2014/08/22

広島で悲惨な土砂災害発生

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2014年8月20日の未明から早朝にかけて、広島市北部を中心に猛烈な雨が降り、土石流や山・がけ崩れが多発して多くの犠牲者が出た。土石流により破壊された家屋の姿にその破壊力の凄さに唖然とするばかりである。
この悲惨な災害は局地的な大雨によるもので、広島市安佐北区の三入アメダス観測点では1時間101㎜の猛烈な雨が降り、総雨量は257㎜に達した。県の観測では安佐北区可部の上原で1時間115㎜を記録し、総雨量は287㎜に達する記録的な大雨となった。激しい雨が数時間続く中で、時間100㎜前後の猛烈な雨が含まれるような降り方が大きな災害をもたらす要因となったと見られる。

ニュースによると、地元の方は「これまで経験したことがない」とコメントしている。確かに特定の沢筋ではこれまで数十年間土石流の発生はなかったかも知れないが、広島市の安佐北、安佐南、佐伯の3区では、15年前(平成11年)の6月29日にも、前線の通過によって短時間に激しい雨が降り土砂災害が多発し、多くの犠牲者が出たことがある。最大1時間雨量は今回よりやや少なかったが、雨の降り方は類似していた。
前回土砂災害の発生した地域と今回土砂災害の多発した地域は、地形も地質は大きな違いは無いように見える。土石流や山・がけ崩れは同じような大雨が降っても発生する場所はわずかで、発生しないところの方が多いので、一つの事例だけでこの沢筋は安全だと思わないで欲しい。是非、「土石流に合わなかったのを幸い」と考えて、他の沢の状況をしっかりと見てその後の大雨への対応を考えていただきたい。私のブログには、「平成11年(1999年)6月29日 広島で土砂災害頻発」(http://www.halex.co.jp/blog/jousuke/20140627-3571.html)と題して、15年前の広島での土砂災害について載せた。その時の土石流やがけ崩れの発生場所を示した図や雨の降り方も示しているので、と今回の事例を比較して見ていただきたい。

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地上天気図では、前線が日本海に停滞し、東日本から西日本まで太平洋高気圧に覆われているように見える。しかし、この高気圧の西の縁に当たる部分では、南から高温で湿った気流の流入しやすい場所に当たり、局所的に大雨となる事例がある。

今回の事例では、前線の南側に当たり対流活動が活発な場所であったことに加えて、南西方向からの湿った気流の流れ込の向きが太田川水系根谷川の流れの向きと同じとなり、これが気流の収束に寄与し、降雨帯を強化させたと見られる。猛烈な雨を記録した2つの観測点はこの川筋にあり、根谷川は安佐北区可部丁目付近ではん濫した。

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最も、激しい雨の降った時間帯の解析雨量で1時間雨量の分布をみると、南西~北東走行に細長い降雨帯が見られる。この1時間ほとんど位置を変えずに降り続いていたためである

今回の豪雨では激しい雷雨があったことが報じられているが、豪雨の時によく言われるので、これも今後の豪雨の備えとして、「激しい雷が続くときは大雨への警戒が必要」を覚えておいてほしい。ここに激しい雨の降った時期の降雨帯が同じ場所で続いていた様子と、その時に雷が激しかった様子を動画にしたものを示す。

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九州北部でも、いくつかの線状構造をした強雨域がいくつも見られ、広島と同じような激しい雨が降っているが、広島に比べると同じ場所に長時間停滞していないことと、雷の活動度に大きな違いが見られる。広島で最も激しい雨の降っていた頃に、雷ナウキャストの活動度が高くなっていることがわかる。

今回の事例では、広島市内でも北部の被害が激しかった地域と南部では、雨の降り方に大きな違いがあり、隣の呉市ではこの時間帯での雨量はわずか1㎜であった。広島市内に大雨警報が発表されたのは前日の21時46分で、決して遅かったわけではない。被災地でも強い雨が降っていたが被害に結び付くような状況ではなかった。
特に、夜間に大雨警報が発表された場合は、今の雨の降り方だけでなく今後の激しい雨も想定して、安全の確保を考えた行動をとっていただくようお願いした。激しくなってからでは、夜間は避難行動を執るのは不可能と思っていただきたい。昨年10月16日に発生した伊豆大島での大規模な土砂災害も夜間であった。最近、身に危険が迫り、避難できない状況では、家の中で最も安全な場所に退避するよう呼びかけをしているが、土石流やがけ崩れでは家ごと破壊されることが多いので、急傾斜地や急渓流の近くにお住いの場合は、大雨時には安全確保を最優先とした早めの行動を執ることを考えていただきたい。

執筆者

気象庁OB 市澤成介

気象庁OB
市澤成介

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