2014/12/10

農業は地域の基幹産業

現在、「地域創成」が時代のキーワードのようになっています。この「地域創成」ですが、全国一律のことをやっても、また、他の地域で上手くいっていることの“真似っこ”をやってみても絶対にうまくいくことはない!…と私は思っています。この『おちゃめ日記』の場で「社会の最底辺のインフラは地形と気象である」ということを何度か書かせていただきましたが、だって地域ごとに地形と気象は異なるわけですから。地域の特性の基盤は地形と気象にあって、それが地域ごとに異なるわけですから、同じことをやっても上手くいくところがあったり、上手くいかないところがあったりするのは当たり前のことです。

そして、「地域創成」の鍵はこの地域の最底辺のインフラである地形と気象、すなわち“自然環境”を活かすことにあると私は思っています。自然は私達人類に代えがたい豊かな“恵み”をもたらしてくれます。そんな自然に感謝して、その自然から与えられる“豊かな恵み”を活かすことを柱に考えればいいのではないか…というわけです。

それはなにも新しい考え方ではありません。かつての日本は実はそうでした。それぞれの地域でそれぞれの特産を活かした産業が栄え、それを他の地方にも販売することで暮らしていました。そんな暮らしがほんの50年ほど前までは日本中のどの地方にも見られました。それが、近年、極度に標準化が進み、日本全国どこに行っても同じような風景が広がるようになって、そういう地域ごとの特性というものも崩壊していってしまったように感じます。と同時に、地方は徐々に活力を失っていったわけです。そりゃあそうです。同じことをやったのでは、人口の多い(すなわち、マーケットの規模の大きい)都会のほうが圧倒的に有利であることは誰が考えても解ることです。

これが当たり前の経済論理、経営論理と言うものです。中小企業が大企業と同じことをやっても、厳しい市場環境の中で生き残っていくことは容易には出来ません。財政的にも人材的にも大企業に遥かに劣る中小企業が厳しい市場で生き残っていくためには、それぞれの企業が“核”となる“提供価値”というものを持たないといけません。

独自の“技術”がその“提供価値”の代表です。東京都大田区や大阪府東大阪市の中小の製造業の方々が厳しい景気の中でもなんとか頑張っておられるのは、大企業が持ち合わせない独自の技術を持っているからです。その技術の多くは職人さんの長年の経験とその経験から身に付けた勘によるもので、技術開発が進み工作機械の工作精度が昔に比べて飛躍的に高度になったと言っても、まだまだその職人さんの経験と勘には及ばないから、とりあえず今は生き残れているわけです。(その核となる技術が人に依存するものであるため、農業と同じく技術の伝承が現在大きな問題になっているとは言われていますが…)

中小企業が厳しい市場で生き残っていくための“提供価値”は独自の技術を持つことだけではありません。大企業の弱点を突けばいいだけのことです。大企業は豊富な資金力や人材力を持っていますが、その反面、組織全体の意思決定の速度が遅く、機動性に欠けて、時代の変化、世の中のニーズの変化に対する対応力という面では致命的な弱点を持ちます。「この世に生き残る生き物は、大きなものでも、力が強いものでも、頭のいいものでもなく、それは唯一“変化に対応できた生き物”だ」というのは有名なダーウィンの進化論の言葉です。その言葉からすると、グローバル化が進み、世の中のニーズが激変しようとしているこれからの世の中は、規模の大小に関わらず経営者にとってその手腕が試される時代になっていると思っています。こうした時代だからこそ、中小企業はその“機動性の良さ”が大きな武器となりうると言うわけです。

このような企業経営と同じことが、地方行政にも十分当てはまるのではないか…と私は思っています。すなわち、県庁は“◯◯県グループ”の持株会社、ヘッドクォーターのようなもので、すなわち、地域経営を担うってわけです。

経営においては、自社が保有する資源・資産を正しく分析するところから始めるというのが基本中の基本です。自社が保有する他社より優れた資源・資産(正の資源・資産)に関しては、それを如何に料理して(活用して)収益に結び付けるかを考える、また、他社より劣る資源・資産(負の資源・資産)ゆ関しては、如何にそれを処分するか、あるいは如何にその弱点を補うかを考える。それも、表面的に見えることだけで考えるのではなく、その背後に隠された要因まで深く掘り下げて、夜も眠れないくらい真剣に…。これが経営の基本中の基本です。

私は弊社ハレックスの経営を立て直し、その後も11年半にわたり代表取締役社長を務めさせていただいていますが、その経験を通して学ばせていただいたことの一番が、この経営の基本の重要性ではなかったか…と思っています。言うは易しで、決して簡単なことではないのですが、今も毎日考えているの中心はこのことです。

この経営の基本からすると、「地域創成」の鍵は、その地域が持つ資源・資産を正しく分析することにあると私は思っています。その中でも、その地域を取り囲む自然環境(地形と気象)を再発見し、貴重な資源としての“自然の恵み”を活かすことを考えるのが一番の近道なのではないか…と私は考えています。だって、自然の恵みはほとんどタダで手に入る貴重な資源ですから。この貴重な資源を使わない手はありません。経営の観点から言わせていただくと、使わないほうがおかしいと言うくらいのものです(^^)d

まさに、「社会の最底辺のインフラは地形と気象である」ってことです。これを無視していくら「地域創成」を考えたって、優れたアイデアなど浮かんでくる筈がありません。

その“自然の恵みを形にする産業”が“農業”や“漁業”、“林業”といった第一次産業です。弊社ハレックスは現在“農業向け気象情報提供サービス”の分野に力をいれているので、この『おちゃめ日記』でも“農業”について主に述べさせていただいていますが、“漁業”や“林業”だって自然と真っ正面から向き合わないといけない産業ということで言うと、同じことです(“漁業”向け気象情報提供サービスに関しても並行して検討中です)。第一次産業はあくまでも“第一次”の産業。すなわちその地域その地域の“基幹”となる産業という意味です(^^)d

第一次産業である農業、漁業、林業がその土地その土地の特徴ある資源である“自然の恵み”を形あるものにして、それを直接販売するもよし、さらにはそれを原材料にして第二次産業である地元の製造業が加工を施し(すなわち付加価値をつけ)、第三次産業である流通・販売業がそれを全国さらには海外に向けて販売してお金に変えてその地域に持ち帰ってくる…。そしてその持ち帰ってきたお金をその地域内で流通させ、地域経済を活性化する…これが地域創成の本来あるべき姿なのではないか…と私は思っています。

従って、その流れの源流(基幹)とも言える第一次産業を元気にさせることが、地域創成においては真っ先に手を付けるべきことではないか…、と私は思っています。

その意味で、「地域創成」とはその地域の“原点回帰”、“ルネッサンス”ではないか…と私は考えています。

その“農業”や“漁業”、“林業”といった第一次産業は“自然の恵みを形にする産業”。すなわち自然と真っ正面から向き合わないといけない産業です。何度も繰り返しになりますが、自然は“圧倒的破壊力を持つ脅威の側面(マイナスの側面)”と“代えがたい豊かな恵みの側面(プラスの側面)”という二面性を有しています。我々民間気象情報会社も自然と真っ正面から向き合うビジネスです。間違いなくお役に立てることは大いにある…と思っています。

それぞれの地域を、そして日本を元気にするため、私達は頑張りますp(^-^)q

執筆者

株式会社ハレックス前代表取締役社長 越智正昭

株式会社ハレックス
前代表取締役社長

越智正昭

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