2015/11/18
自衛隊音楽まつり2015
11月14日(土)、運よく入場券を入手できたので、東京・九段下の日本武道館で行われた防衛省主催の『自衛隊音楽まつり2015』なるイベントに行ってきました。このイベントは陸・海・空の各自衛隊の音楽隊が総出で演奏する演奏会で、ブラスバンド、マーチングバンドの日本最高レベルの音楽会ともいえるものです。
11月13日(金)、14日(土)、15(日)の3日間、計7回の公演でしたが、どの回もあの広い日本武道館が満員札止めになるくらいの観客が集まる人気のイベントのようで、私が聴きに行った14日(土)第2回の公演もギッシリ満員でした。私は開演の1時間近く前に会場に着いていたのですが、それでも既に入場のための長い行列が出来ていました。場内に入ると、全席自由席の会場なので、中央あたりの席は全て塞がっていて、舞台に向かって左側の中段の席になんとか座ることができたほどでした。人気のほどがよく分かります。
この『自衛隊音楽まつり』ですが、私にとっては2008年以来7年ぶり2度目の鑑賞です。2008年のものも素晴らしかったのですが、7年ぶりの今年の『自衛隊音楽まつり2015』も、実に素晴らしいイベントでした。まさに日本最高のブラスバンド、マーチングバンドの演奏会、いや祭典でした。
同行した音楽大好きの愛娘(中学校教諭)も目を輝かせて聴き入っていました。そして、何度も「カッケェ~!(カッコイイ!)」を連発していました(娘は年頃になっても女子度が低くていけません・苦笑)。私も聴いていて鳥肌が立ち、あまりの感動で涙が出ちゃいました。それほど素晴らしい演奏会でした。
出演したのは陸・海・空の各自衛隊の音楽隊。出演順に宮城県仙台市に所在し、東北地方6県全域における演奏活動を実施する陸上自衛隊東北方面音楽隊、兵庫県伊丹市に所在し、東海・北陸・近畿・中国・四国地方2府19県全域における演奏活動を実施する陸上自衛隊中部方面音楽隊、我が国唯一の特別儀仗隊として国賓等の歓迎式典において特別儀仗を実施する陸上自衛隊第302保安警務中隊、国賓公賓の歓迎式典をはじめとした国家的行事における演奏を実施する陸上自衛隊中央音楽隊、遠洋練習航海部隊にも隊員を派遣して世界の各寄港地での親善演奏などグローバルな活動を実施している海上自衛隊東京音楽隊、平成4年にスーザ財団より優秀軍楽隊賞をアジアで初めて受賞した航空自衛隊航空中央音楽隊。さらには東北方面フラッグ隊(陸自)、海上自衛隊艦旗隊、航空自衛隊演技隊といった自衛隊音楽まつりを華やかに彩る女性自衛官の方々、北は北海道、南は九州の駐屯地等でクラブ活動として活躍する太鼓チームから選抜された13個のチーム(自衛太鼓)、横須賀に所在する防衛大学校の学生で編成され、各種行事等において儀仗やファンシードリルを実施している防衛大学校儀仗隊の皆さん方でした。
また2015年度の今回は、ゲストバンドとして在日米陸軍軍楽隊、米海兵隊第3海兵機動展開部隊音楽隊、米空軍太平洋音楽隊、米海軍第7艦隊音楽隊、という在日米軍4軍の音楽隊と、大韓民国海軍軍楽隊も招かれ、素晴らしい演奏を披露してくれました。今年は4月末に安倍首相が訪米し、オバマ大統領と会談するとともに、米国連邦議会上下両院合同会議でも演説を行って安全保障における日米同盟が新しい時代を迎えたことが確認されました。長い『自衛隊音楽まつり』の歴史の中でも米軍の4軍の音楽隊が揃って出演するというのは初めてのことだそうで、この背景にも日米同盟の強化があるのかな…と思ったりしました(もちろん、大韓民国海軍軍楽隊の出演も含めて…)。
“音楽隊”と称する以上は、演奏することが彼等の主たる任務、はっきり言って演奏のプロさんです。プロの演奏ですから、どの楽曲も言葉にならないくらいに素晴らしい演奏でした。演奏も素晴らしいのですが、軍隊の音楽隊らしく統制がとれたキビキビした動き、ピシッとした姿勢、次々に変わるフォーメーションとその統制美。見ているだけで楽しめる動きのある演奏に、もう感動しちゃいました。素晴らしすぎます。
演奏された曲目は、映画「宇宙戦艦ヤマト」の中の劇中曲に始まって、斎太郎節や映画「サウンド・オブ・ミュージック」の劇中曲、「進撃の巨人」の劇中曲、「ジュピター」など耳に馴染みの楽曲ばかりで、本当に素晴らしかったです。海上自衛隊東京音楽隊の演奏する行進曲『軍艦』(いわゆる「軍艦マーチ」です)は、さすがに本家本元と言える素晴らしいものでした。さすがは本場モノと思わせてくれたものとしては、米軍4軍の音楽隊の演奏はどれも素晴らしかったです。コミカルな動きに加えて、ジャズのように各楽器のソロ演奏を交える構成等、聴く人を楽しませてくれます。武道館中から自然と手拍子が起きる様は、さすがさすが…の一言でした。
中でも特に素晴らしかったのが航空自衛隊航空中央音楽隊と米空軍太平洋音楽隊、陸上自衛隊2方面音楽隊の合同演奏で披露された『花は咲く』。
4年前の2011年3月11日に発生した東日本大震災。東日本大震災では、巨大地震による大きな揺れと、津波の来襲により、関東地方から東北地方の広い範囲の太平洋沿岸において未曾有の大被害を被ったのですが、その災害発生直後から被災地での救助、復旧において、自衛隊がいかに活躍したかについては私がここでご紹介するまでもないことでしょう。あのフェーズで一番頼りになったのは陸・海・空の自衛隊の活躍でした。その時は米軍も「トモダチ作戦(Operation Tomodachi)」と称して陸・海・空・海兵隊から2万人以上の人員と艦船約20隻、航空機約160機を投入し、自衛隊と連携して空港・港湾・学校などの復旧、救援物資の提供・輸送、行方不明者の捜索に尽力していただきました。あの時以来、自衛隊や米軍と我々一般国民との距離が一気に縮まってきているように感じています。
