2015/02/10
大人の修学旅行2015 in 土佐の一本釣り(その6)
今回の『大人の修学旅行』の集合場所と集合時間は、実はJR高知駅の改札口に12時30分に集合というものでした。岡山駅10時05分の特急「南風5号」(高松駅発10時04分の快速サンポートが丸亀か多度津で接続)の高知駅着が12時29分で、それに合わせた集合時間になっていました。関西組や地元香川県組はたいていこの特急「南風5号」で高知に入ることになっていました。私のケータイにも「◯◯が合流」という感じの連絡がメールで次々に飛び込んできて、楽しそうな雰囲気、徐々に人の流れが大きくなって盛り上がっている様子が伝わってきていました。
高知駅では空路で高知入りした私を除く関東組も合流して、本隊は自由行動をしている私を除く残りの13名全員が揃ったものだ…と私は勝手に思い込んでいました。(高知駅に集合してから、本隊は高知城や高知名物の日曜市を見学に行ったようです。楽しそうな写真がメールに添付して送られてきました。)
ちなみに、本隊は高知駅発15時43分の特急「あしずり5号」に乗って土佐久礼に向かう予定でいるので、私とそれ以外の本隊との集合時間を「あしずり5号」の土佐久礼駅到着に合わせた16時35分に土佐久礼駅の改札口で…ということにしたのです。
ここに突然飛び込んできたのがオネエ(女性・なぜか独身)からのメールでした。オネエは京都在住。どうも、なにかトラブルがあったようで、前日から一睡もしないで徹夜で仕事をして、徹夜明けでそのままこちらに向かっているようなのですが、特急「南風5号」には乗れずに、その1本後の列車でこちらに向かっているとのこと。メールには「14時37分に土佐久礼に着くので、“不時着”の準備をよろしく」と書かれていました。
さっそく時刻表で確認したところ、オネエは「南風5号」の1本後の11時05分岡山駅発の特急「南風7号」に乗って高知に向かっているようなのです。で、その「南風7号」の高知駅着が13時40分。正規の集合時間には1時間の遅刻だから本隊には合流できずに、そのまま13時50分高知駅発の特急「あしずり3号」に乗り換えて、最終目的地の土佐久礼に向かおうとしているようなのです。そして、この「あしずり3号」の土佐久礼駅到着が14時38分。さぁ~て、どうする……(^^;
その時点で時刻は13時を少し過ぎたところです。私を乗せた土佐くろしお鉄道中村線の普通列車は土佐入野(とさいりの)駅を出て、西大方(にしおおがた)駅に到着する直前でした。ちなみに、土佐入野駅は単式ホーム1面1線の無人駅ですが、ロッジ風の駅舎があって、全ての特急列車が停車します。幡多郡黒潮町の役場がすぐ傍にあり、黒潮町の中心地で最も賑やかなところのようです。駅のすぐ近くには入野松原という松林があり、その向こう側には長い砂浜が続いています。この入野松原の沖はホエールウォッチングの名所で、入野漁港から観光船に乗ってクジラを追いかけることができるそうです。
西大方駅を出ると、次は古津賀(こつか)駅、その次は終点の中村駅に到着です。この列車は中村駅に13時09分到着の予定で、この時点まで私はそこで13時30分発の普通列車に乗り換え、終点の宿毛駅まで行く予定でした。宿毛駅着は14時00分ですので、押し返しの列車に乗って中村駅まで戻ってきて、中村駅から15時10分発の特急「南風24号」に乗車すると土佐久礼駅に16時06分に到着するので、最終の集合地点である土佐久礼駅には一番乗りできるという計算だったのです。
さっそく時刻表を取り出して確認してみると、中村駅13時24分発という上りの特急「あしずり6号」という列車があり、これに乗って中村駅で折り返すようにすると、土佐久礼駅には14時17分着。オネエが土佐久礼駅に到着するよりも20分ほど早く土佐久礼駅に着いて、オネエの不時着(到着)を待つ形になれます。なぁ~んか西村京太郎さんの「十津川警部シリーズ」の小説のようになってきました(時刻表トリックはありませんが…)。
