2014/12/12

徳島県西部で記録的な大雪

12月4日夜遅くから5日昼頃にかけて、徳島県西部ではかなりの大雪となった。重たい雪が一気に降り積もったことで倒木等により電線切断や道路が塞がれる被害が発生し、三好市、つるぎ町、東みよし町の一部集落が孤立する被害が発生し、10日現在も孤立が解消していない集落がある。
四国で大雪と聞くと、こんな地方でも雪が降るのと驚かれる方が多いと思うが、地図を開いてみると、スキー場もあるので、雪と無縁なところではないと思う。私の記憶で四国の雪と言えば、「昭和56年豪雪」の時に四国の一部山間部で1mを超える大雪が降った例がある。あの時は、確か大雪は愛媛県や高知県の山間部が中心で、徳島まで及んでいたかは定かでない。ただ、四国の最高峰剣山は今回の大雪の降った地域の南側に位置し、過去には3m近い積雪の記録がある。冬型気圧配置が強まったときには、西寄りの風が瀬戸内海を渡って四国に雪を降らすことがある地域である。しかし、その回数はそれほど多くはない。

今回の大雪でどれほどの雪が積もったかの資料がどこを探しても見当たらない(残念ながら四国には徳嶋県の積雪・降雪の観測は徳島地方気象台以外にない)ので、雨と気温などを使って、この地方でどんな雪の降り方をしたかを推測してみる。
この地方のアメダス観測点は池田(三好市池田町シンヤマ 標高205m)、半田(美馬郡つるぎ町半田字下尾尻 標高228m)があり、気温と降水量の両方を観測しているのは池田のみである。2地点の降水量を比較して見ると大きな違いがないので、池田の観測資料で見ていく。

徳島県西部で記録的な大雪


雨から雪に変わるのは地上付近の気温が2℃以下に下がる頃からが多い。上空が乾いているとこれより高温で雪がちら付き始めるようになるが、この事例では、気温が3~4℃の時間帯からまとまった雨が降り続いているので、気温が急降下して2℃以下になった4日21時頃からみぞれや雪に変わり始めたと見られる。ここでは1℃を下回った頃から、雪に変わったと考えてみる。図中の積算降水量は1℃を下回った頃からの積算降水量を折れ線で示したが、4㎜以上の比較的多い降水量を観測している時間帯は1℃以下で経過しており、かなり激しい雪となっていることが想定されます。この激しい降雪があったと考えられる時間帯で積算降水量は60㎜近くに達している。一般に、気温の高い地域での雪は、1mmの降水があると1㎝程度の雪が積もると言われるので、最も激しいときは1時間に5㎝以上の新しい雪が積もり、一気に積雪が増えていたと考えられる。1mmの降水で1cmの雪が積もるとして見ると、積雪が60㎝近くに達したことになるが、雪に変わった頃は路面が湿っており、この分は減らす必要がある。さらに、湿った雪が一気に積もったことで雪の重みで沈み込みも起こるので、この分もかなり引かなくてはならないが、それでも50㎝近い積雪になってもおかしくない状況と推測できる。

徳島県西部で記録的な大雪_2
今回、大雪被害を受けた地域周辺のアメダス観測点の降水量を徳島地方気象台の速報資料から引用すると、池田が一番多く、被害が大きかった地域での降水量は周りに比べかなり多かったことが判る。これまで、池田の状況でかなりの大雪であったと推測したが、アメダス観測点の池田は標高200m程度の位置にある。大雪による倒木等の被害が多発した地域はもっと標高の高い所であることを考えると、雪に変わった時間はもっと早かったことも考えられ、池田観測点より雪の量が多かった地域があったと思われる。

徳島県西部で記録的な大雪_3
この大雪は低気圧が発達しながら東海上に進み、西高東低の冬型気圧配置に移行する中で起こった。最も激しく降ったころの5日3時の地上天気図を示す。この低気圧の後を追うように上空には真冬並みの寒気が流入したことが一因である。瀬戸内海などの水温が、真冬に比べるとかなり高い時期にこの強い寒気が入ったことがもう一つの要因である。

この地域の降水域と強度の変化を見るため、4日20時~5日15時までの10分刻みのレーダーエコーを動画にして見ることにする。
赤丸で囲んだ部分が、今回の大雪被害が発生した地域である。5日に入る頃からこの地域にエコーがかかり始め、3時頃からは降水強度が強まった様子も見られる。池田の時間雨量の変化も見ながらこの地方にかかり続けたエコーの動きを見て欲しい。

20141204-06四国大雪時レーダー動画

それにしても、四国の広い範囲に降水エコーが広がっているのではなく、この地域に集中しているのが不思議である。このような偏りが生ずるのは、その地域の地形とその時の風向きに関係している。また、降水エコーの広がっている領域の風上側には瀬戸内海があり、降水エコーの伸びている方向を瀬戸内海側に伸ばすと、海上部分が長いことがわかる。この長さもこの地に強い降水をもたらしたことに関係するとも考えられる。

ところで、アメダス観測点「池田」の12月における日降水量の記録を見ると、2004年12月5日の86㎜が最多で、今回の5日の70㎜は第2位の記録となる記録的なものであった。1月、2月の記録を合わせてみても3位は50㎜以下であることからも、今回は異常に降り方であったことが判る。なお、第一位の2004年12月5日は発達中の低気圧が通過時に降ったもので、大雨が降った時間帯の気温は15℃前後であり、今回のように低気圧通過後の寒気の流入時ではなかった。
こんなことからも、今回の大雪はこの地にとっては記録的な大雪であったと言える。
普段雪の少ない地域では、除雪対策ができていないため、積雪による被害は長引くことが多い。また、こうした地域での大雪は、湿った重い雪であるため、積雪害だけでなく着雪害が被害の増大を招いている。今回の事例でも送電線等が切断され、停電も発生している。徳島県西部の一部集落で発生した事例と見逃さないで、雪の少ない地域はそれなりの対策が必要であることを理解して欲しい。そして、これからが雪のシーズンです。雪に対しての備えを前もって講じておいて欲しい。

執筆者

気象庁OB 市澤成介

気象庁OB
市澤成介

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