2015/09/14

食わず嫌い克服シリーズ

「もうすぐ還暦。せっかく東京近郊に住んでいるんだから、できることをいっぱい経験してみたら」…という娘の助言もあって始めた私の『食わず嫌い克服シリーズ』。

四国の片田舎から日本の政治、経済、そして文化の中心地である東京に出てきて37年。これまでは仕事に追われ、また週末は家族サービスに追われ…と、せっかくそんな東京の近郊に住んで、東京で働いているにも関わらず、特に文化面で充実した首都圏ライフを過ごせているとはとても言い難い状態でした。

仕事に追われて忙しかったからを理由にしてはいますが、それは単なる言い訳で、単に、興味(趣味)の対象を拡げる努力を怠ってきただけのことかもしれません。この『おちゃめ日記』を読んでいただければ感じていただけるかと思いますが、私は他の人より若干好奇心が強く、話題の“守備範囲”は広く、“引き出し”は多いほうではあるのですが、それでもまだまだで、未体験ゾーンがいっぱい残っています。その多くは、興味がないから…とか、趣味に合わないから…と、自分自身の中に勝手に“殻”を設けて、経験・体験を避けてきたようなところがあります。

孫もできて、来年2月の誕生日が来るととうとう“還暦”を迎えます。いくら元気だと言っても、元気に動き回れて、人生をエンジョイできるのもあとせいぜい20年。エンジョイの幅を拡げる、“引き出し”の数をさらに増やすには、今ここで自分自身の中に勝手に設けている“殻”を外して、これまで“食わず嫌い”のようなところがあったいろいろなことを経験してみようと始めたのが『食わず嫌い克服シリーズ』でした。

私の『食わず嫌い克服シリーズ』では、これまで歌舞伎を観に行ったり、ミュージカルを観に行ったりして、その素晴らしさを実感してきました。この様子は、この『おちゃめ日記』でも紹介してきました。

六本木歌舞伎『地球投五郎宇宙荒事』
レ・ミゼラブル

歌舞伎もミュージカルも、生まれて初めて観たのですが、観てみると、何故多くの方がこれにはまり、リピートするのかという理由がよぉ~く解りました。これはメチャメチャ面白いです。この歳になるまで未体験だったことを後悔したくらいでした。どちらも、今はまたチャンスがあれば観に行きたいと思うほどになっています。

これまでご紹介してきませんでしたが、『食わず嫌い克服シリーズ』でも、これまでトライはしてみたものの残念ながら不発に終わったものも幾つかあります。その代表が乗馬。これも娘から誘われて、娘が通っている埼玉県伊奈町の乗馬クラブで体験乗馬に挑んだのですが…、これだけはどうしてもダメでした。理由は“匂い”。私は獣の匂いがどうにも苦手なんです。苦手と言うよりも、生理的に受け付けない…とでも言えばいいでしょうか。とにかくダメなんです。我が家の愛猫ピッケを動物病院に連れて行っても、動物病院の待合室に籠っている犬さんの匂いがダメで、いつもピッケを連れて病院の外で順番を待っているほどです(ピッケも犬さんの匂いが苦手ですから)。

体験乗馬を申し込みはしたものの、待合室で注意事項等の説明を受けている最中に徐々に気分が悪くなって…、いよいよ乗馬するぞという直前になって、ついに耐えられなくなってキャンセルしちゃいました。待合室中に馬さんの匂いが充満していましたからね。こんな気分で乗ったのでは、馬さんに失礼にあたるというものですから。反対に、馬さんも頭がいい動物なので、私が馬の匂いで気分を悪くしているのをすぐに察知するでしょうからね。一緒に体験乗馬に挑んだ妻は、娘と並んで楽しそうにパカパカ…と乗馬を楽しんでいたのですが、私はそれを遠くから眺めているだけでした。乗馬クラブのスタッフによると、「乗馬はやってみたいのだが、馬(獣)の匂いが生理的にダメだから、残念ながら断念するって方は時々いらっしゃいます。それって生理的なものだから、どうしようもないんですね。そういう方には無理にお勧めはしません」とのこと。これも体験してみないと分からないことでした(^_^;)

で、先日、『食わず嫌い克服シリーズ』の一環で“挑戦”してきたのが「男性向けのファッションショー」でした。これは私の香川県立丸亀高校の同級生であるリーリー(愛称、女性)から誘われたものです。リーリーは香川県東かがわ市にある手袋製造メーカー「ヨークス株式会社」の社長の奥様で、同社の常勤監査役も務めています。

香川県東かがわ市(旧大川郡白鳥町)は古くから手袋の町として知られ、ゴルフ用の手袋を含め、日本の手袋の約90%がこの東かがわ市で生産されています(香川県は讃岐うどんだけではないんです!)。ヨークス株式会社はその東かがわ市で、と言うか日本で最大、世界でも第4位の手袋製造メーカーです(手袋製造は家内制手工業のようなところがあり、もともと大きなメーカーはない業界のようですが…。その中で、ヨークスの社長、すなわちリーリーの御主人は日本手袋工業組合の理事長も務められています)。

