2018/04/06

大人の修学旅行2018 in鹿児島(その2)

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海岸線に近い加治木JCT(ジャンクション)で九州自動車道から東九州自動車道(隼人道路)が分岐します。妻の故郷に行く時はここで東九州自動車道のほうに向かうのですが、この日はそのまま九州自動車道で鹿児島市方面に向かいます。九州自動車道を加治木JCTから鹿児島方面に向かって走るのは久しぶりのことなので、ちょっと新鮮です。一瞬ですが、錦江湾(鹿児島湾)越しに桜島が見えました。日本列島に数ある火山の中で海の中に聳えるその山容は、特に異彩を放っています。

鹿児島県中西部に位置し、薩摩半島の北東部および桜島全域を市域とする鹿児島市は、古くから薩摩藩90万石の城下町として栄えてきました。明治22年(1889年)4月1日に日本で最初に市制を施行した31市の1つで、現在は福岡市、北九州市、熊本市に次ぐ九州第4位の約60万人の人口を擁し、鹿児島県の県庁所在地であると同時に、宮崎県・鹿児島県を範囲とする南九州地域の拠点都市として政治・経済・文化・交通の中心地となっています。また、錦江湾(鹿児島湾)を望み、桜島などに年間約900万人の観光客が訪れる観光都市でもあります。錦江湾西岸の市街地から桜島を望む景観がイタリアのナポリから眺めるヴェスヴィオ火山の風景に似ていることから、『東洋のナポリ』と称されることもあります。

リムジンバスは鹿児島北IC(インターチェンジ)で九州自動車道を降り、一般道を走り約45分でJR鹿児島中央駅とは電車通りと駅前ロータリーを挟んだ向かい側にある鹿児島中央ターミナルビルの南国交通バスターミナルに到着しました。少し一般道が混んでいて、時刻表に書かれている到着時刻より5分ほど遅れましたが、まぁ〜誤差範囲です。明日(3月3日)は遠路青森から飛行機でやって来るココさんがいて、飛行機の都合で鹿児島中央駅到着が集合時刻のギリギリになるという連絡を受けていたのでちょっと心配していたのですが、まぁ〜今日の道路の感じだと、飛行機の到着が遅れない限り大丈夫でしょう。

電車通りと駅前ロータリーを挟んだ向かい側に明日(3月3日)の集合予定場所であるJR鹿児島中央駅が見えます。地下連絡通路を使ってJR鹿児島中央駅に向かいます。明日の集合場所はアバウトに「JR鹿児島中央駅桜島口(東口)」と参加者の皆さんにお伝えしているだけなので、もうちょっと明確に場所を特定してお伝えしないといけません。エスカレーターを昇り、九州新幹線の改札口のところまで行き、そこから逆に歩いて見つけやすいところを探しました。で、見つけたところが観光案内所前。定期観光バスの乗り場までは少し距離がありますが、まぁ〜問題ないでしょう。鹿児島は初めてという皆さんなので、目について分かりやすいところが一番です。さっそくスマホで改札口から観光案内所までの写真を何枚か撮り、解説文付きで皆さんにLINEで送りました。最近はこういう便利な道具があるので、楽です。

