2014/09/01

巨大災害 ~MEGA DISASTER~ 地球大変動の衝撃(第1集)

8月30日(土)19時30分から、NHK地上波テレビの特別番組「NHKスペシャル」で、新シリーズ『巨大災害 ~MEGA DISASTER~ 地球大変動の衝撃』の第1回が、また、第2回が8月31 日(日)21時から放送されました。皆さん、ご覧になられたでしょうか?

この『巨大災害 ~MEGA DISASTER~』は、このところ地球規模で起きている大規模自然災害について、最新のデータや研究等からCGを用いて解説する4回シリーズの番組です。

NHKスペシャル

8月30日(土)の放送は“異常気象”がテーマで、第1集『異常気象 ~“暴走”する大気と海の大循環~』と題されていました。

日本では大都市広島市で発生した記録的な局地的集中豪雨を原因とした大規模土砂災害のことが注目されていて、このところ増えてきている“異常気象”が話題になっていますが、この傾向は日本列島だけのことではありません。世界でも、250年ぶりの大洪水に襲われた英国、500年ぶりと言われる大干魃に見舞われている米国西海岸…等、このところ世界各地で様々な大規模気象災害が頻発し、その激しさは年々増してきています。

その原因と指摘されているのは、赤道から極域(北極、南極)へと熱を運ぶ地球の“大気と海の大循環”の異変。その結果、偏西風のコースがこれまでとは違って大きく蛇行を繰り返していて、それが日本を含む地球規模でこれまでとは異なる“異常気象”を引き起こしているということでした。

世界の気象学者達は、温暖化が今よりも進む将来、この傾向はさらに強くなり、これまでよりも強烈な熱波や激しい豪雨等による気象災害が多発していくことを危惧しています。番組では、最新の観測データや未来シミュレーションを元に、将来起こりうる異常気象の姿を描き出していました。

日本では気候変動と言うと“地球温暖化”ばかりが問題になっていますが、実は、ここ10年ほど、世界の平均気温はほぼ横ばいなんです。(原因がCO2をはじめとした人為的な温室効果ガスの排出量の増加によるものかどうかの議論はともかく)地球の温暖化は確実に進行しているのですが、世界の平均気温はほぼ横ばいなのは深海が熱を吸収しているだけとのことなんだそうです。その深海による熱の吸収もいつまで続くか分からない状況で、深海が熱を吸収しなくなると、一気に温暖化が進み、それを引き金として、様々な“異常気象”が地球規模で発生する恐れがある…と番組では警鐘を鳴らしていました。

このNHKスペシャル『巨大災害 ~MEGA DISASTER~』、従来のこの手のテーマを取り上げた番組としては画期的と言うか、明らかに報道のスタンスが変わってきたな…ということが、観ていて読み取れました。従来のこの手の番組では、異常気象の原因はCO2をはじめとした温室効果ガスの排出量が増えているせいだとして、「人為的に排出されるCO2の抑制がそれを回避する唯一の手段である。皆さんで頑張ってCO2排出量の削減に取り組みましょう!」…という風に最後をまとめがちなところがあったのですが、このNHKスペシャル『巨大災害 ~MEGA DISASTER~』で は、地球温暖化は避けがたい事実として受け止め、これからは「温暖化を原因として引き起こされる気候変動への適応策のほうに力点を置いて整備していきましょう」…というトーンに最後をまとめていました。やっとグローバルスタンダードな論調になってきたな…と思い、私は好ましく思いました。

日本では「気候変動」と言うと「地球温暖化」ばかりがクローズアップされている傾向が強いのですが、それは「気候変動」のほんの一つの側面に過ぎません。日本では気候変動というと「地球温暖化」、それも人為的原因によるCO2排出量の増加を原因とした「地球温暖化」ばかりが語られているようなところがありますが、それって実は日本だけのことで、海外では地球規模で大きな、そして様々な「気候変動」が起きていると捉えるのが一般的です。そして、それが「グローバルの視点」と言うものになっています。

地球温暖化と言うと必ず出てくる国際機関のIPCC。このIPCCとは“Intergovernmental Panel on Climate Change”の略で、“気候変動に関する政府間パネル”というのが正式な日本語訳の名称です。国際的な専門家で作る気候変動についての科学的研究の収集・整理のための政府間機構のことです。あくまでも学術的な機関であり、温暖化を含む地球規模の気候変動に関する最新の知見の評価を行い、対策技術や政策の実現性やその効果、それが無い場合の被害想定結果などに関する科学的知見の評価を提供する役割を負っています。地球温暖化とCO2をはじめとした温室効果ガス排出量の関係は、そのIPCCで研究されている1つのテーマであり、それがすべてではありません。また国連の機関ではないので、そこから出される提言に拘束力もありません。ここのあたりの理解と認識が日本ではイマイチだな…と私はずっと思ってきていました。