さて、ホントどうしよう……┐(‘~`;)┌
しばし考えて、私が出した結論は、今回は宿毛まで行くことをここで諦めて、中村からトンボ返りして、土佐久礼駅に行き、オネエの不時着(到着)をお迎えする…ってことでした。おそらく土佐久礼駅の駅前はなぁ~んにもないところで、この1月初旬の寒い中、徹夜明けで遠路はるばる移動してきたオネエを1人で2時間も待たせるわけにはいきませんからね。
高校時代、私を含めクラスの落ちこぼれ組の男子数名は、どういうわけか「オネエの下僕(しもべ)達」と呼ばれていました。オネエや我々下僕達の名誉のために言っておくと、オネエは決して我々を奴隷扱いしたわけでもありませんし、我々もオネエに虐げられたという記憶はいっさいありません。ただ、オネエは“オネエ”と呼ばれるだけあって、妙に存在感というか、求心力があって、常に我々クラスの落ちこぼれ組の男子数名、いやクラスの輪の中心にいたように思います。そして、そのオネエと、お互いにからかいあったり、冗談を言い合ったりして(かなりキワドイ冗談も平気で言い合っていました)、男女の垣根を越えてフランクに付き合っていたのが私を含む「オネエの下僕(しもべ)達」でした。クラスの“マドンナ”のような存在だったのか?…と問われれば、まぁ~そういうことだったのかもしれません。
高校時代はかなり“健康的な”体形をしていたオネエも5年前に35年ぶりに逢った時には一瞬別人かと思ってしまうほど細くなっていて、驚いてしまいました。なにがあったのか詳しくは知りませんが、かなり苦労なさった時期があったように推察しています。そんなオネエが不時着すると言っているわけで、「オネエの下僕」としては、なんとかしないといけません。それが“下僕”としての務めです。
愛媛の松山に実家がある私は、宿毛にはまたきっといつか来れる時があるでしょう。それまでの楽しみに残しておくことにしました。その時は宇和島からバスで宿毛に行って、宿毛から中村に土佐くろしお鉄道宿毛線の列車で入ることにしよう…と勝手に決めちゃいました。
列車は中村駅のすぐ手前で川底の石がしっかり見えるくらいに水の綺麗な(透明な)川を短い鉄橋で渡ります。この川は四万十川の支流である後川(うしろがわ)で、四万十川の本流と交わるには中村駅を過ぎて宿毛線の区間に入らなければなりません。河口近くの四万十川本流を渡るのは次回までのお楽しみです。
中村駅は2面3線ホームの構造を持った駅で、私が乗ってきた普通列車は駅舎と直結した片面ホームの1番線に到着しました。
中村は「土佐の小京都」ともいわれる落ち着いた雰囲気の町で、駅の西方およそ1.5kmのところには「日本最後の清流」と呼ばれる四万十川が流れていて、四万十川が太平洋へと注ぐ河口もこの中村にあります。今日はこれまで江川崎や窪川と言った四万十川の中上流域の風景を見てきたので、できたら河口も見てみたい感じです。
また、中村駅の駅前からは土佐清水市や足摺岬へ向かうバスが出ています。足摺岬は太平洋に突き出た岬で、黒潮の打ち寄せる先端部の断崖は約80mの高さをもちます。気象的には「足摺岬の南西〇〇km」という風に、台風の進路の目安に使われることで知られています。高知県を代表する観光地の一つで、この日も中村駅で足摺岬方面へのバスに乗り換えようとする観光客の姿を何人か見掛けました。ちなみに漁港として有名な土佐清水市は、日本の全ての“市”の中で、東京から最も長い移動時間を要する場所であるとされています(島根県の江津市という説もあります)。
四万十川の河口、宿毛、足摺岬、土佐清水…、ここは十分に時間の余裕がある時に、もう一度来るべきだと改めて思い、今回、宿毛へ向かうのを断念したことを自分の中で納得させちゃいました。