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JR鹿児島中央駅は鹿児島における都市間移動の拠点駅であり、新大阪駅より当駅に至る山陽・九州新幹線の終着駅です。福岡・熊本両都市圏、本州方面とを結ぶ新幹線の発着駅であるほか、宮崎・霧島・指宿方面へ向かう新幹線に接続する特急列車や観光列車など在来線においても多数の列車が当駅を始発・終着とするターミナル駅です。九州新幹線および在来線の鹿児島本線、指宿枕崎線の3路線が乗り入れており、このうち九州新幹線はこの鹿児島中央駅を終点、指宿枕崎線は起点としています。鹿児島本線と日豊本線の正式な終点は隣の鹿児島駅ですが、鹿児島本線の列車は大半がこの鹿児島中央駅で折り返すため鹿児島駅まで乗り入れる列車は少なく、逆に日豊本線の列車は全てこの鹿児島中央駅まで乗り入れているため、鹿児島中央駅は鹿児島本線と日豊本線の事実上の終点として機能しています。これは旧駅名の西鹿児島駅時代から変わらないことで、西鹿児島駅時代も寝台特急、特急などの優等列車をはじめほとんどの列車がこの駅を起終点として発着する運行上の拠点となっていて、古くから鹿児島市の中心駅としての役割を果たしてきました。また鉄道以外でも大隅半島や離島航路発着港とのバス路線や鹿児島空港行きのリムジンバスの発着地であり、鹿児島市のみならず鹿児島県全域へのアクセスの拠点となっています。平成16年(2004年)3月13日、九州新幹線鹿児島ルート新八代駅〜当駅間開業と同時に従来の駅名である西鹿児島駅から鹿児島中央駅に改称しました。

また、駅敷地内にはアミュプラザ鹿児島やえきマチ1丁目などに大小250を超える店舗が密集しており、駅周辺の店舗と併せて鹿児島中央駅地区と呼ばれる商業エリアを形成し、鹿児島市の一大商業地区の1つになっています。

15時過ぎてさすがにお腹が空いてきたので、遅い昼食を摂ることにしました。なぜこの時間まで昼食を摂らなかったかというと、美味しい鹿児島ラーメンを食べたかったからです。

鹿児島ラーメンは豚骨をベースにした半濁スープにストレート麺が基本となってはいますが、これに各店が様々なアレンジを加え個性を競い合っているため、鹿児島ラーメン総体としての特徴は特にはないと言われています。逆に、各店舗それぞれに個性があるのが鹿児島ラーメンの特徴とする意見もあるくらいです。ただ、同じ豚骨スープのラーメンと言っても他県のものと比べると麺は柔らかく仕上げられ、野菜等の具材が多く使われる点などの差があります。鹿児島県では、古くから豚肉を食する文化を持っていた沖縄(琉球)からの影響もあったため、豚骨スープがベースとなったと言われています。ただ、他の九州地区のラーメンに類似せず、白濁させないスープを提供したり、臭み消しにニンニクや焼きネギを使うといった工夫が行われているのが特徴です。このため、有名な久留米ラーメンとは異なる発祥の豚骨スープのラーメンであるとされています。

鹿児島市内で老舗ラーメン店と言えば、昭和22年(1947年)創業の「のぼる屋」、昭和24年(1949年)創業の「のり一」、昭和25年(1950年)創業の「こむらさき」の3店が有名なのですが、JR鹿児島中央駅に直結したアミュプラザ鹿児島の地下1階に「こむらさき」の支店が出店しているようなので、そこで鹿児島ラーメンをいただくことにしました。

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味覚に関するボキャブラリーが不足しているため上手な食レポはできないのですが、とにかく「美味しい!」…の一言です。私は豚骨スープのラーメンは、この鹿児島のラーメンが全国で1番美味しいと思っています。

JR鹿児島中央駅へ降り立つと、江戸時代の末期に国禁を犯して海外留学を果たし、新生日本を建設する原動力となった薩摩藩英国留学生をモチーフにした銅像『若き薩摩の群像』が観光客を出迎えてくれます。高さが12.1メートルあって、彫刻家で日本芸術院会員の中村晋也氏によって、昭和57年(1982年)に制作されました。

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文久3年(1863年)、薩英戦争で西欧文明の偉大さを痛感させられた薩摩藩は、慶応元年(1865年)、15名の留学生と4名の使節団を英国に派遣しました。幕府の鎖国令を破っての派遣だったので、全員変名を使って、甑島(こしきじま)大島への出張という名目で、慶応元年(1865年)4月17日、串木野市羽島浦から英国貿易商グラバーが用意した蒸気船オースタライエン号で、密かに英国に旅立ちました。約2ヵ月後の6月21日にロンドンに到着した留学生たちはロンドン大学に留学します。留学生らは帰国後、外交、文教、産業等の分野で活躍し、日本の歴史を大きく転換させ、新生日本を建設する原動力となりました。

