2014/09/08

平成17年台風第14号 上陸前後の勢力変化と宮崎県の大雨

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8月29日にマリアナ諸島近海で発生した台風第14号は、西に進みながら大型で非常に強い勢力に発達し、2日15時には沖の鳥島の東海上で中心気圧925㍱まで深まった。その後、日本の南海上を北北西に進み、4日夕刻南大東島付近を通過し、5日奄美地方の東を北上した。台風は、鹿児島県の西岸に沿って北に進み、6日13時頃に熊本県天草下島を通過し、14時過ぎに大型で強い勢力で長崎県諫早市付近に上陸した。上陸後、九州北部地方を通過し、6日夜遅くには山陰沖の日本海に達した。その後速度を速めて日本海を北東に進み、7日夜北海道渡島半島に再上陸し、8日朝オホーツク海に進んだ。

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南大東島に最接近の一日前から北海道を通過するまで衛星画像で台風を追って見る。スタート時は中心気圧935㍱の非常に強い勢力を保っていた。南大東島を通過する前後から台風の眼は直径100kmを超えるまでに広がり、屋久島の西を通過する頃から、眼の部分に上層の雲が覆い始め不明瞭になり、地上での台風中心が九州西海上を北上して上陸する頃には、衛星画像で見える台風の渦中心は九州中部を北上しているように見える。また、中心部を取り巻いていた厚い雲域も次第に減少している。これらから台風が弱まっていることを示している。

気象庁では、台風の位置の決定や強度の決定に衛星画像により、台風中心の眼の形状、雲域の密集度、眼の周りの雲頂の高さなどを用いており、かなり精度よく強度を推定している。
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衛星画像で九州西海上を北上するころに台風が弱まっていると見たが、これは地上の観測資料にはっきり表れている。台風の中心が近くを通った気象官署の気圧の変化を一枚の図に示してみた。九州南部の屋久島で最低気圧を記録した後、枕崎、阿久根、牛深と徐々に最低気圧が浅くなっており、上陸後の佐賀、福岡、下関付近を通過時にはさらに浅くなっていることが読み取れる。衛星画像での雲域の減衰の状況と比較して見られたい。そして、今後の台風で衛星画像を見る時には、雲域の変化や眼の形状の変化などにも留意してみていただきたい。

この台風は、山陰沖に抜けるまで広い暴風域を維持したまま、比較的ゆっくりした速度で進んだため、長時間にわたって大雨が続いた。九州、中国、四国地方の各地で3日から8日までの総雨量が、宮崎県美郷町神門では1,322mm、同県えびの市で1,307mm、鹿児島県肝属町肝属前田で956mmなどと記録的な大雨となった。九州、中国、四国の各地方と北海道の62地点ではこれまでの日雨量の記録を更新する大雨となった。ここに、宮崎県の「神門」と「えびの」の降雨の状況を図に示すが、台風の接近した5日日中から、長崎県に上陸するまで激しい雨が連続していたことがわかる。時間雨量が30mmを超える状況では屋外行動ができる状況でない。そうした状況が十数時間続いていることから恐ろしさを感ずる。
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この激しい雨の降った時間帯の九州南部のレーダーエコーの動きを追って見る。台風が九州の南海上から西海上を北上する際の九州南部の雨域の分布は、台風の渦に巻き込む反時計回りの風が九州山地にぶつかり、強制上昇により雨雲が強化される山地の東側部分で雨が強まり、反対側の西側では雨が弱くなっている様子がよくわかる。「神門」と「えびの」は共に、九州山地の東斜面で、最も雨が強化される場所に当たる。

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この台風により、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県を中心に九州地方~東北地方で土砂災害、大雨による浸水が発生した。また、岡山県、広島県、香川県では高潮による床上・床下浸水が発生した。人的被害は宮崎県を中心に全国で死者・行方不明者が29人となった。

被害の大きかった宮崎県では、がけ崩れ66か所、土石流44か所、地滑り17か所に及び、台風による死者13名中11名は土砂災害が原因であった。また、暴風による被害や大淀川をはじめ河川の増水や内水はん濫による被害も多く、住家全壊1,136棟、半壊3,381棟、床上浸水1,405棟、床下浸水2,958棟に及んだ。

今年は8月後半になって日本のはるか南海上は穏やかだったが、ここにきて活発な対流雲が増えている。7日に台風第14号が発生するまでしばらく台風の発生がなかったが、台風シーズンはまだ続きます。台風に対する備えを忘れないでいただきたい。
台風に伴って様々な現象が起こるが、中心付近に現れる現象のほかに、暖湿流の流入による大雨や竜巻等の突風のように中心から比較的離れた場所に発生しやすい現象もある。気象台に問い合わせれば、その地方に影響した台風による被害例を知ることもできます。日ごろから台風について理解を深めてください。