中村駅の2番線と3番線は駅舎と跨線橋で結ばれた島式ホームになっていて、2番線に高知行きの特急「あしずり6号」、隣の3番線に宿毛行きの普通列車が発車の時刻を待って停まっていました。2つの列車が並んで停まっているところをホームから撮影して、特急「あしずり6号」の先頭車に乗り込みました。車内はガラガラで、なんと運転席のすぐ後ろの通称“鉄ちゃんシート”に座ることができました。これはきっとこの決断に対する“鉄道の神様”からのささやかなご褒美ってことなのでしょう(笑)
定刻の13時24分に私を乗せた高知行きの特急「あしずり6号」は発車しました。振り返ると、私が乗る筈だった宿毛行きの普通列車が小さくなっていきます。
特急「あしずり6号」に使われていた車両は、2000系ディーゼル特急車両の改良版(高出力版)であるN2000系ディーゼル特急車両。2000系よりもパワーアップした高出力のディーゼルエンジンを搭載していて、軽やかに快走します。
“鉄ちゃんシート”に座って前方を見ていると、振り子式車両なので、カーブが近づくたびに車体を傾けているのがよく分かります。力強いディーゼルエンジンの音が実に心地いいです。ループ式の川奥トンネルに向かう急な勾配も速度を落とさず、グングン登っていきます。さすがは最新鋭。余裕があるって感じです。
さっき通ってきた線路を戻ってきて、14時00分、窪川に到着。2分間の停車時間の間に乗務員が土佐あしずり鉄道の乗務員からJR四国の乗務員に替わり、14時02分、窪川駅を発車。特急の次の停車駅、土佐久礼までは僅かに所要時間15分です。この間はトンネルの連続ですが、トンネルとトンネルの切れ目から時々太平洋が見えてきます。ちょっと内陸の盆地にある窪川から、山を越えて(幾つかのトンネルを抜けて)太平洋岸の土佐久礼に出てきたって感じです。
14時17分、定刻に土佐久礼駅に到着しました。土佐久礼駅は島式ホーム1面2線に側線数本を有する駅です。ホームの須崎寄りの端から階段で少し降りたところに、屋根が三段になっている木造駅舎があります。改札口などはありますが、今は無人駅です。この土佐久礼駅、青柳裕介さんの描く漫画『土佐の一本釣り』では、連載初期の頃に主人公の純平がセーラー服姿の八千代と列車に乗り込むシーンで使われています。
どこの田舎もそうですが、土佐久礼駅の駅前は寂れています。オネエと2人、これからどうやって本隊が到着するまでの2時間もの時間を潰そうか…。外は寒いし、無人駅だから駅舎の中も寒い。漁港のある漁師町だから、駅前に2時間ほど時間を潰せる喫茶店のような店でもあるのではないか…と少し期待してはいていたのですが、残念ながら駅前から少し歩いても気のきいた喫茶店のような店もありません。駅前は商店が幾つか並んでいるのですが、廃業しているのか、定休日なのか、どの商店もシャッターが閉まったままになっています。正しくは駅前にカタカナの名前のついた喫茶店が1軒あるにはあったのですが、入り口の扉のところには無情にも「本日休業」の貼り紙が貼られていました。ありゃま!(@_@)
駅に戻り、駅前で客待ちをしているタクシーが2台いたので、運転手さんに開いてる喫茶店でもないのか?…と訊いてみようと思ったのですが、どちらのタクシーも車内で運転手さんが爆睡中のようだったので、起こすのも悪いと思って遠慮しちゃいました。
オネエに「典型的な田舎の駅で、駅前にはなぁ~んにもないよ」ってメールを送ると、「駅のすぐ近くに『ノームの家』という喫茶店があるはずだよ」という返事がすぐに返ってきました。どうもオネエは前日に宿泊する旅館かどこかに電話を入れて、調べたようなんです。
そんな店、どこにも見当たらないけどなぁ~…と思いながらも14時30分を過ぎたので、ホームに上がり、オネエの到着を待つことにしました。無人駅なので入場券を払うこともなくホームに上がることができます。ホームに上がって気がついたことがありました。私は港のある駅舎のある側(駅の南側)だけを探したのですが、線路をくぐって反対側の駅の北側をまだ見ていない。『ノームの家』って喫茶店はもしかしたらその駅の北側にあるのかもしれない…。そんなことを思っていると遠くから軽やかなディーゼルエンジンと警笛の音が聞こえ、オネエを乗せた下りの特急「あしずり3号」が土佐久礼駅のホームに入ってきました。