ヨークス株式会社HP

東かがわ市で製造された手袋のほとんどは、従来、百貨店や大手量販店向けのライセンスブランド生産やOEM生産を中心として市場に流通されているのですが、市場の成熟や人口減少、気候温暖化等に伴う市場の縮小に対応するため、ヨークス株式会社は生き残りを賭けて高級品の販売や商品開発力の強化に軸足を移し、独自に『Women’s CAPRI GUANTI』や『C’est sympa!!』、『UV PLUS+』というファッション性の強い高級手袋の自社ブランドを立ち上げ、直営販売に乗り出しました。イタリア産の高級皮革を使い、商品の特性に応じて優れた縫製加工技術を持つイタリアやフランスなどの工場を使って製造。カジュアル、ラグジュアリー、スタンダードと3タイプを展開し、価格は5千円から8万円と従来の高級手袋よりも敢えて高く設定したのだそうです。販売は基本セミオーダー方式で、手のひら周りなどに応じて女性18サイズ、男性15サイズを用意し、デザインと色も複数から選び、購入者の好みで組み合わせられるのが特徴です。このセミオーダー方式の導入により、消費者のニーズを直接聞き、迅速に反映させることで、より付加価値の高い商品開発を目指しているそうです。

そのビジネス拠点が東京。2008年に六本木ヒルズに『Alta Classe CAPRI GUANTI(アルタクラッセ カプリガンティ)』という国内唯一の手袋販売店を直営で開き、その後、営業部門や商品企画部門はほとんどすべてを東京に移しているのだとか。ちなみにAlta Classeとはイタリア語で“最高級”を意味する言葉なんだそうです。

その関係でリーリーも時々東京に出張に来ていて、時間が合えば首都圏在住の同級生仲間を誘って食事をしたりしているのですが、半年ほど前に会った時に、今年は私達も還暦だよね…という話の流れで、私の『食わず嫌い克服シリーズ』のことを話したのですが、その時、「だったら越智君、男性向けのファッションショーなんてのはどう?」…って誘われたのでした。どうも、有楽町にある男性向け専用店『阪急MEN’S TOKYO』に出店しているあるブランドがヨークスの『Alta Classe CAPRI GUANTI』の商品を扱っていて、その関係で8月28日に『阪急MEN’S TOKYO』全館で開催される男性用秋ファッションのイベント「オータムナイト」の招待券を入手したので、一緒に行こうと誘われたわけです。そのイベントに『Alta Classe CAPRI GUANTI』もブースを出展していて、客寄せのいわゆる“サクラ”の役割も期待してのお誘いだと理解しました。

男性向けのファッションショーですか…。私はお洒落にまったく気をつかわないタイプなので、私とは最も縁遠い世界だと言えます。『食わず嫌い克服シリーズ』にピッタリと言えばこれほどピッタリなものはありません。ヨークスの東京進出のお祝いと応援に、私も1つ、セミオーダーの手袋を買うよ…と約束して随分と時間が経ったので、そろそろその約束を果たすべき時が来たかな…と思いましたし(^_^;) “サクラ”ではなくて、本当の客として。

リーリーとは開場時間の少し前に有楽町で待ち合わせ、いつものようにお互いの孫自慢の話をしながら軽く夕食を摂りました。開場時間が来たので阪急MEN’S TOKYOに来てみると、そこには私の想像を超えるほどの長蛇の列ができていました。男性向けのファッションショーなんてそんなに人が集まるのだろうか…なぁ~んて懐疑的に思っていたので、これには本当にビックリしました(○_○)!! 皆さん、ファッションに関心があるのですね。若い人だけでなく、中には私とさほど変わらない年代の人が何人もいらっしゃいます。男性が主体ではあるのですが、女性の姿も見受けられます。繰り返しになりますが、これには本当にビックリしました(○_○)!!

バリバリな“場違い感”を感じながら会場へ。この日の阪急MEN’S TOKYOは8階から地下1階に到るまで全館がこのイベントの会場と化しています。男性向けのファッションショーらしく、各階には各種洋酒のカウンターが設けられていて、アルコールを摂りながら各店舗を観て回れます。さらに各階には赤絨毯が敷かれたランウェイが設けられ、そこを出展しているブランド品を身につけた男性モデルが歩きます。なるほどぉ~(・o・)

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各ブランドが提唱するこの秋のデザインの服を着て、モデルがランウェイを歩いてポーズを決めるのですが、本来がデパートの店内の通路を使ってのファッションショーだけに、モデルと観客との距離が異様に近く、よくこれだけの観客の前であんなに表情も変えずにポーズがとれるなぁ~と感心しちゃいます。モデルはハーフと思える人が多く、背が高く、筋肉質の鍛え上げられた肉体をしていて、しかも小顔。まぁ、ああいう体型と顔なら、何を着ても似合いますわなぁ~(^_^;)