留学生の中には初代文部大臣を務め、一橋大学を創設した森有礼、第4代外務卿を務め、日本の電気通信の父と呼ばれる寺島宗則、実業家として瓦解寸前だった大阪経済を立て直し、大阪商工会議所の初代会頭を務めた五代友厚などがいます。

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鹿児島市内には市電(路面電車)が市民の足として活躍しています。運行するのは鹿児島市交通局。鹿児島市は公営交通事業に熱心に取り組んでいる自治体で、この市電と路線バス、さらには明日乗船する予定の桜島フェリーも運営しています。この鹿児島市の市電(路面電車)は日本最南端の路面電車事業で、路線長は13.1km。1系統〈青〉(鹿児島駅前-市役所前-天文館通-高見馬場-武之橋-郡元-谷山)と2系統〈赤〉(鹿児島駅前-市役所前-天文館通-高見馬場-加治屋町-鹿児島中央駅前-郡元)の2つの運行系統があり、両系統とも平均5分間隔で運行されています。年間延べ約1千万人の利用客があり、全国でも数少ない健全運営を誇っています。私は鹿児島中央駅前から2系統の電車に乗って水族館口を目指すことにしました。

鉄チャンなので、本当は全線乗覇してみたかったのですが、これもロケハンなので仕方ありません。明日(3月3日)、定期観光バスに乗らずに直接宿泊先である桜島の国民宿舎レインボー桜島に向かう方のために桜島フェリーの乗り場まで行ってみようと思ったからです。鹿児島中央駅前から水族館口までは市電で約15分。水族館口の電停から桜島フェリーの乗り場までは徒歩で5分ほど。途中で撮影した写真とともに桜島フェリー乗り場までの道順をLINEで参加者全員に送りました。これだと、もし集合時刻に間に合わなかった人がいたとしても宿泊先のレインボー桜島までなんとか自力で辿り着くことができますからね。

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桜島フェリーです。前述のようにこの桜島フェリーも鹿児島市(こちらは船舶局)が運営する公営のフェリーです。鹿児島市中心部にある桜島フェリーターミナルと、東側の対岸の桜島西端部にある桜島港を結ぶ航路で、国道224号の海上区間でもあります。現在では昼間最短10分間隔、夜間30分間隔、深夜60分間隔の24時間運航を行っており、約3.5kmの距離を約15分で結んでいます。年間延べ約550万人の乗客と約164万台の車両を航送しているのですが、桜島の人口規模(約4,000人)の割にこれだけの利用があるのは、桜島のみならず、鹿児島市中心部と大隅半島中央部・南部との間を行き来する際に陸路に比べ大幅に移動距離が短く、時間を節約できるためです。鹿児島市中心部と大隅半島中央部・南部との間を行き来するフェリーとしては、この桜島フェリーとは別に鹿児島市の鴨池港と垂水市の垂水港との間の約15kmの距離を35分程度の所要時間で結ぶ鴨池・垂水フェリーがあり、私は通常この鴨池・垂水フェリーのほうを使っているので、桜島フェリーの乗り場に来るのは初めてのことです。

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ちなみに、この桜島フェリー、桜島の噴火等の災害発生時には住民の避難に利用できるように準備が整えられていて、桜島の噴火災害に備えて、桜島の各所にはフェリーが着岸できる場所が設けられているのだそうです。さすがは公営フェリーです。

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桜島フェリーターミナルの先には鹿児島市立の「かごしま水族館」があり、その水族館のさらに先の岸壁に立つと、狭い海峡を挟んで目の前に桜島の雄大な姿が目に飛び込んできます。やっぱ、鹿児島と言えば、この光景ですね!