また、対応策にしても、日本では「CO2排出量の抑制策」ばかり語られるのが一般的ですが、米国はじめ諸外国では「気候変動全般への適応策」が、国にしても自治体にしても企業にしても、危機管理の重要なテーマの1つとして語られているのが一般的です。このあたり、決定的に異なります。このNHKスペシャル『巨大災害 ~MEGA DISASTER~』では、「気候変動全般への 適応策」を皆で考えよう…というスタンスに変わってきているように読み取れて、私は嬉しく思いました。

(よく歴史認識問題の中で、日本人の自虐史観のことが話題に上りますが、これまで「CO2排出量の抑制策」ばかりに話題が集中してきたのも、どうもこの日本人の自虐思考のようなものが大きく関係しているような気もしています。あるいは、17年前の1997年に日本の京都で開催された国連の気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)の場において、CO2排出権取引のことが初めて明記された、いわゆる「京都議定書」が“縛り”となって、日本で開かれた会議の結論だから…と、そこのところばかりが強調されてきたようなところがあったのかもしれません。まぁ、そのおかげで、再生可能エネルギーの普及やハイブリット車の普及等々、日本は世界でも他に例を見ないくらいにエネルギー効率が極めて高い国になれた…という絶大な効果はありましたが、その結果として本来の目的である地球温暖化防止にどのくらいの効果があったか…というのは、申し訳ないけど、甚だ疑問です。このNHKスペシャル『巨大災害 ~MEGA DISASTER~』を 観ていると、明らかに報道のスタンスが変わってきたな…ということが読み取れました。)

米国の国や自治体や企業における「気候変動に対する適応策」は、まず第一に適切な対応策を考える上で必要となる“詳細な気象データを収集する仕組みの構築”だと言われています。基本は「自分の身は自分で守る!」 そのために は、置かれている状況がそれぞれ異なるのだから、まずは相手(迫りくる自然の脅威の状況)のことをよく知らないと勝負にならない…という発想のようです。このあたり、気候変動や異常気象に対する適応策は、基本的に国が考えることで、それに従おう…という“受け身”のスタンスの日本社会とは大きく異なります。

後述のように、地球温暖化とそれに伴う地球規模の気候変動、さらには“異常気象”は人類にとって避けがたいものであり、「気候変動に対する適応策」を考えるというアプローチはとても現実的で、より効果的なものであると私は考えています。

国家戦略として取り組むのはもちろんのこと、住民の生命と財産を守ることを第1の使命とする地方自治体も、さらには事業の継続性(BCP)の観点から各企業もそれぞれが抱える気候変動や異常気象に対するリスクに対して、真っ正面から向き合い、それぞれの対応策を考える必要がある時代になってきている…と私は思っています。

各地方自治体や各企業が抱える気候変動や異常気象に対するリスクは、それぞれ固有のものであり、対応策も1つとして同じものはなく、それぞれ個別なものになる筈ですから。

日本の社会全体がこのような発想に転換したとすると、私達民間気象情報会社の位置付けも役割も大きく様変わりしてくるものと思われます。大きなビジネスチャンスと言えなくもないのですが、社会のご期待にお応えするためには、今までのままだとダメだし、さらに能力を高め、提供する価値を伸ばしていかないといけません。頑張ろう!p(^-^)q

今日9月1日は『防災の日』です。皆さんも、ご自分の身の回りで起こりうる気候変動や異常気象によるリスクについて、頭の中でのシミュレーションも交えて、じっくりと考えてみられてはいかがでしょうか? 事前に事態を想定 をしていたかどうかで、生死を分けることだって十分にあり得て、極めて有効な避難訓練になります。(^^)d

「想定外」という言葉は言い訳以外のなにものでもない…ってことが、ここ数年の災害で分かってきました。最低限、この教訓は活かさないといけません。


【追記1】
余談ですが、実は、今から17年前の1997年12月に日本の京都で開催された国連の気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3、通称:京都会議)のインターネット利用環境を構築・運営したのはNTTデータで、現場(会場)となった京都国際会議場でその構築・運営の指揮を執っていた責任者は、不肖私でしたσ(^_^;)

