2016/03/18

NPO法人 坂の上のクラウド利用研究会 設立!

設立総会風景1
設立総会風景2


東日本大震災からまる5年を迎えた先週の3月11日(金)、四国愛媛県松山市のJA愛媛で、『特定非営利法人(NPO法人)坂の上のクラウド利用研究会』の設立総会が開催されました。この『NPO法人 坂の上のクラウド利用研究会』は、これまで愛媛県内の農業者とIT企業等が連携して農業用気象クラウドシステムの開発及び現場実証を行ってきた「坂の上のクラウドコンソーシアム」から分派・発展させて、本格的な“事業化”を近い将来の目標として法人化したものです。

坂の上のクラウドコンソーシアム
「坂の上のクラウドコンソーシアム」に込めた思い
「坂の上のクラウド」バージョン2、お披露目!

これまで「坂の上のクラウドコンソーシアム」では、72時間先までの1時間ごとの最新の気象予報を1kmメッシュ(1km四方ごと)に提供する弊社のオリジナル気象情報サービス「HalexDream!」を活用して、農業用に特化した専用の気象情報サービスを開発し、実際の農業生産現場で実証することに取り組んできました。(ちなみに、この取り組みは農林水産省の平成26年度「農業界と経済界の連携による先端モデル農業確立実証事業」に採択されています。)

その実証実験の結果、この仕組みが十分に農業現場で実用化に耐えうるほどの予測の信頼性を確保していることが判り、さらには操作性に関しても利用者の改善要望を取り込んで、こちらも十分に実用化に耐えうるほどのものになってきました。一方で、この「坂の上のクラウドコンソーシアム」の取り組みは私達の当初の想像を遥かに超えるほど全国から注目を集めていて、私もいろいろなところからお招きを受けて講演をさせていただいています。今週も広島県の尾道市で講演をさせていただきましたし、また来週も群馬県沼田市で講演の予定です。講演を聴いていただいた現場農業従事者の皆さま方からは、「ぜひ使ってみたい」という嬉しい声を多数いただいています。こういう声に1日も早くお応えするためにも、この「農業向け気象クラウドサービス」を本格的に事業化する必要があると考え、その運用の責任体制を明確にするための法人化(まずはNPO法人化)に踏み切ったわけです。

今回の法人化の一番嬉しいところは、以下に示す設立趣旨書にも書かれているように「農家の農家による農家のための気象情報提供」を目指して、農業生産現場の方々が自ら立ち上がったってことです。設立発起人は愛媛県農業法人協会の牧秀宣会長(農業生産法人ジェイ・ウィングファーム代表)と、開発と実証実験にこれまで深く関わっていただいた野本農園の野本敏武代表、それと「坂の上のクラウドコンソーシアム」の代表も務めていただいた地元愛媛県のIT企業、コンピューターシステム株式会社の大塚純孝常務取締役の3人。まさに農業生産現場の方々が自ら立ち上がり、地元のIT企業がそれを支えるという形(農業界と産業界の連携の形)です。

牧理事長挨拶

どんなに高度な技術を使って素晴らしい仕組みを用意したとしても、それを実際の現場作業の中で十分に使いこなしていただかないとなんにもなりません。仕組みだけでなく情報も同じで、どんなに詳細で精度の高い情報であっても、その情報自体はほとんど価値というものを持たず、その情報を用いて利用者の皆様の抱える様々な課題を解決して初めて価値が産まれるものであると私は考えています。個々の利用者の皆様の抱えていらっしゃる課題は “しっかり守りたい”“無駄を省きたい”“もっと儲けたい”の3つの側面から実に様々で、加えて地形と気候が圃場ごとに微妙に異なり、さらに栽培している生産物がすべて異なる以上、2つとして同じものはありません。そうなると、どんなに優れた仕組みや情報であっても、その導入の成否のカギを握るのは、利用者個々の意識の高さと利用方法に関する工夫に他ならないということになります。当たり前といえば当たり前のことではありますが、農業においてはそれがより顕著に働くということを改めて気づかさせていただいたのが、「坂の上のクラウドコンソーシアム」の実証実験の一番の成果だったように思います。これがNPO法人名称の最後の“利用研究会”に込められた意味です(^^)d

