2015/01/05

年末から年始の天気変化

気象庁は年末の12月29日15時に「発達する低気圧と強い寒気に関する全般気象情報 第1号」を発表した。見出しは「31日から1月1日にかけ、低気圧が発達しながら本州付近を通過し、その後日本の上空に強い寒気が流れ込み、1月3日頃にかけて冬型の気圧配置が強まる見込みです。このため、北日本から西日本の日本海側を中心に、大雪や荒れた天気となるおそれがあります。」とあり、本文中には「31日は西日本や東日本の日本海側で雨や雪を伴って、荒れた天気となる所があるでしょう。西日本と東日本では1月1日から2日頃にかけて、北日本では1月1日から3日頃にかけて、日本海側を中心に大雪や荒れた天気となる見込みです。」と荒天を予想し、2日前からの早い段階での呼びかけを行っていた。
このように早い段階での呼びかけは、年末年始に当たるため、帰省や旅行、登山やスキー等で普段生活している地域とは異なる気象特性を持つ地域に出かける方が多いことも意識した呼びかけであった。

情報のとおり、低気圧が関東の東海上に進み、西日本から強い寒気が南下し雪が降り始めるなかで新しい年を迎えた。そこで、ここでは、低気圧が発達し通過した後、寒気が南下し西高東低の冬型気圧配置へ変化した様子を12月31日と1月1日の12時の地上天気図と衛星可視画像等で見る。

年末から年始の天気変化


12月31日、日本海南西部に進んだ低気圧の南東側には南からの暖気の流入があって、気温は上昇し、低気圧から離れた太平洋側の地域を中心に穏やかな晴天が広がっていた。しかし、低気圧に近い所では雨となり一部では雷も伴って強く降ったところもあった。この雨の領域は低気圧の移動と共に早い速度で東に移動したため、雨は長くは続かなかった。低気圧は夜半には関東の東海上に進み、低気圧の後面には強い寒気を伴った北寄りの暴風や強風に雪が降り出したところが多くなった。九州北部では、暴風雪や暴風の警報が発表される中で年を越した。1月1日昼には低気圧は日本の東海上で976㍱と24時間で32㍱も深まる急発達しており、日本付近は西高東低の冬型の気圧配置に変わった。

年末から年始の天気変化_2


この変化を衛星画像でも見る。12月31日には日本海南西部にある低気圧の前方に活発な対流雲があり、レーダーでも強い降水域が見られる。その東では穏やかな晴天が広がっている。低気圧が東海上に進んだ1月1日12時の衛星画像では、日本海には南北走行の筋状の雲が現れている。一方、九州は走行が異なる東西走行の筋状の雲が見られ、この境界部分にあたる北陸地方から西北西に延びる厚い雲が広がっている。北風と西風のぶつかりによって活発な対流雲が形成されたもので、この部分で強い雪が降っている。レーダーエコーでも山陰沖から福井県方面に強いエコーが入っている様子が見られる。

20150101福井レーダー動画

北陸地方に侵入している降水域の変化を動画で見ると、強い降水域が福井県中心にかかっているが、細かく見るとエコーは次々と内陸に向かって侵入し、帯状に連なっている。所々より活発な部分が見られ、小さな渦を伴っているように見える。この帯状のエコーは9時過ぎにはゆっくりと南下を始めている。

この強いエコーのかかった地域を代表して、福井市の状況を細かく見ることにする。12月31日は昼前から気温が上がり、日本海側特有の時雨は続いていたが時々日が射し、積もっていた雪も解けていた。夕方になって雨となり、気温も下降し、風も北風に変わった。気温が3℃と近くまで下がったころからみぞれに変わり、年が明けて2時前には雪となった。気温が0℃近くに下がった4時過ぎから雪が強まり始めている。風は北風からいったんは南風が入り、強いエコー域内に小さな渦が通過したことを示している。レーダーの動画でみた帯状のエコーがかかった時間帯には最大で1時間に7㎝の降雪があった。前日の雨によって一端積雪がなくなったが、強く降り続い雪で積雪は一気に増え、1日の最深積雪は31㎝、2日には56㎝に達する大雪となった。

年末から年始の天気変化_3


福井市の変化で示したが、各地でこのような天気の急変があり、特に日本海側や山岳部での天気変化は急激であったと推測できる。
この低気圧の通過に伴っての気象の急変によって、山岳遭難が相次いだ。また、名阪国道では、降雪のため立ち往生する車が100台近くに達し、スリップによる追突事故なども多数発生した。

気象庁が年末年始の荒天を早い段階から呼びかけていたのにもかかわらずの事故である。年末年始の期間は、慣れない地域へ出かける方も多いが、それは、経験のない気象変化に遭遇する可能性を含んでいる。また、年末年始は冬山登山者が多くなるが、この期間は低気圧の通過などで天気が急変することが多く、山岳地域は地上以上に風の急変、気温の急変が起こりやすいので、登山者はこのことを十分に理解した行動が求められる。出かける前には、気象情報の収集を第一に行って、ときには引く勇気をもってもらいたいと思う。

ここで、山岳部の状況も見ることにする。
山の変化を示す資料は少ないが、富士山の気温変化は気象庁HPでも見られる。これを使って年末年始の2日間の気温の変化を図にしてみた。12月31日夕方、気温が降下し始めたころから、再び昇温が起こっている。低気圧の接近による変化が表れたものである。風の観測資料はないが、南寄りの風が入ったと推察される。暖気が流入は5時間ほどでその後は、急激な気温の下降が見られた。近畿地方から西の山々では、福井市の気温変化と同様に日中に気温の上昇が起こったであろう。これがその後の風と気温の急変を招く前触れと読み取れていれば、気温の急降下や吹雪く前に退避行動に移れるはずである。

年末から年始の天気変化_4
1日にはいったん気温の上昇が見られるが、その後さらに強い寒気の流入がある。西高東低の冬型気圧配置の強まりは、風も一段と強まり、北アルプスなどの標高が高い山々では猛吹雪で行動が困難な状況が続いたと想定される。

昨年は各地で様々な気象災害が発生したが、これは昨年に限ったことではなく、今年もそのような状況がどこで起こっても不思議ではない。その時、「経験したことがない」ではわが身を救うことができないかも知れない。これまでに、幾つもの気象災害を見聞きしているはずである。それは他所の地の出来事としないで、自分のところで起こったらどうすべきか考えていただきたい。

年末年始の雪による事故は、いつもの生活の場では雪の経験がない方が、対策を講じないまま、激しい雪に遭遇したものも多いのではないか。雪の被害例を見ると、北日本の暴風雪被害、多雪地域での積雪被害、なだれ被害、関東など寡雪地域での降雪被害など地域により異なる現れ方をする。他所の地に出かけるときには、こうした災害特性も意識した対策を講ずるようにして欲しい。

執筆者

気象庁OB 市澤成介

気象庁OB
市澤成介

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