COP3開催中は、会場となった京都国際会議場の国連事務局内に机を構えていました。なので、主な会議を傍聴していましたし、国連事務局から渡される前日に行われた各会議の(国連の公用語である英語、フランス語、ロシア語、中国語、スペイン語、アラビア語の6つの言語で書かれた)議事録、さらには日本の政府、及び報道機関向けに日本語に翻訳した議事録をPDFファイルに変換して、世界中どこからでも同時にダウンロードできるようにする仕組み(システム)の運用をやっていたので、主な会議の議事録を事前に目を通すことができる立場にありました。

そうした立場にいた者から言わせていただくと、「地球温暖化」、それも人為的原因によるCO2排出量の増加を原因とした「地球温暖化」と、対応策として「CO2の抑制策」ばかりが取り上げられるその当時の日本のマスコミ報道に、「1つの側面しか捉えていないなぁ~」という大きな違和感を感じて、「おやおや…」って思ったのを、今でも覚えています。

(まぁ~、17年前のあの当時、日本では気候変動や地球温暖化なんてほとんど誰も話題になんかしていなくて、日本国内に専門家と呼ばれるような方はほとんどいらっしゃいませんでした。マスコミにいたっては、事前に極々基本的な(初歩的な)用語集なんかを事前に作って配布しないといけないくらいに基礎的知識もお持ちではなかったですからねぇ~。どことは申し上げませんが、ある大手全国紙の有名な新聞社さんなんか、通常は某地方の県警詰めだという入社間もない若手の記者さんが駆り出されて、取材に来ていらっしゃいました。あの時の報道で少し世論のミスリード(グローバルな視点からの乖離)を起こしてしまったようなところがあり、今に至っているのかもしれません。このCOP3の時のことは、稿を改めて書かせていただきます。)


【追記2】
もう1つ余談ですが、「異常気象」に関しても同じことが言えます。最近、気象の世界では「数十年に1度」や、「100年に1度」なんて言葉をよく耳にしますが、数十年前や100年前には同じようなことが起きているというわけですから、異常でもなんでもありません。「観測史上はじめて」というのも正確には「日本で記録が残っているこの130年間で初めて」ということです。それ以前には起きていたかもしれないということ。だから異常でもなんでもありません。

人間の想定や想像を超えるほど異常なのが自然、そして気象。自然の脅威と言うものは、常に人間の想定や想像を超えてやって来るものだ…と言うことです。なので、自然に対しては、常に“畏敬の念”をもって接しないといけない…私はそういう気持ちでいます。

地球温暖化に関しても、今から約5,000年前の縄文時代の大規模な集落の遺跡が、青森市の近郊で見つかっています(三内丸山遺跡)。冬は雪で閉ざされる津軽地方の青森市近郊で、約5,000年前の縄文時代の大規模な集落の遺跡が見つかるなんて、おかしいとは思いませんか? 約5,000年前の縄文時代なんて、石油や石炭なんて化石燃料はまだ発見さ れていない時代です。そんな時代に冬は雪で閉ざされる津軽地方で大規模な集落があって、大勢の人が暮らしていたなんて、信じがたいことです。しかし、この時代、地球全体で今から年平均気温が5℃から7℃ほど高かったようなんです。そうすると、青森市近郊は暑からず寒からずのちょうどいい気候の場所ということになり、そこで大規模な集落が栄えていたとしても、なんらおかしくないのです。

この例でも分かるように、地球は1000年単位で温暖化と寒冷化を繰り返していて、これはどうしても避けがたいことなんです。今、地球全体が温暖化に向かっているとするならば、それをなんとかして抑制することを考えるのではなく、その事実を受け入れ、「気候変動全般への適応策」を考えるほうが現実的だし、効果的ではないか…と私は考えます。自然の力は偉大過ぎて、それでも人類の力ではどうにもならないかもしれません。しかし、人類は有史以降、幾多繰り返えされる温暖化と寒冷化、そしてそれに伴う気候変動の異常気象を乗り越えて、今の時代まで歴史を延ばしてきているわけです。人類の叡智を結集することにより、この気候変動の異常気象を乗り越えられるかもしれません。頑張ろう!p(^-^)q

執筆者

株式会社ハレックス前代表取締役社長 越智正昭

株式会社ハレックス
前代表取締役社長

越智正昭

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