『道』と題された今年の『自衛隊音楽まつり2015』でも、随所にその時の映像が使われていましたが、この『花は咲く』の演奏では、それが頂点に達し、思わず涙を流してしまいました。隣を見ると、娘も感動してかポロポロと涙を流していました。
それと忘れてならないのが、『自衛太鼓』。武道館の1階フロアを埋め尽くす総勢200名を超えようかという大勢の隊員が打ち鳴らす和太鼓の演奏は勇壮で、圧巻でした。この自衛太鼓の演奏だけを聴きに来ても、十分に満足できるくらいです。はっきり言って、カッコいいです。日本の“軍楽隊”の演奏は、やっぱこういう勇壮なものでなくっちゃあいけません。八戸自衛太鼓をはじめ、やはり地元に有名な祭りがあって、披露する機会も多いだろうと思われる北海道や東北地方の部隊の演奏が、動きの勇壮さと言う点では目立ちます。関東地方ではご近所(埼玉県)の陸上自衛隊朝霞駐屯地の朝霞自衛太鼓がひときわ巨大な太鼓を持ち込み、目立っていました。
『音楽まつり』のフィナーレは出演した全部隊が勢揃いしての『道』という楽曲の大合唱。これも素晴らしかったです。最高潮に盛り上がった中、有名な『威風堂々』の楽曲にのせて各部隊は退場していったのですが、この『威風堂々』もさすがに本物の軍楽隊が演奏すると、深みが全然違います。鳥肌が立つ感じがしました。
今回は娘を誘って聴いたのですが、日頃はあまり自衛隊や軍隊と言うところに関心を持たない娘は、最初は「え~~~っ、自衛隊ぃ~!?」って感じでさほど気乗りせずに、私から誘われたから仕方なくついて来たって感じだったのですが、約2時間の演奏が終わる頃にはノリノリで、「凄いね。また来年も絶対に来たい!」と目を輝かせて感想を述べていました。この娘の言葉の変化が全てを物語っています。「広く国民の皆様と交流を持ち、自分達の活動に対する理解を深めて貰いたい」という防衛省・自衛隊の狙いはバッチリ!当たった感じはします。
何度も繰り返しになりますが、ホント感動させていただきました。すっかり自衛隊のファンになっちゃいそうです。
【追記1】
素晴らしかったのは演奏だけではありませんでした。次々と音楽隊が出てきて演奏をするのですが、なんと言っても感心したのはその切替の素早さ。あれだけ大勢の人が出てステージいっぱいに広がって演奏していたのに、大きな楽器も大道具も一瞬にして片付け、素早く次の演奏のための準備を行い、円滑にイベントを進行する様は、さすがに自衛隊だと思いました。最後に紹介されましたが、今回の『自衛隊音楽まつり2015』では陸上自衛隊東部方面隊から選抜された隊員による部隊が特別に編成され、舞台進行を行ったようです。
そう言えば、会場の内外の警備や誘導も制服姿の陸・海・空の自衛官が行っていましたが、テキパキとして手際が良かったですね。1万人以上の大集団が整然として移動していました。こういうのって、もしかしたら大災害発生時における被災者誘導の訓練の一環かもしれませんね。
【追記2】
自衛隊の音楽隊には楽器演奏だけでなく歌手までいらっしゃるんですね。「自衛隊の歌姫」としては海上自衛隊に2009年に入隊された三宅由佳莉3等海曹が有名ですが、その後、陸上自衛隊や航空自衛隊でも声楽採用枠を設けて、女性歌手を入隊させているようです。今回の『自衛隊音楽まつり2015』ではその陸・海・空の「自衛隊の歌姫」が勢揃いし、さらには米空軍太平洋音楽隊の歌姫も加わって、素晴らしい歌声を披露してくれました。
【追記3】
地方自治体での災害対応に関してご指導をいただくために陸上自衛隊元陸将補の清水顧問をお迎えしたりして、ここ数年、仕事の関係で自衛隊関係者の皆様とお話をする機会が増えてきているので、私の中でかなり自衛隊に対する見方が変化してきました。
国民の生命や財産をお守りする仕事、“安心”と“安全”を提供する仕事と言う点では、自衛隊も我々民間気象情報会社も同じなのですが、自らの生命までをも賭けて本気になってその仕事に向き合っているかどうかに関しては、悔しいことに、我々は自衛隊の皆さんには遠く及ばないな…と感じています。1人1人の自衛官の皆さんが、真面目に、そして真剣に職業としての自衛官と言う仕事に誇りを持っていて、我々も見倣わないといけない部分が多いと思っています。それって、多分に教育によるところが大きいと思いますが、1人1人に至るまで徹底しているように感じられ、自らの仕事に疑問を感じている人などほとんどいらっしゃらないように思われます。そこまでしないといけない仕事でしょうからね。
いっぽうで、彼等も制服を脱ぐと我々となんら変わらない一市民だという至極当たり前のことにも、改めて気づかさせていただいています。我々ってどうしても先入観をもって物事や事象を捉え、自分の解釈に合うように勝手にイメージをしがちなところがあります。これは十分に気を付けないといけません。
執筆者
株式会社ハレックス
前代表取締役社長
越智正昭
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