2014/09/17

極めて異常な大雨の記録

近年、大雨のニュースでは、現地からの「これまで経験したことの無いような雨だった」といったコメントを聞くこと多いように感ずる。ただ、雨の強度を定量的に判断したものではないので、この表現は少々割り引いて聞いた方が良いこともある。また、「最近、雨の降り方が変わって、激しい雨が多くなった。」といったコメントも聞く。これについては、図に示すようにアメダス観測点での1時間雨量50㎜以上の発生頻度が増加傾向にあることからみて、事実であろう。この図は1000地点当りの発生回数としており、10年毎の平均値も示しているが、これを1地点当りで見れば年間0.2回前後であり、今年のように雷雨の日数が多い年と、少ない年との差の方が大きく、年々の変動の大きさの方を経年変化にすり替えている部分もあるのではないかと思う。

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さて、気象庁HPには、「過去の気象データ検索」のページがあり、ここには地域気象観測所(アメダス)の全地点の観測資料が収録されている。この中には各地気象台・測候所(今は特別地域気象観測所になったところも含む)の観測資料も含まれている。アメダス観測点は40年程度の記録しかないが、各地気象台資料の中には、100年以上の資料が収録されているところがあり、年別、月別、日別資料や平年値、極値なども見ることができる。活用次第では色々なのが見えてくる興味深い資料である。この資料を使って「過去に経験のない大雨」を探してみることにした。

「地点ごとの観測史上1~10位の値」から、日降水量の記録を使って、極端な現象が起こった地点を探すことにした。地点ごとの観測史上第1位と第2位の記録を使って、1位の記録が2位の何倍となっているか調べ、その倍率の大きい地点を拾い出した。大きい方から5地点を取り出して表を作成した。第1位は、滋賀県彦根地方気象台の記録で、3倍の開きがある。数百年~数千年に一度起こるかも知れない極めて稀有なものとみられる。第2位は、北海道苫小牧の記録で2.3倍ほどの開きがある。統計年数は彦根の121年に比べると短いがそれでも73年の長い期間での記録であり、この異常さは際立っていると見て良い。発生日を見ると、1位の彦根の記録は明治29年に起こった事例であり、2位の苫小牧と4位の舞鶴は昭和20年代に起こった事例である。3位の名古屋と5位の新潟の記録は平成になって起こった事例である。近年の事例もあれば、相当の年月を経過したものもあり、近年特に際立っている訳ではなさそうだ。

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この値がいかに異常な値かを示すため、年最大日雨量を大きい順に並べた図を作ってみた。第3位の名古屋と合わせて示した。

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2地点を比較すると名古屋の方が一位を除くと日雨量が多いこと判る。名古屋においては5位以内の部分の変化勾配が急になっており、25年に一度程度異常な大雨が発現した事例があると見られる。一方、彦根では1位の値が極めてかけ離れており、この事例の異常さが際立っている。その他は、名古屋ほどではないが、10位以内の部分で変化勾配が急になっており、10年に一度程度、いつもと違う大雨が発現していると見られる。

第1位の滋賀県彦根の事例については、次回に詳細を述べることにし、ここでは簡単に触れておく。この日午後10時の天気図を見ると、南海上に低(LOW)が解析されている。これは熱帯低気圧が南海上にあることを示しているものであり、曇雨天域が広範囲に見られることから熱帯低気圧だけでなく、前線の影響もあると見られる。天気図下の部分に示されている概要欄には、「彦根近傍は豪雨(前8時間に280㎜の量あり)降り」とあり、解析者は異常な状況の発現を確認している。なお、8時間前の午後2時の天気図には、彦根より気象電報が入電しなかったことが示されており、これは豪雨のためであったかも知れない。午後2時の天気図解析を受け、西日本から東日本の広い範囲に「風雨恐れあり」の暴雨警報が発表されている。天気図の左上の図に横縞線で示した領域が警報対象地域である。

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なお、日雨量の日本記録については、6月11日付で(日雨量の日本記録1317㎜) 紹介した。この雨に比べれば、大した値ではないと思われるかも知れないが、日本列島は地形の影響で大雨の降りやすい地域と、大雨の経験の少ない地域があるので、それぞれの地域のこれまでの雨の降り方を知っておくことが大切である。ここには極めて異常な大雨を記録した地点だけ示したが、全国各地でこれら地点に準ずる異常な大雨を記録しているところもある。お住まいの地域に近い気象台等の観測資料を確認して、どのような特徴があるか確認してほしい。ただ、極端な事例がない地域は、これから異常な大雨が起こるかも知れないので、安心材料としないでほしい。

執筆者

気象庁OB 市澤成介

気象庁OB
市澤成介

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