……(その7)に続きます。
高知駅では空路で高知入りした私を除く関東組も合流して、本隊は自由行動をしている私を除く残りの13名全員が揃ったものだ…と私は勝手に思い込んでいました。(高知駅に集合してから、本隊は高知城や高知名物の日曜市を見学に行ったようです。楽しそうな写真がメールに添付して送られてきました。)
ちなみに、本隊は高知駅発15時43分の特急「あしずり5号」に乗って土佐久礼に向かう予定でいるので、私とそれ以外の本隊との集合時間を「あしずり5号」の土佐久礼駅到着に合わせた16時35分に土佐久礼駅の改札口で…ということにしたのです。
ここに突然飛び込んできたのがオネエ(女性・なぜか独身)からのメールでした。オネエは京都在住。どうも、なにかトラブルがあったようで、前日から一睡もしないで徹夜で仕事をして、徹夜明けでそのままこちらに向かっているようなのですが、特急「南風5号」には乗れずに、その1本後の列車でこちらに向かっているとのこと。メールには「14時37分に土佐久礼に着くので、“不時着”の準備をよろしく」と書かれていました。
さっそく時刻表で確認したところ、オネエは「南風5号」の1本後の11時05分岡山駅発の特急「南風7号」に乗って高知に向かっているようなのです。で、その「南風7号」の高知駅着が13時40分。正規の集合時間には1時間の遅刻だから本隊には合流できずに、そのまま13時50分高知駅発の特急「あしずり3号」に乗り換えて、最終目的地の土佐久礼に向かおうとしているようなのです。そして、この「あしずり3号」の土佐久礼駅到着が14時38分。さぁ~て、どうする……(^^;
その時点で時刻は13時を少し過ぎたところです。私を乗せた土佐くろしお鉄道中村線の普通列車は土佐入野(とさいりの)駅を出て、西大方(にしおおがた)駅に到着する直前でした。ちなみに、土佐入野駅は単式ホーム1面1線の無人駅ですが、ロッジ風の駅舎があって、全ての特急列車が停車します。幡多郡黒潮町の役場がすぐ傍にあり、黒潮町の中心地で最も賑やかなところのようです。駅のすぐ近くには入野松原という松林があり、その向こう側には長い砂浜が続いています。この入野松原の沖はホエールウォッチングの名所で、入野漁港から観光船に乗ってクジラを追いかけることができるそうです。
西大方駅を出ると、次は古津賀(こつか)駅、その次は終点の中村駅に到着です。この列車は中村駅に13時09分到着の予定で、この時点まで私はそこで13時30分発の普通列車に乗り換え、終点の宿毛駅まで行く予定でした。宿毛駅着は14時00分ですので、押し返しの列車に乗って中村駅まで戻ってきて、中村駅から15時10分発の特急「南風24号」に乗車すると土佐久礼駅に16時06分に到着するので、最終の集合地点である土佐久礼駅には一番乗りできるという計算だったのです。
さっそく時刻表を取り出して確認してみると、中村駅13時24分発という上りの特急「あしずり6号」という列車があり、これに乗って中村駅で折り返すようにすると、土佐久礼駅には14時17分着。オネエが土佐久礼駅に到着するよりも20分ほど早く土佐久礼駅に着いて、オネエの不時着(到着)を待つ形になれます。なぁ~んか西村京太郎さんの「十津川警部シリーズ」の小説のようになってきました(時刻表トリックはありませんが…)。
さて、ホントどうしよう……┐(‘~`;)┌
しばし考えて、私が出した結論は、今回は宿毛まで行くことをここで諦めて、中村からトンボ返りして、土佐久礼駅に行き、オネエの不時着(到着)をお迎えする…ってことでした。おそらく土佐久礼駅の駅前はなぁ~んにもないところで、この1月初旬の寒い中、徹夜明けで遠路はるばる移動してきたオネエを1人で2時間も待たせるわけにはいきませんからね。
