2014/12/26

北陸地方の雪の降り方が変わった?

12月になって、寒波の襲来により各地で大雪の被害が発生している。大雪と言えば、日本海側の地方、特に北陸地方を思い浮かべる。発達した低気圧が東海上に進むと、大陸からの寒気が日本列島に向かって流入するため、日本海一杯に筋状の雲が現れる。この筋状の雲が北陸地方にかかり大雪をもたらすが、大陸の寒気が南下する際に最も長い距離を通ってくるところが北陸地方にあたるため、海面からの水蒸気の補給が多くなることも関係している。

今回は北陸地方の雪に関しての話題提供をしたいと思うが、その前に一言触れたい。最近、大雪のニュースを聞くたびに、なんとなく違和感を感ずることがある。それは、「観測開始以来の最深積雪を記録」という表現である。気象庁のHPを見ると、気象官署の各年の最新積雪の記録は1961年からで、それ以前については飛び飛びの資料しか乗っていない。これは観測していなかったわけではなく、観測資料の整理ができていないからであろう。一方、気象官署以外のアメダス積雪深観測所の記録は長い所で1980年からしか無い。このことは、気象官署についてはかろうじて「38豪雪」と言われる昭和38年(1963年)の豪雪時の資料が入っているが、それ以前の豪雪事例(昭和20年や昭和2年等)の記録は入っていない。一方のアメダス積雪深観測所の資料はこの38豪雪時の資料も入っていないのである。これは、統計値で過去最大というには少々期間が短すぎである。アメダス積雪深観測所の中には、それ以前から継続して気象台に観測報告をしていたところも多く、38豪雪等の大雪時の観測値が記録に残されている地点もある。その観測値も接続した統計値がHPに掲載されると良いのだが、今は紙のベースでしか接続処理ができない。気象官署の雪の観測資料でも、1961年以前の記録は十分に整理されていない。大雪の資料を扱う上では、眠っている資料を整理して、早く公開してほしいと願う。

北陸の雪の降り方が変わった
本題の北陸地方の雪に戻す。まずは、北陸地方で雪が多いことを示す資料として、全国の都道府県庁所在地の最深積雪の記録を当たってみる。
全国の都道府県庁所在地の最深積雪の最大値が1m超える地点を選び、その記録を観測した年月日と共にまとめてみた。ちょうど10都市が1m以上を記録している。最も新しい記録は、今年2月15日の甲府市である。中にHP上で気象官署の統計資料が整っている1961年以前の記録が3地点含んでおり、アメダス積雪深観測所の統計が始まった後の記録は2地点のみである。
この10都市を見ると北海道、東北地方の日本海側、北陸地方で8か所を占め、北陸の都市が上位にランクされている。一方で、山陰地方では松江市のみであり、日本海側ではない甲府市は別格の事例である。

上位6位までの記録は全て38豪雪かそれ以前に発現したことが判る。
何故、これらの記録が更新されていないかを福井、富山、金沢の北陸3都市の最新積雪の経年変化等で追ってみることにする。各年の最深積雪の最大値を図にすると、確実に少なくなっていることが読み取れる。図中の斜めの直線は、変化の傾向を示したものであるが、3地点とも確実に減っていることが判る。一方、右側の図は各都市の日降水量の年最大値を図にしたものであるが、こちらは年々の変動はあっても、変化傾向はほぼ横ばいである。

北陸の雪の降り方が変わった_2


北陸の雪の降り方が変わった_3
降雪量の日合計の最大値を見ても、最深積雪と同様の減少傾向が見られた。ここには福井市の傾向だけ示すことにする。ただ、最深積雪の傾向に比べると緩やかな減少傾向であり、一晩で降る雪の量では最近でも大きい事例を含んでいる。

では、このような変化が何によって起こっているか考えてみる。1月の平均気温を図にしてみた。3都市の傾向は同じで、気温は上昇傾向にあることが読み取れる。図中に示した斜めの線は金沢の変化傾向を示したものである。50年あまりで1.3℃程の上昇していることが判る。
北陸地方は世界でも最も低緯度での大雪地帯として知られているように、気温が高くなれば、沿岸部では雪ではなく雨に変わる。この気温変化が3都市の積雪が少なくなっていることにつながっていると言える。

北陸の雪の降り方が変わった_4


ところで、気温は高さと共の低くなり、100mにつき0.6℃程度の割合で下がる。このことは、海岸地域では雨でも内陸の山間部では雪になることを示している。

平野部では積雪が減少傾向にあることは、温暖化の影響と見ることができるが、一時的に強い寒気のはん濫では一晩で大雪が降ることはかわらないので、こうした点での警戒は必要である。
一方、最近の大雪事例では、特に山間地が話題になることが多くなった。これは、38豪雪時には二階から出入りするような状況から一転し、道路網が整備され山間地をつなぐ道路も常に除雪されることが当たり前となるように、社会環境が変わったこともあるが、気温の上昇が内陸でも湿った重たい雪が降る確率が高くなっていることにも関係しているかも知れない。その意味で、山間地では記録的な積雪が発現する危険もはらんでいると思ってほしい。

執筆者

気象庁OB 市澤成介

気象庁OB
市澤成介

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