服した繋がりを実現し、コンピュータ(CPU)とメモリの発達は、複数の人達の繋がりを可能にしました。1999年のiモードの登場により、携帯電話がインターネットに繋がり、“いつでも、どこでも”人と人とが繋がるようになりました。

これまで考えられなかったような様々なネットサービスも新たに誕生しました。iモードの登場と同じく1999年には、ネットサービスの代表的な電子掲示板である「2ちゃんねる」がスタートし、その5年後の2004年には「ミクシィ」がソーシャルネットワークサービスなるものを開始しました。

ところが、我が家の子供達がそうでしたが、ミクシィの場合はコメントしなければならない、返事をしなくてはいけない…という半強制的な繋がりの仕組みを併せ持つことから「ミクシィ疲れ」と呼ばれる心理的プレッシャーが出てきました。そうした半強制的な繋がりからの解放を特徴として2006年に始まった「ツィッター」が支持されるようになりました。

ツィッターは“つぶやき”と呼ばれる140字以内の短い文を会員が投稿し、不特定多数の人が閲覧できるコミュニケーション・サービスです。まぁ、妙な気遣いをしなくていい一方向の繋がりとも言えます。このツィッターに関しては、災害時の情報伝達手段としての活用に注目が集まっています。東日本大震災が起きたあの一昨年3月11日の夜、徒歩で帰宅の途についた人達の中には、情報収集の手段としてツィッターを活用した人が多くいました。災害時の人と人の繋がりをサポートするコミュニケーションツールとして、ツィッターは大きな役目を果たしています。

このツィッターの登場あたりから、これまでにはない新しい情報通信媒体としての分類が始まり、「ソーシャルメディア(個人が発信する情報を媒介にして、人と人の繋がりを生み出すインターネットメディア)」と呼ばれるようになります。

そのもう1つの代表的なソーシャルメディアとして登場してきたのが「フェイスブック」です。他人が書いた文章やアップした写真等に「いいね!」と意思表示したり、他人の投稿に自分のページを再投稿し、内容を共有することもできます。話題を共有して勝手に盛り上がるアメリカのパーティー文化のノリの延長線上にあるサービスではないか…と私は捉えています。

このようなソーシャルメディアが若者を中心に受け入れられている背景には、①出入りが自由だという“気楽さ”、②身体的な接触がないという“安心感”、③ポジティブに繋がることができる“楽しさ”…の3つの特徴があるからではないか…と分析できます。この“気楽さ”、“安心感”、“楽しさ”という3つの要素は、つかず離れずの距離で繋がっていたいという、現代の若者の心理にマッチしていると言えます。すなわち、他人に気を遣わず、自分は安心したい、孤独でないことを確かめたい、偶然の繋がりを楽しみたい…という人々の心情を満たしていることが、多くの人がソーシャルメディアに参加する理由ではないかと思います。

ただ、こうしたネットを介したバーチャルな繋がりを楽しむ一方で、特に4年前の3月11日に起きた東日本大震災以降、家族や友人、地域の人々との間のリアルな“繋がり”を大切にする人が増えているようにも見えます。その表れでしょう、東日本大震災後の一時期は『絆』という言葉が流行りました。最近、若い人達の間でシェアハウスの人気が高まっているのも、リアルな繋がりを重視したい心情の表れのようにも思えます。また、若い人達の間で「リア充」という言葉が使われているのも、バーチャルな世界を楽しみながらも、リアルな生活の充実を求めている表れのように私は捉えています。

このように、現代の人々がどのような繋がりを求めているのかを探ることは、我々情報を生業(なりわい)とする者にとってはICT(情報通信技術)を使った新しいサービスを考える上での大きなヒントにはなります。

ユビキタスの時代と呼ばれた今からほんの少し前の時代には、「いつでも、どこでも、誰でも」と言われるように、あらゆる情報にアクセスできることに価値がありました。しかし、現在は、「いまだけ、ここだけ、あなただけ」と言うように、利用者毎に特定の情報が求められるようになっているとも言えます。このように、極々短期間のうちに、情報に求められるものが変わってきたと思います。

少し前までのICTの世界は、少なからず「技術先導型」で、“技術、先にありき”…というようなところがありました。しかし、今は「心情先導型」とでも呼べばいいのでしょうか、技術でもなく、ニーズやシーズといった難しい言葉で語ることができないソーシャルメディアの時代へと移ってきたように思います。言ってみれば、人々の気持ちが技術を引っ張っていくのが、これからのサービスの作り方なのではないか…と思います。

