2015/06/26

短時間強雨が増加している

6月下旬に入ってから、日本付近の上空は平年よりやや冷たい寒気が覆って、東日本を中心に広い範囲で大気の状態が非常に不安定となっており、局地的に雷を伴った激しい雨が降っている。6月23日も所々で非常に激しい雨となって、鉄道の運転見合わせ、停電、道路冠水等の被害が発生した。

23日に1時間雨量が多かった上位10位までの地点の記録を見ると、下の表のように時間50㎜以上の地点が4か所もあり、中には6月の最大値を更新するような非常に激しい降り方をしたところがあった。この短時間強雨の発生した地点は、梅雨前線に近い鹿児島県の奄美大島内の2地点以外は、梅雨前線とは関係ない関東地方と東北地方南部であった。この中で、1位の千葉県佐倉市は観測開始以来の最大値を観測したとなっている。しかし、この地点から東に30kmも離れていない千葉県香取市では153mm(1999年10月27日)の1時間雨量全国1位の最多値を観測しているので、今回のような記録はいつ発生してもおかしくない地域と言えるが、非常に激しい降り方をしたことは間違いない。発達した積乱雲の下では「馬の背を分ける」と言われるほど激しく降る場所がかなり狭いことが多いので、観測地点ごとの雨量の違いが大きく現れる降り方をすると見て欲しい。

短時間強雨が増加している


ところで、最近は「短時間強雨が増加している」と言われる。短時間強雨の話題は頻繁にニュースに取り上げられるが、このようなニュースの増加は、報道する側が短時間強雨を積極的に取り上げられるように変化したことも関係しているので、ニュースの増加率で判断するのは危険である。そこで、気象庁が統計した資料で短時間強雨の経年変化を示したもので確認する。

アメダス観測点で1時間雨量が30㎜、50㎜、80㎜、100㎜以上を記録した年合計数の経年の変化を見る。この資料はアメダスの観測網は移設、廃止、新設等により、観測点総数は一定でなく変化しているため、単に回数の変化を追うと地点数の変化が影響しかねないので、1000地点当りの発生数にして比較している。このような処理した結果を示したのか下図(気象庁資料より作成)である。

短時間強雨が増加している_2


この図を見るにあたって、次のような目安で見ると良い。
1時間30㎜以上の雨は、「大雨注意報」の発表基準に相当するような降り方で、テレビ等の気象解説では「激しい雨」と表現される。この状況になると、都市部では下水管から雨水が溢れるなどの影響がでて、山崩れ・崖崩れが起きやすくなる。
1時間50㎜以上の雨は「大雨警報」の発表基準に相当するような降り方で、気象解説では「非常に激しい雨」と表現される。この状況では傘は役に立たず、水しぶきであたり一面が白っぽくなり、視界が悪く、車の運転は危険となる。マンホールから水が噴出し、地下街に雨水が流れ込む場合がある。土石流が起こりやすくなり、多くの災害が発生するようになる。
1時間80㎜以上の雨では、気象解説では「猛烈な雨」と表現され、激しさで息苦しくなるような圧迫感があり、恐怖を感ずるようになる。雨による大規模な災害の発生するおそれが高くなり、厳重な警戒が必要である。
1時間100㎜以上の雨は「記録的短時間大雨情報」の発表基準に相当するような希に表れるものである。雨による大規模な災害の発生する恐れが強く、厳重な警戒が必要となる。

図に戻って、それぞれの階級の変化を見ることにする。
1時間30㎜以上の雨の発生回数は年々のバラツキが見られるものの、確実に増加の傾向が見られる。最近では1地点当たりの年間発生数が1.7回程度となっている。そして増加率は10年で0.14回となっている。この増加の割合は、雨の降り方を見るだけで「今年は激しい雨が多くなった」と判別できるような急激なものではないが、増える傾向にあることは事実である。
1時間50㎜以上の雨の発生回数も30㎜以上の発生数と同様に、年々の変動が大きいが、確実に増加の傾向があると見られる。1地点当たりの年間発生数は0.2回程度と30㎜以上の発生回数の10分の1程度である。
1時間80㎜以上の雨の発生回数は50㎜以上に比べると1/10程度と少なく、計算上では、増加傾向にあるものの、年々の変動の方が大きく、これを持って増加傾向にあると判別するのは難しい。さらに、100㎜を超える雨の発生回数となると、年によっては一回の発生もないことがあり、増加傾向の有無について、とても判断できるような回数ではない。

個別の階級での経年変化を見たが、全体としては増加傾向にあることは事実である。梅雨期も後半に入り、大雨の多い時期に入っている。降り続く雨によって起こる災害が多くなる時期であるが、その中で、時間80㎜や100㎜を超えるような猛烈な雨が重なると甚大な被害に結び付くことがあるので、特に短時間強雨に対する備えを忘れないで欲しい。

最後になったが、近年の1時間雨量が100mm以上を記録した事例の中から、忘れて欲しくない事例を列記することにしたい。 昨年2014年8月20日の広島市での大規模土砂災害では三入で101㎜を記録している。この事例は「広島で悲惨な土砂災害発生」紹介した。

2013年10月16日に伊豆大島で発生した大規模土砂災害では、なんと92.0㎜、118.0㎜、118.5㎜、97.5㎜と4時間連続して100㎜前後の雨を記録し、総雨量は800㎜を超えた。この時の伊豆大島での時間雨量の経過を示すが、深夜における猛烈極まりない雨では、避難行動等とれる状況になかったであろう。

短時間強雨が増加している_3


もう一例、梅雨期の例を示す。2012年7月12日に阿蘇地方を襲った豪雨災害では、阿蘇乙姫で106㎜、87㎜、95.5㎜、96㎜と、ここでも4時間連続して100㎜前後の猛烈な雨を記録している。
1時間雨量が100㎜前後の雨が数時間続いた事例では、必ずと言っていいほど大規模な災害が発生している。ここに示した事例は全て深夜に起こっている。降り続く雨で雷鳴が轟くような状況になると、猛烈な雨となる可能性が高くなるので、特に夜間に雷が鳴り始めたら厳重な警戒をしていただきたい。

執筆者

気象庁OB 市澤成介

気象庁OB
市澤成介

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