それにしても、まもなく18時になろうとしているのにこの明るさ。日本列島は東西に長いということを実感します。

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先乗りしたこの日は、高見橋電停前にある鹿児島東急REIホテルに宿泊しました。この鹿児島東急REIホテルを選んだ理由はJR鹿児島中央駅にほど近いこともありますが、すぐ隣に「かごっま ふるさと屋台村」があるからなんです。ちなみに、“かごっま”とは“鹿児島”のこと。地元の人は鹿児島のことを“かごっま”あるいは“かごんま”と発音します。

「かごっま ふるさと屋台村」は伝統的な郷土料理の屋台から、新たな鹿児島の味を伝える個性豊かな屋台まで25軒がずらりと軒を連ね、訪れる人を鹿児島の旬の食材・郷土料理、 さらにはネイティブな「かごっま弁 (鹿児島弁)」のおもてなしでお迎えするというコンセプトで2012年にオープンした施設です。数年前に出張で鹿児島を訪れた際にたまたま立ち寄り、気に入ってしまったので、この日の夕食はここで摂ろうと前々から決めちゃっていました。

25軒の屋台の中でどこに入ろうかとブラブラ歩いていて声をかけられたのがこのお店。「港町食堂たるみず」。暖簾には「とらふぐ」「刺身」「もつ煮込み」の文字が踊っています。店名の「たるみず」とは鴨池・垂水フェリーの大隈半島側の港がある垂水市のこと。錦江湾(鹿児島湾)はブリやカンパチの養殖が盛んなところで、特に垂水はカンパチの養殖で有名です。こりゃあ美味しいカンパチの刺身でもいただこうかと思って暖簾をくぐりました。

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通常は「まずはビール」といくところなのですが、ここは鹿児島です。いきなり「焼酎、お湯割りで」って頼んじゃいました。もちろん焼酎は芋焼酎です。さすがに鹿児島県は芋焼酎の本場。芋焼酎の銘柄も多く、それぞれの町にそれぞれの地酒となる酒造メーカーと銘柄があります。垂水市に本拠を置く有名な酒造メーカーと銘柄というと、「幻の焼酎」として知られる森伊蔵酒造の『森伊蔵』があります。その『森伊蔵』は地元でもなかなか手に入らないそうで、「港町食堂たるみず」では垂水市の別の酒造メーカー八千代伝酒造の焼酎『八千代伝』を扱っていたので、それを注文しました。もちろんカンパチの刺身とともに。どちらも美味い!!

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おやおや、「売れば売るだけ赤字の一品!!」と書かれた「極上 虎ふぐ白子天」があります。1コ、なんとなんとの500円! 東京で虎ふぐの白子の天麩羅を食べようと思ったら、この数倍の値段はしちゃいます。確かに「売れば売るだけ赤字の一品!!」なのかもしれません。虎ふぐの刺身とともに注文しました。そう言えば、数年前に鹿児島鴨池港行きのフェリーに乗るために垂水港に行った時、岸壁から下の海を見ると、おそらく虎フグと思しき黒い魚影がウジャウジャと群れをなして泳いでいるのが見えました。ちなみに垂水漁協で水揚げされた虎フグはほとんど全てが山口県の下関に運ばれ、「下関の虎フグ」として販売されているのだそうです。鹿児島では黒豚や黒牛、黒鶏などに押されて地元ではフグはさほど有名ではないのですが、ここが本当の虎フグの本場なんですね。美味しくいただきました。

このほか、牛すじの煮込みや薩摩揚げ等をいただきました。団体では行けないようなところに秘かに行って、自分が好きな美味しいものをいただく……、これがロケハンの役得、楽しさなんですよね。