高校時代、私を含めクラスの落ちこぼれ組の男子数名は、どういうわけか「オネエの下僕(しもべ)達」と呼ばれていました。オネエや我々下僕達の名誉のために言っておくと、オネエは決して我々を奴隷扱いしたわけでもありませんし、我々もオネエに虐げられたという記憶はいっさいありません。ただ、オネエは“オネエ”と呼ばれるだけあって、妙に存在感というか、求心力があって、常に我々クラスの落ちこぼれ組の男子数名、いやクラスの輪の中心にいたように思います。そして、そのオネエと、お互いにからかいあったり、冗談を言い合ったりして(かなりキワドイ冗談も平気で言い合っていました)、男女の垣根を越えてフランクに付き合っていたのが私を含む「オネエの下僕(しもべ)達」でした。クラスの“マドンナ”のような存在だったのか?…と問われれば、まぁ~そういうことだったのかもしれません。
高校時代はかなり“健康的な”体形をしていたオネエも5年前に35年ぶりに逢った時には一瞬別人かと思ってしまうほど細くなっていて、驚いてしまいました。なにがあったのか詳しくは知りませんが、かなり苦労なさった時期があったように推察しています。そんなオネエが不時着すると言っているわけで、「オネエの下僕」としては、なんとかしないといけません。それが“下僕”としての務めです。
愛媛の松山に実家がある私は、宿毛にはまたきっといつか来れる時があるでしょう。それまでの楽しみに残しておくことにしました。その時は宇和島からバスで宿毛に行って、宿毛から中村に土佐くろしお鉄道宿毛線の列車で入ることにしよう…と勝手に決めちゃいました。
列車は中村駅のすぐ手前で川底の石がしっかり見えるくらいに水の綺麗な(透明な)川を短い鉄橋で渡ります。この川は四万十川の支流である後川(うしろがわ)で、四万十川の本流と交わるには中村駅を過ぎて宿毛線の区間に入らなければなりません。河口近くの四万十川本流を渡るのは次回までのお楽しみです。
中村駅は2面3線ホームの構造を持った駅で、私が乗ってきた普通列車は駅舎と直結した片面ホームの1番線に到着しました。
中村は「土佐の小京都」ともいわれる落ち着いた雰囲気の町で、駅の西方およそ1.5kmのところには「日本最後の清流」と呼ばれる四万十川が流れていて、四万十川が太平洋へと注ぐ河口もこの中村にあります。今日はこれまで江川崎や窪川と言った四万十川の中上流域の風景を見てきたので、できたら河口も見てみたい感じです。
また、中村駅の駅前からは土佐清水市や足摺岬へ向かうバスが出ています。足摺岬は太平洋に突き出た岬で、黒潮の打ち寄せる先端部の断崖は約80mの高さをもちます。気象的には「足摺岬の南西〇〇km」という風に、台風の進路の目安に使われることで知られています。高知県を代表する観光地の一つで、この日も中村駅で足摺岬方面へのバスに乗り換えようとする観光客の姿を何人か見掛けました。ちなみに漁港として有名な土佐清水市は、日本の全ての“市”の中で、東京から最も長い移動時間を要する場所であるとされています(島根県の江津市という説もあります)。
四万十川の河口、宿毛、足摺岬、土佐清水…、ここは十分に時間の余裕がある時に、もう一度来るべきだと改めて思い、今回、宿毛へ向かうのを断念したことを自分の中で納得させちゃいました。
中村駅の2番線と3番線は駅舎と跨線橋で結ばれた島式ホームになっていて、2番線に高知行きの特急「あしずり6号」、隣の3番線に宿毛行きの普通列車が発車の時刻を待って停まっていました。2つの列車が並んで停まっているところをホームから撮影して、特急「あしずり6号」の先頭車に乗り込みました。車内はガラガラで、なんと運転席のすぐ後ろの通称“鉄ちゃんシート”に座ることができました。これはきっとこの決断に対する“鉄道の神様”からのささやかなご褒美ってことなのでしょう(笑)