設立発起人の呼び掛けで、この日の設立総会には愛媛県農業法人協会会員をはじめてして、愛媛県を代表するような篤農家と呼ばれる方々24名が正会員(社員)として参集されました。愛媛県特産の柑橘だけでなく、広く米麦、野菜、畜産等に従事する篤農家の方々です。加えて、愛媛県農林水産部、同経済労働部、愛媛県農業会議、愛媛産業振興財団、全農愛媛中央会、JA愛媛連合会、愛媛県信用農業協同組合といった方々が来賓として出席されました。東日本大震災からちょうど5年を迎えた3月11日と言う日にも関わらず、地元愛媛新聞をはじめ、日本農業新聞、愛媛朝日放送(テレビ)といった報道陣も大勢取材に訪れていただき、まさに農業関係における“オール愛媛”大集合といった感じで、地元農業関係者の皆様の関心の高さと期待の大きさが窺える設立総会になりました。

設立総会では理事長の牧秀宣さん(ジェイ・ウィングファーム代表)をはじめ、専務理事として清水和繁さん(あらし山農園)、理事として野本敏武さん(野本農園)、大塚純孝さん(コンピューターシステム株式会社)、理事・事務局長として山内英徳さん(コンピューターシステム株式会社)、監事として田中良一さん(えひめ朝フルの会)が選任されました。農業者4名、IT企業2名という目的を果たすためには理想的な幹部構成ではないかと思います。また、事務所は松山市一番町のコンピューターシステム株式会社内に置くことも承認されました。

初代の理事長に就任された牧秀宣さんは就任挨拶の中で、「天気をうまくいかなかった時の口実にしてはいかない。見えない部分を見て動こう」と強く呼び掛けられました。『NPO法人 坂の上のクラウド利用研究会』では、雨で無駄になる農薬代や人件費の削減、異常気象による被害の防止、正確な収穫予測など様々な活用を会員間で探るとしていて、今後は研究集会やWebサイトでの情報発信、調査・実証等を進めることを計画しています。また、愛媛県内外の農業者のほか、JA組織等へも広く会員参加を呼び掛けていくとしています。

私も来賓として招待され、設立総会後に行われた「営農気象クラウド基本セミナー」で「営農気象クラウドと農業のインテリジェンス化について」と題した講演をやらせていただきました。ちなみに、弊社ハレックスはこの『NPO法人 坂の上のクラウド利用研究会』には正式なメンバーとしては参加せず、別途、業務提携契約を締結させていただいた上で、基盤となる気象情報の提供に加えて、全国展開に向けた東京営業本部の役割を務めさせていただくこととしています。

越智セミナー講演

何度も申し上げることになりますが、この日は3月11日、東日本大震災からちょうど5年を迎えた日でした(第二部の「営農気象クラウド基本セミナー」は14時45分の開始だったのですが、セミナーを開始する前に、全員で東日本大震災で犠牲になられた方々に向けて黙祷を捧げさせていただきました)。NPO法人の初代理事長に就任された牧さんによると、敢えて日本人として忘れてはならないこの日を選んで設立総会を開催したとのこと。自然には圧倒的破壊力を持つ“脅威”の側面と、代えがたい豊かな“恵み”の側面があるということは私も常日頃から申し上げていることですが、ともすれば“脅威”の側面ばかりに注目が向きがちになるこの日に設立総会を開催することで、自然には“恵み”の側面があるということを日本人として忘れてはいけないよ…という前向きで明るいメッセージを込めたということらしいです。

さぁ~、『坂の上のクラウド』が実証実験のレベルを卒業して、いよいよ本格的に動き出しました。

愛媛新聞の会員制Webサイト『E4』(私が毎月コラム「晴れ時々ちょっと横道」を書いているWebサイト)において、翌日(3月12日)の愛媛新聞朝刊に載った「農家向け詳細気象情報 4月から 農業者らNPO設立」と題する記事が、その日のうちに24時間アクセスランキングで堂々の首位に立ちました。おかげさまで私のコラムはその24時間、1週間、1ヶ月のアクセスランキングで毎回上位にランキングされているのですが(たいてい首位を奪取しています)、その私の感覚からしてもこの記事のランキング上昇の勢いには凄いものがあり、1ヶ月アクセスランキングで現在のところ第2位に位置している今月の私のコラムも、すぐにその座を奪われかねないような感じです。また、また、農業関係者に広く読まれている全国紙「日本農業新聞」では栄えある全国版の一面を飾らせていただきました。新たな船出としてこんなに嬉しいことはありません。