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この屋台の楽しいところは、店主や店員さん、お客さんともすぐに親しく会話ができるところ。屋台なので席数はせいぜい8席。満席になると肩を寄せあうようにして食べなきゃあいけなくなるのですが、それがかえって客同士の心の距離も狭めてくれます。「お客さん東京からですか?」と訊かれたので(言葉ですぐにバレちゃいます)、「うん、埼玉から。俺は四国の松山の出身なんだけど、家内が大隈(半島)の志布志の出身なので、鹿児島はまんざらアウエーではないんだよね」と返すと、「ホンマコチ(本当に)! そりゃあヨソモン(よそ者)じゃなか」 もう後は居合わせてお客さん達(鹿児島大学医学部の学生さん2人と私と同じくらいの年齢のオッサン2人)ともすっかり打ち解けて地元ネタの会話を楽しませていただきました。「鹿児島弁は喋れないけど、聞くほうはほぼ大丈夫だから、ふつうに喋ってもらっていいから」とお伝えしたので、ネイティブな鹿児島弁が耳に心地よく入ってきます。このネイティブな鹿児島弁が飛び交う会話の中に身を置いていると、鹿児島にやって来たんだな…って実感が一層湧いてきます。

屋台の会話があまりに楽しかったので、焼酎を5杯も飲んじゃいました。もともと下戸でお酒が飲めない体質の私がこんなに焼酎を飲むのは珍しいことです。それほど会話が楽しかったってことです。これが鹿児島の屋台の魅力ですね。実はこの『港町食堂 たるみず』だけでなく、地元の方に誘われてもう1軒屋台に入りました。今度はデザート代わり(?)に黒薩摩鶏の焼き鳥を食べたくて…。これに関してはかなり酔っ払ってしまっていたので写真も撮っていませんし、店の名前も覚えていないので省略します。でも、メチャメチャ美味しかったことだけは覚えています。それにしても、鹿児島は美味しい食材の宝庫です。

屋台村の奥に『田の神さあ(たのかんさあ)』が鎮座しています。鹿児島県や宮崎県南部の田んぼの畦道(あぜみち)を歩いていると、この『田の神さあ(たのかんさあ)』と呼ばれる石像をよく見かけます。田の神は、その名の示す通り田んぼを守り、米作りの豊作をもたらす農業神です。稲作のある日本全国の各地で信仰され伝承されていますが、それが石像として田んぼの畔(あぜ)などにあるのは、鹿児島を中心とした旧薩摩藩領(鹿児島県本土および宮崎県南部)に限られます。現在、約2,000体の「田の神さあ」が確認されていると言われています。最も古いとされる「田の神さあ」の像は鹿児島県さつま町紫尾のもので、江戸時代中期の宝永2年(1705年)の年号が刻まれているのだそうです。

田んぼの畔道などに「田の神さあ」の像を立てる風習は、五穀豊穣を願って農民達の側から自然発生的に起こった信仰なのでしょうか、それとも薩摩藩の食糧増産政策の一環として始まった風習なのでしょうか。いずれにしても、ただ田んぼと農作業の日常を見守り続けてきた、とても庶民的な神様です。

鹿児島県南九州市知覧町出身の鹿児島大学医学部の学生さんが「田の神さあ」のことを知らなかったことにはちょっと驚きました。私でも知っているのに! 居合わせた店主もお客さんも驚いて、「んだもしたん!(あらまあ!) そこの角を曲がったところに立っとるから、見てきなさい!」(笑) これも時代の流れというものでしょうかねぇ~。こうやって日本全国に残っている昔からの風習が少しずつ消え去っていくのでしょうね。ちょっと寂しい気もします。

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『かごっま屋台村』の出口のところに「また来やしたもんせ (また来てくださいね)」と鹿児島弁で書かれた看板が立っています。

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NHKの大河ドラマ『西郷どん』でも話題の鹿児島弁。非常に特徴のある方言なので、『西郷どん』をご覧の皆様も「???」って思っておられる方が多いのではないでしょうか。

