2015/03/19

瀬戸内海を覆う濃霧

3月17日の朝、九州北部から東北地方にかけての広い範囲に濃霧注意報が発表されていた。9時の天気図を見ると、本州・四国の南海上に前線が停滞している。この前線が弱まって各地の雨は夜半頃にはあがった。前線の北側に寒気の流入もなく、南から持ち込まれた温かく湿った空気が残っていた。このような状況で、冷たい海面と夜間になって地表面が冷えたことで地表面付近の気温が下がり広範囲に霧が発生したものである。瀬戸内海などで船舶の航行にかなりの影響が出たようだ。

supper cyclon pam 瀬戸内海を覆う濃霧


気象衛星ひまわりで霧の発生した様子を見る。朝8時の可視画像では東北地方の内陸と沿岸、関東甲信地方の一部、伊勢湾周辺、琵琶湖周辺、瀬戸内海から豊後水道や関門海峡にかけての広い範囲に霧が発生している。この時期にこれほど広い範囲に霧が発生するのは珍しいことだ。
霧は地表面付近を覆うように層状に広がっているため、可視画像で見ると、表面が平坦な形状をしており、内陸では、甲府盆地や伊那谷等に見るように輪郭が明瞭な孤立した雲域として見えることが多い。一方、瀬戸内海一円は海面をびっしり覆っており、一部は沿岸平野部に広がっている。

supper cyclon pam 瀬戸内海を覆う濃霧


次に12時の可視画像を見ると、東日本の内陸に掛かっていた霧はきれいになくなっており、富士山やアルプス、北陸から東北の多雪地帯に積雪が見られるだけで雲一つなく晴れ上がっている。一方、瀬戸内海においては8時には一部内陸まで広がっていた霧域は海上部分だけに広がって、輪郭が明瞭になっている。これは、陸域は太陽が高度を上げると共に地表付近の温度が上昇し霧は解消したが、海上は陸域と比べ気温の上がりが小さいため、霧がなかなか解消されずに残っているためである。

ここで朝からの霧が消散していく過程を気象衛星ひまわりの可視画像で見ることにする。瀬戸内海を中心とした西日本については、瀬戸内海を囲む陸地部分で早い段階で霧が無くなっているが、瀬戸内海部分だけは取り残されており、その後、徐々に薄くなって範囲を狭めている様子が見られる。一方、東海地方から東では、陸上部分に見られた霧は9時にはほとんど消え、東北の沿岸から三陸沖の見られた霧は徐々に範囲を狭めて薄くなっている。瀬戸内海と同じように変化していると見られる。
さらに、日本海を見ると、隠岐の島の北西海上や北海道西海上から南西方向に延びる霧または層雲があるが、早い動きの上層雲が覆って変化の様子は確認できない。

supper cyclon pam 瀬戸内海を覆う濃霧


瀬戸内海についてこの様子をアメダスの気温分布で見ることにする。8時と12時の気温分布を比較してみると、8時には瀬戸内海に面する沿岸も少し離れた内陸も8℃前後となっているが、12時には、沿岸部の一部で10℃前後であるが、少し離れた内陸の地点では昇温して、海岸からはなり離れた内陸部では20℃近くまで上がっている。瀬戸内海の海水温と霧の影響の有無がこのような温度分布に現れたものである。

supper cyclon pam 瀬戸内海を覆う濃霧


ここで、香川県内の多度津(海岸に近く標高4m)、高松(海岸からわずかに離れ標高8m)と財田(内陸で標高65m)の3地点における気温の時間変化を図にしてみた。財田と高松では9時~11時頃にかけての気温がやや横ばいとなっているが、その後に気温の急上昇が見られる。この気温の上昇速度に変化が見られる9時~11時頃に内陸部から次第に霧が晴れたことを示している。
ところが、多度津では14時まで10℃以下で推移しており、湿度の変化で見ると11時までは100%が続いており、すっぽりと霧に覆われていたとみられる。その後14時まで湿度90%以上の状態が続いた後、15時にかけて気温の上昇と湿度の低下が顕著に表れている。霧が消散し始め、15時には完全に消滅したことを示している。

瀬戸内海は船の往来の多い海域ゆえ、過去には濃い霧の発生によって海難事故が発生することがあった。
気象庁は各地地方気象台が陸上と沿岸海上に対して「濃霧注意報」を発表し注意を呼び掛けているが、船舶等に対しては、「海上濃霧警報」を発表している。「海上警報」は風や濃霧等によって船舶の航行に支障をきたすような場合に行うもので、濃霧が発生あるいは発生が予想される場合に「海上濃霧警報」を発表する。この日の朝、瀬戸内海及び四国沖に対してはこのように海上濃霧警報を発表し、航行する船舶に警戒を呼び掛けていた。

supper cyclon pam 瀬戸内海を覆う濃霧



ところで、気象庁は3月18日から、新たに「地方海上分布予報」の提供を開始した。これまでの海上予報は文章形式での発表しかなかったが、この「地方海上分布予報」は、地方海上予報の発表海域を、緯度方向、経度方向にそれぞれ1度四方の格子に区切り、「風、波、視程(霧)、着氷」について6時間ごとの分布を、24時間先まで1日4回定時に(6時頃、12時頃、18時頃、24時頃)提供するもので、日本近海の海上の気象状況を図で示すことによってより詳細に把握できるようになる。気象庁HPにも掲載されるので参照して欲しい。
http://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/umimesh/fcst_umimesh.htm
視程の予想例を一枚示す。詳細な解説についてはHPに付記されているので、それを見てください。

supper cyclon pam 瀬戸内海を覆う濃霧


日本周辺の海域は、次第に霧の発生しやすい時期を迎える。こうした新しい予想資料も活用して、安全の確保に努めていただきたい。

執筆者

気象庁OB 市澤成介

気象庁OB
市澤成介

成介日記のアーカイブス

  • ハレックスオフィシャルブログ 燃えさかれ志事(しごと)人!
  • おちゃめ日記
  • 老兵日記