定刻の13時24分に私を乗せた高知行きの特急「あしずり6号」は発車しました。振り返ると、私が乗る筈だった宿毛行きの普通列車が小さくなっていきます。
特急「あしずり6号」に使われていた車両は、2000系ディーゼル特急車両の改良版(高出力版)であるN2000系ディーゼル特急車両。2000系よりもパワーアップした高出力のディーゼルエンジンを搭載していて、軽やかに快走します。
“鉄ちゃんシート”に座って前方を見ていると、振り子式車両なので、カーブが近づくたびに車体を傾けているのがよく分かります。力強いディーゼルエンジンの音が実に心地いいです。ループ式の川奥トンネルに向かう急な勾配も速度を落とさず、グングン登っていきます。さすがは最新鋭。余裕があるって感じです。
さっき通ってきた線路を戻ってきて、14時00分、窪川に到着。2分間の停車時間の間に乗務員が土佐あしずり鉄道の乗務員からJR四国の乗務員に替わり、14時02分、窪川駅を発車。特急の次の停車駅、土佐久礼までは僅かに所要時間15分です。この間はトンネルの連続ですが、トンネルとトンネルの切れ目から時々太平洋が見えてきます。ちょっと内陸の盆地にある窪川から、山を越えて(幾つかのトンネルを抜けて)太平洋岸の土佐久礼に出てきたって感じです。
14時17分、定刻に土佐久礼駅に到着しました。土佐久礼駅は島式ホーム1面2線に側線数本を有する駅です。ホームの須崎寄りの端から階段で少し降りたところに、屋根が三段になっている木造駅舎があります。改札口などはありますが、今は無人駅です。この土佐久礼駅、青柳裕介さんの描く漫画『土佐の一本釣り』では、連載初期の頃に主人公の純平がセーラー服姿の八千代と列車に乗り込むシーンで使われています。
どこの田舎もそうですが、土佐久礼駅の駅前は寂れています。オネエと2人、これからどうやって本隊が到着するまでの2時間もの時間を潰そうか…。外は寒いし、無人駅だから駅舎の中も寒い。漁港のある漁師町だから、駅前に2時間ほど時間を潰せる喫茶店のような店でもあるのではないか…と少し期待してはいていたのですが、残念ながら駅前から少し歩いても気のきいた喫茶店のような店もありません。駅前は商店が幾つか並んでいるのですが、廃業しているのか、定休日なのか、どの商店もシャッターが閉まったままになっています。正しくは駅前にカタカナの名前のついた喫茶店が1軒あるにはあったのですが、入り口の扉のところには無情にも「本日休業」の貼り紙が貼られていました。ありゃま!(@_@)
駅に戻り、駅前で客待ちをしているタクシーが2台いたので、運転手さんに開いてる喫茶店でもないのか?…と訊いてみようと思ったのですが、どちらのタクシーも車内で運転手さんが爆睡中のようだったので、起こすのも悪いと思って遠慮しちゃいました。
オネエに「典型的な田舎の駅で、駅前にはなぁ~んにもないよ」ってメールを送ると、「駅のすぐ近くに『ノームの家』という喫茶店があるはずだよ」という返事がすぐに返ってきました。どうもオネエは前日に宿泊する旅館かどこかに電話を入れて、調べたようなんです。
そんな店、どこにも見当たらないけどなぁ~…と思いながらも14時30分を過ぎたので、ホームに上がり、オネエの到着を待つことにしました。無人駅なので入場券を払うこともなくホームに上がることができます。ホームに上がって気がついたことがありました。私は港のある駅舎のある側(駅の南側)だけを探したのですが、線路をくぐって反対側の駅の北側をまだ見ていない。『ノームの家』って喫茶店はもしかしたらその駅の北側にあるのかもしれない…。そんなことを思っていると遠くから軽やかなディーゼルエンジンと警笛の音が聞こえ、オネエを乗せた下りの特急「あしずり3号」が土佐久礼駅のホームに入ってきました。
……(その7)に続きます。
執筆者
株式会社ハレックス
前代表取締役社長
越智正昭
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