鹿児島弁は、鹿児島県がかつて薩摩国と大隅国であったことから、薩隅方言とも呼ばれています。同じ鹿児島県民のなかでも、世代によって方言づかいに差があります。若い世代は、イントネーションは残っているものの、バリバリの鹿児島弁の人は少なくなってきています。年配の濃厚な鹿児島弁の人と話すと、内容がまったく聞き取れないこともあります。

私は34年前、妻を貰いに大隈半島にある妻の実家を初めて訪れたのですが、その時はこの言葉の壁にぶつかって、大いに面喰らい、「こりゃあエライ(面倒な:四国弁です)ところの嫁を貰うことにしたもんだ」と思ったほどです。とにかく相手が何を言っているのかサッパリ分からないのです。しかも、私は四国イントネーションは残っているものの語彙は基本標準語で喋るので、私の言っていることは相手に確実に伝わっているのですが、相手が言っている言葉がサッパリ分からないのです。なんで笑っているのか分からないまま作り笑いをしたことも何度あったことか。外国にやって来たような感覚でした。妻も妻で東京にいる時は流暢な標準語を喋っていたのが、地元鹿児島の人と喋り出すとイントネーションも語彙もアクセントもバリバリの“ネイティブ鹿児島弁”に変わってしまい、「バイリンガルか!」と驚いたほどです。

それでも妻と結婚して34年も経つと、慣れてしまって、喋ることはできないまでも、たいていの鹿児島弁は分かるようになっています。NHKの大河ドラマ『西郷どん』を観ていても、まったく違和感なく耳に入ってきますし、どの俳優さんがネイティブに近い鹿児島弁でセリフを言っているかさえも分かるほどにはなっています。『西郷どん』の出演者の中では主人公・西郷吉之助の弟、吉二郎役で出演中の渡部豪太さんの鹿児島弁が一番ネイティブに近い感じを受けています(渡部豪太さんって茨城県出身のようですが…)。もちろん主人公・西郷吉之助役の鈴木亮平さんも精一杯頑張っておられますが…。そうそう出演者の中には鹿児島県出身の俳優さんもいらっしゃって、島津斉彬の家臣・赤山靱負(ゆきえ)役の沢村一樹さん。安定したネイティブ鹿児島弁での演技でしたが、お由羅騒動で切腹させられて早々に出演が終わっちゃいました。沢村一樹さんと言えば、NHKの朝ドラ『ひよっこ』の中では主人公・みね子の父の実さん役を演じられて、流暢な茨城弁のセリフを喋っておられました。先ほどの渡部豪太さんもそうですが、茨城弁と鹿児島弁にはどこか共通点でもあるのでしょうか。

鹿児島の方言は、まず独特の語彙が豊富にあることが特徴です。NHKの大河ドラマ『西郷どん』の中でも「おいどん」や「ごわす」はたびたび登場するので、皆さん、その意味はご存知のことと思います。「おいどん」は「俺たち」、「ごわす」は「ございます」の意味です。 (「おいどん」についてですが、“おい”が単数形の俺、すなわち“I”で、“どん”が付くと複数形の俺たち、すなわち“we”になります。また“どん”は“◯◯さん”という敬称としても使用します)

ほかにも「ぐらしかぁー」、「がっつい」、「おやっとさぁ」など、鹿児島弁には実にたくさんの独自の語彙があります。なんの意味でどういう時に使われる言葉なのか、分かった方はいらっしゃるでしょうか? 他の地域の人にとっては、一見すると外国語を見ているような感覚になりますよね。正解は……、「ぐらしかぁー」=「かわいそう」、「がっつい」=「呆れた時に使う」、「おやっとさぁ」=「お疲れ様」です。