それにしても、前述のように意外なほど多くの方が来場しています。中には“爆買い”でこのところ有名になっている中国人の姿もチラホラ見掛けます。

各階でビジネススーツやカジュアルウェア等のファッションショーが行われ、一番最後がアンダーウェア、すなわち、下着のファッションショーでした。なんと…(○_○) この下着のファッションショー、人気のイベントのようで、他のショーよりも大勢の観客が集まり、賑わっています。最前列には女性陣が陣取り、スマホのカメラを構えています。「○○くぅ~ん!」とモデルに声援を送る黄色い声も飛び交います。私は知りませんが、きっと人気の男性モデルなんでしょう。服を着ている時から想像はつきましたが、下着姿になると、モデルさん達の鍛え上げられた肉体が露になります。私の目から見ても惚れ惚れするほどの肉体美です。こりゃあお金かけてるは…(肉体が商品のモデルだけに、肉体に投資してるは…)。下着のファッションショーと聞いて、当初は目のやり場に困るかな…と思っていたのですが、この鍛え上げられた肉体美を間近で見せられると、まったくそんな感じではなく、感動さえ覚えたほどでした。

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人気の下着ファッションショーが終了すると、今回のイベントも終了が近づきます。この男性向けのファッションショー、とても私1人で来れるようなものではありません。アパレル業界にいる同級生、リーリーが同行してくれるからこそ、楽しめました。

その御礼も兼ねて、約束を果たすため『Alta Classe CAPRI GUANTI』の出展ブースを訪れ、セミオーダーの皮の手袋を注文することにしました。“サクラ”の役割も期待されていたので、途中何度かブースの傍まで行ったのですが、常にお客様がご来店のようで、“サクラ”は不要でした(^_^;)

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前述のように、『Alta Classe CAPRI GUANTI』はセミオーダー方式での販売なので、注文にあたっては、まず手のひら周りなどの採寸から始まります。私は日本人にしては指が長く、しかも“矯正右利き”で本来は左利きなので、左手の指のほうが右手よりも約3ミリほど長いという特徴があります(たいてい利き腕の手のほうが大きいのだそうです)。それも理由にあげられるのでしょう、既製品ではなかなか自分に合った手袋が見つからず、これまでは仕方なくL、M、Sといった大まかに分類されたサイズの商品のうち、単純に自分の手に合いそうなLサイズのもので間に合わせてきたようなところがあります。自分の手の形に合わせた手袋というものがどういうものなのか、楽しみになってきます。

採寸の後は、デザインと色選びです。この日、私の接客を担当してくれたヨークスの女性社員さんは、嬉しいことに東かがわ市の本社のほうで、手袋のデザインを担当しているというデザイナーさんでした。顧客ニーズ、好みを直に知ることを目的に、今回のイベントに合わせて香川から出張で来ているのだそうです。懐かしい香川訛りの会話に、心がホッコリと温かくなる感じがします(^o^)

そのデザイナーさんお勧めのデザインの中から幾つか試着をしてみて、デザインを選びました。それにしても、このフィット感はなんなんでしょう。羊の皮ということのようですが、とぉ~っても柔らかい。試着用なので必ずしも私の手のサイズにピッタリとは合っていないにも関わらず、私の手にしっかりと馴染みます。伸び縮みも楽々で、手袋をしている感じすらほとんどしません。これまで経験したことのない、絶妙なフィット感とでも言えばいいでしょうか。さすがにAlta Classe、イタリア語で“最高級”です。私がこれまで身に付けてきた既製品の数々とはまるで次元が違う感じがしました。これが高級品というものなんですね。なるほどなるほど。これも『食わず嫌い克服シリーズ』の1つに加えさせていただきます(^^)d

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次は色選びです。還暦を迎えるにあたっての自分への御褒美の意味もあるので、色は黒地に指のマチの部分とステッチが赤というツートンカラーにしました。この日のオーダーは、中華人民共和国江蘇省昆山市にあるヨークスの縫製工場へ送られ、そこで製品になるのだそうです。手元に届くのが約40日後ということなので、10月中旬。今から楽しみです。

今回も「男性向けファッションショー」という『食わず嫌い』を1つ、克服することができました。何ごとも一度経験してみることで、見え方が随分と変わってくる感じがします。判断を阻害する主要な要因となるのが「先入観」であると言われています。何ごとも経験してみることで、これまで自分の中で勝手に囚われていた先入観を一度取り除いてみることで、柔軟な思考も出来るというものです。その意味でも、今回も大変有益な経験をすることができました。

皆さんも、勝手に囚われている先入観を一度取り払って、様々なことに挑戦してみてはいかがでしょう。即効性はありませんが、世の中の見え方が明らかに変わってくるので、将来、きっとなんらかの役に立つはずです。


【追記】
ヨークス株式会社の一番大きな海外縫製工場は中華人民共和国の天津市にもあります。先月、その天津市の港湾地区で大爆発事故が起きたのですが、幸いヨークスの天津工場の従業員の皆さんやそのご家族に人的な被害はなかったのですが、しばらく操業停止に追い込まれ、現在は操業を再開しているものの、天津港の使用不能が続いているため、製品の出荷ができず、ちょっと困ったことになっているとリーリーから聞きました。手袋はこれからがまさにシーズンを迎えますので、1日も早く復旧してほしいものです。

執筆者

株式会社ハレックス前代表取締役社長 越智正昭

株式会社ハレックス
前代表取締役社長

越智正昭

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