いくらいい技術で作られている製品でも、使いにくければ、欲しいと思われなければまったく売れません。それと同様に、サービスも単に技術だけで作るものではない時代になってきた…と私は思っています。これからは、まずは人と人との繋がりの仕組みを作って、そこに技術を載せていく…という発想で取り組まなければならないと思っています。

先ほどニーズやシーズといった難しい言葉で語ることのできない…と書きましたが、人の心情や気持ちを測るのは容易なことではないので、市場を分析するマーケティングに関してもこれまでのやり方とは違ったものが求められるようになるでしょう。これまでのやり方は、主として技術の改良を目的としたものでしたから、これからの時代はそのままでは通用しなくなってきていると思っています。そして、残念ながらその新しいマーケティング手法については、まだなにも生まれてきてはいません。

こういう時代、大切なのは、人を、正確には人の行動を観察することではないかと思います。すなわち、どうすれば、湧き上がってくるような嬉しい気持ちを作れるのかを人の行動を観察することにより考えることではないか…と私は思っています。

これは直接利用者と向き合うBtoCのビジネスに限ったことではありません。弊社ハレックスが特化しているBtoBのビジネスにおいても十分に当てはまると思っています。

弊社は直接利用者個人とは向き合ってはおりませんが、弊社のお客様のその先には必ずなんらかの形で個人という“真のお客様”がいらっしゃいます。弊社から提供するサービスにより、弊社が直接向き合っているお客様の事業が成長することで、その対価としてのお金を頂戴する…、これがBtoBビジネスの基本ですから。なので、お客様への提案を考えるにあたっては、必ずその先にいらっしゃるお客様のお客様(真のお客様)、すなわち個人の心情にまで踏み込んで考えないと、いい提案はできません。

ましてや、弊社が取り扱っている情報は気象。人々の心情にこれほどまでに強く影響を与える情報はありません。それも極々日常的に。なので、なおのこと、個人の心情や気持ちまで踏み込んで考えないと、新しいサービスは創出できません。

気象情報提供の市場規模は年間300億円と言われていて、残念ながら最近ではまったくその成長が見られておりません。成長どころか、度重なる価格競争のおかげで、このところ徐々に衰退傾向にあるとも言われています。ですが、この市場規模とは今から22年前の気象予報事業の民間開放の時からずっと続く“一般的なお天気予報の配信”事業での市場規模のことに過ぎない…と私は分析しています。そして、この市場は既にコモデティ化していて、それだけでは価値がなくなりつつあると捉えるのが正しいと私は思っています。

なので、これからの弊社をはじめ民間気象情報会社が提供するサービスは、これまでのような“一般的なお天気予報の配信”ではなく、もう一段上がって、気象情報を使って人々の日々の暮らしや企業活動における様々なお悩みや課題を少しでも解決して差し上げる『ソリューションの提供』へと進化させていかなければなりません。言ってみれば、「過去の成功体験からくる呪縛」から解放できた会社だけが生き残ることができる時代に突入したということです。

そして、私が言うまでもなく、日本は位置的に四季がはっきりとある国であり、周囲を海に囲まれた島国です。大雨や台風、高温、低温、強風、乾燥等々、様々な気象現象を受けやすく、南北に細長い形状をしていることから、地域ごとにその特性も様々です。また、面積的に火山の多い国であり、地震活動も活発です。

このような国ですから気象は人々の日常生活や企業活動に密接に関係しています。しかも、地域特性が様々…という言葉に代表されるように、地域毎に人々の日々の暮らしや企業活動における様々なお悩みや課題も異なります。なので、これからの気象情報サービスを考えるにあたっては、なおのこと“個”というものを強く意識しないといけないという性格を持っていると私は捉えています。

こういう特殊性が強い市場だからこそ、これまでどの会社もほとんど深く参入できていなかったのではないか…と私は捉えています。ですから、チャンスです。気象情報を活用したソリューション提供の市場は、とてもとても弊社1社だけではカバーしきれないくらいに、まだまだいっぱい残っていると私は考えています。前述のように、ほとんど未開拓の市場ですから。

やること、考えること、そして『夢』 ……我々にはまだまだいっぱいあります(^-^)v

執筆者

株式会社ハレックス代表取締役社長 越智正昭

株式会社ハレックス
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越智正昭

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