また、イントネーションが強く、抑揚が激しいことも鹿児島弁の特徴の1つです。鹿児島弁は標準語に比べると、文字だけで表すことが難しい、独特のイントネーションやアクセントを持っています。抑揚は、まるで波を打つように“上げ”と“下げ”が激しく、基本的に語尾が上がることが多いことが特徴です。南の国ならではの、のんびりとした温かみのある、素朴でほんわかした雰囲気を感じる言い方です。例えば、「ありがとうございました」を例として紹介します。標準語だと「あり(↑)がとう(→)ございました(→)」ですが、鹿児島弁の場合、「ありがとう(→)ございまし(→)た(↑)」となります。実際に口に出して言ってみると、なんだかのほほぉ〜んとした気分になりませんか?

また、日本のアクセントは地域ごとに、京都式アクセント、東京式アクセント、特殊アクセント、それぞれの中間地域のアクセントのない地域に分けられます。鹿児島を中心とした九州の一部の地域が、特殊アクセントの地域とされています。中でも鹿児島弁はアクセントが一番最後の拍にあるか、その前の拍にあるかという二つの型しかない、すなわち文章のアクセントに(――→↑)か(――→↓)のどちらかのパターンしか用いない二型と呼ばれる特殊なアクセントなんです。

抑揚の激しいイントネーションに、文章の一番最後の“上げ”と“下げ”に特徴のあるアクセント。それとたくさんの独自の語彙。まっ、いずれにせよ、鹿児島弁は日本各地の数ある方言の中で、俳優さん泣かせの最も難解な方言の1つであることは間違いのないことです。この難解な鹿児島弁と標準語を瞬時に使い分ける妻を尊敬しちゃいます。

鹿児島県民の誰もが愛唱する歌として広く知られ、鹿児島を代表する童謡の1つに『茶碗蒸しの唄』♪があります。鹿児島弁の難解さをご理解いただくには、この童謡をお聴き願うのが1番かと思います。歌詞は次のとおりです。

『茶碗蒸しの唄』♪

 うんだもこら いけなもんな
 あたいげーどん ちゃわんなんだ
 ひにひに3度も あるもんせば
 きれいなもんごわさー
 ちゃわんについたむっじゃろかい
 めごなどけあるくむっじゃろかい
 まこーてげんねこっじゃ
 わっはっは

その意味は……

【標準語訳バージョン】

 あらまあ まあ どんなものでしょうか?
 あたしのところの茶碗などは
 毎日3回も洗っているので
 綺麗ですよ
 茶碗についた虫でしょうか?
 洗い物かごを歩く虫でしょうか?
 本当に恥ずかしいことです
 わっはっは

曲をお聴きになりたい方は、これです!!
鹿児島俗謡【茶碗蒸しの歌】茶わん虫の歌

こんなバージョンもあります
茶わんむしのクンビア/ SAKAKI MANGO & LIMBA TRAIN SOUND SYSTEM

もう、ここまで来ると“ラテン・ミュージック”ですね

これは地元の鹿児島外語学院さんがオリジナルの英語の歌詞を付けた歌って踊れるバージョンです。英語で歌っても違和感を感じさせないのが鹿児島弁の凄さです。
ちゃわんむしの歌 英語版 ダンス・ムービー

さらに上級編となると、次のような歌もYouTubeにアップされています。これを聴いて笑えたら、あなたは立派な鹿児島弁上級者です。私は思いっきり笑えました。
アナと雪の女王 ~ありのままで~ 鹿児島弁バージョン

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街中に「明治維新150年」や「西郷どん 大河ドラマ館」といった幟が立っています。今年は明治維新から150年、そしてNHK大河ドラマが『西郷どん』ということで、鹿児島市内は観光で大いに盛り上がっているようです。ちなみに、昨年平成29年(2017年)は、武家政権が終わりを告げ新しい国づくりへの転換期となった慶応3年(1867年)の「大政奉還」から150年の節目の年でした。



……(その3)に続きます。

執筆者

株式会社ハレックス代表取締役社長 越智正昭

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