このように中四国随一の農業県・愛媛県の県民の皆さんだけでなく、全国の農業関係者様のこの『NPO法人 坂の上のクラウド利用研究会』に対する関心の高さと期待の大きさは私達の想像を超えるものがあるようです。その大きなご期待にお応えできるように、NPO法人さんには頑張っていただきたいですし、弊社も側面からそれを支えていかねばなりません。

この日の松山市はよく晴れて暖かく、設立総会の会場となったJA愛媛のある南堀端から見上げると、綺麗な春の青空の中に映える松山城の姿がとても美しかったです。まさに司馬遼太郎先生の書かれた小説『坂の上の雲』の題名そのものをイメージさせる風景でした。

登ってゆく坂の上の青い天に見える“一朶の白い雲”、それは、愛媛県発の地域再生、日本再生の1つの姿です。これが『坂の上の雲』の主な登場人物、秋山好古、秋山真之、正岡子規、この3人の出身地である四国愛媛県だからこその、『坂の上のクラウド』という名称にかける強い“思い”です。このことを改めて心に刻み込みました。

松山城1

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               設 立 趣 旨 書


1. 趣旨

農業は、内外ともに大きな変革を求められている。

環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意によって、農林水産物は81%の品目で関税が撤廃され、「重要5項目」である米、麦、牛・豚、乳製品でも、約30%の品目数で関税がなくなり、これにより国内の農業者は安い輸入品と競合することになった。さらに農協法の改正により、営農販売など農業にとって基本的な事業を積極的な展開がJA組織に求められ、経済のグローバル化にも耐えられる足腰の強い自立農家の育成と、それを支えるJAの組織改革が急務となっている。

言うまでもなく、我が国は 南北に細長く、中緯度地帯に位置しており、多様な気候風土を活かした色々な特色のある生産物に恵まれてきた。一方で、本県の農業統計を見ると、過去20年間の気象関連の年平均被害額は約13億円であり、まさに農業にとっての最大のリスクは気象であるとも言える。

気象に係るリスク・マネジメントを農業において展開し、そのリスク低減に取り組み、生産物の品質維持・向上とコスト削減による農業経営の安定化を実現することは、今や地域経済の活性化を図る上での最重要課題であると言える。

これらを実現するために、産官連携で取り組んだ農業用クラウドサービスの農業への利用を促進するために、農家の農家による農家のための気象情報を提供する事業を行い、自らが検証し、相互に研鑽し合うためには法人格を取得し、社会的信用を得ることが必要と考え、NPO法人を設立することとした。

2. 設立に至るまでの経過

・平成25年に、産官連携により「農業のIT化」に取り組む中で、特に農業における最大リスクである「気象」に注目し、県にゆかりのある気象会社に協力を依頼するとともに、愛媛県農業法人協会とも連携し、農業における気象情報の利用について共同で研究が行われた。

・その研究成果の実用化を図るために「坂の上のクラウドコンソーシアム」が組織化され、同コンソーシアムにおいて農林水産省の「農業界と経済界の連携による先端モデル農業確立実証事業」(平成26年度)に応募したところこれが採択されたことで独自の農業向け気象クラウドサービスの開発に着手。平成26年内に本邦初の農業用気象クラウドサービスが開発され、これまで実証実験が続けられてきた。

・現在、気象に関して農業者が入手できる情報は、残念ながらマスコミやインターネットでの天気予報の域を一歩も出ていない。農業者にとって気象情報は、自らの経営に役立つ営農情報として高い価値があり、かつ災害への備えとなりうるリスク情報でもあり、より高度で詳細な情報が求められている。そのためには、農業者自らが気象情報の創出に乗り出し、情報を利用する中で自ら検証し、互いに交流を深め研鑽しあい、それをフィードバックする仕組みが不可欠であり、我々は全国に先駆けて、この仕組みを作ることを決意した。

・これらを受けて、営農気象クラウドサービスを広く農業者に普及させ、自らこの仕組みを支えて進化させるために、農業者とIT事業者が互いに連携した新しい形の協働体を設立し、愛媛県発の取り組みの輪を全国に広げていくこととし、平成28年3月11日に法人の設立総会を開催するに至った。



平成28年3月11日
特定非営利法人 坂の上のクラウド利用研究会
設立者代表 牧秀宣

執筆者

株式会社ハレックス前代表取締役社長 越智正昭

株式会社ハレックス
前代表取締役社長

越智正昭

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